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【シリーズ第25回:36歳でアメリカへ移住した女の話】

 このストーリーは、
 「音楽が暮らしに溶け込んだ町で暮らした~い!!」  
 と言って、36歳でシカゴへ移り住んだ女の話だ。
 前回の話はこちら↓

 人生初の交通事故。

 ようやく救助がやってきた。

 運命の彼をひと目見て、

 ほ~~~っ

 とひと安心・・・と言いたいけれど、別れはすぐにやってきた。

 救急車の中は、再び、見知らぬ男ばかりだ。

 英語で質問されるかと思ったら、安心して気絶もできない。

 10分くらいだったと思う。
 救急車が停止した。

 どこの病院だろう?

 運び込まれるときに周囲を見ようと思ったけれど、ストレッチャーに寝かされていたので、空しか見えなかった。

 少しだけ、空が明るくなり始めていた。

 運び込まれたエマージェンシー・ルームには、ベッドが5床あった。

 「イーアール」だ!!!

 と興奮したいけれど、この日は私以外の急患はおらず、誰もいなかった。

 ついでにスタッフもいなかった。

 しーーーん・・・・・・・・・・・・・

 ベッドにのせられてから、どれくらい経ったのだろう?

 「ハイ!」
 
 と、ひとりのナースが楽しそうに入って来た。

 放置された時間と、ナースの様子から推測すると、シリアスな怪我ではないようだ。

 彼女は問診をし、血圧と体温を測って立ち去った。

 ナースが消えた後、またまた静寂がやってきた。

 隣の部屋からは、夜勤の人たちが集まっているのか、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。

 私のことを忘れてるのか?

 死なないとわかったら、放ったらかし?

 あまりにも誰も来ないので、声をかけてみようかな?と思ったときだ。

 「ハイ!今から尿検査よ!」

 と、尿検査キットを持った、別のナースが陽気に登場した。

 激痛をこらえ、ベッドから降り、トイレへ向かう。

 「大丈夫?」

 「・・・大丈夫やけど・・・痛いです」

 「そうよね~!かわいそうに!」

 やっぱり陽気だ。

 トイレから無事に戻って来て、再びベッド待機。

 もちろん、誰も来ない。

 あまりに暇で、ウトウトしかけた時だ。

 「次はレントゲン撮影よ!」

 と、またまた違うナースが元気に入って来た。

 「・・・うーーー・・・」
 
 痛みにうめきながらレントゲン室へ向かう 。

 うめこうが、わめこうが、重病人、重傷者を見慣れている彼女たちはへっちゃらだ。 

 午前9時、病院に到着してから約4時間が経過したとき、ナースが入って来た。

 やっぱり知らない顔だ。

 そのナースは、ニコニコ微笑みながら言った。 

 「骨に異常はないから大丈夫。薬局で痛み止めの薬をもらって、1週間後に近所の病院に行ってね。さよなら!」

 ・・・それだけ?????

 しかし、「さよなら!」と言われたら、帰るしかない。

 「さようなら」

 きちんと挨拶をし、体をひきずるようにして、薬局へ行った。

 「これは一週間分のお薬よ。さよならっ!」

 そこでも、元気に別れを告げられた。

 「・・・さようなら」

 病院のエントランスを出ると、そこにはお花が植わっていて、美しい初夏の景色が広がっていた。

 まぶしいくらいピカピカのお天気だ。

 

 あ~・・・家に帰ると暑いんだろうなぁ・・・。

 

 
 あれ??????


 私の車はどこ?

 私はどこ?

 歩いて帰れる場所?

 ・・・家に帰る実力がなーーーいっ!!!

私はどこ???

 しかも、一歩進むたびに、全身の骨が砕けるかと思うほど痛いぞ~・・・


最後まで読んでくださってありがとうございます!頂いたサポートは、社会に還元する形で使わせていただきたいと思いまーす!