アフターコロナで、私がしたい”妄想デート”
※注意:初の試み、物語スタイルになっております。
4月29日に続きを書き加えました。
すぐに続きを読みたい人は下記目次の「続き」からビューンッッ!
私は怒っているのだ。
待ち合わせ時間を、10分も過ぎたというのに、彼は一向に姿を現さない。外出自粛が解けて、すぐに会いたいと思い連絡したのは、3月に知り合った3つ年上の彼であった。もちろんまだ体の関係もないし、3回デートで飲みに行ったぐらいだ。3回もデートしたのに、まだ体の関係はない。なかなか上手くいって方だろう、このぐらいの年になると、付き合うのと、男性と夜を共にする順番を間違えて、ダラダラ悩み続ける女友達は多いもんだ。
今のところ、私と彼は、上手くいっている。
でも私だってもうそろそろ良い年だ。もう彼氏が欲しい。そうなると、今日の久々デートで、クロージングして、見事カップル成立、コロナも終息して全てハッピー!状態にならなければ、と…。
そんな独身女の綿密な作戦を、心の中で唱えていると、
「ごめんー!遅れた!!」
と言いながら、彼は走ってきた。
『全然大丈夫だょー』
と応える。なるべく器の大きい女だと、めんどくさくない女だと思われようと、サラッと言い流す。心底なんでいつも遅れてくるのか、という疑問・不満は沸き起こるが、まぁ仕方ない…ガマンガマン…
「それじゃあ、行こっか!」
と明るい彼が連れて行ってくれた先は、
なんと、、
オシャレなレストランでも、小洒落たカフェでもなく、
ただの公園……新宿駅から徒歩10分にある、
新宿御苑であった……
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『あ〜新宿御苑〜いいよね〜』
と白目状態の私に向かって、彼は
「いくらコロナが終息したからと言っても、また感染が広がるかもしれない…やっぱり用心しないとね!公園なら屋外だし、ソーシャルディスタンスも保たれるから安心!」
驚いた。
彼がここまで感染症に対して徹底しているとは…
久々のデートが公園デートであることに少し不満を持ったが、そんな事は気にしないようにしよう。彼のしっかり者の姿に胸キュンしつつ、芝生の上に腰をおろす。もちろん近づき過ぎず、離れ過ぎずの距離だ。これもコロナの影響だろうか、不自然に他人とは距離をとってしまう気がする…
『ソーシャルディスタンス…濃厚接触…気をつけなきゃね…』
と私は呟きながら、彼の横に近づこうか、迷う。
でも何故か近くことができない…外出自粛で人見知りをしているのか?それともコロナ対策が体に染み付いてしまっているのか…?
今までの私ならもっと積極的に動けた時もあったじゃないか…?
あぁ酒だ、お互いお酒がないから恋愛が発展しないのかもしれない、酒を用意しよう…と思っていたが、新宿御苑は園内、アルコールは禁止らしい…
世の中というのは、ここまで私の恋愛を阻んでくるのか?
なんと言うことだろう…
私は絶望しかけた…
いや待てよ、ちょっと待てよ私…
本当はコロナウイルスを言い訳にして、
彼に近く勇気がない自分をなだめているのかもしれない…
こんなことをしている内に、また歳をとってしまう…
また明日も恋人がいない生活になってしまうのかな…
あぁ…とタメ息…
でも大丈夫、まだ陽は落ちていない、午後3時になったばかりだ、
こうして彼とも対面できる日常が取り戻せたではないか…
贅沢をいうのは止めよう…
あと5分、あの時計が10分を刺したら、
あと5cm、5cmだけ彼の方に近寄ってみよう…
うん、あと5分経ったら…
〜続き〜
休日の公園というのは、家族連れの姿がとても目立つ。結婚、子育て、幸せな家庭…が現在のゴールである私にとって、子供がハシャグ姿というのは、何とも眩しいもので…思わず
「ちっちゃい子可愛いよね〜!3歳ぐらいかなぁ」
と声を漏らす。
あたかも自然に…
思わず湧き出た母性のように、
「子ども」
というワードを出して相手の様子を伺う。
決して、結婚というプレッシャーを相手に与えていると悟られぬよう、
慎重に…慎重に…
相手が”ケッコン”に対して、どんなスタンスなのか勘ぐるように…
一方彼は、こちらの攻防にも素知らぬ顔で
「うん、可愛いよねー!」
・・・・と
なんとも普通のコメント…
まぁまぁ…そこは良いだろう、良いだろう
と自分の心を宥める。
目の前のお母さんが、「まだ帰りたくない!」と駄々をこねている3歳ぐらいの娘を宥めるように…
私も自分自身の心を誤魔化すように話しかける。
そうして私の心はすっかり落ち着いてしまうと同時に、なんとも言えない空虚さに襲われるのだ。そんな気持ちの中、目の前の母親をよく見たら、とても若々しい母親であった。私と同い年、いや、私より年下かもしれない…
私と同い年の女の子で、
もう妻となり…
母となる女達が…
この公園だけでもこんなにいるのか…
と考え始めると、それだけで頭がボーっとしてしまう。
私はまだこの横にいる男性と、結婚するか否かなどの前に
今、手を繋ぐか、繋がないか…なんという段階なのに…
(アァ…いつからかなぁ…いつからこうなったのかなぁ…)
と心の中で念仏を呟く…
そんな私の妄想を切り裂くように
「そろそろ行こっか〜!」
と明るく腑抜けた声で彼が話しかけてくる。
(今日こそ…告白してくれるのかなぁ…)
とグルグルしながら、芝生から重い腰を上げる。
昨日降った雨のせいか、臀部のスカートが少し湿ってしまった。気持ちがわるいなぁ、早く乾かないかなぁと思いながら、テクテク2人で公園の出口に向かうのであった。
終
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