佐野元春│GREATEST SONGS COLLECTION 1985-1992│収録バージョン事前検証
9月にリリースされる佐野元春の新しいベスト盤に収録される曲のバージョンを事前に検証する企画。ここからは「DISC TWO : MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1985-1992」に入って行く。
「DISC ONE : MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-1984」はこちら。
track#01 ヤングブラッズ
Album mix version
この曲は国際青年年のテーマ曲として、1985年2月にシングル・リリースされた。B面にはインストルメンタル・バージョンが収められた。シングルのオリジナル・バージョンはその後「Moto Singles 1980-1989」(1990年)、「NO DAMAGE II」(1992年)、「THE LEGEND」(2003年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションに収められている。
翌月には12インチ・シングルがリリースされ、ジャック・ヌーバーのリミックスによるロング・バージョン、ショート・バージョン、インストルメンタル・バージョンの3つが収められた。
さらに1986年12月、アルバム「Café Bohemia」収録にあたって再度リミックスが行われ、フェイド・アウトを切り詰める形でサイズも縮められたバージョンが制作された。今回のアルバムに収められているのは、バージョン名からするとこのアルバム・バージョンではないかと思われる。このバージョンの最も顕著な特徴は、イントロが終わってボーカルが入る直前の女声コーラスが大きくフィーチャーされているところで、聴き比べれば分かると思う。
2000年のコンピレーション「The 20th Anniversary Edition」には渡辺省二郎によって新たにリミックスされたバージョンが収録されている。ブリッジ部分に入る前のハープがカットされているのがポイント。このバージョンは「The Very Best」(2010年)にも収録された。
2011年のセルフ・カバー・アルバム「月と専制君主」ではラテン調にリアレンジされた新録バージョンを聴くことができる。
まあ、名曲なのは間違いないので細かいことは気にせずに聴けばいいと思う。
【リリース後の答え合わせ】
事前検証通りアルバム「Café Bohemia」収録のバージョンと同じもの。
track#02 シーズン・イン・ザ・サン - 夏草の誘い
Alternate version
1986年に隔月でシングルを3枚連続リリースするシリーズの第2弾として発表されたのが初出で、同年12月にアルバム「Café Bohemia」に収められた。
アルバム・バージョンはアラン・ウィンスタンレーがミックスを手がけており、シングル・バージョンとは別ミックスとされているが、一聴して分かる顕著な違いはなく、目隠しして聴かされたら聴き分ける自信はまったくない。
2011年のセルフ・カバー・アルバム「月と専制君主」ではよりアコースティックなタッチにリアレンジして新たにレコーディングし直された。
「Moto Singles 1980-1989」(1990年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションに収録されているが、いずれもオリジナルのシングル・バージョンだと思う。
今回のアルバムでは事前のアナウンスで「新たなミックスを収録」と明確に説明されているのでそういうことなんだろう。どんな仕上がりになるのかリリースを待ちたい。
【リリース後の答え合わせ】
渡辺省二郎による新しいミックスを収録。ブックレットにはボーカルは別テイクを採用したと記載されている。
track#03 ジャスミンガール
Original version
1990年10月発売のシングル曲。翌月発売のアルバム「TIME OUT!」に同じオリジナル・バージョンが収録された。
その後、「NO DAMAGE II」(1992年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションに収められたがいずれもこのオリジナル・バージョンである。
2000年リリースのコンピレーション「The 20th Anniversary Edition」に収録される際、渡辺省二郎による再ミックスが行われており、現在のところこれが唯一の別バージョンとなっている。このミックスではオリジナルで採用されなかったブルース・ハープによる間奏が発掘されているが、まあ、そこまでして聴くほどの演奏かどうかは自分の耳で確かめてみて欲しい。
今回のアルバムに収められているのは当初シングルと同じオリジナル・バージョンだと思われる。
【リリース後の答え合わせ】
事前検証通りシングルと同じオリジナル・バージョンが収録された。
track#04 誰かが君のドアを叩いている
Radio edit version
1992年4月にアルバム「sweet 16」からの先行シングルとしてリリースされた。バージョンはシングル、アルバムとも同じ。シングルにはヒロ・ホズミによるリミックス「'Let it roll' version」がカップリングとして収められた。
2012年のコンピレーション「SOUND & VISION」にはオリジナル・バージョンが収録されている。
