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あなたはホームレスを抱けますか?

今回は変化球記事で出会い系アプリ『Tinder』で出会って後生忘れないであろう女性を紹介します。

2020年3月22日(日) 名古屋 鶴○駅付近

今、PM12:30

春の陽気の中、街の雑踏を全速力で駆け抜けて行く。

200mほど走り息を切らせ肩で呼吸しながら地下鉄のホームに立つと、間も無く電車が来たので乗り込んだ。
座席にドンと腰を落としてしばらくすると、ようやく落ち着き始めた。

その時思った、おかゆが食べたい。

しかしまだ呼吸は深く、車内でこの文を打ってる今も指先が少し震えている。

■Tinderにて

Tinderを始めて2ヶ月、3人と会った。
コミュニケーション下手なりに、日々試行錯誤している。共通の好きなお笑いコンビがいる人とはお笑いの事でメッセージのやり取りをしているし、
音楽然り趣味の話ができるのも良かったと感じる。

Tinderはやり取りが面倒と思う時も多々あるが、期待感もあるので満足している。

以前はナンネットを駆使していたが、慣れは麻薬だ。
どうもスレッドに上がる企画もマンネリと感じてしまう段階に来た。しかも名古屋(東海)はスレッド数も少なく、大阪(関西)からしたら拍子抜けだ。大阪・神戸・京都は、公共交通網が発達しており行き来がしやすく土地も狭い範囲に繁華街が多数あるが、東海圏(愛知・岐阜・三重・静岡)は土地がだだっ広い上に大阪ほど街が密集&発展していない。加えて、大阪ほどアドベンチャーな"性"に活気がないと感じる。

ただでさえパイの少ない所に、車が無い僕はどうしようもない。

(それでも会えば、その人となりがあるので楽しい事も有るとは思うが。)

一周回って、一対一や普通のことをしたいと思ったのでTinderになったという訳である。

■ 前日 M○ri, Age49

3月21日(土)の夜はTinderを触り続け数人の女性とやり取りをしていた。
何とか明日は外に出て、この閉塞感を打ち破りたかった。

3人に絞り込み、ダブルブッキングをもいとわないストロングくずスタイルでやり取りを続けた。

結果1人と翌日22日夜に飲みに行くことになった。
しかし、お酒が飲みたい訳ではないし、昼間が空いているなーと物足りなさを抱えた。

すると、一件LIKEが来た。
『M○ri, 49歳』タバコ吸う・猫飼ってる・今すぐ会える時に連絡くれ、暇だったらすぐに会える・肉食男子大好き・車がないので家に来て欲しい・怖がりと度胸なしは来なくていい

みたいな紹介文で、顔写真とゲームの写真が載っていた。

金髪のザ・おばさんでタトゥーが見える。
やつれ気味の顔が薄暗い部屋に映っている。
僕はゲーム全く知らないのでよく分からなかったが、ちょっとグロそうなやつのパケ写が何枚か載っていた。

迷ったが、LIKEがくればLIKEで返す。
その日のストロングスタイルの意気込みが勝った。

「初めまして。」

「初めまして。」

返ってきた。簡単なラリーを2、3回し、
「明日空いてます。」と送った。

「いつでもいいです。」と即決で翌日11時に決まった。
間も無くメッセージで自宅住所とマンションの部屋番号が送られて来た。
「分かりやすいように、玄関ドアにバイオハザードの貼りものをしています。」



「なんか独特ですね。」
「かもしれないです。」と返事が来た。

予定は決まった。
会うと決めた理由は3点。
①年齢
つい先日三重県に遠征した際に会った淑女は54歳のおばちゃん。(ド爆乳だったので)大丈夫、むしろ超興奮した。
②容姿
関係ない。やつれ具合がなかなかやばいなと思ったが、大丈夫。
③話題性
一か八か。いい方に転ぶ場合もある。ネタになればOK。

ただ、不安は拭えず胸騒ぎが治まらない。
「明日は良いか悪いか、勝負の日になるな...」

■当日

朝目覚めても、どよんとした空気に支配されている。
「あと3時間後には家にいってるんかー。」と。

支度して送られて来た住所に向かう。
名古屋市内でも繁華街に近いがあまり治安が良くない場所と聞いた事がある。
最寄駅に着き途中コンビニで一服し、
「近くに来たのでボチボチ向かいます。」と送信。
「分かりました。」

コンクリ打ちっぱなしのマンションはそこそこボロく場末感がある。
エレベータで3階に上がり扉が開くと、目の前にはA4用紙にマジックで殴り書きの『Biohasard』とだけ書かれて紙が玄関ドアに貼ってある部屋が。

