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もう止められない開発エンジニアチームの英語・グローバル化へのシフト

GAOGAOアドベントカレンダー「ことしもGAOGAOまつりです Advent Calendar 2021」の23日目の記事です。

今回は開発チームのグローバル化について書きます。

背景

以下ツイートにあるように、今エンジニア不足は深刻化しています。弊社が関わっている多くの企業様では、プロダクト開発をもっと早く進めたいと考えていますが、良いエンジニアが見つからない状況が続いています。

企業はエンジニアを獲得するために、媒体やエージェントへの採用コストをより一層かけたり、ジュニアを招き入れて教育するアプローチを取るなどエンジニアを中長期的に増やしていく策は色々あります。今回の記事は一風変わったアプローチに思える「開発組織を英語環境にしてグローバル化」することで海外のエンジニアを受け入れられる体制を整え、日本国内のみならず世界中のエンジニアを巻き込んでいけるチームに変換してスケールさせていくことができるのではないか、という話です。

例えば、今年はマネフォワードの開発チームのグローバル化に取り組んでいる記事が話題になりました。

他にもメルカリやLINE、Autifyなど多くのTech系スタートアップ企業がエンジニアのグローバル化に取り組んで事例を発信しています。

特にTech業界はリモートでチームを組むのが当たり前になっているので、他業界よりも早くグローバルに移行していく流れが増えていくと思います。

グローバルチームを作りやすい時代になってきている

コロナ禍で国の行き来がなかなか自由にできない現在、グローバルにチームを作るのは難しいと思われるかもしれませんが、実際は逆と考えられます。オンラインでほとんどのエンジニアの仕事ができるとわかってきた昨今、国を超えた開発チーム作りがこれまでよりも容易になってきています。

グローバルなリモートエンジニア組織の成功例としてgitlabが挙げられます。gitlabは今年NASDAQに上場したリモートワークマニフェストを公開しています(参考記事: https://www.publickey1.jp/blog/21/gitlabnasdaq12000.html )

そのうちの一つ目が「Hiring and working from all over the world instead of from a central location」です。開発の中心拠点を作らず全世界からオンラインでグローバルにフラットな多国籍チームを形成することを実践しています。

実際弊社のプロジェクトもコロナ以降プロジェクトの開発チームキックオフから完了まで東京・バンコク・シンガポールと多国籍拠点のチームで遂行できています。もちろんオフラインで顔を合わせた方が進むフェーズもありますが(特に要件定義フェーズなど)、ある程度要件が定まってからはオンラインのツールを駆使することで開発チーム内は生産性高く進められています。したがって、今は居住地という位置状況に縛られず世界中の候補者にリーチできるようになり、ビザも不要で、多国籍チームを作れる時代になってきています。

オフショア型と開発チームのグローバル組織型の違い

日本でエンジニアが見つからないので海外のエンジニアを起用する、という話で思いつくのはいわゆるベトナムやフィリピンなどのエンジニアへ発注するオフショア開発があります。ただ、オフショアとグローバル化の考え方は大きく異なります。

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オフショア型
海外現地の外国人エンジニアが母国語でやりとりできるチームに発注する形式です。基本は要件を整理したものを、日本のチームと明確に分担し、発注する活用方法がメインとなります。要件を正しく伝えて管理をするブリッジの存在が非常に重要で、開発チームをスケールさせるためには合わせてブリッジ・PM機能も増やしていく必要があります。

グローバル組織型
国内・国外全ての開発メンバーが英語という共通言語で開発を進める組織形式です。英語ができない場合生産性が下がるケースがありますが、うまく機能すれば仕事の分担も柔軟に同じ開発チームとして拡大させることができます。オフショア型と比べて要件を作り込んで分担して発注するような形ではなく、同じチームの一員として機能させることができます。日本人でなくてもグローバルで良いエンジニアをフラットに追加できるため、ブリッジ担当者などは不要で開発チームをスケールさせることができます。

チーム内コミュニケーションを英語化して問題なく開発は進むのか?

