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TEDxUTokyo 2022 "Patchwork” 振り返り

こんにちは。TEDxUTokyo 2022 Brandingチームメンバーの丸山敦史と、山下彩夏です。この記事においては、改めて今年の6月12日に開催されたTEDxUTokyo 2022 "Patchwork"について振り返っていきたいと思います。

TEDxUTokyo 2022 “Patchwork”とは

TEDxUTokyo 2022 "Patchwork"は、5年ぶりに復活したTEDxUTokyoのメインイベントです。

5年ぶりに復活した経緯は2022年の代表を初めとするメンバーが書いてくれたNote企画、”Passions Worth Spreading”(通称PWS)に語られています。是非併せて読んでください!

開催の経緯

TEDxUTokyo実行委員会では、2022年2月に TEDxUTokyoSalon “Torchlight”を開催しました。それから4か月後のメインイベントということもあり気合いを入れて臨んだのがこのイベントTEDxUTokyo 2022 “Patchwork”です。

オンステージとオフステージ

TEDxUTokyo実行委員会には、東京大学という研究機関にあつまる様々なアイデアを共有するOn-Stage Sessionと、バンクーバーで開催されている本家TEDに倣ったワークショップや展示を初めとするOff-Stage Sessionを、1日で同じだけ体感してもらいたいこだわりがあります。

オフステージの舞台、工学部2号館の様子。

イベントのテーマ

イベントのテーマは”Patchwork"です。Patchworkは、それぞれ異なる色や模様を持つ布が縫い合わさってできています。同じように、職業を超え、年齢を超え、専門分野を超え、多様な知を持つ人が集い、共に世界の未来を創りあげていくのが、東京大学を中心とした知的コミュニティの役割だと考えています。11名のスピーカーの皆様、ブース出展やワークショップでご協力くださった12の団体の皆様、そして参加者それぞれが持つ「アイデア」を交換し合い、縫い合わせる。そんなPatchworkのように未来を創る一日にしたいという願いを込め、このテーマを設定しました。

On-Stage Session1 「破く」

セッション1では、「破く」をテーマに4名のスピーカーの方にご登壇いただきました。このセッションでは、何らかの形で既存の価値観を「破く」ような活動をされているスピーカーが登壇されており、聴衆がこれまで自身が縛られていた考え方を「破り」、その上で自分自身を「破く」ことができるようなセッションを目指しました。

榎戸輝揚様「シチズンサイエンスの未来」

榎戸輝揚様「シチズンサイエンスの未来」
現代の科学研究は、ますます大型化し、科学というもの自体が一般社会から遠い存在になってしまうのではないかと懸念されています。そんな中で、研究者と市民が共に科学を楽しむ「シチズンサイエンス」という手法があります。榎戸輝揚先生は金沢にて “不思議な雷雲の探索” を通じたシチズンサイエンスの実現を試みており、この活動の中に科学に対する懸念を解決する答えがあるのではないかと考えています。今回のトークではシチズンサイエンスを通して、科学をもっと身近に、言い換えれば、科学を “文化” にできる可能性について語りました。

庭田杏珠様「『記憶の解凍』〜AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争〜」
戦後75年が経つ現在において、戦争がいかに恐ろしいものであったかを強調してきた従来の平和教育の在り方を再考することが必要だ、と語る庭田さん。戦争を風化させないためには、現代の若者が戦争を自分事として捉えることが必要です。そのための一手段として、トークの中では、白黒写真のカラー化を紹介しました。さらに、 トーク終盤には、歌手の HIPPYさん、ピアニストのはらかなこさんと共に、自身も作詞に携わる「Color of Memory ~記憶の色~」を生演奏し、安田講堂は平和教育の場となりました。

原研哉様「世界を新鮮に感じ直す方法」
人工物の全てはデザインされています。しかし、あまりに身近すぎてそれが見えにくくなっています。原研哉さんは、デザインとは何なのか、という壮大な問いに対しての応答として、なぜ人は世界を四角くデザインしてきたのか、といった問いや、ご自身の展覧会などの経験から得た感覚に触れつつ、ありふれたものを注意深く観察し、まるで生まれて初めてそれを見るかのように感じ直す方法を示してくれました。その過程を経て、より「わからなくなる」ものの、原さんは「そこにデザインの入り口がある」と語りました。

