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罪 第8話

【前回の話】
第7話 https://note.com/teepei/n/nf156b6cf8697

「休みの日に、誰もいないプールに入るのが夢だったんです」
生田君がいった。
彼はほんとうに、プールに入りたくてここにきたってわけさ。
なんだか僕はほっとしたみたいな気分になったよ。
だって生田君はいつもみんなのまとめ役で、勉強もできて、スポーツだってできる。
僕とは全然違うと思ってたけど、僕と同じこと考えてるんだもの。

「行ってこいよ」
男の人は笑ってた。
もう悪魔みたいな感じはなかったんだ。
なんだか一緒に悪いことをしてるみたいな、楽しい気分になった。
男の人も、僕らの秘密の仲間なんだ。
生田君はうなずいて、嬉しそうに出て行った。
ほら、って、男の人は僕の方にいって、プールに行ってこい、っていってるみたいだった。
僕もうなずいて、プールに戻った。
久しぶりに明るいところに出て、そしたらまた日差しが僕らを見てるみたいな気分になった。
少し不安になって周りをみたけど、なんにもなかった。


生田君はまた上手に泳いで、僕と谷崎君は歩きながら追いかけっこになった。
追いかけっこっていうより、谷崎君が僕に水を掛けたりするもんだから、僕が逃げて、追いかけっこみたいになったわけさ。
しばらくすると男の人が更衣室の外に出てきて、かげになるところに座ってこっちを眺めてた。
楽しそうに見てたんだけど、たまに哀しく見えた。
もしかして、僕らみたいな子供がいるのかな。
そして、奪われたっていってたから、もしかしてなにかあったのかもしれない。
そう考えたら、僕は急に悲しくなってきたんだ。
だってもう秘密の仲間だから、同じ仲間がもしかしたらすごく悲しいのかもしれないって思ったら悲しくなるだろ?

生田君がプールから上がった。
すごいいっぱい泳いでたから、だいぶ満足してるみたい。
僕も上がって、そしたら谷崎君も上がってきた。
それで、三人とも自然に男の人のところに集まった。

「だいぶ泳いでたじゃないか」
はい、って生田君が答えながら、トントンって耳から水を出すようにしてた。
僕はようやく男の人のところまできて、そしたら僕よりあとにあがってきた谷崎君が、はしゃぎながら僕に追いついて飛び掛かってきたんだ。
なんだよ、って僕は体をねじりながら、でもいやな気はしなかった。
たぶん彼も、秘密の仲間みたいに思ってるんだと思う。
いつもはひとりで騒ぐだけだったけど、そういうときの谷崎君とは違う感じなんだ。
どうやら彼、僕らと一緒にいるのが嬉しいみたい。
(続く)
【次の話】
9話 https://note.com/teepei/n/n004b43f94cf5

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