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他人がおすすめする映画を観みてみよう【ウォールフラワー】

他人がおすすめする映画はきっと面白い。
というわけで某月某日、株式会社TEKIKAKUでは、社員がおすすめする映画をほかの社員が鑑賞するというイベントが行われた。

【映画】ウォールフラワー

【おすすめした人】友納

学生時代、深夜の宿題中にテレビをつけたら偶然放送していて、課題も放って思いがけず見てちゃんと感動した。泣かないけど、泣ける。

【観た人】安藤

 昔読んだ小説にこんな一節があった。

十二歳から十五歳頃までが、男にとって、唯一、女のために生きなくて済む時期なのだ。それ以前は母親に支配され、それ以降は「いい女」に支配される。(村上龍『はじめての夜 二度目の夜 最後の夜』)

 気障ったらしい言い回しに思わず笑ってしまうけれど、でもまあ多かれ少なかれそんなもんではある。この言い方に則るならば、『ウォールフラワー』の主人公は、女のために生きなくて済む時期から、いい女に支配される時期への移行期にあたる男の子、ということになる。

 主人公チャーリーは、高校で初めてできた仲間のひとりに「ウォールフラワー」というあだ名をつけられる。ウォールフラワーというのは、パーティ中に相手がいなくて壁にもたれかかっている人の形容なんだそうだけれど、ここにはおそらく「誰も気づかないけど、よく見たら素敵やん」みたいな意味合いも込もっている。ある種の疎外感や欠落を感じていた彼は、まさにウォールフラワーのように高校生活をやり過ごそうとしていたけれど、仲間たちに「よく見たら素敵やん」の眼差しで発見され、自分自身もまた「この子、素敵やん」という人を発見したりして、次第に抱えた欠落を回復していく。

 いわゆる甘苦ボーイミーツガールものの作品でもあって、ヒロインのエマ・ワトソンが登場する瞬間なんて、なんと後光が差している(!)んだけれども、自我のぐらぐらな思春期において、恋愛というのはたしかに救済だよなあと、妙に納得してしまった。少しのことで大けがをしてしまうので、誰とも触れ合わないように孤独を選んできたチャーリー。しかしその甘美な孤独を捨ててでも触れ合いたいと思ったとき、そこには必ず「いい女」がいる。

ところでこの「甘美な孤独」というのは、「秘密基地」に似ている。大体の少年は「秘密基地」を作るけれど、あれは「誰にも侵されたくない世界」の希求だったりする。「秘密基地」は幼少期には誰かと共有できる具体的なものだけれど、何かの拍子に「誰にも侵されたくない」度合が高まってしまうと、どんどん個人的かつ心理的なものになっていき、やがて自分ひとりだけが入ることを許される強固な要塞が出来上がる。

この作品で面白いなあと思ったのは、「いい女」の登場によって崩されそうになった「秘密基地」が、最後に逆襲をしかけてくるところだったりする。具体的な言及はネタバレにもなるので避けるけれども、上級生である仲間が卒業していって、一人になったとき、チャーリーは強固な秘密基地をつくるきっかけを思い出してしまう。果たしてチャーリーは、かつて自分を守った秘密基地と、最後に決闘をすることができたわけだけど、それもこれもチャーリーのなかに「ヒーローズ」が培われていたからだろうなあ、と思ったりした。素敵やん。

※Amazonのアソシエイトとして、TEKIKAKUは適格販売により収入を得ています。

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