原研哉様「世界を新鮮に感じ直す方法」

竹村眞一様「人新世を再定義する」
地球儀 SPHERE を使いながら、地球上で現在起きている自然現象や人類の活動状況を示しました。現代は、人間が地球環境を回復不可能なまでに破壊するという意味で「人新世」と呼ばれています。一方で、竹村さんは、世界で起こっている現象を地球儀上で体感することで、人新世を人間が意識的に地球に貢献できる時代として再定義できるのではないか、と論じました。

On-Stage Session2 「継ぐ」

セッション2では、「継ぐ」をテーマに3名のスピーカーにご登壇いただきました。このセッションでは、ご自身が活動を行う中で周囲を巻き込んでいくことを模索していらっしゃるスピーカーがご登壇されています。未来を創ることは1人では難しいと認めた上で、それでも自分ができることを聴衆1人1人が考えるためのセッションを目指しました。

鳴海紘也様「プロダクトの素材を再定義してみる」

鳴海紘也様「プロダクトの素材を再定義してみる」
衣服は布、壁材は紙、車は金属や樹脂というように、我々の身の回りにあるプロダ クトはほとんどお決まりの素材で作られています。では、そのようなお決まりの素材をなにか別のものに入れ替えてみたら、人間は何を体験できるでしょうか?鳴海先生は15分間の中で、ご登場の際に使用した poimoを含め、素材を再定義することによって可能となった新たなプロダクトについて語りました。

樋泉侑弥様 “The Sweetness of Fruits”
日本の果物農家は近年担い手が徐々に減少しつつあり、高齢化と人手不足という課題に直面しています。樋泉侑弥さんは、ご自身の地元である山梨県への思い、そして山梨県の果物への思いを語られた上で、果物農家への就農支援を行うためのアイデアをご自身が代表を務めていらっしゃる企業での活動に基づいてお話しされました。

樋泉 侑弥様 “The Sweetness of Fruits”

Paola Bellucci Ortolan 様 “Music as a power to protect the children”
幼少期に性暴力の被害を受けた社会活動家のパオラ・ベルッチさん。どのようにして幼少期のとてつもない苦しみを乗り越え、前に進み、新しい希望を見出していったかを語りました。また、ご自身が発起人となって作成した音楽を披露し、音楽こそが性被害に苦しむ世界中の子供たちを救うということを聴衆に強く印象付けました。

On-Stage Session3 「問う」

セッション3では「問う」をテーマに4名のスピーカーにご登壇いただきました。何かに対して問いかけを行い、そこで浮き彫りになった課題に対して向かっていくことは未来を創っていくための第一歩であると言えます。普段の活動の中で「問う」ことを実践され、また聴衆にもその重要性を伝えることのできるスピーカーがご登壇されました。

三宅陽一郎様 「哲学が生み出す人工知能」
人工知能は数学とプログラミングによってのみ作られているものだと思われがちですが、実はその土台には哲学があります。哲学が「知能とは何か」についての知見を深め、土台を広げていくことで人工知能の可能性も広がっていくのです。三宅陽一郎さんは、ご自身の職業であるゲーム AI の制作での経験に基づいて人工知能と哲学の可能性をお話しされた上で、既存の分野にとらわれることなく学際的に学問を行っていくことの重要性を述べられました。

森下有様 「再読して再考する」
森下さんは建築系の研究者として東京大学にてご活動されています。今回のイベントのトークにおいては、動物としてのエゾジカと食べ物としてのジビエが同一視されて語られている現状を踏まえた上で、身の回りのものを「再読」することで本当の姿を捉える、というアイデアを提示し、その上で建築とは建物を作ることに限られる行為ではなく、人とモノとの関係性を作る行為だとお話しされました。 

木許裕介様「共振」
木許さんのこれまでの活動は、指揮者をはじめとして多岐にわたります。トークでは、これらの活動の根底には「共振」という考え方があることを述べました。指揮者ひとりが指揮棒を振っても、何の音楽も起こすことはできません。演奏者とともに「共振」することが必要であり、演奏会では聴衆とともに「共振」することが必要になります。「共振」は音楽家に限った考え方ではなく、だれもが人生において実践できる考え方であることを訴え、トークを締めくくりました。

