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最強HHKBへの道 - キーの静音化 & 押下圧35g化

 Happy Hacking Keyboard!!

 「最強HHKBへの道」と題してHHKBのカスタマイズに関する記事を書く、その第二弾はキータッチの改善に取り組む話になる。前回はHHKB Pro2をBluetooth接続できるようにし、接続端子もUSB-Cへと改造したお話なので、興味ある人は前回の記事もぜひ読んでみてほしい。

HHKBのキータッチについて

 HHKBのキータッチは決して悪くない。押下圧は45gと極めて一般的な強さとなっている。極めて標準的なタクタイル感を得られる設計となっており、HHKBを開発・販売しているPFUもキータッチには自信があることがCM内容からも窺える。

 とはいえ45gの押下圧は私には非常に重たく感じた。キータッチ音もカチャカチャとプラスチックが当たる音が響き、少し五月蝿く感じたこともあり、さらなる快適性を求めて押下圧を35gへと軽減すること、キータッチ時の音を静音化することを決意した。

必要なもの

 前回同様、改造に必要なものを並べる。残念ながら押下圧を変更するパーツや静音化するパーツは公式から発売されていないので、評価の高いサードパーティアイテムを選択する必要があった。

 今回の改造に使うパーツは中国の「DESKYES」というメーカーのものを採用する。押下圧変更や静音化のパーツは他メーカーからもいくつか出ているのだが、事前の調査により「DESKEYS」が最良と判断した。

 これから紹介するDeskeysのパーツはキーボードカスタムでは有名な「遊舎工房」でも一部取り扱いはあるのだが、価格が高くなることとラインナップが少ないことからDeskeysの公式サイトからの購入を強くオススメする。

1.des-dome V2 rounder-bke style

 最初に用意するものはキーボードの押下圧を変更するラバードーム。DESKEYSのラバードームはVersion 1〜Version 3まで存在するのだが、35gの押下圧が用意されているのはVersion 1とVersion 2のみとなる。価格はいずれも$22。

 押下圧はラバードームのカラーリングで分けられており、最軽量35gから最大70gまで用意されている。今回採用したのは最軽量の35g、カラーリングはTiffanyとされているタイプだ。

2.DES Topre Silencing Rings

 次に用意するものはサイレントリングと呼ばれている静音化パーツとなる。こちらのパーツも静音化のレベルによって厚みのバリエーションが存在しており、自分の好みに合わせたパーツを用意できるようになっている。

 一応基本的なサイズが「#5」の0.5mmとなっているのだが、これを採用するまえに少し考える時間が必要だ。というのもPFUが静音モデルとして販売している「TYPE-S」は同様にサイレントリングがはめられているのだが、このリングの厚さが0.2mmとなっている。たかが0.3mmの違いでしかないのだが、この0.3mmが押下判定を行うアクチュエーションポイントまでの距離で考えると大きな違いを生む。

 個人的に静音化を優先したい気持ちはあったが押下距離が変わりすぎてもHHKBの使い心地に影響するため「#3」の0.3mmを選択した。

HHKBの押下圧を軽量化&静音化する

 必要なものが揃ったら一気に改造していく。

1.キーキャップを全て外す

 今回の改造では最初に全てのキーキャップを外す。キーキャップがついたままでは「軸」を取り外すことができない構造だからだ。キーキャップの外し方は付属のリムーバーで引っ掛けて引き抜くだけ。とても簡単。

付属のリムーバー。コレを使う。
キーに差し込んだら、一度ひねって斜めに引っ掛ける
スポッ!

 複雑な構造ではないので簡単に外せる。これを60個全てのキーに行う。

取り外したキーの位置が分かるように並べていく
全て外した段階で一度清掃しておくと良い

 取り外したキーを元の位置に戻せるように並べておく方が良い理由は以下の画像を見てもらえれば分かる。人間工学に基づいたキートップデザインのため、列によってキーの高さや傾きが異なっており、これが混ざってしまうと非常に面倒なことになるからだ。

列によって高さや傾きが異なる

2.HHKBを分解する

 前回と同様、HHKBを分解して基盤にアクセスできるようにする。まずは蓋を外して基盤の表側とキー軸にアクセスできる状態にする。

底面3つのネジを最初に取り外す
キー側基盤のネジを全て外す
基盤を静かに裏返すとラバードームが姿を表す
上蓋には軸が固定されている

3.サイレントリングの取り付け

 分解したら最初にサイレントリングの取り付けを行う。手順工程は少ないものの、キー全体の数が多く非常に面倒臭い。先に終わらせるが吉。

 この作業は非常に細かく、且つピンポイントで力を掛けないといけない。ピンセットや六角レンチがあれば効率よく作業できるので用意しよう。

愛用のピンセットと六角レンチ

 キー軸の取り外しは表側(キートップが差し込まれていた方向)から強く押し込むことで外せる。指の力だけでも外せるが、指が痛くなるので六角レンチを差し込んで押し込むと良い。

