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【連載小説】夏の恋☀️1991 シークレット・オブ・マイ・ライフ㉓

 七月。深夜。

 そのひオケカラ(カラオケ)に行ったのか、どうか。おぼえてない。

 土曜日か日曜日。深夜ぷらす2ぐらい。2時ぐらいまで遊んで(←ナニをしてたのかぜんぜん覚えてない)シータク(タクシー)でかえろうと桃子が言ったけど、ぜんぜんつかまらなかった。

 というか車も走ってないし。栄町らへんで、あるいていると、中年の愚連隊みたいなやつらにちょっとからまれて、桃子が、べー、と舌を出すと。

「ひょーい、舐めてくれや~」

「おとなのちん哺(ぽ)見るかねえちゃん」

「やりてえ~」

 などと言われた。ひやひやしたが、愚連隊はやがて、「しんけんやりたくなった」「あっち5千円ど」「え、しんけんな?」「うんうん、生もいける」「え、むしろこわさよ」「たし蟹」「ま、いいや。行こう行こう」「うん、いこう」「ひょー。わーい」

 といって向こうの方に行った。

 その逆に、首里の方に、おれたちは歩いた。

 桃子はあるくのが大きらい。おれは好き。ここは、合わなかった。

 坂下の交差点で、

「もう暑い」

 と言って桃子はガードレールに座り、煙草に火をつけた。

「吸う?」と、おれももらったけど。べつにうまいとは思わぬ。けむい。

 濃い夜のいろ。湿気。小暑ってかんじ。まだまだ、これから暑くなるわけ。

 たしかにこんな季節にあるくのは、ばかばかしい。

 煙。ニコチン。たーる。何でか知らんけど、風がぜんぜん吹かない夜。外灯に照らされて、煙も動かない。ちょっと神秘的。

「タクシーきたらとめてよ」

 とおこった声で桃子。

 来ない。スクーターが一台、とおっただけ。

 遠ざかる音。音ももうしない。

 眠れ、那覇。君の那覇(なは)

「桃子あるこう。もうおれ眠い」

「ぜったいやだ」

 手を引っ張って、立たせた。「うううー」桃子。

 あるきはじめる。手をひいて。

 おそい。イライラする。

「あるけや」

「うううー」

 首里まではずっと坂。しかも急坂。15分ぐらいかかって、ようやく松川。都ホテルが見えてくる。

 あるく。あるく。ひょろひょろした女を引いて、あるく。

 はあ、はあ。

 めっちゃ坂。死にたくなる。

 首里は、丘。というか、山。なんであんなとこに町をつくったのか。アホとちがうか。

 ああああ。

 めっちゃ坂を左にまがりながらのぼる。と、まあまあの坂になる。

 ここらへんになると、カラダが慣れてきたのか、歩もはやまった感じ。

 桃子も背をのばして、ふつうにあるくようになる。

 グランド・キャッスル(ホテル)。窓に明かりがついてる部屋もある。

「けっこう、この時間、ヤってるかたもいるんじゃね。へへへ」とおれ。

 桃子、完全無視。下を向いて、あるいている。無表情。

 桃子の手はつめたい。桃子に初めて触ったな、と思う。

本稿つづく


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