見出し画像

日本縦断歩き旅《富山➡京都編》3日目  『観音島と巨大ガス施設とキャリーカート購入と…』黒崎⇒鵜浦⇒七尾

三日目。
この日は巨大なガス施設が印象的だった。


朝5時起き。
寝起きは相変わらずシャッキとせずにうだうだとした。

食事は無いから、ナッツを食べて水を飲む。
水をすべて飲んでしまった。

出発準備に一時間ぐらいかかる。
身体が重い。
15分ぐらいで出発できる人がいるらしいが、
どうにもパパっと動けない。

着替えて、寝袋たたみ、枕の空気抜く。
バッテリーをスマホから外して、荷物をバッグにしまう。
テントから荷物を出して、
風にあおられながら、テントをたたむ。

靴を履き、紐を結びなおす。

テント、サンダル、マットをバッグにしまい安定させる。
日焼け止めを軽く塗って、帽子をかぶる。

スマホで地図を開いて、えい、と重いバッグをしょい込む。
そして、最初の一歩を歩く。
その時、自分の身体に歩けそうか?聞く。

歩ける。

安心と喜びのような、
決意と覚悟のような気持ちが去来して出発する。

空気を吸い込み、呼吸をする。
景色をみて、まだ美しさを感じているか?
惰性でないか?確かめる。

大丈夫。大丈夫。

公園から海へと下った。

水が切れていた為、自販機を探しながら歩いた。
漁港に自販機見つける。
アイスコーヒーを買い。プロテインチョコバーを食べる。
チョコはどうしてもコーヒーと一緒に食べたい。

自販機の近くに人懐っこい猫がいた。
かわいい。
日本を南下して猫を見かける頻度が多くなった気がする。

神社入口、こういうのを見かけるたびに登ってみたい好奇心をくすぐられる。
疲れるし、時間を食うので上りはしないのだが。

今回の旅は出だしはあまり明るくなかった。
生活を引きづったまま、
生活の心配を残したまま出て、
旅に手放しで集中できる状態ではなかった。

年内に出雲まで行きたい。
しかし、今の暮らしでは無理そうだ。
能登半島を諦めて金沢に行ってしまえば、
その分、出雲に近づける。

引き返すなら今だ。
まだ、能登半島の入り口だ。

ああ、お金と時間が欲しい。

気兼ねなく旅に集中したい。
もっと寄り道したい。

金、金、金。

家賃の更新も思い出し。

やはり年内は厳しそうだ。

新しい職場で馴染んでいく自信がない。
せめて、この旅で何か得ていかないと。

自分でもケチ臭い、元を取ろうとする価値観が嫌だったが、
生活を思うと、そんな気持ちが何度も立ち上がり、
頭の中を支配した。



ひたすら歩く。
曇り続きだったが、雲の切れ目が見える。
気持ちも曇り空だったが、
ここから気持ちも晴れ間に向かったように思う。

道は民家もなく補給もなかったが、車が少なかったのは歩きやすかった。

いよいよ晴れてくる。
日差しが強くなり、日焼け止めを塗りなおし、サングラスをかける。

消防士に挨拶を交わす。

自転車のお兄ちゃんに声をけられた。
自転車がゆっくりと田んぼ道へと消えていく。


秋に旅したので、収穫の風景を見られた。
去年の新潟はほとんど収穫が終わっていた。

再び山道、カーブは車が怖い。
こんなところ人なんか歩いてないから、ドライバーも認知しにくいだろうから。

トンビ?鷹?優雅に飛んでいる。

収穫の終わった田んぼの米をつついているのだろうか?
優雅に見えたが、ミレーの落穂拾いのような、
さもしさを感じた。
帰ったら、俺もスーパーの半額シールを店員が張るまでうろうろ待ち望む生活が待っている。
人の余化物をありがたがる、さもしい生活が。

