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天地人が注目する今月の宇宙ニュース ~衛星通信編~Vol.6


天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

天地人が注目した4つの海外ニュースを紹介します。
今回は、
・緊急時の衛星通信サービス
・次世代衛星通信デバイス
・衛星通信企業の合併に対する懸念
・Googleスピンオフ企業の新プロジェクト を取り上げました。

それぞれについて、天地人の専門家が、ニュースの注目ポイントや今後の動向を解説します。

1.天地人が注目したニュース4選!

ニュース1:iPhone14 圏外エリアでも衛星通信で緊急SOS可能に

Appleは、iPhone14シリーズ向けに、衛星を経由することで携帯電話通信やWi-Fiネットワークの圏外にいても助けを求めることができる「衛星緊急SOS」機能を発表した。11月からの2年間はアメリカとカナダにおいて無料でサービスが提供される。
出典:THE SATELLITE CONNECTION OF THE IPHONE 14, TechSmart, https://voonze.com/the-satellite-connection-of-the-iphone-14/ 

ニュース2:人の繋がりを維持する衛星通信デバイス クラウドファンディング開始

Pigs Can Fly Labs社(米国の技術主導型ソリューション提供企業)は、画期的な衛星通信デバイス「Space Beaver」の発売計画を発表した。Space Beaverは電波の弱い場所でも大切な人と連絡を取り合うことができるオープンソースの製品。9月から量産のためのクラウドファンディングを開始する。
出典:SpaceBeaver: Pigs Can Fly Labs to Launch Innovative Satellite Communication Device on Kickstarter, https://www.digitaljournal.com/pr/spacebeaver-pigs-can-fly-labs-to-launch-innovative-satellite-communication-device-on-kickstarter 

ニュース3: 英国公正取引委員会がViasatとInmarsatの合併に懸念

Viasat(米国の衛星通信会社)は2021年11月、Inmarsat(英国の衛星通信会社)を約1兆円で合併することに合意した。しかし英国公正取引委員会は2022年10月、「競合がいなくなることで航空機内無線LANが価格上昇すること」に懸念を示し、懸念解消となる提案の提出を両社に求めた。
出典:CMA Warns Viasat and Inmarsat Merger May Raise Prices for In-flight WiFi,  ISP News , https://www.ispreview.co.uk/index.php/2022/10/cma-warns-viasat-and-inmarsat-merger-may-raise-prices-for-in-flight-wifi.html 

ニュース4:Google のスピンオフ企業がProject Loonに再挑戦

Googleのスピンオフ企業のAalyriaは、Googleが一度閉鎖したProject Loonの技術を新たなブランド名でパッケージングする。Project Loonは気象観測気球で、接続性の低い地域にインターネットを提供しようとGoogleが8年前から行っているプロジェクト。契約先には米軍が記載され、「完全にネットワーク化された戦場の実現」を目標にしている。
出典:Google spinoff Aalyria salvages Project Loon technology for the US military, Ars Technica, https://arstechnica.com/gadgets/2022/09/google-spinoff-aalyria-salvages-project-loon-technology-for-the-us-military/?comments=1 

2.天地人はこう読む

以下では、本記事で紹介した4つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。

ニュース1:iPhone14 圏外エリアでも衛星通信で緊急SOS可能に

ニュース1の解説では、「天地人において通信衛星向けAIプロダクトの開発マネージャーである木村」がニュースの注目度と技術的な視点からみたApple社の今後について見解を記します。

ニュースの注目度
以前配信したニュース解説で解説したとおり、救難信号の自動送信技術は、自動車分野でいち早く自動化・国際標準化が進められています。

ただし、自動車が走行するエリアは地上の携帯電話通信ネットワーク(GSM、LTE)が整備されていることが多いため、衛星通信で救難信号を送信するニーズが低い状況です。

人の行動範囲は広く、地上の通信網でカバーされない、海(船舶)・山(登山)・空(航空機)の上にまで広がっています。携帯電話を開発するメーカーとしては、いつでもどこでも携帯電話が使える世界を想定していることが伺えます。

海、山、空の事故では、事故がどこで発生したかがわからず、捜索に時間がかかり、救助が遅れる事例が多く発生しています。例えば、2014年に行方不明になったマレーシア航空370便は、未だにどこで事故が発生したかわかっていません。登山者が遭難するケースでも、捜索に時間がかかる様子が見られます。

衛星通信による救難信号発信機能を付加することで、携帯電話を持つ人がどこにいてもSOSを発信できるようになれば、海、山、空の事故において、救助がいち早く行われ、携帯電話ユーザーのメリットになると考えられます。

Apple以外に、Samsungも2023年から同様の機能を付加予定というニュースも出ており、今後衛星通信機能を搭載した携帯電話が増えてくる可能性は高いと思われます。

技術的な視点からみたApple社の今後
今回の新型iPhoneに搭載される衛星通信機能に、通信サービスを提供するのはGlobalstarだといわれています。

Gobalstarは1991年創業、米国の衛星通信サービスを提供する老舗です。現在衛星通信を提供している通信衛星は第2世代で、41基打ち上げる計画のうち、既に25基が打ちあがっています。

当初、米国とカナダで、衛星通信による救難信号発信サービスが展開されますが、Globalstarの通信衛星でカバーする通信の地理的範囲は地球の表面の80%とも呼ばれ、順次サービス地域が拡大するものと予想されます。

また、Apple自身も通信衛星によるコンステレーション計画を有しており、将来的には自社の通信ネットワークを利用して、世界のどこにいてもiPhoneでつながる世界を構想しているのではないでしょうか。

通信衛星コンステレーションが実現した場合に、衛星通信を利用する最も多くのユーザは、携帯電話だと考えられます。長期的には、衛星通信のコストが下がり、Appleが衛星通信網と携帯電話(ハードウェア)両方を掌握し、自社だけで全ての携帯電話サービスを提供する日が来るかもしれません。 


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この後もニュース2,3,4それぞれに対し天地人の専門家の解説を記します。
・ニュース2は、技術的な注目度、デバイスの必要性、 開発形態の見解を
・ニュース3は、公正取引委員会の懸念に関する見解を
・ニュース4は、技術的な新しさ・面白さと今後の活用関する見解を
それぞれ記しています。

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