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罪 第9話

【前回の話】
第8話 https://note.com/teepei/n/n4159dd13c0d9

そんな谷崎君は、あんまり見たことがない。
それから谷崎君は大の字に寝転んだ。
それがとても気持ちよさそうなんだ。

「楽しそうだな」
男の人は谷崎君のことが嫌いじゃないみたいなんだ。
そんなこともあんまりない。
だって、先生たちはいつも谷崎君のことを注意したりおこったりして、問題児みたいにしか見てない。
谷崎君が騒いだりするのがいけないんだけど、それでもたまにかわいそうに思えるよ。
だから、なおさら嬉しいんじゃないかな、彼。
そんな風に見ていたら、突然に、やっぱり突然なんだ彼は、体を起こしていったんだ。

「おじさんは、子供がいるの?」
びっくりしたよ、だって、さっきもいったけど、男の人に子供がいたとしても、何かとても悲しい出来事があったんじゃないかって。
そしたら、子供のことは聞けないように思ってたんだ。
でも谷崎君は聞いたんだ。
男の人も驚いたみたい。
少し困った顔をしてた。
でも少しだけ考えるみたいにしてから、ちゃんと答えてくれたんだ。

「いたよ。いたけど死んじゃったんだ」
やっぱり悲しい答えだった。
なんとなく男の人を見てられなくて、僕は下を向いちゃったよ。
それで、そんなことを聞いた谷崎君に、なんだか腹が立ってしまったんだ。

「そっか、ごめんなさい」
谷崎君が謝った。
でもいつもと違って、自分がしたことをわかって謝ってるみたいなんだ。
いつもだって謝るのはほんとうだけど、彼があんなにうなだれるのを初めて見た気がする。
その谷崎君を見て、さっき腹を立ててごめんね、って思った。

「いいさ、別に謝ることじゃない」
男の人は笑ってくれたんだ。
谷崎君を励まそうとしてる。
谷崎君は何が悪いのかわかって謝ってるから、たぶんそんなことが初めてなのかもしれない。
彼らしくなくて、なかなかへっちゃらってわけにもいかないみたい。
僕はどうしていいかわからなくなっちゃった。

「やっぱり復讐するんですか」
生田君までそんなことを聞くんだ。
でも生田君は、少し心配するみたいに言ったから、やっぱり男の人をほっとけないんだと思う。
彼は誰に対してもそうなんだ、こんなに年上の人に対しても。

「するよ」
悪魔みたい顔が見えるのかと思って、僕は少しどきどきした。
でも違ったんだ、さびしそうに、さっきプールで見たみたいな顔だった。

「でもまたやられたらどうするんですか」
生田君はいやになるくらいしっかりしてる。
だけどそんなんだから、みんな頼りたくなるんだ。
(続く)

【次の話】
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