木許裕介様「共振」


三間瞳様「見過ごされる“きょうだい“」
障がい者の兄弟姉妹を「きょうだい」と呼びます。きょうだいが抱える生きづらさは、 社会的に認知されていません。その生きづらさの根底にあるものはなんでしょうか? 三間さんは、ご自身が「きょうだい」として経験してきたことを話し、この問いの答えを探っていきました。そのうえで、誰もが自分自身に対して正直であることの重要性を訴えました。

三間瞳様「見過ごされる“きょうだい“」

Off-Stage Session

Exhibition

工学部2号館フォラムでは、Moleskine様やmadoromism様、SASA様などの企業や、小紫研究室、川原研究室などの研究室、e-lamp.やELP、UTFFやMOCHAなどの学生団体などによるブース展示が行われました。参加者は、トークだけでは伝えきれない価値あるアイデアを体験しました。また、Off-Stage Session3では、東大生ダンサーのJin-Zo様によるダンスパフォーマンスが行われ、会場は一体感に包まれました。

Exhibitionの様子。

Workshop

Off-Stage Session2では、学生団体UT-BASE様による「1時間UT-BASE体験!〜東大を変える課題解決型ワークショップ〜」、ショートショートさっか田丸雅智様による「未来の話を考えてみよう〜ショートショート講座〜」、ピン芸人九月様による「まちがいフェスタon東京大学」そしてスピーカー庭田杏珠様、国連広報センター根本所長による「「記憶の解凍」〜平和な世界を創るためにあなたにできること〜」の4つのワークショップが開催されました。

参加者交流

参加者交流は、Yogibo部屋・本棚部屋・TED部屋の3つで構成しました。カードボードや問いに答えるボード、自分の興味関心を反映するような本を使用して、参加者同士が互いの価値観や考えを共有し刺激を与え合う場所となりました。

本を紹介しあう、本棚部屋の様子。

Food

フードはウェルカムドリンク、昼食、軽食を含め、計9社の提供により実現されました。昼食では各社のプレゼンテーションや動画を通して、軽食では紹介カードと感想記入を通して参加者に食の多様性について理解を深めていただきました。

「コンシャスイーティング」をテーマにさまざまな食べ物が用意されました。

終わりに

全てのセッションを振り返り、参加者の声を一部抜粋しながら改めてどのような学びや価値を作り出したかを考えます。

トークによる気づきや学び

多くの参加者の方が、TEDxUTokyoのオンステージセッションスピーカーのトークによって常識を「破る」考えや、未来を創るために周りを巻き込んで「継ぐ」行動、未来を創る上での浮き彫りになった課題に対して「問う」ことについて学ぶ中で、自身にとっても有用となるような新たな考えを得たり、自分の選択にとってのヒントを得たりしていらっしゃるようでした。下記に抜粋を掲載します。
「登壇者も選りすぐりかつ多彩で、また複数の方のスピーチを一度に聞くことで頭の中でお話しされた内容が絡み合って、新しい考えがどんどん湧いてくるような感覚になりました。将来の進路などについても悩む中での参加だったので、自分の選択に何かしらポジティブな影響もあったと思います。」

スピーカーについての学びを深める、TED部屋の様子

他とのやり取りからの出会いと発見

TEDxUTokyoという場所を通して得られる異なる分野のアイデアや、異なる分野を学んでいる参加者やスピーカーの方との対話や出会に大きな価値を見出している参加者も多数見られました。以下は抜粋になります。
「普段は同じ分野の方々とあったり話したりすることが多いですが、遠い分野の登壇者や参加者の方々と交流する機会が持てたのが良かったと思います。」

他の人との交流の様子。


改めてイベントを振り返ると、多くの参加者の方にとって良い影響を残すことができたイベントであったと確信しています。メンバー一同、このイベントを通して学んだことを心に刻み、さらなる学びの糧とし、そしてイベントの中でみえた素晴らしい景色から、またさらに先の地平線を望むことを目指したいと思います。TEDxUTokyoの本質はイベントではなくコミュニティであるという考えのもと、参加者にとってイベントが良いものになるようにこれからも運営一同尽力して参りたいと思っています。

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