川の水が海に合流する。
どこまでが川でどこまでが海なのだろう。
あのあたりの水は、どのあたりから塩辛くなるのだろう。

すっかり晴れて日差しが強い。木陰で休む。風がすこし強い。

お寺。立派な建築。
お寺は神社より立派な建築が多い気がする。
この辺の檀家さんがお金を出したのだろう。
住職はどんな救済をしたのだろうか。

大きいほうの便意が限界に近づき、荷物を置いて早歩きで岬のトイレに駆け込む。
トイレで歯磨きをする。水が無くてできていなかったがようやくさっぱりできた。


寄り道だが、岬の近くの観音島による。

島には細い陸地が続いて、そこにはたくさんのゴミが漂着していた。

島には神社があった。
3分ほどで島を一周できる小さな島だった。


便意も歯磨きも済まして、落ち着いて歩く。
古めかしい民家が続く。

玉ねぎを干している民家をよく見かけた。
なじみがないので珍しい。
後で調べたが、干すのは、保存と抗酸化作用のあるケルセチンの分泌促進に効果があるようだ。
干した玉ねぎは食べた事がない。どんなだろう。

民家から海岸沿いへの道は急に人気が無くなる。
最後の民家ではワンちゃんを見かけ可愛かった。


人気のない道ではあまりに人気がないので、
大声で歌ったりして気分が良かった。

オニヤンマ。
キャンプグッツで蜂を寄せ付けない、
オニヤンマのグッツが売れているらしい。

よくよく考えてみたら、オニヤンマをあまり見た記憶がなくて、
改めてみるとデカい!

トンボは昆虫の中でも古代種で人類よりはるか昔から居る。
トンボは羽がもろくて弱いイメージがあったが、
蜂が恐れるほど強いらしい。
蜂を捕食する姿を見てみたい。

ガス施設が見えてきた。

遠くから見てもデカい!

巨大建築を見るのは好きだ。

まじまじと見ていると、
見回りのワゴンが通り過ぎる。
監視カメラもいくつか見かける。

フェンスの出入り口に近づくと、
一台の車がわざわざ近寄ってきて、
フェンスのカギをべたべた触っている。
明らかに何もしてない。

俺を不審者と警戒しているのだろう。

警戒しているのだろうから、
変に心配かけても悪いと思い、
こちらから挨拶をかける。
しかし、返答ない。

警備において挨拶をかける事で犯行を思い改める事から、
挨拶は警備の基本だと思っていた。
だけど挨拶を返さない、ここの警備の教育を疑った。
うろうろして、威嚇して、仕事したふりして、日々お金貰る。
それでいいと思っているのだと、決めつけて、警備姿勢を侮蔑して警備員から離れていった。

国のガス貯蔵施設でもあるらしい。
フェンスが長く続く。
ウクライナの事もある、ガスの貯蔵は大事なのだろう。

人気のない道を抜けると、
海岸沿いをいくつもの釣り人が車を停めていた。

対岸に能登島が見える。
春に能登島は事前に回っていた。
対岸にいた時の記憶を思い出そうとするが、あまり記憶にない。

対岸でこちら側を見た時は、いづれ対岸を歩くから記憶を覚えておこうと思っていたのに。

綺麗に塗られたガス施設。
誰かがきれいにペンキを塗ったのだろう。

少し岸から離れた施設、あそこから船にガスが入れられるのだろうか。

変なカカシシリーズ。
なぜスキー?

お昼に食事したいがお店がとにかくない。
目標にしていたうどん屋は営業時間が短く、間に合わない。
ナッツも全部食べてしまった。

希望がそがれ、すこし休む。
肩の痛みも感じていた。

自転車を乗らずに牽いている男性を見かける。

暑いのに、長袖の厚着をしていて違和感があった。
しかも、広い歩道側を歩かない。
すれ違ったから、俺の来た道を歩く事になる。
来た道にガス施設しかない。
なにしに向かっているのだろう。
荷物もないし旅人とは思えなかった。

デカい施設

ブロッコリーやマフィンのような山。

妙に綺麗な、でかいトンネル。

お腹を空かせながら、ひたすら歩く。
何度もリュックの紐を調整して、肩の痛みを逃がそうとする。
旅は始まったばかりだ、肩がもつが心配になった。
この先、この激痛と共に20日歩く事になる。
不安に思った。