2006年に「THE SINGLES EPIC YEARS」に収録される際、曲の中間をカットして30秒強短く編集したショート・バージョンが制作されている。オリジナルは「イントロ-AAB-AB-AC-間奏-BA-アウトロ」という構成だが、ショート・バージョンでは「イントロ-AAB-AC-間奏-BA-アウトロ」となっている。
今回のアルバムに収録されているのはこのショート・バージョンだろう。
【リリース後の答え合わせ】
「THE SINGLES EPIC YEARS」に収められたショート・バージョンのアウトロを一部カットしてさらに15秒短くした新たなショート・バージョン。単純にフェイド・アウトを早めたのではなく手前を一部カットする手の込んだ縮め方をしている。
track#05 ジュジュ
Original version
1989年6月にリリースされたアルバム「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」の収録曲。同年8月にはアルバムのタイトル・ソングがシングル・カットされた際のカップリングにもなっているが、オリジナルのアルバム・バージョンと同じもの。
このオリジナル・バージョンは「NO DAMAGE II」(1992年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションにも収められている。
2000年のコンピレーション「GRASS」に収録される際、渡辺省二郎によるリミックスが行われている。オリジナル・バージョンではカットされていた佐野のスキャットが復元されている他、ボーカルが別トラックとの指摘もある。
2011年のセルフ・カバー・アルバム「月と専制君主」ではシュープリームスの『恋はあせらず』に倣ったモータウン・スタイルの軽快な4ビートにリアレンジされた新テイクが収められている。
今回のアルバムには当初アルバムに収められたオリジナル・バージョンが採られているものと思われる。
【リリース後の答え合わせ】
事前検証通りアルバム「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」収録のオリジナル・バージョンと同じもの。
track#06 ワイルド・ハーツ - 冒険者たち
Original version
1986年9月、シングル3枚連続隔月リリースの第3回としてリリースされ、同年12月リリースのアルバム「Café Bohemia」に収められた。
シングル・バージョンは阿部保弘のミックスで特にスネアが軽機関銃のような固く高めの音になっているのに対して、アルバム・バージョンはアラン・ウィンスタンレーがミックスしておりスネアはオーソドックスな質感に戻されている。いちばんの聴き分けどころはここだと思っているんだけど他に顕著な違いがあれば是非教えて欲しい。
シングル・バージョンはその後、「Moto Singles 1980-1989」(1990年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「SOUND & VISION」(2012年)などに収められた。
一方のアルバム・バージョンは「NO DAMAGE II」(1992年)、「THE LEGEND」(2003年)などのコンピレーションに収録されている。
今回のアルバムではバージョン名が「Original version」とのみ表記されているため、どちらのバージョンが収録されているかは微妙だが、先に発表された方をオリジナルと考えるなら、シングル・バージョンの方だろうか。確認を要する。
【リリース後の答え合わせ】
シングル・バージョンではなくアルバム「Café Bohemia」収録のバージョンと同じものが収められた。シングル・バージョンとアルバム・バージョンが異なる場合に単に「Original version」とだけクレジットされても困る。
track#07 新しい航海
The Heartland version
1989年リリースのアルバム「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」に収録されたナンバー。オリジナルはロンドンでブリンズリー・シュワルツ、ピート・トーマスらをバックにレコーディングされたもの。
その後、1992年に、ザ・ハートランドが演奏する別テイクが「90's Version」としてコンピレーション「NO DAMAGE II」に収められた。このバージョンは、さらにリミックスされて2000年のコンピレーション「The 20th Anniversary Edition」に「'99 mix version」として収録された。
その後、ロンドン・レコーディングの前に東京で行われたハートランドとのリハーサル・セッションの際にレコーディングされたデモ・バージョンが「The Heartland demo version」として、2008年リリースの「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 限定編集版」のボーナス・ディスクに収められている。
今回のアルバムの「The Heartland version」というバージョン名は紛らわしいが、デモ・バージョンを収録するとも思えず、「NO DAMAGE II」のバージョンが収められているのではないかと思われる。
【リリース後の答え合わせ】
事前検証通りコンピレーション「NO DAMAGE II」収録のハートランドの演奏によるバージョンが収められた。
