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spin a yarn

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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。 石川葉による小さなお話の連作。
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2019年1月の記事一覧

【spin a yarn】
また、少しお休みするね。
(spin a yarnを冠したのは2012年4月のTweetから。途切れながら続いている)
お休みは、原稿のための前向きなもの。
(だからnoteに、イラストやエッセイや日記やブックログは、時々書こう)
またね、バイバイ。

【spin a yarn】
イミテーションの星が流れるという。スパングルめいて綺麗、と思うかしら。射幸心を煽られるような、そんな気分。結果的に美しいならデブリでも、と思うけれど。美しさのためにデブリ降らすなら、エゴ。いつかその技術が役に立つなら、ディストピアめいて空の騒がしい。

【spin a yarn】
諦めて10時間眠るようにしている。
(それで大丈夫)
(元々、物語は眠りが運ぶと言っていた)
いずれにせよ滅ぶのなら、と思っていたけれど。
(眠りもあなたの要素だと)
(それで今まで紡いできたと)
(忘れていた?)
(わたしたちは、眠りの中にいるのよ)

【spin a yarn】
行きに郵便局に寄り、簡易書留で原稿を送る。帰りに空を見上げ、新しい原稿のことを考える。仕事に行けたよ、お祈りをありがとう。多くの祈りに支えられ、だから私も祈りたい。あなたの願いを主イエスに祈るよ。叶うことは知れないけれど、確かに聞かれることを信じてる。

【spin a yarn】
ブルーノ・ムナーリ展へゆく。頭の中が櫛で梳かれたように、通りよくなる。詩を学ぼうとしているわたしに、作品はすべてお手本のよう、教材のよう。誰にでも操れる言葉を、どのように並べ、組み合わせる。結果的に感情の発露であっても、わたしはファンタジアを目指そう。

【spin a yarn】
遠巻きのフォグ。
影のような光。
体は未だ強張り。
(靄ではなく繭よ)
(今は這うようにして)
(いつか束の間はばたく喜び)
飼われるもの、たしかに、たしかに。

【spin a yarn】
音がくぐもり、沈黙を迫る。
空気が煙たくなり、雪が降ろうとする。
開け放していた心の戸を、皆、閉じる。
雪に、声を奪われるのを怖れるように。
首をすくめて家路を急ぐ。
ストーブの火の盛ん。
饒舌な炎に安心する、部屋の中。
薬缶の湯気が窓を曇らす。

【spin a yarn】
わたしたちは季節よ
永遠のふりをして巡るもの
だから、まやかしよ
今は馬のいないカルーセル
星のネオンサインが変わる頃
群れるゴーストのように
(わたあめのように)
ちぎれる雲のように
向かうから待ってて

【spin a yarn】
部屋の壁をぼんやりと燃やす。
沈む太陽の手が伸びる。
触れてもいい。
重ねた手の、焼けているのに冷たい。
不思議、
どれほどの距離を旅してきたの。
8分20秒でなにを見てきたの。
ライカの塵には触れたの。
わたしの手は、それに触れたの。

【spin a yarn】

星の住み処よ
悲しみが降るので、その軒先を貸してくれないか
(いいよ。さあ、中に入ってうたえ)
(いいよ。さあ、中に入っておどれ)
(霞しかないが、朝が来るまで)
(いくらか、悲しみがやむまで)

【spin a yarn 】
横たわり起き上がれずにいる。声も出せない。仕事を休む。テキストで連絡できるので、よかった。病気が強くなる。薬を強くすれば、世界は色を失う。あの無感動は、もう嫌だよ。また明日、世界を美しく見せるから、待ってて。陽だまりを鏡にしようと、昼の星のひしめく。

【spin a yarn】
心の模様など、無軌道に動く月のようなもの。
だいたいどこか欠けている。
裏側を見せない。
わたしは、なるほど、と思い、ならばその心を照らすものを探ることにする。
わたしの心を照らすもの。
カルーア。
(お酒など飲めないくせに)
酔えば朧、正体をなくす。

【spin a yarn】
夢の影がまとわりついて、朧になる。
醒めないまま、浮遊するように歩く。
それでも、足の先はかじかんで、朝。
辺りは明るくなり、夢の影は逃げる。
頭が明瞭になる前に、夢の影を踏む。
かじかんだ指先を甘噛みする夢の影。
寝床に戻る、朧の糸を吐いている夢。

【spin a yarn】
夜の深みに声の降る。
それらのいくつかは、地上あたりまで届き、形をつくる。
牡鹿の角にしがみつき、蝶の翅をよそおう。
ひそひそとはばたく。
たちまち、こぼれる。
角鳴りとか鹿のささめきとか言われる。
星の声という者もあれば、雪の先遣りだという者もある。