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罪 第10話

【前回の話】
第9話 https://note.com/teepei/n/n004b43f94cf5

「それって死ぬってこと?」
うなだれてた谷崎君が、そんなことをはっきりいうんだ。
僕は少しだけくらっとしちゃった。
だって、いつもする話とぜんぜん違う。
こんな話、するなんて思ってもみなかったよ。
それで、男の人は答えないで下を向いた。
そんな男の人を見てたら、怖くなって悲しい気持ちになってきて、そんなときはやっぱりどうしていいかわからなくなっちゃうんだ。
どうしようもないよ、ほんとうに。

「おじさんが死んだら、俺、悲しいよ」
谷崎君、涙ぐんでるんだ。
いつも騒いだりして無茶苦茶にやってるけど、泣くみたいなことははじめて見た。
だから僕はびっくりした。
生田君だってびっくりしたと思う。
でも、谷崎君のそのときの気持ちは痛いくらいに分かった。
彼は今、僕らと同じことを感じてる。

「そうか」
男の人は谷崎君を見ながらそういったんだ。
でもさ、よく考えたら会ってからまだそんなに時間がたってないんだ。
なんだか不思議な気がしたけど、たぶんそれは秘密の仲間になったからじゃないかな。
僕も、男の人には死んでほしくない。
そう思ったら、なんだか僕まで涙ぐんで恥ずかしくなった。

「参ったな」
困った顔していて、でも男の人は笑ってもいた。
ほんとうに優しい人なんだと思う。
そんな人が悪魔みたいになるんだから復讐がとても怖いものに思えたし、復讐しなきゃいけない理由も怖く思ったんだ。

「わかった、復讐はしないよ」
男の人はそういってくれたんだ。
でも多分ほんとうじゃない。
だけど、泣いている僕たちを心配してくれたのはほんとうなんだ。

「ほんとう?」
「ほんとうだよ」
そう聞いたとたん、谷崎君ったらものすごい勢いではしゃぎだした。
それで、また僕に寄りかかったりして、やっぱり僕もいやじゃないよ、それからまたプールに飛びこみにいっちゃった。
僕はあわてて、静かにしないと見つかるよ、っていったんだ。
でも大声を出せないからぜんぜん彼に聞こえやしない。
しかたがないからプールに近づいたんだ。
それで、プールの中をのぞきこんだ。
でも、谷崎君はちっともみえない。
おかしいんだ、あの調子なら彼、バタ足でもしてプール中無茶苦茶に泳いでそうに思えたのに。
プールには何もない。
水も、何も動いてないみたいなんだ。

「何してる」

(続く)
【次の話】
第11話 https://note.com/teepei/n/nc71aec663523


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