天理市にフォーカス。古墳セレクトガイド【書籍レビュー】
全国の自治体が返礼品のアイディア出しに知恵を絞るふるさと納税。
ついつい食べ物を頼みがちですが、他ジャンルを覗いてみると面白いものが色々ありますね。
試しに「古墳」で検索したら出るわ出るわ。
継体天皇の真陵と言われる今城塚古墳の1/400スケールクッションですって! 普通の古墳クッションは持ってますが、こういうリアル形状のもいいなぁ
古墳密度の高い奈良県には何があるかなと探していたら、面白いものを見つけました。
こういうローカル古墳特集本もいいね!
古墳一般の本だとどうしても小規模遺跡の記載が少ないので、地域密着型の古墳本を見つけたら手に取るようにしています。
そんなわけで、今回は奈良県天理市発行、ふるさと納税の返礼品にもなっている『天理の古墳100』の感想をつらつら書いていきます。
書籍概要
本書は発掘調査書のようなプロ向け報告書ではなく、古墳ファンが読んで楽しいビジュアル資料のような位置づけ。フルカラーの空撮写真だけでも見る価値あり。民家より古墳の方が多いような場所まである…
内容について
『天理の古墳100』は文字通り、奈良県 天理市内の古墳(と、古墳ではない遺跡も少々)約100か所を紹介するブックです。100というと多いように感じますが、○○古墳群とか△△群集墓も1とカウントしているので、実際に紹介されている墳墓の数は千ちかくなるかも。天理市の古墳密度、おそるべし
ちなみに、これも自治体が発行している『天理市文化財遺跡分布地図』を見ると、天理市のかなりの部分が古代の文化遺産の埋まっているエリアだと分かります。さすが奈良。
自分の生活圏にはほぼ遺跡がないので、こんなに密集しているエリアがごろごろしてる場所もあるんだなぁと感動します。奈良の人が「土木工事でどこを掘っても遺跡が出てくる」と言ってましたが、大げさな表現ではないんですねぇ。
ところで、古墳が地中に埋没するって何メートル地盤隆起したのよ!?と思ったら、後世の人が墳丘部分を土木工事用に持って行った等の原因で丘が消滅していることがほとんどだそう。
戦国武将が砦にしちゃったり、地域住民がお寺を建てたり。まぁ仕方ないですね。
ただ、そうして一見何もなくなったように見える場所でも、工事を始めると地下に遺構や埋没している埴輪列やらが出てきて、これが新発見の古墳として調査対象になるんだとか。
ちなみに、工事を始めた際に遺跡が見つかった場合、工事を一旦停止して発掘調査をする必要があります。調査費用の負担は自治体によって色々。天理市あたりだとしょっちゅう調査することになりそう。
そういえば、天理市中央には天理教総本山がありますが、その周辺に土師器の標式遺跡 = 布留遺跡が広がってることに初めて気付きました。
布留式土器さん、ここで出土したのね!? 昔から住みやすい場所だったんでしょうねぇ
天理市の有名古墳・遺跡
改めて見ると天理市内にある古墳、有名どころがズラリです。巨大古墳が南北に連なり、北の奈良市、南の桜井市とともに大ヤマト古墳群を構成しています。
黒塚古墳:三角縁神獣鏡33枚が割と雑に出土。卑弥呼の銅鏡100枚の候補とされてきた三角縁神獣鏡だが、この古墳の出土枚数と雑な扱われ方から「これは違うんじゃない?」という議論になっている。
渋谷向山古墳:墳丘長300m、全国8位の巨大古墳。宮内庁が景行天皇(ヤマトタケルのパパ)の陵と比定していますが、考古学的には初期ヤマト王権の大王墓との位置付け。
山辺の道:日本史記録上の最古の道かつ日本現存最古の道。南北にくっきりと、古代から現代まで形をほとんど変えずに残っており、日本道路史を考える上でも貴重な存在。
ぶらりと歩くだけでも故事ゆかりの土地が目白押しで面白そう。
まとめ
天理市の豊かな歴史遺産をじっくり眺めたい方にオススメの一冊。
目に見える丘の一つ一つ、真っ直ぐな道の形にも古代の息吹を感じることができますよ。
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