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志布志商店街『テンカツ』、商店街のこれからを考える | 地域連携アドバイザー派遣①

 2022年10月、志布志商店街店主会活動『テンカツ』(鹿児島県志布志市)と、地域連携アドバイザー・市村良平さん(株式会社スタジオグッドフラット代表)による意見交換が行われました。


◆志布志商店街店主会活動『テンカツ』

志布志商店街店主活動 テンカツ(以下、テンカツ)
 
2020年2月、「商店街として何かしていきたいよね」と集まった店主メンバーに、長きに渡り店を構える大先輩・シューズイトウの伊東氏を巻き込み、活動をスタート。具体的には、毎月1がつく日の商店街清掃活動や、台風災害等の倒木の撤去・片付け、商店街イベントの開催、あわせて、活動に伴う高校生ボランティアの受け入れを行う。
 高校生との関わりから、「将来や進路を考える時期にも関わらず、商売・商業を知らない・学ぶ場がない」と感じたことを機に、「子どもたちに事業体験の場を」と、高校生による地元産の鱧を使ったハモバーガーの製作販売事業体験を実施。活動に参加する高校生は徐々に増え、2022年10月時点で延べ200名を超える。
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 メンバーは、二代目テンカツ代表〈笑い酒場 ぞう〉林寿美氏、〈シューズイトウ〉伊東謙夫氏、〈SOL creators〉坂口潤成氏、〈志布志バーガー〉馬原貴行氏、〈志布志葬儀社〉林雄介氏、相談役に〈筋骨整体院〉枦山晋司氏(初代テンカツ代表)。全員、Uターンなど他地域で過ごしたのちに志布志へ。地域の課題や「志布志のもったいなさ」を話し合いながら、『真面目にゆるく』活動している。

市村良平さん  株式会社スタジオグッドフラット代表取締役。中心市街地活性化や公共空間の利活用、男女共同参画、子育て支援など、社会課題解決に向けた取り組みをサポート。計画策定や計画実施に伴うマネジメント、イベントの企画・運営(コーディネート・ファシリテーション)を行う。地域の人々と戦略を立てて実行したり、地域を舞台とした講座を開催するなど、地域のあらゆる力が発揮される機会と環境作りに携わる。


◆アドバイザー派遣に至った経緯

 商店街の清掃活動をはじめとしたこれまでの取り組みに加え、「今後の活動をどのように展開させていけばいいか」と疑問を抱えていたテンカツ。「活動をより〈まちづくり〉に近づけていきたい」との思いから、各地の地域事業に携わる市村さんにアドバイザー派遣を依頼しました。


◆志布志商店街をまちあるき

 まずは、テンカツの皆さんとともに、実際に志布志商店街を歩きます。通り二本、計600m程の長さの商店街には、空き店舗も含めて約50店舗が並びます。

 「元々、志布志商店街は、室町時代に創建された寺社・大慈寺に由来する人々の活動の地だったそうです」と枦山さん。その後、明治の廃仏毀釈により、土地は寺院から切り離され、庶民の生活の場へ。本殿跡地は現在の志布志市役所本庁舎となり、地域には旧国道が整備され、現在の志布志商店街が形成されたという。

 店舗区画や物件を見ると、通りに面して幅が狭く、奥に長い作りになっている。通り側に店舗・奥に自宅という『店舗付き住宅』にて、商店街の人々は暮らしと生業を共にしていた。

 歴史ある商店街だが、各地方が抱える問題と同じく、空き店舗や空き地が増え、駐車場化が進む。

 とはいえ、商店街には魅力的な店舗も並ぶ。「ここのカツ丼は本当に美味しいんです」とお店を紹介して下さる林さん。ソースカツ丼を目当てに地元民にとどまらず観光客も足を運ぶ。

 現在の商店街の主な客足は、昼食時なのだそう。


 高校生ボランティアは、当初2、3名の参加だったが、「地域の先輩方とのおしゃべりが楽しい」と広がり、今では一度に15、6名の参加になることも。時には、ゴミを拾いながら恋の相談にも乗ることもあるのだとか。


