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シルッカの場合 フィンランドの人・社会福祉・介護 聖書を基として見る

シルッカのモノローグはこちらから
https://note.com/teeri/n/n74315f828b02

 シルッカは戦争を体験し、その後の結婚生活は恵まれていたが、全ての子どもに先立たれてしまった。
 フィンランドでは行政が高齢者介護をすることになっているが、家族介護者もかなり存在しているし、子ども世代も仕事の合間に親の食事の買い物、家の掃除、食事の世話もしている人もいる。近くに住んでいる子ども世代は毎日親の元に通う人もいるし、遠くに親が住んでいる場合は兄弟が複数いる場合は兄弟で週末に持ち回りをして親の面倒を見ている子ども世代もいる。しかし、どんなに親の家での自立した生活が立ち回らなくなっても親を引き取って自分の家で看ようと言う子ども世代はほぼいない。子どもの自立が普通で成人した子どもは通常親と同居はしないからである。子どもに何らかの疾患などがある場合には親子で住んでいる世帯もちらほらといる。

 シルッカには認知症の兆候かもと思った妹の要請で訪問介護が通うようになった。
フィンランドでは2030年に高齢者数が最高値に達する。いわゆる「団塊世代」が65歳以上となるこの時期には、人口500万人の中で140万人が65歳以上となり、その半分が75歳以上となる。人口の28%だ。
 施設介護は一人につき公立でも私立でも4000~5500ユーロと費用がかかり、この金額を個人で支払うことは入居者ほぼ全員不可能だ。足りない分は税金を投入するが、額が多いので「最後まで自宅」というスローガンの元に市営の介護施設の数も減らし、訪問介護で高齢者の介護を自宅でする方向性で進めてきた。(しかし近年外資系やプライベートの介護施設は増えている)
 シルッカのように自分で食事を温め、シャワーも自分で行けるような状態では「介護施設に入りますか?」と言う話にもならない。自分の家 ”Love” なフィンランド人は本人も絶対に家を出ていく気はないし、なるべく訪問介護の援助も受けないつもりでいる。

・年金受給者介護サポート
 医師から診断が出て3ヶ月以上その病気のために治療が必要とされると、高齢者介護保障を受けることができる。最小の額で71ユーロ、155ユーロ、最大が329ユーロとなる。アルツハイマー病の治療の場合、大体最小額、脳梗塞などその後の介護の度合いが高い患者は329ユーロの最大額を受けている。

・薬の上限越え
年間に購入する薬の金額が579ユーロは自己負担だが、この金額を超えると処方箋薬の購入が一つにつき2,50ユーロとなる。インシュリンは5本入り人パックで120ユーロほどするので、1日の接収量が多いと年が明けて2ヶ月ほどで上限を超えてしまう。その後はどれだけインシュリンを購入しようと一パック2,50ユーロである。

・家賃サポート
 年金をもらっていてもそこから税金を働いていた時代と同じくらい払わないといけない。持ち家でない人々は家賃を払うが、年金の平均値は1500ユーロ。家賃はどんなに安くても600ユーロほどになるので、補助が必要となる。持ち家の人でも管理費などが高額な場合は補助を受けることができる。

・家族介護サポート
 家族が同じ屋根の下で介護する場合サポートを介護の程度によって受けることができる。金額はどのくらい側にいなければならないのかの介護度により変わってくるが、最低額は408€/月。一世帯の収入はサポート金額に関係ない。高齢者の場合ほとんどが夫婦での老々介護になる。介護が非常に重く殆ど24時間の介護が必要な場合は、訪問介護の援助も受けながら家族が介護する。
 家族介護者には月3日の、「休日」があるがそれを使うか使わないかは、個人により異なる。「月3日も介護せずに、要介護者のそばを離れられない」と言う人もいれば、「サマーハウスに行ってこれて、気分転換になった」と言う人もいる。もし、家族介護者が休暇を取ることになれば、短期介護施設に要介護者を預けなければならない。

 また老々介護、子どもが親をみていてもどうしても介護者の負担が大きい場合には、月に1~2週間の間介護施設に要介護者を預かってもらっている人もいる。期間は要介護者の介護度によって変わるが、その間に介護者はしばしの間休み事ができる。「これ以上親が夜中に電話してくるなら、離婚だ!」となっている子供世代の家庭ももちろんフィンランドにも存在するので、親を取るか、配偶者の気持ちを取るかを考えなければならない時には、こういう方法もある。

 ある老々介護の介護者男性は、家族介護協会に頻繁に手記を送っており、毎週訪問するとその記事のコピーをくれたが、要介護者が認知症の場合買い物に出るのも困難だと語っている。そして妻の24時間必要な介護のために交友関係もほとんどなくなってしまったと言う。
 しかし、フィンランドでは家族介護は「義務」でなされるのではなく、「愛」によってなされている。この彼の場合も65年間連れ添ってきた妻のために、自分と家族に支えてくれた妻のために、今度は夫が妻のケアをする。

※支給額は全て2021年のもの


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