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TEENS ROCK IN AICHI 2023 動画審査講評 - 渡辺委員長より

はじめに

本年も大変多くの皆様にTEENS ROCK IN AICHIへのエントリーをいただき誠にありがとうございました。最終的には51校から75組(総人数320人)となりました。愛知県を中心に静岡、大阪、千葉、神奈川、栃木、広島、山梨と8県です。
本選通過はオリジナル曲の部が13組、コピー曲の部が10組の合計23組。本選通過率は30.6%と昨年の37.3%よりもさらに狭き門となってしまいましたことをお詫び申し上げます。より多くのエントリーを頂くことは非常に喜ばしく、個人的にはひとりでも多くの高校生たちをステージに立たせてあげたいという気持ちですが、1日に立てる組数に限界もあり、もうそろそろTEENS ROCK IN AICHIも土日の2DAYS開催を視野に検討していけたらなと思っているのが正直なところです。


審査基準の当落ラインについて

さて、当落ラインにつきましてですが、個人的には昨年とはずいぶん状況が変わってしまったのかなという気がします。

参考までにこちらが昨年のものです。

全国の中での愛知県


今年まず思ったのが、他県からのエントリーが多かったです。(ありがたいことに)
昨年からTEENS ROCKも全国11地区での開催となりました。知名度も全国区となり、各地区大会でもいろんな県のバンドを見ました。愛知県のバンドが他地区の大会に出場したり、その逆もありました。
これってすなわちどういうことかっていうと「きちんと全国を視野に入れて活動しているところが全国で開催される地区大会に出ていけるようになった」ということです。
たとえば「愛知県」の高校生を限定で大会をやってしまうと、愛知県以外のレベルがどんなものかを知らずにずっと過ごしていくことになります。(プロサッカーやプロ野球で外国人を参加させずに日本人だけでやるっていうのとイメージは似てると思いますが伝わりますか。)
「愛知県」の平均レベルって全国でどのくらい?って皆さん考えたことありますか。部活動の話でいうと、実はそれほど高くないです。近年愛知県でも高文連が主催する大会が開催されるようになりましたよね。これ、実は他の県はずっと昔からやってるところもあるんです。全国大会もずっと昔からあるんです。愛知県は関われなかっただけです。後発組になります。他の県では「全国」がどういうレベルで活動しているのかを知ってて、それに向かって練習や活動をしているバンドがゴロゴロいる、これが実際の所かと思います。
今回は東京からのエントリーはありませんでしたが、東京とかはホントやばいです。人口やライブハウスが多いというのもありますが、普通にファンを持っているバンドが大会に出てきます。ファンを持っているってどういうことかというと「ファンがつくぐらい魅力的なステージをやるバンド」ってことです。「お客さんがお金を出して毎回見に来るぐらい虜になっている」っていうことです。愛知県では現状を見ていると、ライブをやる時は基本的に友達が来る、っていう状況がまだまだ多いですが、これが「どこのバンドもファンがついてる」っていう状況になってくると全国の中でも愛知県っていう土壌が注目されていくようになっていくんじゃないでしょうか。

気づいた点を3つほど


今年度はいろんな大会を見に行かせていただきました。
夏に開催した「TEENS SUMMER FES. 2022 July」「TEENS SUMMER FES. 2022 August」冬に開催した「TEENS WINTER FES. 2022」、TEENSROCK関係の「TEENS ROCK IN HIGASHIOSAKA」「TEENS ROCK IN HAKUSAN」「TEENS ROCK IN YONAGO」「TEENS ROCK 2022 GP FINAL IN HITACHINAKA」、「Nfes」「東京創文祭」「スニーカーエイジ第2回全国大会」、そして「中部大会」と「愛知県大会」。配信動画も含めたらさらに多くの高校生バンドを見る機会がありました。
そんな中で感じたことは、1つ目は全体的なレベルがボトムアップしている点。昔みたいにチューニングができてない、リズムキープができていない、といった基本的なことができていないバンドがずいぶん減った印象です。
それはすなわちどういうことかというと、全体のレベル差がより無くなったということです。ただ、審査員の誰もがうなるほどすごいバンドがたくさん増えたかというとそういう状況でもなかったです。全体が平均値に集まってきているといった感じでしょうか。結果、大きな差がみられず審査が難航したということです。
昨年まではコピーの部は「楽譜通りきちんと演奏できれば」、オリジナル曲の部は「オリジナル曲として2曲しっかり作曲して演奏できていれば」通過していたかもしれませんが、今年はそれだけじゃ通過できないんだなというのが実感でした。上記プラス「他のバンドにはない自分たちだけの個性」を持っているかどうか、そこが審査員にとっての良いと思うかどうかの決定打になったような気がします。

