見出し画像

アートが街をつなぐ様を、いま目撃している話 〜地域もニューノーマルへ〜

マガザンキョウトのある京都市上京区中書町(かみぎょうく ちゅうしょちょう)という街は、かつては平安京のど真ん中、今は二条城の北、西陣の最南端に位置する住宅街にあります。

画像1

画像2

京都にお住まいの方でも「あの辺りって、何があったっけ?」というくらい、わざわざ訪れる用事は多くない場所。

近所のランドマークは、かの俳優のご実家としても知られる佐々木酒造さんでしょうか。

画像3

そんな街に2019年初春、「引っ越します!」と果敢にも?来てくれたのが、アートホステルだったクマグスクを営む、矢津さん一家なのであります。

画像15

画像4


誰のものかわからなかった「通路」が、皆の「場所」になっていく。

マガザンの裏隣に複数の住宅が連なって、そこに新しいクマグスクSAS(以下クマグスク)と矢津家があります。

画像6

上の写真は、5年前マガザンの物件内見に来たときに何気なく記録のために撮ったのもの。写っているのは、数年後クマグスクになる建物と、不動産屋さんのお兄さんです。

「昔から残る住宅街ですね〜」と話していたような記憶があります。当時はシャッターが閉まりっぱなしのお家でした。

そのため、この路地はあくまでも「通路」。風情は感じさせるものの、誰も通行以外には使っていない場所でした。

そこに2019年春、まず住民として矢津家がやってきます。

画像7

アーティストで、企画者で、たくさんの友人を持つ矢津さんのもとには、様々な人たちが集います。

自然とシャッターが開け放たれる時間も増えてゆきます。

画像8

もともと路地に住む皆さんも、挨拶からはじまり、路地の掃除、食事会へと加わって、「昔(30年ほど前)、ここに集まってバーベキューしたのを思い出したわ〜。」なんていう会話を交わすようになりました。

ほどなくして市民権ならぬ路地の随時使用権を得て、誰のものかわからなかった路地は、合法的、あるいは超法規的に、人が一時滞在できる井戸端的な「場所」へと変わりました。

アートが街に入っていく。

2019年春、後にクマグスクSASと呼ばれるプロジェクトがこの場所で始動します。

アートを創作する過程で生まれる副産物(廃材、サンプル、失敗作、什器etc...)の価値を捉え直し、サステナブルなアートの生態系をつくる副産物産店を、中書町のクマグスクへインストールするプロジェクトです。

画像10

画像25

クマグスクが、住民としての街への関わりから、アーティストとしての関わりへと一歩進んだタイミングとも言えます。

マガザンで副産物産店を紹介する特集の一環として、インスタレーションをつくってトークイベントを開催したり、

画像11

副産物で椅子をつくるワークショップを開催したり。

画像12

画像13

画像14

アートが街へじわっと浸透し始めました。

参考:「廃材」から「副産物」へ、新たな価値が生まれる瞬間。| 副産物産店特集 共同編集者インタビュー
https://magasinn.xyz/article/2019/04/22/byproducts-2/

画像9

アートが街をつないでゆく。

地域にお住まいの方々とのコミュニケーションも、時が経つごとに移り変ってゆきます。

・「いったい何をされている方なのでしょうか・・・?町内会には入っていただけるのでしょうか・・・?」

・「なんだかよくわからないけど、おもしろいもの作ってはりますね〜」
・「改装されたご自宅、素敵ですね!」

・「街に若い人たちが増えてほんまによかった。」

・「こういう空き家があるのですが、何かに使えませんかねぇ?」

画像17

訪れる方々も少しずつ広がってきています。
近隣住民の方々、自治会長、地域企業の方々、TVやWeb、新聞などのメディアの方々、そして幅広いエリアから訪れるお客さまなどなど。

もうすぐ近所に新しいご飯屋さんもできるようです。


街単位で俯瞰してみると、クマグスク、副産物産店、そして矢津家は、このような枠組みに在るのだと思います。

画像16

よくケーススタディや方法論で見るようなフレームに収まります。

しかしながら、この中で起こっている出来事、具体的な事象、時に各論と一蹴されるものは、とってもあたたかくてエキサイティングです。

画像18

画像19

よくわからないけれどなんとなく街がつながっていく状況が、「これはきっと、アートと呼ばれるものなんだろう」という言葉で地域に許容されていく様。

もしかすると、これがアートかどうかということは、そこまで重要ではないのかもしれません。

街がなんとか気持ちよくつながってゆく。それを受け入れたりおもしろがって参加してくれる方々がいる。

その連続が影響し合って、色々なところで発生していくことを、クマグスクプロジェクトは願っていると思えてなりません。

ニューノーマルの時代に、地域の街で生きる。

今の状況になって、この街にも少なからず影響はあります。

地蔵盆などの地域行事は中止となり、点在していたゲストハウスはポツリポツリと姿を消し、売却や貸出の案内が目につきます。

きっと何かになるはずだった取り壊された町家群は、静かな広場として佇んでいます。

それでも街は、三密回避やソーシャルディスタンスと呼ばれる最低限のルールを意識しながら、動き続けています。

画像20

クマグスクはクラウドファンディングをスタートしたり(もうすぐ終了!街づくり、インテリア、アートに興味のある方にもオススメです!)、


副産物産店のオンラインストアをオープンしたり、

デザイナーや工務店とコラボレーションした副産物自動販売機(無人販売対応)をつくったり、

画像25

画像23

周囲を巻き込みながら精力的すぎるほどにチャレンジを積み重ねています。

マガザンチームも刺激を受けながら切磋琢磨しています。なにより、このエリアに来る方々が喜んでくださる場所が増える。そのことが嬉しくてたまりません。


変わらなければならない時代に、変容を糧とするクマグスクというプロジェクトが、これから街と社会にどのような営みをつくっていくのか。

これから活かせるヒントがたくさん詰まっているはずです。皆でその過程を目撃してみませんか?

画像24





いただいたサポートは、京都のローカルコミュニティへと還元させていただきます。