track#08 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
Original version
1989年6月発売のアルバム「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」のタイトル・ソング。アルバムの後、1989年8月にはシングル・カットもされた。
その後、「Moto Singles 1980-1989」(1990年)、「NO DAMAGE II」(1992年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションにも収録されたが、いずれもアルバムに収録されたオリジナル・バージョンである。
2003年には、ホーボー・キング・バンドがバッキングした別テイクの「H.K.B. Version」がシングル『君の魂 大事な魂』のカップリングとしてリリースされている。フィッシュ、デレク・トラックス・バンドなどのジャム・バンドから影響を受けた長尺のジャム・セッション。このバージョンは若干の編集を加えられてセルフ・カバー・アルバム「自由の岸辺」にも収められた。
今回のアルバムにはアルバムと同じオリジナル・バージョンが収められるようだ。
【リリース後の答え合わせ】
事前検証通り「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」収録のオリジナル・バージョンが収められた。
track#09 Sweet 16
Radio edit version
1992年7月リリースのオリジナル・アルバム「sweet 16」のタイトル・チューンとして発表され、10月にはシングル『約束の橋』のカップリングとしてもリリースされた。
その後、同じオリジナル・バージョンがコンピレーション「NO DAMAGE II」(1992年)、「SOUND & VISION」(2012年)に収められた他、2000年のコンピレーション「The 20th Anniversary Edition」では新たにリミックスされ「'99 mix version」として収録された。
この曲に関してはこれまでリミックス・バージョンも含めてサイズを縮めたショート・バージョンは制作されておらず、今回「Radio edit」のバージョン名通り短く編集されて収められるとすれば新たなバージョンの発表となる。そんなに長い曲でもないのでどこをカットするのかとは思うが。
【リリース後の答え合わせ】
オリジナル・バージョンの中間部を一部カットして20秒ほどサイズを縮めたショート・バージョン。2分過ぎの「見えすいたこの幸せに~」から「I wanna be with you」までがカットされている。
track#10 レインボー・イン・マイ・ソウル
'99 mix & radio edit version
1992年7月リリースのオリジナル・アルバム「sweet 16」に収録されたナンバー。同年11月にはシングル『彼女の隣人』のカップリングとしてもリリースされた他、同年12月リリースのコンピレーション「NO DAMAGE II」にも収められた。すべて同じオリジナル・バージョン。
その後、2000年のコンピレーション「The 20th Anniversary Edition」への収録の際にリミックスが行われ、アウトロを一部カットする形でショート・バージョンが制作された(バージョン名は「'99 mix and edit version」)。
このバージョンは「The Very Best of Motoharu Sano」(2010年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションにも収められている。
今回のアルバムに収録されているのは、バージョン名の表記から見てもこの2000年に発表されたショート・バージョンと見て間違いないだろう。
【リリース後の答え合わせ】
「The 20th Anniversary Edition」収録の渡辺省二郎によるリミックス・バージョンのアウトロをフェイド・アウトにしてサイズをさらに30秒以上縮めた新たなショート・バージョン。
track#11 雪 - あぁ 世界は美しい
Radio edit version
1989年6月発売のアルバム「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」収録のナンバー。同年12月にこの曲のビデオ・クリップを収めたVHSビデオとシングルCDのパッケージがリリースされたが、その際、オリジナルでは2分ほどあるアウトロを途中でフェイド・アウトする形で1分近く短く編集された。
オリジナル・バージョンが1991年リリースのコンピレーション・アルバム「Slow Songs」に収められる一方、ショート・バージョンは「Moto Singles 1980-1989」(1990年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションに収録された。
今回のアルバムにはシングル用に編集されたショート・バージョンの方が収録されるのではないか。
【リリース後の答え合わせ】
オリジナル・バージョンのフェイド・アウトを早めた従来のショート・バージョン(シングル・バージョン)よりもさらにフェイド・アウトを早めて30秒以上サイズを縮めた新たなショート・バージョン。
track#12 約束の橋
Additional recorded version
