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罪 第11話

【前回の話】
第10話 https://note.com/teepei/n/nf3588d102b45

大人の声がした。
僕は頭が真っ白になった。
ばれたんだ。
入り口のほうを見ると、フェンスの向こうに体育の大橋先生が立ってる。
僕は声も出なかったし、体も動かなかった。

「何してるんだ」
何だってそんなことばかり聞くんだろう。
だって分かりきってるじゃないか、いけないことをしてるんだって。
でも聞かれれば聞かれるほど、金縛りにあったみたいに動けなくなる。
手足もひやひやと痛むし、僕は何をしてるんだろう。
そしたらおかしいんだ。
大橋先生がフェンスとか関係なしにこっちに向かってくる。
フェンスなんか元々なかったみたいに真っ直ぐこっちに向かってくるんだ。
これには驚いたね。
それからようやく、僕は動き出した。
逃げて、って、男の人と生田君のほうに振り返っていったら、そこには別の大橋先生が近づいてて、そのまま見てると大橋先生がだんだん黒くてドロドロした化け物みたいになってる。
男の人と生田君は、地面から湧いてくるドロドロにもう捕まってたんだ。
どうして。
逃げて、って、それでもいったんだ。
男の人は必死に這って、生田君はドロドロを引き剥がそうとめいっぱい走ろうとして、それでも駄目なんだ。
僕は怖くなった。
僕が見つかったせいなんだ。
そのせいで、男の人も生田君も、黒いドロドロに飲み込まれちゃう。
大橋先生はすっかり黒いドロドロで形も分からない。
それが、すでに絡めとられている二人を追うようにして飲み込もうとする。
やめて、って僕は叫んだ。
このままじゃ二人は死んじゃうんじゃないかって、そう思ったんだ。
僕は泣きながら、もう一度やめて、っていった。
だけど、自分に影が覆った気がして、またもとの方を見た。
そしたらすぐそばに大橋先生が立ってた。

「何してるんだ」
同じことを言いながら、大橋先生は笑ったんだ。
笑った口の両端が裂けて、釣りあがった目が裂けて、黒くなったと思ったら顔が崩れだした。
僕も飲み込まれる。
そう思って、ずっと大橋先生を見上げてたら、急にプールのほうに引き込まれた。
プールから黒いドロドロが現れて、僕の腕を掴んで引き込んだんだ。
僕はいっそう怖くなって、呼吸もできないし死ぬしかないと思った。
腕を掴む黒いドロドロがひっぱっていく先はとっくに底のほうへたどり着いていいはずなのに、見てみると底なしで真っ暗なんだ。
息が苦しい。
(続く)
【次の話】
第12話 https://note.com/teepei/n/n9b36e8c5043e

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