痛みをごまかそうと、
オーディブルでコンビニ人間を聞き始める。


街に近づき、飲食店に入りたかったが、
やっていなかったりしてタイミング合わず、
ドラックストアで買い物して、甘い飲料で空腹をごまかす。


コンビニも立ち寄るが、
「スイカで」と言って「交通系ですね」と返され違和感を覚える。
ああ、スイカは関東の交通系電子マネーで、ここではICOCAが主流なのだと気が付く。


七尾の町に入り。お店が多くなる。
ドン・キホーテまであって立ち寄る。
この先の長い能登半島、キャンプグッズなどを買うのは最後になりそうだった。

肩の痛みに限界を感じ、キャリーバッグに目が行く。
キャンピングキャリーなるものがあり、
買おうか迷う。

キャンプに使い勝手はとてもよさそうで、テーブルになるのが良かった。
しかし、タイヤが小さく可動してしまい、長旅で壊れないか心配だった。

すごく迷ったが、アルミ製のキャリーカートを買うことにした。

早速、荷物を引きづって見る。
若干、タイヤの滑りが悪い。
後に知ったが、片輪にすこしつっかかりがあった。


目的地まではまだ遠く。
日の入りが近い。

今日は諦めて、城跡の公園で野宿させてもらう事にした。






城跡の公園は高台になっていて、景色も良かった。
高台から見える、ココイチの看板にそそられて、
ココイチに向かう。

足の痛みが強く、びっこを引いてココイチに向かったが、
ココイチだと思っていたのは看板で、
その看板にはこの先500mにココイチがあると書かれていた。

足が痛かった為、その看板に意識が遠くなったが、
ここまで来てしまった為に諦めずにココイチに向かう。


向かっている途中でコンビニ人間を聴き終える。

売れ残りのような男女の話に、
自分を投影して身に詰まる内容であった。
登場人物に対して作者がドライなような文体に感じたが、
後半、主人公に贔屓めな描写が増え、男性蔑視のようにも感じられるシーンがあった。それでも、”何者”でなければならない、社会性に溶け込まなければならい、現代の息苦しさをドライに映し出す闇を感じる小説だった。

仕事をバリバリしていた頃、好きだった野菜カツカレーを食べる。
飢餓状態だった為、一口一口が沁みて。温かい店内の光景まで身に沁みた。

再び公園に戻る。すっかり夕暮れだ

野宿に良さげなところを見つける。
しかし、たまたま立ち寄った人が浮浪者に驚くのでは?
と遠慮してしまい。
外で堂々と野宿する事にした。


野宿先がきまり。ホッとして銭湯へ向かった。
コインランドリもあり、洗濯できた。
銭湯は学生が多かった。
サウナは狭いが水風呂に入りたかったから満足できた。
水風呂はぬるかったが、火照った足を冷やしてくれた。

銭湯の体重計にのると、瘦せていた。

新しい仕事でただでさえ痩せていたので、
旅で美味しい物を食べて太りたかった。

仕事で貧血をおこしめまいも多かったので、太る事が課題でもあったが、結果的に痩せてしまった。


銭湯の帰りに、
再びドン・キホーテに立ち寄る。
キャリーカートに合うケースを探す。
しかし結局は、いい感じのケースはなく、
折り畳みのクーラーボックスを取り付ける事にした。


21時にテントに入る。
知人のホラー配信の動画を見た。
ゲストが代役でプレイして、
視聴者も優しくフォローしていて眩しく、
途中で止めてしまった。

他人がへりくだって弱者ぶる度、
それより惨めな生活の自分が浮き立つ。
対岸にある、思いやりを眺めては、自分の愛嬌の無さがいけないのだと、愛される才能の無さをうらやむ。

自分もどこか誰かに比べて、恵まれているのだろうけども。

深夜に星空を見ようと外に出たが曇り空で見えなかった。
ささやかだが、月光はうっすらと味わえた。

明日は、
未来は、
いい日になれ。

そう、ぼんやりごちる。
叶いもしなくても、そう思わずにいられない、わびしい弱さを感じて。


この日歩いた距離 30km

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?