2つ目としては「動画をうまく撮る技術」がこの先どんな動画審査が行われる予選などの大会でも求められていくのではないかと感じました。これ実はすごく大事なポイントで、上記の大会で優勝やグランプリを獲得しているバンドの方々から今回もたくさんエントリーを頂いてますが、そのバンドを初めて見る審査員には、提出いただいた動画ではそのバンドの良さが伝わらず、当落線上ギリギリの評価だったりというのが今回実際にありました。これはすなわち動画で自分たちの良さが伝えられていないという事。
根本として「歌がきちんとしっかり聞こえる」「歌詞が聞き取れる」「すべてのパートの音がそれぞれ聞き取れる」「演者が全員映ってる」これはもう最低限の条件となりつつあります。それらがきちんとできていて、はじめて映像としての「表情や動作などの視覚的なコンテンツ」が生きてくるのかなと思います。とてもいい表情で歌ったり弾いたりしてて、ステージングも意識してっていう動画を見ても、「ボーカル聞こえないな…」ってなるとそこに対して良い評価をするのはなかなか難しいです。(なかにはカメラに背を向けた映像もありましたが…)
私が高校生に指導するときは「エントリーの動画を撮るときは、ミキシングするぐらいの気持ちで音量バランスを整えて動画を撮るように」と、伝えています。どういうことかというと、レコーディングをやったことのある人ならわかると思いますが、各パートを個別に録音した後でミキシングという作業があります。これはそれぞれの音のバランスを整える作業で、これと同じような作業が動画を撮る際に必要になってくると思います。動画を撮るときは演者それぞれの位置での聴感上のバランスではなく、録画している機材のマイクの位置できちんとバランスよく収音できているかということを、撮っては聴き、撮っては聴きを繰り返し確認します。
撮影はおそらく、部室やスタジオ、で行われることが大半かと思いますが(ライブの映像を送付してくれたところもありました)、狭いスタジオでは工夫の一つとして鏡にカメラを向けて撮影しているところもありました。
スマホで撮影すると、音量がでかくなったときにコンプレッションがかかります。ビデオカメラで撮ると音が割れたりします。zoomなどから出てるレコーダーなどが1台あると良いかもしれません。最大入力音圧が大きいので大音量でもきれいに録音できます。
ドラムの音が小さくなってしまう場合は、ギターやベースの音が大きすぎます。聞かせようと思うパートの音量を上げると全体がどんどん大きくなっていってしまうので、聞かせようと思うパート以外の音を下げたりしてバランスをとるといいかと思います。

最後に3つ目は「バンドメンバー間での力量の差」です。仮に10点満点で考えたときに、バンドの中に10点のメンバーがいるのに、本選通過を果たせなかったバンドが実は多数います。部活内で組んだり、メンバーチェンジができないなどの都合があることは十分承知していますが、やっぱりそれはもったいないかなと思います。バンドもチームプレーです。全員がそれぞれのパートに対してきちんと耳を傾け、ここのパートはこうした方がいい、ここのパートはもっとこういう基礎練習をした方がいい、などきちんと向き合ってバンドメンバーそれぞれが良くなるためにきちんと意見を交換してほしいと思います。甲子園野球と一緒で、自分一人がどんなに練習しても、他のメンバーが練習してくれないと勝てないし甲子園には行けません。じゃ、メンバーチェンジ、ってなればいいですがそういうわけにもいかないのであれば、やっぱりメンバー全員で同じベクトルの大きさで同じ方向を向いて努力して作り上げてくっていうのがバンドをやる上では理想かなと思います。

アーティスト写真について

今回はエントリー時にアーティスト写真を提出していただきました。いつもは結果発表後に提出をお願いしてましたが、提出までに時間がかかってしまうので、今回はあらかじめエントリー時に提出していただきました。
写真は審査の対象には含まれていませんが、一通り拝見させていただきました。中にはすごくしっかり撮ってあったり、「このアーティスト、生のステージ見てみたいな」と思わせられる素敵な写真もいくつかありました。顔をアプリでイジったような面白写真はずいぶん昔と比べて減ったかと思います。(時代の流行りだったのか意識の変化なのか?)
個人的には、アーティスト写真をしっかり撮れるバンドっていうのは「自分たちがどう見られるか」という、客観的な視点を持ちあわせているバンドなのかなと思います。それは結局「自分たちのライブはどう見られているのか」という思考に繋がっていくと思うので、「聞いてくれる人がいることで初めて成り立つ」ライブというものできちんと客観的な視点で見ることができるというのは、この先より良いライブをできるようになっていくという意味では必要不可欠なことかと思います。