穴に差し込んだら強く押し込むと外れる

 この取り外しを合計60個行う。キー軸は一部(エンターキーや左シフトキー、スペースバー)を除き全て同じサイズ。根気よく全て外してしまっても問題はない。

 キー軸を取り外せたら、その1つ1つにDeskeysのサイレントリングを取り付けていく。非常に細かい作業になるためピンセットを使った作業が必要。

サイレントリングの中身
1つ1つ精密にカットされているのでピンセットで取り出す
光沢がある面を上にしてキー軸にはめ込んでいく
これを60個全てに行う
キー軸を上蓋にパチッとはめ込んで完了だ

4.ラバードームの交換

 次にキータッチ時の押下圧を変更するためラバードームの交換を行う。途中ラバードームのカットを行うためハサミを用意しておきたい。

35gのラバードーム。4個1セットとなっている。
4個セットを上蓋の配置できる部分全てに置いていく
残りの部分は幅に合わせてハサミでカットしたものを設置する

 上蓋に新しいラバードームを設置したら、基盤についているオリジナルのラバードームを全て取り外す。ラバードームの中には静電容量無接点方式特有のバネが入っており、このバネを再利用する。

バネをドームの中に入れていく。傾かないように注意が必要。
コツコツと丁寧に設置していく
交換後の全体像(カットや設置の参考用)

5.HHKBを組み立てる

 静音化と35g化は既に完了しているので組み立てを行う。先に用意した上蓋にキーボードの基盤をずれないように設置してネジ組しよう。分解時の手順を逆に辿るだけなので難しいことはない。

組み立て後(見た目では分からない……)

改造の効果について

 HHKBを静音化し、押下圧を35g化した効果についてまとめる。

静音化による変化

 サイレントリング装着によってキーが跳ね返った際に鳴る音は軽減された。とはいえサイレントリング自体が0.3mmと割と薄いタイプを使用したため劇的な効果は得られていない。公式が発売している静音モデル「TYPE-S」より気持ち静かな音になった印象。

 具体的な変化は動画撮影したため、そちらを参考にしてほしい。

 キー軸が戻ってくる際の音はだいぶ軽減できたのだが、キータッチする際の「カチャカチャ」という音はあまり軽減できていない。これはキー軸(取り外した黒いプラスチックパーツ)が上蓋のキー穴とぶつかる音のようで、これはサイレントリングでは解決できないようだ。

 このカチャカチャ音の軽減にはキー軸に対してルブ(グリスのような潤滑油)を塗るか、シリコンスプレーによる保護を行うことで軽減できるらしい。これも更なる改善項目として取り組めそうだ。

※2022年7月6日追記

 動画の編集とアップロードに合わせてシリコンスプレーによる効果の確認も行ってみたところ、劇的な改善があったため追記しておく。

 使用したのは呉工業のシリコンスプレー。溶剤が含まれていないため、プラスチックに吹き付けても問題はない。ただし直接吹き付けるとオイル過剰となり大変な目に合うので紙コップなどに適量を吹き出して、溜まったシリコンオイルを刷毛や綿棒で塗ったほうが賢明だろう。

上蓋と軸が接触する部分を中心に塗布する

 塗布した効果は先に掲載している動画の最後で確認できる。オリジナルのHHKB、サイレントリングを取り付けたHHKB、そしてシリコンオイルまで塗布したHHKBで比較できる。

キータッチの変化

 押下圧を35gに変更したことでキータッチは劇的に変化した。適度なタクタイル感を残しつつ、より軽い力でタイピングできるようになったため、長文入力などを行っても疲れにくくなったのが体感として得られた。

 職場ではNizの84キーを使用しており、こちらは初期が35gと軽量。押下圧を揃えたことで自宅環境と職場環境での違和は大きく改善されている。

 キーの荷重は正直個人の志向に大きく依存する。自分は軽いキータッチほど好みだが、全く逆の人もいるだろう。45g押下圧は標準的であるため交換が不要な人もいるだろうし、もっと重くしたい人もいるはずだ。

 Deskeysのラバードームは様々なタクタイル要望に対応すべくラインナップ幅がとても広い。自分好みの荷重を見つける楽しみはあるだろう。

まとめ

 今回の改造も比較的満足度が高い結果を得られた。たかがキーボード一つに対してと思われる人もいるかもしれないが、パソコン機器やガジェットを利用する機会が増えた現代では入力を司るインターフェースに触れる時間もまた向上している。

 割れたスマートフォンの画面よりも滑らかで指ざわりのよいタッチパネルが良いように、キーボードやマウスもずっと使う道具として自分の志向に合うものを追い求めたほうがQOLは向上する。

 第二弾として静音化と押下圧軽量化を行い、本体自体の性能には比較的満足出来たため、次は外側の環境に目を向けてみようと思う。続く第三段ではパームレスト他の話をしてみよう。


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