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spin a yarn

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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。 石川葉による小さなお話の連作。
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2018年9月の記事一覧

【spin a yarn】
書いても書いても、言葉のほころぶ。
するりするり、
だまにならず、ほどけようとする。
櫛で梳かれたようになる。
するりするり、
よい糸の用意は、わたしの心を静かにする。

【spin a yarn】
原稿用紙に向かっている。アネモネダイアローグの続きを書く。5章で完結すると思い込み、4章で足踏みしていたのだけれど、実は4章までの物語みたい。これで他の章も動き出す。焦らないで待つこと。でも、常に考えていること。ジャグリングの、吸い込まれるような静止。

【spin a yarn】
明けて今日は病院の日。処方薬のデッキの再構築をお願いするつもり。頓服薬をデイリーなものへと。それはさておき、姪っ子が入院したという連絡を受ける。主よ、試練はいつまで続きますか。嘆きを隠さずに、主の前に祈る。しかし、何より回復が速やかになされますように。

【spin a yarn】
さっちゃんの誕生日。プレゼントは「ヒロプリンコ」の第5巻。特色印刷も施した私家版手製本。5年に渡った物語も遂に完結。お祝いはいつものカフェで、いつものようにささやかに。カフェオレとおいしいタルト。カエルの王子の活躍を喜ぶのが嬉しい。お誕生日おめでとう!

【spin a yarn】
午後からからきしダメになり、眠る、眠る。
せめて雨でなければ、と思いながら薬を飲み、眠る。
悔しくなる。
早く、早く、と焦るけれども、もう朝が迫ってくる。
でも、本当は大きな仕事をしたのだ。
それで、早く、早く、と焦るのだ。

【spin a yarn】
雨なら、Macと本とAirPodsを持ってカフェへゆこう。
晴れたら、カメラを加えよう。
ものを書ける喜びが、最低限の担保としてある、わたしは嬉しい。
ブレンドコーヒーに添えられるロータスクッキーみたいなのが好き。
そんな風に君のソーサーに乗りたい。

【spin a yarn】
窓を開ければ、静かに風が忍び込んでくる。
そういう秋を待っていたよ。
アップルティーをいれようね。
影の火傷も治りかけている。
何か不可知なものもドレインされた夏だった。
ちっとも油断はできないけれど、風とじゃれあい、伸びをはじめる夜に戯れる。

【spin a yarn】
その夢中は、私の、わたしたちの足を浮かせる。
笑顔とともにありますように、いつもの祈りにさらに加える。
たくさん本を読め。わたしの物語もそれに招かれたら、体はさらに宙に浮く。
さあ、わたしもたくさん本を読め。旅をしろ。世界の秘密を見つけるために。

【spin a yarn】
雲の巣からこぼれ
雨は
蜘蛛の巣で繋がる
束の間、りんりんりん、とお喋りをする

【spin a yarn】
波のように迫る無数の白い手を、今日は乗りこなして、やり過ごす。眠れば、容易に呑まれるだろう。白にまみれて、朝、光は気だるい。それでも、いつか、その手を捉まえ引き抜いて、正体見たりと口上する。滅びたわたしの幽霊が、幾体も幾体も。かえってそれはかしましく。

【spin a yarn】
いつか、ふっと、足の指が浮く。
できれば、それからしばらく、ものすることを許されるように。
空っぽになろうとするのだけれど、時々、世界が。
目配せなく、惹かれるものを置くから。
(指に力が入り)

【spin a yarn】
月だまりを掬って飲めば、酔えるらしい。
懐かしくなり、歌うらしい。
どこか砂漠にたまるらしい。
(かつて月を満たした液体を)
(石油と呼んでいるらしい)
静かの海の本当の名前を言える。
(花の沈んだ応答)
つまりは、酔っている。
月だまりのあるらしい。

【spin a yarn】
昔、雨はよく歌っていたの。今は、叫ぶばかりのことが多いけれど。ハミングするような歌声の時には、鳥たちが濡れるのも構わず戯れていた。さえずりを雨から習っていたとも聞くけれど、それは定かではないわ。でも、そうね、鳥の歌声も少し変わってしまったかもしれない。

【spin a yarn】
夜の刺繍部の皆さんへ。
AirPodsがすこぶるよいよ。
絡まないのは勿論、キッチンへ炭酸水を取りに行く時もシームレス。
音楽は途切れない、集中力も続く。
布で針を掬う時、首の辺りに気配のないのが、嬉しい。
音が、かえって夜を静かにしてくれて、嬉しい。