◆「このエリアをどうしていきたいか」

 商店街散策後、さっそく意見交換へ。
 まず、「これから商店街をどうしていきたいか」など、テンカツさんの想いをお聞きすることに。車社会となった今、「商店街を歩いてもらう場所にするにはどうしたらいいか」、「これからの商店街の担い手」など、様々に話が広がり、メンバーそれぞれが想いを言葉にしてくださいました。

 「『商店街が』というよりも『志布志が』盛り上がれば嬉しい。その中で、商店街は人が集まりやすい。人が集まれば、まちが盛り上がる。商店街がそのきっかけになれば嬉しい」と馬原さん。

 「現在のメインの客足は昼食であることも、志布志商店街の特色。昼食を起点に過ごしやすい商店街を考えてみるのもいいのでは」と坂口さん。

 「僕らは20年先もまだまだ働かないといけない世代。20年先に運営できている商店街を目指すためには、考えることが沢山ある。 しかし、まずは『ビジネスとしてしっかりと成り立つ』かつ『楽しい』ところを目指したい」と枦山さん。

 また、「今後は、商店街出店者となる仲間も増やしていきたい。そのための創業支援に関わる補助制度〈志布志市創業者等応援事業〉等の活用など、公民連携も大切にしながら前進していけたら」とテンカツの皆さん。

 あわせて、これからの担い手を考えるにあたっては「〈技術を持った人〉が店を構えるというのも面白い」と伊東さん。約40年以上に渡り、靴の修理・販売を担う伊東さんの元には、「ここで靴を直して欲しい」と県内外各地からお客さんが訪れる。

 活発な意見交換が進む中で、続く2回の地域連携アドバイザー派遣の方向性としては〈商店街の今後のビジョンを描いていく〉ことに。


◆今後のビジョンを描いていく

 「商店街は店舗が多く、建物も大きいのが印象的でした。とはいえ、商店街600mは広すぎる。まずはエリアを200m程にしぼり、今後5~10年ほどのビジョンを描いてみたらいいのではと思います」と市村さん。

 続けて、「地域のこれからを考えるにおいては、『みんなのため』というよりも『自分たちがどうしたいか』が大事です。皆さんが、皆さん自身のやりたいことをやりながら、その先に周りの人が入ってくるというような流れが生まれると、『なんだかこの商店街、みんなが歩きたがるね』というような雰囲気になってくると思います」と市村さん。

地域のビジョンを描くにあたり、先進事例を紹介して頂く


◆次回の作戦会議に向けて

 市村さんはおっしゃいます。 
 「まちづくりにおいては、①活動がビジネスになっていること、②自分たちがやりたいことをやること、この2つがあれば活動は長く続きます。

 あわせて、『君たちなんか面白いね』と言われる、本人たちが楽しそうな空気感も大切です。そのようにしていると、周りが見てくれていたり、協力を得られやすかったりします。

 それと、もしかすると、地域の人たちは、テンカツが清掃活動していることは知っているけれど、本当は何がしたいのかというのは伝わっていないかもしれません。だからこそ、『僕らはこうしたい』と言葉にして活動することが大事なんです。

 また、僕らはこうしたいと言葉にしていくにあたり、どういう価値観で、どこに向かっていくのかというエリアビジョンがあると、活動の原点に立ち戻れます。

 ビジョンはつまり『商店街の10年後を考えた時に、どんな商店街でありたいか?』ということ。

 町には課題もあると思いますが、『兆し』もあると思います。それを整理しながら、これからをイメージしてもらえたら」。

 地域を想い、その一歩を清掃活動から踏み出したテンカツ。大先輩・伊東さんを巻き込み、地元高校生を巻き込み、真剣なやりとりの中に冗談と笑いを交えながら前進されています。地域連携アドバイザー派遣は、次回、第2回へと続きます。

 本事業は【令和4年度 鹿児島県共生・協働センター「地域資源活用・協働促進事業」の地域連携アドバイザー派遣支援】を活用したものでした。詳細は、共生・協働センターのHPをご覧ください。
https://www.pref.kagoshima.jp/ab12/shigen/index.html

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