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なぜ、富山で昆布が多く消費されているのか?

結論

北前船、浄土真宗の影響を強く受け、出汁だけではなく食材としても活用されたから。


11月24日は和食の日

いい日本食(11.24)という語呂合わせから、一般社団法人和食文化国民会議11月24日は和食の日と制定されました。日本人の伝統的な食文化について見直し、和食に親しむことによって、和食文化の保護・継承を考える日とされています。2013年、和食はUNESCO(国際連合教育科学文化機関)により、世界無形文化遺産に登録されました。

きっかけは、国立科学博物館で行われていた和食展

和食が世界無形文化遺産に登録されてから10年後の2023年、国立科学博物館で「和食展」という企画展が行われました。和食展では、和食を歴史、食材、調味料などパーツに分けてわかりやすく解説されています。クックパッドと協力し、47都道府県それぞれでレシピ検索されている料理について紹介されているコーナーが最も興味深かったです。

和食展は、全国各地を回っており、2024年12月8日(日)まで松本市博物館で開催中です。2025年、豊田市、京都市、熊本市、静岡県で開催予定です。

和食=出汁

和食と言えば、出汁が欠かせません。出汁は、日本だけではなく、中国(タン)、イタリア(ブロード)、フランス(フォン、ブイオン)でも活用されています。

なぜ、出汁が発達したか?

江戸時代までの日本は、野菜、米中心の食生活でした。油を使う習慣がない代わりに、出汁が多様されました。和食は、出汁によって素材の味、旨味を生かした食事になりました。いかに美味しく味わうかデザインされています。

日本各地の出汁のちがいについて、下の記事で詳しく描きましたので、ぜひお読みください。

2024年の和食の日のネタは、富山県の昆布文化

和食の出汁の基本は、昆布、カツオが主です。干しシイタケ、煮干し、貝類からも出汁をとります。昆布など植物性、乳製品のうまみ成分はグルタミン酸です。一方、鰹節など魚肉には、うまみ成分のイノシン酸が豊富に含まれています。

2024年は昆布に注目します。昆布といえば、産地の北海道、出汁文化が根づいている関西地方のイメージがあります。しかし、一人あたりの消費量では、富山県が毎年のように上位に君臨しています。

富山県では、出汁だけではなく食材としても活用されています。スーパーマーケットに行くと昆布だけで、出汁用と食材用の2つのコーナーが成り立っていました。

今回は、なぜ、富山で昆布の消費量が多いか、富山県に行って食べたり、買い物をしながら調べました。

1.北前船の影響を受けたから

江戸〜明治時代、北前船が日本海側の物流を支えました。北前船は、北海道から日本海側の主要港を経由します。その後、関門海峡を通り、瀬戸内海を抜けて、大坂へ向かいます。北前船によって物資の運搬だけではなく、人々、文化の交流の役割も果たしています。

当時、北海道では、寒すぎて作物が育ちにくく、砂糖大根を除いて農業はほとんど発達してませんでした。一方、海岸線が長いため、沿岸地域では、漁業権が家臣に与えました。この漁業権に近江商人は目をつけました。近江商人は、家臣から漁業権を買収すると、本州からの移民や地元の人々を雇って、漁業組合を形成しました。

近江商人は北海道で大量にとれた海産物、砂糖を近江、京都、大坂へ運ぼうと考えました。鎌倉時代に開拓された北国廻船をベースに、北海道から東北地方の日本海側、北陸地方、山陰地方を経由する交易ルートを確立しました。日本海は冬を中心に波が荒れます。日本海の荒波に耐えられるように、5tコンテナ30個分運ぶことのできる弁財船(千石船)という大きな貨物船を開発しました。

富山県は伏木港が拠点にされていました。北海道から砂糖、昆布、ニシン、サケなどが運ばれました。一方、富山県から米、酒、醤油、薬が積み込まれました。

2.浄土真宗の影響を受けたから

北陸地方では、浄土真宗が篤く信仰されてきました。富山県では、南北朝時代、綽如シャクニョが南砺市の井波別院瑞泉寺ズイセンジを開山したことをきっかけに、善徳寺など富山県全域に浄土真宗が浸透しました。多くの家庭に仏壇があったり、精進料理が発達しました。

精進料理は、殺生禁止の教えを守り、肉、卵を使わない料理です。旨味がとれる昆布を出汁など多様に使っていました。

3.食材としても活用されているから

富山では昆布を出汁だけではなく、食材としても活用されています。スーパーマーケットに行くと、昆布巻きや昆布締め、とろろ昆布、おぼろ昆布、昆布かまぼこなど、さまざまな加工品も豊富に揃っていました。

富山県の昆布を使った郷土料理

昆布締め

魚の保存のために考案されました。魚の切り身を昆布で挟んで、置きます。昆布締めすることにより、乾燥した昆布に魚の水分が適度に吸収され、身が引き締まります。さらに、グルタミン酸が魚の身に移ります。魚の旨味成分イノシン酸と昆布の旨味成分グルタミン酸が合わさります。口に入れると、より強くうまみが感じられます。

タイ、ヒラメなど白身魚だけではなく、ニシン、サーモンも使われることが多いです。富山県の宝石と呼ばれるシロエビも昆布締めにぴったりです。

高岡市にある「クラフタン」で昆布締めを食べました。魚はザス(スズキ)、クルマダイ、サーモンでした。魚だけではなく、肉、野菜も昆布締めにされました。鶏肉、越中万葉牛、チコリ、ネギ、サツマイモ、カボチャも食べました。

野菜と肉は煎酒につけて、魚はワサビのみでいただきました。

刺身よりも若干濃厚な味わいに感じられます。ワサビだけで充分です。

野菜は、しっかり味付けする必要がありません。特にキノコとの相性のよさを感じました。エノキはシャキシャキ感を残しつつ、旨味が濃くなっていました。

肉は、素材の味が濃く感じられました。鶏肉は柔らかくジューシーな味わいに、万葉牛は、赤身の味がより濃くなった印象です。

昆布巻きかまぼこ

富山県は、かまぼこの種類も豊富です。昆布巻きかまぼこは、昆布の上にすり身をのせ、巻き、蒸して完成です。ナルトのような渦巻き状に見えます。スケトウダラ、マダラ、サメ、ホッケ、ニギスなど地元でとれた魚が使用されています。現在はスケトウダラが主な原料です。昆布の色が映えるように、真っ白なかまぼこです。

昆布巻

魚の切り身を昆布で巻いてじっくり煮込みます。富山県だけではなく、各地で食べられています。富山ではニシン、サケを巻きます。一方、鹿児島ではサバを巻くなど、地域によるちがいが見られます。

とろろ昆布おにぎり

富山のおにぎりといえば、とろろ昆布おにぎりです。海苔の代わりにとろろ昆布でおにぎりを優しく包みます。

とろろ昆布は、酢漬けした昆布を何枚も重ねて圧縮してブロック状に固めたものを糸状に削ることによってできます。表面付近を削ると、黒色になります。一方、中心付近を削ると、白色になります。

ちなみに、おぼろ昆布は、1枚の昆布を手作業によって削って作ります。そのため、おぼろ昆布は生産量が少なく、貴重になります。

とろろ昆布おにぎりについて、詳しくは下の記事をお読ください。

今回は、富山県で昆布の消費量が多い理由について話しました。昆布から、歴史の勉強につながります。

実際に富山県に行って食べた昆布料理についても話しました。特に、昆布締めに魅了されました。昆布締めに合いそうな食材について、コメントで募集します。

参考文献


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たびてく@一人旅ガチ勢
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