1989年4月にアルバム「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」からの先行シングルとしてリリースされた。アルバムに収録された際には冒頭にカウントが追加されており厳密には別バージョンとなっているが演奏部分は同じもの。
このオリジナル・シングル・バージョンは、「Moto Singles 1980-1989」(1990年)、「SOUND & VISION」(2012年)などに収められた。
その後、1992年にフジテレビ系のドラマ「二十歳の約束」の主題歌に採用され、シングルが再リリースされたが、この際にボーカル・トラックが差し替えられ、さらにバック・トラックにもリミックスが行われた。オリジナルに比べるとハモンド・オルガンが大きくフィーチャーされるなど音の質感がかなり異なる。
この「新シングル・バージョン」は「NO DAMAGE II」(1992年)、「The 20th Anniversary Edition」(2000年)、「THE LEGEND」(2003年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「The Very Best of Motoharu Sano」(2010年)など多くのコンピレーションに収められている。
今回のアルバムに収録されているのは、バージョン名からしてこの「新シングル・バージョン」であると思われる。
【リリース後の答え合わせ】
事前検証通り1992年の再リリース・シングルと同じバージョンが収録された。
track#13 僕は大人になった
Original version
「Original version」と書かれてしまうとあまり言うこともなくなってしまうんだけど、一応見ておくと、この曲はアルバム「TIME OUT!」のオープニング・ナンバーとして1990年11月に発表され、翌年4月にはシングル・カットされたが、バージョンはアルバム収録のオリジナルと同じ。
その後、「NO DAMAGE II」(1992年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「The Very Best of Motoharu Sano」(2010年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションに収められているがいずれもオリジナル・バージョン。
但し、唯一2000年の「The 20th Anniversary Edition」では、バージョン名表記は「Original」だが、ギターが前面に出されるなど仕上がりが異なっており、渡辺省二郎による別ミックスと思われる。
それにしてもタイトルの「僕」を漢字で書かれるとすごく違和感ある。このタイトル表記は初めて見た。
【リリース後の答え合わせ】
事前検証通りアルバム「TIME OUT!」収録のオリジナル・バージョンが収められた。曲名の表記は『ぼくは大人になった』と本来のひらがなに修正された。
track#14 クエスチョンズ
Original version
1990年のアルバム「TIME OUT!」収録曲。コンピレーションでは「SOUND & VISION」(2012年)に収められているがオリジナル・バージョンである。今回のアルバムでもこのバージョンが収録されているようだ。
セルフ・カバー・アルバム「月と専制君主」ではよりブルージーなアレンジでリテイクされている。
【リリース後の答え合わせ】
事前検証通りアルバム「TIME OUT!」収録のオリジナル・バージョンが収められた。
track#15 ボヘミアン・グレーブヤード
Original version
1992年リリースのアルバム「sweet 16」収録。コンピレーションでは「SOUND & VISION」(2012年)に収められているがオリジナル・バージョンである。今回のアルバムでもこのバージョンが収録されているようだ。
2000年のコンピレーション「GRASS」にはリミックスの上、中間部を編集でカットしたシュート・バージョンが収められている。
【リリース後の答え合わせ】
事前検証通りアルバム「sweet 16」収録のオリジナル・バージョンが収められた。
track#16 また明日
Original version
アルバム「sweet 16」からの先行シングルとして1992年にリリースされた。アルバム収録時にはミックスが変更されており、このどちらが「Original version」と呼ばれるべきものかは微妙だが、聴いてみてもどっちか確実には分からないかもしれない。
その後、シングル・バージョンは「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、アルバム・バージョンは「SOUND & VISION」(2012年)に収められた。
2000年の「The 20th Anniversary Edition」では、再ミックスが行われている。
シングル・バージョンとアルバム・バージョンのどちらが収録されるかは上記の通り微妙。発表時期から行けば先にリリースされたシングル・バージョンの方が「Original version」の名誉を得るべきだが。
【リリース後の答え合わせ】
アルバム「sweet 16」収録のバージョンが収録された。この曲もシングル・バージョンとアルバム・バージョンが異なるので、単に「Original version」とだけクレジットされても困る。
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