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夜空はいつでも最高密度の青色だ/【小説】 繭の中で本を読む

 自分の書いている短い作品が詩か、と問われると、うーん、うん、まあ。と曖昧に答えると思う。【spin a yarn】も【March hare sings】も詩にカテゴライズしてもよいとは思う。散文の物語詩、とエクスキューズするかもしれない。ナラティブ、と言えればよいけれど、それには、なんとなく短すぎる気もしている。

 とても煮え切らないことを書いているけれど、わたしの、詩を読む態度にも通じるもので、まだ親しく付き合うことができていない、というのが率直な気持ちだ。

 いくつかの詩の教室に通い、読み方の大事な部分を教わり、また生涯を共にするであろう詩とも出会い、随分と楽しめるようになった。それでも小説を読む時のような明晰感はまだないと思う。

 昨日の夜、ふと本棚から手に取った詩集
「夜空はいつでも最高密度の青色だ」

 最果タヒさんの作品は小説も読んだことがあり、詩集もいくつか所有している。「愛」という言葉や「死」という言葉が多いように感じる。自分がとりわけ反応しているだけかもしれないけれど、死への躊躇がなくて、なんだかそういうのが好きだ。

 では、自分がこういう詩を書きたいかというと、そうでもなくて、マーサ・ナカムラさんのような、いわゆるナラティブと呼ばれるタイプのものを志向していると思う。詩の投稿は、また休止をしているけれど、いつか詩と和解のような交感のような感情を通わすことができるようになったら再開したいと思う。

「夜空はいつでも最高密度の青色だ」の映画は観ていないけれど、なるほど、この詩をベースとした映像は撮りたくなるのは分かる気がする。歌詞とどこか共有されるものを持っているような気がする。

 最果さんの作品は、展示やグッズの展開など、なんだか現代詩を巡る出来事の中では、ひとつの明確な回答を出していて、それが写真集でないところがすごくいいと思う。もちろん、写真に乗せてもいいとは思うけれど、それよりは今の展開の方が「現代」という枕詞がぴったり嵌るような気がしている。

 冒頭の写真は「詩そのものカード」で、友達の絵描きジュリちゃんがプレゼントしてくれたもの。その写真が逆光で、文字の影が指にまとわりついているのも気に入っている。素直に素敵だなあ、と思う。
 とても欲しかったから嬉しかった。「彫刻刀の詩」というこの詩は、ちょうど「夜空はいつでも最高密度の青色だ」に掲載されている。カードになっているのはその後半部分。詩の全体を引用するね。

きみに会わなくても、どこかにいるのだから、それでいい。
みんながそれで、安心してしまう。
水のように、春のように、きみの瞳がどこかにいる。
会わなくても、どこかで、
息をしている、希望や愛や、心臓をならしている、
死ななくて、眠り、ときに起きて、表情を作る、
テレビをみて、じっと、座ったり立ったりしている、
きみが泣いているか、絶望か、そんなことは関係がない、
きみがどこかにいる、
心臓をならしている、
それだけで、みんな、元気そうだと安心をする。
お元気ですか、生きていますか。
きみの孤独を、かたどるやさしさ。

彫刻刀の詩 ー 最果タヒ

 一連の詩、最後の行が、やはり効いていると思う。丸刀で削った形が、やすりをかけていないのに滑らかなような。そしてその丸刀は箱の中から消えてしまっているような。音の、聴こえるような。

 最果さんの詩はデザインの領域とうまく融合できていて、いいなあ、と思っている。そうか、こういう方法があるか、と思う。文月悠光さんの詩のタイツも好きで、そういうプロダクトと組ませること、自分にも何かできないかな、と思う。本当に何かできないかな。まだ通常の仕事にも復帰できていない身だ、焦るな、と思う。思うけれど、ずっと焦っている。わたし、本当に、なんでこんななんだろうと嘆いている。

 しかし嘆いていても始まらないから、本を読む。小説を書く。そして、いつかもう一度詩を書くことにもチャレンジしたいと思う。脳にキマった時の詩の快感は動かすことすら許されなくて、ずっと痺れをもたらすのだ。

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 ザジは、わたしがしないことを平気でする。積んである本を悠々と踏んで歩く。時々、顎の枕にする。まあ、それは本の方もちょっと嬉しそうだ。
 ザジが越えていく本の中に、文學界5月号がある。今回のエントリーの中にあげた最果タヒさんとマーサ・ナカムラさんの対談も載っている。こちらも早く読まなくちゃ。
 ザジのカリカリを入れる。積んだ本を縫うようにして、静かに駆けてくる。

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夜空はいつでも最高密度の青色だ
最果 タヒ(著)
出版社 : リトル・モア

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今後のラインナップ(つまり読書中:4/20現在)
・大きな鳥にさらわれないよう(再読中)
・さようならギャングたち(再読中)
・すべて忘れてしまうから(図書館から借りている)
・ブロークン・ブリテンに聞け(図書館から借りている)
・わたしを離さないで(オーディブル:読了)
・裾花(再読中)
・文學界5月号
・ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集(再読中)
などなど
ここにラインナップされていても読了しないかもしれません。あらかじめご了承ください。

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サンキュー。親しいカモシカと夢で冒険できますように。
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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。物語を書きます。刺繍をします。インクの子どもたちの声を聞きながら。ホームページ http://www.roverdover.com / ヘッダー画:茅野カヤ