見出し画像

京の都と雨女

「今日は一日晴れだと言っていたのですが」

と申し訳無さそうに、フロントスタッフの女性が傘を貸してくれた。
いえいえそんな、申し訳無さそうな顔をしないでください。
雨が降ったのはお姉さんのせいではないんですから。

私のせいです。

******

案の定、京都に着いた途端に雨が降った。
「やっぱりね」と、得意げに折りたたみ傘をさす。
周囲を見渡すと、慌てて屋根のある場所まで走ったり、上着のフードを被ったりして雨を凌ぐ人ばかり。
皆傘を持っていないのだ。
そりゃそうだ。
今日の天気予報は、終日晴れマークだったのだから。

荷物を宿泊先に預けてから散策しようと思い、まずはホテルに向かうことにした。
本当はそのまま目的地へ向かうつもりだったけれど、急な雨だ。
人出もまばらだろうし、少し時間をロスしたくらいでは混まないはず。

京都駅から市バスに乗り込む。
堀川通を上がり、バスが西本願寺前に差し掛かった頃、窓を打ち付ける雨が強くなったことに気がついた。
折りたたみ傘では心もとない雨脚になっていたのだ。

ホテルに着くと、フロントの女性が親切にタオルを貸してくれた。
雨に濡れた鞄と服をそのタオルで拭いていると、「少々お待ちください」とフロントスタッフが奥の部屋へと戻って行った。
「折りたたみよりもこちらの方が大きいので」と、ホテルの傘をわざわざ持って来てくれたのだ。
「今日は一日晴れ予報だったはずなんですけど…こんなに降るなんて」
と傘を手渡された私は、思わず
「雨女なんです」
と白状してしまった。
フロントスタッフの女性は「そうなんですね」と笑い、
「楽しんで来てください」と、京都に雨を降らせてしまった私を咎めるわけでも揶揄うわけでもなく、丁寧に送り出してくれた。

ホテルの軒下で傘を開く。
傘にはホテルのロゴと名前がどどんと印刷されていた。
私は心優しいスタッフさんとホテルに感謝すべく、
文字通り歩く広告塔になろうと雨が降る京の都へと繰り出した。
ホテルの名が入った傘をさして。

******

どうも、雨女です。
雨女の私は、行く先々で雨を降らします。
天気予報が晴れだったとしてもお構い無しです(なので、晴れだったとしても必ず折りたたみ傘を持って出かけます)。
京都に行く時も例外ではなく、爆弾低気圧や台風を連れて行ってしまったこともありました。

そんな訳で、京都でも雨に降られることが多い私。
雨でも楽しめる場所はないかなと歩いた結果、見つけました。

糺の森。
参道を覆う葉を打つ雨音が心地良いし、
雨に濡れた葉は緑が濃くてとても綺麗。
湿った玉砂利を踏む音も感触も、中々良い感じ。
五感で雨を楽しめます。
せっかくの旅行なのに...と気落ちするどころか、
雨が降ってくれて良かった!とさえ思えます。
雨の糺の森好き。

雨の京都も良いよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?