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創業期のエンジニア採用のポイントは技術スキルではない?ソフトスキルとカルチャーフィットの大事さ

株式会Ancar ~Advent Calendar 2019~」 22日目です。今回の記事は創業期のスタートアップ経営者やエンジニア採用担当の方向けに、候補者の技術スキルの高さに注目しがちではありますが、それ以外の要素で大事なものがあるよというお話です。

私は今の事業でスタートアップの創業期の開発コンサルや採用コンサルを行っています。これまで多くのシード期のスタートアップのお客様を見てきて、そこで感じたのは、創業期に活躍するエンジニアは専門性の高い技術スキルを有しているかどうかはそこまで重要ではないということ。それよりも重要なのは「ソフトスキル」「カルチャーフィット度合い」ではないでしょうか。

語弊がないように、専門性のスキルを必要とする技術ドリブンのスタートアップもあります(例えばVRなどの新しい技術領域でのスタートアップ)。今回の記事では、大半を占める課題解決型のスタートアップでの創業期エンジニアにフォーカスしています。

創業期のエンジニアに求められるスキルって何?

以前、大企業vsスタートアップで求められるものについて言及した記事を書きました。

大企業では縦割りの専門性を高めていくことがキャリアアップにも繋がりやすい傾向があります。組織に関わる人数が多くなる場合、役割をしっかり分けてエキスパートを揃えた方が、開発プロジェクト運営が効率的であるケースが多いからです。

一方、多くの創業期のスタートアップの現場では少人数体制で開発を行う必要があり、経営メンバーが自己資金を犠牲にして事業を運営している性質上、仮説検証を繰り返すため状況の変化が起こりやすいです。サービスのピボットだけでなく、顧客の意見によって頻繁に開発するべき機能の優先度は変化します。そのような状況においては、特定の縦のスキルに特化しすぎた方よりも柔軟性・フルスタック性が求められることが多いです。もしそこに参画するエンジニアメンバーが特定の分野に特化したスキルを持っていたとしても、様々な仮説検証を繰り返しながら進めていく中で、求められるロールにフィットしない状況が出てきてしまいます。

最悪ケースでは、株を渡した創業期のエンジニアと色々なミスマッチにより破局してしまうパターンです。スタートアップの多くは失敗に終わると言われていますが、実はその多くは、創業期メンバー同士の破局による解散パターンなのです。

そのようなスタートアップの創業期のエンジニア人材に必要な「ソフトスキル」「カルチャーフィット」について、双方以下に説明します。

スタートアップで求められるエンジニア・ソフトスキル

弊社GAOGAOでは創業期エンジニアに求められるスキル(技術スキル・ソフトスキル)を持ったエンジニアのことをスタートアップ・エンジニアという名称で定義して説明しています。

プロダクトマーケットフィット検証の時点では概して博士課程の研究レベルのテクノロジーは必要ありません。おそらく世間の9割以上のスタートアップは、PHP/Rubyなどの習得が比較的容易なフレームワークを使ってMVP (Minimum Viable Product)を実現できます。
もちろんエンジニアのスキルとして一般的なプログラミングスクール卒業直後は難しいですが、現場経験を1, 2年積んだ経験があれば、コーディング実装スキルとしては求められる要件には達しているでしょう。具体的には以下のような技術スキルが求められます。

- フルスタックな知識
フロント・サーバー・インフラ横断した基本的な知識
- 設計・見積もりスキル
ビジネス要件の理解し、DB/API設計やコードをイメージでき、開発工数を算出できるスキル
- 課題解決力
論理的思考力、デバッグ方法の知識など
- チーム開発の進め方の理解
アジャイルなどの開発手法、githubなどのツールなど

上記のような技術スキル以外に実はスタートアップ・エンジニアに求められるものがソフトスキルです。以下の3つの要素を重視して柔軟に物事を考え実行できるエンジニアはスタートアップの現場で成果を出しています。

- Borderless
誰とでもフラットなコミュニケーションを取れること。言語・会話の壁がないオープンでグローバルなマインド。
- Ownership
リアルなスタートアップの現場で経営者と並走・自走しながらオーナーシップを持ち、自身で物事を考え提案ベースで開発を進められる能力。
- Practical
技術ドリブンではなく、課題解決のために俯瞰して物事を考え、技術を使う発想を持つ。より実践的で柔軟な0→1開発の視点。

