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【猫考】猫の吐きもどし対策について⑤奴隷との関係性1

 猫は人間を奴隷として選んだ。通説として、猫は鼠被害への対策として人間が飼うようになったということになっているが、間違いである。選んだのはあくまで猫の方である。

 一緒に居ると、どうも鼠を追い回したりするので、便利だと思って人間はこれを飼うことにしたのだが、本当は、飼われているのは人間である。それに気づかないまま、数千年(一説によると数万年)に及ぶ、奴隷契約を自ら結んだのである、人間は。

 猫は鼠退治などはしない。気が向けば、この自分よりも小さく、弱い小動物を嬲ってたのしみ、瀕死の姿をみて北叟笑み、そのまま放置したり、ころしたりするのである。

 猫より残虐な動物はいない。人もまた残酷な生き物だといわれているが、人の残酷性には限界があり、理由や目的がちゃんとある。通り魔的な、無目的殺人もするといわれている人間であるが、調べれば別のところに、理由や目的はある。わかり難いだけである。猫は、ころすことにおいて、一切の目的も理由も持たない。純粋に悪である。

 古今より、作家は悪や悪人というものを描こうとして失敗してきた。ドストエフスキーの『悪霊』とかもそうである。コーエン兄弟の『ノー・カントリー』などもそうである。しかしこれらが失敗しているのは、人間は結局南極悪そのものではないからである。純粋な悪人というものはいなかったし、これからもいないと思われる。

 それでも人が悪に惹かれ、これをものしたいと思うのは、身近にほんものの悪がいるからである。もちろん、猫のことである。
 

本稿つづく


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