「これか。」
「・・・・・・・・・・・・・手書きなんや笑」

バイオハザードのポスターとかシールではなく、
手書きのイラストとかでもなくたたただアルファベットの羅列!
太陽光が入らない薄暗いエレベータホールで、一人静かに笑った。

インターホンには「壊れています」の張り紙が。


ドアを3回ノック。★ Biohasard, play start.★

ガチャ。
ドアが開いたら猫ちゃんがお出迎え。
続いて、
ヨレヨレ部屋着の『ガリガリ白人おばさん』が出てきた。


〜ただならぬ!〜

まず!僕は歯を確認。
「よし、歯はあるな。」第一関門クリア。
歯でまずはGo・Outを判断する。歯がない奴は流石にヤバいと思っている。ちなみに、私の父親は前歯が無い。自分ルールで判断すると、キ■ガイに分類される。親だけど仕方がない。

僕は「お邪魔します!」と元気よく挨拶し、靴を揃えて入室。

「この人とSEXするのか...」
僕の情報収集が、はじまる。プラスの材料を見つけないと。。。

6畳一間、カーテンが閉じられベランダには出れず、汚いベッド、服が天井から大量に吊るされており、床には物が溢れ、大量のタバコの吸殻がゴミ箱に捨てられている。掃除されていないドープな部屋だ。
大量の猫の置物、額縁に入れられた軍人の写真で壁が埋め尽くされ、洋書、アンティーク、モデルガンのマシンガンが3丁、趣味のものに溢れた中に、ガスマスクを被ったマネキンが強烈に存在感を放つ。猫ちゃんは3匹。
良く言えばアジアンテイスト、素直な感想は東南アジアのスラム街の一室。みたいな。

「良い部屋ですね!」
半分本当で半分おののいた。

小さく汚いベッドに、ガリガリの白人おばさん(M○ri, Age49)が入り、僕は座る場所が無かったのでベッドの端に腰掛けた。

M○riさんがベッドに上がってきた猫に話しかける。
「どしたん!何やの!よー分からん子やな!」

関西弁だ。

猫をフックにして当人の事を聞いてみた。

★アメリカ,ニュージャージー州で育つ。アメリカで日本語を勉強し、更なるスキルアップのため17年前に留学で来日。
★まず京都に住み、大阪を経て、名古屋へ。
関西弁の謎が解けた。
★留学中、アメリカの両親が引越ししたため帰る場所がなくなりそのまま日本に滞在。
★名古屋へ来た理由は、当時の日本人彼氏の仕事の都合でついて来たとのこと。 
★獣医を目指した
★現在仕事はしていない、雇ってくれる所無い

生活保護か。無職でこの感じの部屋に住んでいて、身なりがやばくてガリガリ。
もう、「あれ」やん。笑

このくらいのタイミングで、ベッドのダニか猫の影響で手が痒くなってきた。猫の毛も掃除されてないので大量の毛が服に着いてしまう。爪が手入れされてない猫が僕のズボンを引っ掻く。アカン、やめろ、ズボン破れる。。
嫌になってきた。

M○riはゲーム好きで、初期型極厚PS3を起動させた後
やってるゲームとキャラクターを丁寧に説明してくれた。

世間一般的にも有名なキャラクターを紹介してくれたが「知らない。」と答えると、
M○ri「知らんの!!??」とガラガラの大声で驚かれたので、
「怖えーよ!!!」心で叫んだ。

ゲームを知らない僕は何も分からず、詫びた。

続いて、「3...年...B...組...金...八...先生、知ってる???」と聞いてきた。

「知ってる!」

「あれ、めっちゃオモロイよな!!!好き!!」と言ってきて、おもむろにベッド横のPCを触りYouTubeを漁り始めた。

「知ってる話題で良かったー。」内心思ったが、
出てきた映像は似て非なるもの。
劇団ひとりと中川家礼二、有田鉄平が出てきた。
何かのTV番組のオマージュコント『北八先生』だった。

「それ全然違ーう!!!」そういう意味の「オモロイ」やったのね。笑

北八先生のコント集を見て、M○riはダミ声でゲラゲラ笑っている。
「怖えーよ!!!」

そこでまた衝撃の出来事が起こる。
元は白いPCが色はま茶っ茶でえらく型が古く、
キーボードは欠けていて、OS はXP。
ボロボロだったので、
「PC使い込んでるなー!」と聞いた。

「これ、拾ったやつ。」
「え?」
「近くに買い物行った後に〜、ゴミ捨て場に〜、あったから〜、拾ってきた!」
(ゴミ箱を開ける仕草)

お前...

