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難波の煩さが少し愛おしくなった日

難波という街をこれまで僕は心底嫌いだった。

何となく買い物するにしても、

友達と遊ぶにしても訪れていた町だったが、

まき散らされたゴミに、喧騒、

しつこいキャッチに行き場のない若者の群れ。

どうしても好きにはなれなかった。

無理に好きになる必要はさらさらないが身近に住んでいる以上、

好きになるに越したことはないななんて思いながら難波の良さを見て見ぬふりして二十年が経ってしまった。

そんな僕は今日知ってしまったあの町の良さに。

今日を含め二回しか会ったことのないイギリスの方と難波で会うことになった。

好きでもないくせに結局気付けば難波にいる自分に嫌気も差し始めていたが、

彼に会うなり、彼の落ち着いたお兄ちゃんのような話し方は僕の心に平穏をもたらした。

二人とも買いたいものも特になく、ぶらぶらと話しながらアメリカ村に。

二年ぶりぐらいにインド料理も食べて、満足、

どころか腹が少しはち切れそうになりながらもその店を出た。

少しお酒が飲みたいと彼が言ったのでコンビニに駆け込み、

そんなにビールに詳しくないけれど、名前だけ知ってるそれを彼にお勧めしてみたりもした。

(気に入ってくれてるといいんだが…)

それに彼は喫煙者なのでビールの缶を開けるや否や煙草にも火を付けだした。

ビール片手に煙草を吸う彼は難波のそれで欲望に純粋な彼の姿だった。

僕は酒も煙草もしないお堅い人間なので、

一種の憧れとやらを彼に感じながら隣を歩いていた。

がやがやする喧噪もなんだか今日に限ってはみなの幸せの音のように感じられて、

そのような一部に僕らが溶け込んでいることがなぜだか嬉しく感じた。

そう思っているうちに少し行けばしんと静かな裏通りに出たり、

歩くたびに移り変わる景色が新鮮だった。

見る視点、注目する場所を少しだけずらす事でこんなにも物事を楽しめるんだとあの汚い町難波が僕に囁く。

いや、それは少し不名誉だからイギリスから来た彼に教えてもらったことにしよう。

今日の気づきで難波が好きじゃないけど嫌いになれないアイツに昇格したことを最後に明記して今日はここらへんで終わりたいと思う。






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