創業期エンジニアが持つべきスキルというのは、基礎的な実装スキルを持ちつつ、上で挙げているスタートアップエンジニアとしてのソフトスキルを持っていることが重要です。

ソフトスキルをどのように高めるか

ソフトスキルを意図的に高めるためには、いろいろな工夫が必要そうです。その辺については筆者も本記事とは別で考察したいと考えています。

ここでは一例として、上記で記載したソフトスキルの一部を高めるためにオススメの方法を紹介します。

それは、随時お願いされた開発依頼内容を一度疑うような働き方をすることです。受け身になりすぎず、自身で一度俯瞰的に考え「こちらの方がもしかすると良いのでは?」という提案を模索し、もしあればしっかり伝えることを続けてみると良いと思います。提案の内容はUX/UI/ビジネス設計/実装方針に関するものなどなんでも良いです。

次第に、自律的に考えて提案ベースで働けるエンジニア人材になり、開発タスク依頼するための内容を細かく指示出しする工数も次第に減らすことができてきます。また、そのような働き方を行うことでスタートアップ経営陣にとっては、信頼できるエンジニアとして歓迎されることでしょう。

カルチャーフィット度数

創業エンジニアに必要なスキル面は上で解説しました。あとは、あなたが創業したスタートアップとカルチャーがマッチするかを確かめることが重要です。

筆者はカルチャーフィットとは以下の項目に分解されると考えています。

カルチャーフィット度数 = 企業のビジョンや取り組みへの共感度 x チームメンバーとの人間的な相性度

企業のビジョンや取り組みこそがその企業のカルチャーと言えるでしょう。そして、その企業に集まるメンバーが企業のカルチャーを作り出しています。そのため、メンバーとの人間的な相性度もカルチャーフィットの大きな要因です。

カルチャーフィットの大切さ

スタートアップのファウンダーはなんらかのビジョンを持って創業をしているはずです。事業を進めていくと、なんらかの問題にぶつかるでしょう。顧客の意見を聞いて柔軟にプロダクトは方向性を軌道修正しながら開発していかなくてはなりません。

同じビジョンが共有されていない場合、そのような状況でエンジニアが開発するべきことが変わった際に、「なんでこんなことやっているんだろう」と思い始めて反発することも起き得ると思います。一番のスタートアップの破滅パターンは創業メンバー間の相性の問題だったりするのです。

企業のビジョンや取り組みへの共感度チームメンバーとの人間的な相性度を数値化するのは難しいですが、カルチャーフィットした人材、つまり、同じビジョンへの方向を向いているメンバーであれば、繰り返し行われる意思決定の変更に追従することができます。大きなマイナス要因を生み出すことが起きにくいです。また、たとえ初めはスキルがなかったとしても、すぐに成長していくと思います。


採用時にどうやってカルチャーフィットを確認するか

外部から創業エンジニアを採用するのに、一度面談したくらい時間の共有で、いきなりフルタイムでオファーを出すのは少々危険です。ビジョンを共有・浸透のためにはある程度の時間の共有が必要になります。

また、上記示したカルチャーフィット度合いの式では、チームメンバーとの相性も重要になります。したがって、社長面談からフルタイム採用をいきなり決めるのではなく、以下のような確認方法は必要です。

カルチャーフィットを確認する最低限必要なこと
1. 経営・リードメンバーがビジョンや取り組みを説明し、共感している度合いを確認する
2. チームメンバーも交えて会って話してそのメンバーたちとの相性が合うかを確認する

上記を行う際には自然体で接するのが良いので、会議室だけではなくランチや飲み会などで実施しても構いません。
もしインターンは一つの良い例で、空間共有の時間を密度高く多く費やせるならよりカルチャーの浸透度を確認できると思います。(弊社GAOGAOでは、同じハウスになるべく住んでもらうという、少し極端なカルチャーフィットの確認方法をとっています)

弊社も効果的なカルチャーフィットの確認方法を試行錯誤しています。何かオススメの確認方法がありましたらぜひ教えてください。

まとめ

エンジニア採用では技術スキルの評価に目が行きがちでその他が評価されていないのではないか、と思い今回の記事を書きました。

弊社のスタートアップ・スタジオのお客様2社が、以前技術スキルが不安ではあるが、カルチャーフィットしている人材を採用した経緯があります。半年も経たずに、お二人とも現在非常にモチベーションの高いエンジニアとして現場で活躍しています。

もちろん、技術スキルも高くカルチャーもマッチするかたを見つけるのがベストですが、現状のエンジニア需要の高さを考えるとそのような方を見つけるのは難しいです。

創業期のスタートアップの経営者・採用担当者の方は「技術スキルよりも、ソフトスキル&カルチャーフィット度合い」を確認することを意識してみてはいかがでしょう?

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