続けて、「これも!これも!これも!」
指差したのは、PCスピーカー・冷蔵庫・置き時計・ステレオ。
全部、まっ茶っ茶。リアルゴミ+油汚れとタバコのヤニ色のミックス色。

「へぇー!ゴミでも使えるんやなー!!!」
自分でも相当見当違いなリアクションを返した。笑
流石に、本当の気持ちは言えない。

言い訳をしてきた。
「よし!ゴミを拾いに行くぞっていうマインドじゃなくて、
出掛けた時に隣のマンションのゴミ箱開けるとー、あった!みたいな!」 




M○riちゃんやっちゃってました。
ほんま、かなんこっちゃで。。。

呆気に取られました。

ほんで、うそつけっ!
冷蔵庫も、ステレオも、大きいねん。
絶対、大型ゴミの日知ってて行ったやろ!笑
んで、ゴミ箱開けとるやないか!


ここで完全に、僕の度胸スイッチはOFFに。

すると北八先生を流しながら、M○riが話を戻して喋り出した。
名古屋に来るきっかけとなった当時の彼氏が自殺したらしい。
「何やねんそれ...(泣)」既にお腹いっぱいだ。

「彼が多くの問題を抱えていて...」
「多くの問題??」

自殺の詳細は分からなかったが、問題とは要はDVらしい。
もうDVくらいで驚かない。

が、M○riは裏切らない。
「普通は〜暴力受けたら〜、女はしゅんってなる。
けど、私は違う!笑」
「アドレナリン(ネイティブの発音で)がどんどん湧いてきてーー!思いっきりやり返すのーー!!!」

アドレナリンが湧く、の時の胸を両手でかきあげるM○riの仕草と、やり返すの、の時の殴る仕草に、
本格的に怖くなってきた。

しかもダミ声の大声で、めっちゃハツラツと喋って、目はギンギンのギャンぎまり、気づかなかったが眉毛全剃り。

そんなガリガリの女を目の前にすると、
笑えない「怖えーよ...」

DVの仕返しで男を返り討ちにし、鼻から大量出血させ警察沙汰にさせた話を意気揚々と話す。
ここでアメリカンジョークも飛び出し絶好調のMariちゃん!
M○ri ↓
「(彼を)ボコボコに、して、鼻から、血が、ブワーっと、出た!」
「彼が、何するねん!、と、言った。」
「そしたら警察が来て、私たちを見て、彼に「これは誰の血?」と聞いた。」
「その問いに対して彼は、「俺の血じゃ!!」と言った!。」爆笑

It's an american joke!


極めつけは、部屋に飾ってある置物のスカルを、これは本物である!と申し出てきた。

「脱出せねば。笑」

僕自身これまで度胸がついたと過信したが、所詮その程度だった。
力の無さを痛感したが、続行不可能と思ってしまったら、もうしょうがない。
ここで逃げ出すのかと一抹の後悔もあるが、
自分の未熟さを認めるしかない。

脱出は2回目だ。
以前京都駅でニューハーフの輪姦&尿パーティーに迷い込んでしまい緊急脱出して以来。

アプリの「フェイク着信」を起動させ、
3分後にタイマー設定。携帯をそっとベッドに置いた。

どうかこの3分は、良いことも悪いことも起こらずこのままの状態で過ぎますように。。

北八先生を見ているのに、携帯触ってM○riの怒りに触れてもいけないので大事をとって苦渋の3分を設けた。

3分後、「友達」から着信があり、
「ちょっと外で電話出てくるわ〜。」と言い玄関に向かった。

M○riは了承してくれた。最初に靴を揃えてたのでスムーズに履けた。しかも、何かあるかもしれないと思って脱ぎ履きし易いスニーカーだったので良かった。笑

玄関を出て、20秒ほど話すフリをした後、音を立てないようにひっそりと非常階段を下りる。
マンションの敷地を出た所で、猛ダッシュで駅に向かった。追ってはこなかった。

このやり方は本当に未熟だ。ケンカするつもりでM○riとやり合っていたら、もうひと盛り上がりあったに違いないが、やはり"度胸"が足りなかった。

ビビり過ぎたとも思うが。。
でもあれは"おクスリ"をやっていた。
文章では表現しづらいが、目と感情が急にピークを迎える時がありその雰囲気が分かった。
すると余計に、ある程度会話のラリーが普通に続くと逆に怖い。笑

でも最後に。
家を飛び出す時、
僕が電話に出るだろうと思ってM○riはPCから流れる北八先生のボリュームを下げてくれた。
悪い人間では無いのだろう。

END.
あなたは、そんなホームレス(みたいな女)を抱けますか?

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