弊社GAOGAOでは今年始まったいくつかの開発プロジェクトで英語を公用語にして進めています。以下のようにステージを分けて、うち1つの開発チームはステージ3、もう一つはステージ4の段階まで英語化を進めています。

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ステージ1-2に関しては、導入は比較的簡単です。理由は日本人エンジニアはスピーキングが苦手な方は多いですが、テキストで英語をやりとりするのは比較的得意な方が多いからです。ステージ1だけでも取り組んでおくと、将来外国人エンジニアが入った時にプロジェクトの経緯などを追えるようになります。このステージでは仕様策定や開発設計など小難しい部分は日本語で会話をしてしまえば良いため、英語が苦手な方が多くてもそこまで業務上の支障はない認識です。

一方、ステージ3の段階ではメンバーの英語力次第で大きく生産性が変わってくる段階です。ミーティングも英語で行われるため、弊社のメンバーも一番このフェーズで英語を苦労するケースが多いです。生産性が下がりそうでもどかしい状況かもしれませんが、一番英語力が伸びるのを実感できると思います。英語が元々苦手だった弊社メンバーが参画したケースでは、会話やテキストなどで四苦八苦してコミュニケーション効率としては日本語でやりとりする場合と比べてざっくり2倍の時間がかかったとのことです。

ステージ4に関してはビジネスサイド含めて英語でやりとりする最終段階です。こちらはビジネス面も含めたディスカッションが必要になるため、より高度な英語力が必要になります。

ステージ3まで達成できれば開発チームにグローバル人材を迎えてスケールさせるという目的が達成できるインフラが整いますので、チームのグローバル化の目標として、まずはステージ3にすると良いでしょう。

開発チームのグローバル化は段階的に行えばできる

私もよくエンジニアの方々と面談をしている中で、多くの日本人エンジニアの方が英語環境への参画を求めています。ただし実際、クライアントまで含めて英語で複雑なディスカッションをできるステージ4レベルの方は少ないのが現状です。したがって、このように段階を分けて、ステージ1から着実にステップアップできる環境を用意していくことで無理のないグローバルトランスフォームが可能にあると考えています。

まずはステージ1-2を実現させ、ステージ3に進む際にポイントとなるのは、1人でも良いので日本語のできない外国人エンジニアを入れることです。1人いるだけで必要性に迫られますので強制的にステージ3状態になります。

弊社のプロジェクトでは日本人のみで実施できているチームもあります。ただそのチームのメンバーは皆英語がかなりできるメンバーのみが集まっているという状況です。そうでないメンバーの方がいるチームで日本人のみで実施するのはなかなか恥ずかしがってしまったり、モチベーションが続かなかったりして難しいでしょう。

外国人エンジニアの獲得に関しては、LinkedInなどを活用すると良いでしょう。日本語ができなくても、日本に興味のある方が理想です。

グローバル開発チームになって見えたメリットとデメリット

弊社には今年の7月から開発チーム内だけでなくクライアントとのやり取りの多くも英語で行っているシンガポールのプロジェクトがあります(ステージ4)。そのプロジェクトは、日本人PM x 1名 + 日本人エンジニア 3名 + 外国人エンジニア 1名と言った体制で進めました。

その参画メンバーと振り返りを行い、日本人中心メンバーで英語プロジェクトとして遂行した際のメリット・デメリットを洗い出ししました。

メリット

・採用対象エンジニアの母数が国外に広がるため圧倒的に増える
・プロダクトをグローバル展開する際に、日本人だけではない観点で多様なカルチャーでプロダクトを発展できる
・開発メンバーの英語力が向上し英語の情報資源にアクセスできることで、情報検索速度と精度が上がり、開発業務の生産性も向上する
・グローバルマインド・英語キャリアを考えている日本人エンジニアを惹きつけられる

デメリット

・英語が不自由な方はコミュニケーションコストが余計にかかってしまう(体感2倍くらい)
・細かいニュアンスを伝えられない場合に、開発の手戻りなどが発生する可能性が高まる
・英語が苦手なエンジニアが参画するのをためらってしまう可能性がある

上記の通り、グローバル組織化はメリットだけではありません、弊社プロジェクトではコミュニケーションコストが多くかかってしまいました。プロジェクトが破綻するようなことはなかったですが、PM担当者の負荷がかなり高く、普段の日本語による業務の倍程度の見積りが必要となりました。ただそのPMメンバーの英語力は明らかに向上しています。次の英語プロジェクトではそこまでコストがかからないと予想されます。

