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【ぼくは"元"航空管制官】ステージ4 ~UFOを見たことはありますか?~

こんにちは。元航空管制官の田中秀和(たなかひでたか)です。
航空管制に関する講演を行っていると、必ずと言ってよい程に質疑応答で上がってくるのが「UFOを見たことはありますか?」です。
結論は「NO」で、期待を裏切ってしまって申し訳ありませんが、全くその様な経験はありません。そうお答えすると「やっぱり喋ってはいけないのですか?」と質問が続くこともありますが、本当の本当にそういう経験が無いのです。
なお、私が知る限り「業務中にUFOを見た」という管制官の数は、「霊感があって、その類を感じます」という管制官の数より少ないです。決して霊感がある管制官が多いという意味ではありませんので、あしからず。
ただ「パイロットから不思議な飛行体を見たという通報を受けた」という管制官は何人か知っていますので、そのような不思議な経験はパイロットの方が圧倒的に多いと思います。是非パイロットの方々に聞いてみて下さい。

管制官が業務中にUFOらしきものを目視するとすれば管制塔での業務中です。確かに360度ガラス張りの空間で常に外も見ていますが、UFOが空港に降りてくる訳ではありませんから、その様なものを目撃する確率は一般の方と全く変わらないと思います。敢えて言うのであれば、航空機の動きや航空機の灯火(ライト)の点灯の仕方を熟知してしまっているので、見難い夜間であっても一般の方のようにUFOと航空機を誤認することは少ないです。

また、レーダーを使えば飛んでいる物は何でも分かると思ってらっしゃる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。航空局の管制官が使っているレーダーの場合、航空機側がDBC(Discrete Beacon Code)と呼ばれる識別信号を出してくれないと、それが誰なのか、またどんな高度で飛んでいるのかも管制官側では一切分かりません。レーダー上で何らかのターゲットを捉えたとしても、識別が取れない限りそれが航空機なのか、山なのか、鳥の群れなのか、海面の波の反射なのか、ゴーストターゲットと呼ばれる存在しないバグなのかも把握しようがないのです。
「レーダーにUFOが映ったことがありますか?」と聞かれることもありますが、管制官としてそれが誰なのか分かっていない航空機は沢山いますし、航空機かどうかも分からない一瞬しか映らないターゲットは常にそこら中に無数にあります。ですので、UFOつまりUnidentified Flying Object(未確認飛行物体)かもしれないものは常に無数に目にしています。
ただ、残念ながら皆さんの期待するような宇宙人の乗り物だと確信するようなターゲットは見たことがありません。唯一私が「これ本当に飛んでいるのか?」と疑問に思った、旅客機よりも遙かに高い高度、遙かに速い速度で飛んでいたターゲットは「米軍のアレ」でした。

なお、私が一度で良いので機窓から眺めてみたいのはUFOではなく「ロケットの打ち上げ」です。
安全確保のためかなり距離は離れてしまうのですが、運が良ければ機内からロケットの打ち上げを目撃することは可能です。種子島だけではなく、紀伊半島の串本でも打ち上げが始まりましたので、目撃出来る確率は上がっているかもしれませんね。次のステージもお楽しみに。
Good day!!

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田中 秀和(たなか ひでたか)
1983年生まれ、愛知県出身。「ぼくは航空管制官」や「ぼくは航空管制官2」をプレイし、航空管制官志望を固める。2001年国土交通省入省、那覇空港での勤務を経て2008年から2020年セントレアで航空管制官として勤務。
2020年3月末に退職し、現在は全国の空港やミュージアムでの講演・トークショー、小中高校での職業講話、学童・児童センターで航空教室や紙飛行機教室等を実施する。テクノブレインではテクニカルアドバイザーを務める。
Facebookアカウント:元航空管制官のCafe&Bar準備室