本年のアーティスト写真については「当方の要望としてはこんな感じです」みたいなものを出させていただきました。いろんな大会でも写真の条件は多少あったりするかと思います。詳細は上記の内容をご覧頂けたらと思います。

コピー曲の部とオリジナル曲の部のバランスについて

今回はコピー曲よりオリジナル曲の部の選出数の方が多くなりました。
理由として、1つは「愛知県高等学校軽音楽連盟」の方針。令和5年度より「オリジナル曲制作に取り組める環境作り」を進めていくとの案内がありました。これをくみ取った上での判断です。

2つ目はJASRACに対するコピー曲演奏の著作権料の支払いです。これが本年から発生すると思われます。理由としましては、イベントがより大きくなり、キッチンカーやブース出展が増えたことにより、入場料は無料でも「これは商業イベントではないか」との指摘がありました。そこに対しては委員会内にも異論はありますが、議論をしてもしょうがないので著作権者に還元されるのであれば委員会の負担で払いましょうという判断となりました。
3つ目は「オリジナル曲の部はその先に全国大会がある」です。その他いろんな要素もありますが、大体この3つが主な理由です。
個人の想いとしては高校生のオリジナル曲が聞きたいです。高校生でしか生み出せない感性をステージで表現してほしいです。コピー曲も悪くはないしそのバンドの個性が出るけど、個性が出せるようなバンドにはなおさらオリジナル曲を演奏してほしいと思います。「ファン」を生み出す要素ってそこに集約されてるんじゃないかなと思います。そして「TEENSROCK」の魅力もそこにあるんじゃないかなと思います。

最後に

今回エントリーいただいた方々の中にはプロを目指している方から高校の部活引退したらやめようかなと思ってる人までいろんな方がいるかと思います。ただ「プロを目指してる人はうまい」とか「高校卒業時に辞めるからヘタ」とか、そういうのは一切関係なくて…。
いい演奏をするバンドは、やっぱりそれなりにバンドに対して時間とお金と労力をかけて取り組んでいるし、そうじゃないバンドはやっぱりバンド以外のことにも時間とお金と労力をかけてるから、両者を比較したら当然違うよねって話で。ある人はお小遣いを全部楽器のレッスンに使ってるけど、ある人は恋人とUSJ行ったりデート三昧、友達とも遊んだりで楽しんでて、どっちがうまくなるって何となく明らかではあるけど。高校3年間は視野も広がりいろいろやりたいこともでてくる時期ではあると思うけど、一つのことを突き詰めていくっていうのは一方でいろいろなことを犠牲にするっていう事なのかなと思います。
あとは自分がどういうバランスで生きていくのか、バンドに全振りする人生もありだし、受験勉強に全振りする人生もありだと思う。恋人に全振りする人生は今まで見てきた経験上あまりうまくいかないような気もしますが、自分なりのバランスをうまく築いて、時間が足りなければ効率を上げたり工夫することでより多くのものに取り組めるのかなと思います。
1度しかない3年間の高校生活、悔いの無いように過ごしていただきたいなと思います。
(余談ですが、個人的にはバンドに全振りする人生もありかなと。私自身も音楽でメシを食っていくことを目指していたし周りにもそんな仲間がたくさんいました。そのうち何人かは今でも音楽業界で活躍してるし、何人かはバンドをやめて就職しちゃてるけど、共通して言えることはバンドも含め何かを一生懸命突き詰めてやってきた人はその経験が必ずそのあとの人生に生きてくるということ。そして、意欲さえあればなんとかなるということ。きっとそういう力が養われるんじゃないでしょうかね。だからやりたいなら何の躊躇もせず全力で頑張ってほしいです)

TEENS ROCK IN AICHI 2023 まであと約1カ月半。
今年は3月25日(土)10時~17時 エディオン久屋広場です!
今年こそ、晴天のもと素晴らしいステージを楽しめたらと思ってます。
たくさんの方のご来場を心よりお待ちしてます!

一般社団法人 青少年芸術文化振興会 代表理事
TEENS ROCK IN AICHI 実行委員会 委員長
渡辺 純博


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