これから英語化を取り組まれる方は、上記点を踏まえた上で判断をしてみると良いでしょう。

今後英語化の流れは避けられない

今後日本のエンジニアを取り巻く環境で英語を使う流れは、今後加速していくと考えられます。

英語化が加速する理由1: 企業が海外のコスト競争力の高い優秀層を獲得する動きにでるため

本記事で説明したように、組織がグローバルになることで圧倒的に採用ターゲット層が広がります。日本においてエンジニア枯渇状態である現状、多くの企業が動き始めるのも時間の問題でしょう。このことに関して言及している記事がありましたので共有します。


英語化が加速する理由2: 英語を使う環境の方が処遇が良くなってきているため

日本のエンジニア給与相場は上がってきていますが、欧米諸国と比べるとかなり差は開いてきているように思えます。実際に、日本の会社よりも海外のGAFAのような会社に入った方が2倍近くに給与が上がる言う事例もあります。GAFAは極端な例はありますが、英語ができることで間違いなくエンジニアにとっての多様なキャリアの道が開けるということがより認知されていくと思います。参考までに米国の新卒エンジニアの給与相場は700-900万円のようです(参考: https://news.yahoo.co.jp/articles/c0997b487a1a2ab3b5f037c50444b1e875ffef3d )。ニューヨークでは新卒で年収1,000万円を払うという話も聞きます。
エンジニア側にも英語を使うグローバル環境に身を置くことはキャリア上明らかなメリットを享受できるようになっていきますので、英語環境にまずは身を置くエンジニアは今後増えるのではないでしょうか。

英語の開発組織が増えていったその先には

オンライン vs オフラインの開発チームには一長一短があります。今後、おそらくオンラインを推進する企業と、オフィスを構えて従来通りオフラインを推奨する企業と二極化していくと言われています。

オフラインの軸を無くしオンラインでのグローバルチームを作っていく方針を決めた企業で働く上では、場所に一切縛られなくなります。実際に弊社GAOGAOの代表である私は2年近くメンバーと対面で会うことなく事業を伸ばすことができました。オンラインに振り切る会社で働く際には、時差は考慮する必要ありそうですが、好きな国・都市で働き、必要に応じてチームビルディングを行うように出張が増えるのではないでしょうか。

今後、開発エンジニアは英語がスタンダードという世界になり、日本のスタートアップや大企業もこれまでよりもフラットに外国人を抱えるチームが当たり前になっていくでしょう。多様なカルチャーを受け入れる文化を会社の中の開発チームから育み、次第に開発チーム以外のメンバーへ全社的に波及していくようになっていくでしょう。

まとめ

日本のエンジニア環境が英語化・グローバル化していくことについて、弊社事例を交えてご紹介しました。各企業はこのタイミングでグローバルなエンジニアを獲得できるインフラを整えていくことが、今後の採用を考えて非常に重要な要素となります。

グローバル組織構築の最初は苦労する点が多いと思いますが、ある程度の段階を超えたタイミングでグローバル化して良かったと思えるようになると思います。少し先を見据えて、試しにあなたの開発チームを英語化してみてはいかがでしょう?

おまけ 今後のグローバルキャリアを考える

以前キャリアイベントにて登壇した際の資料です。

今後のGAOGAO

今年弊社はシンガポール人など外国人のエンジニアの雇用も行い、英語環境で開発を進める土台が出来上がってきました。

これから弊社のグローバル化において取り組みたいことが2つあります。一つは、グローバル外国人人材をより多く獲得すること。もう一つは、グローバルに活躍できるエンジニアを増やすために評価基準に英語などのスキル基準を組み込むことです。また状況に関しては、随時発信を行っていきます。

また、弊社ではグローバルな環境で活躍したいエンジニアの方とグローバルにチームを作りたい企業様も募集しております。是非興味のある方はお気軽に @tejitak もしくは @gaogaoasia までご連絡ください!

English Nightなどエンジニア向けの英語オンリーイベントも引き続き開催していく予定です。是非お気軽にご参加ください!

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