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凡豪の鐘

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一人の才能を失くした高校生の小説家と、夢を追う少女達の物語。 読み方は「ぼんごうのかね」です。
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#小説

凡豪の鐘 #48

凡豪の鐘 #48

七瀬:ふーん.....これをやるんやなぁ....

七瀬は「消える君へ」を短くまとめたプロットをペラペラとめくって見ている。

〇〇:いや.....これをやふんやなぁじゃなくてさ、なんでいるんだよ。

七瀬:なんでって....好きな男の子に会いに来たらあかん?

〇〇:は?

美月、蓮加、茉央:はぁ!?

七瀬:ぷっ笑 あはは笑 冗談やって、皆んな〇〇の事好きやなぁ。

美月、蓮加、茉央:///

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凡豪の鐘 #49

凡豪の鐘 #49

〇〇:まじで無理言ってごめん。

律:いいよ笑 楽しいし。荷物そこ置いといてー。

〇〇:さんきゅ。

〇〇は五百城家にお邪魔していた。お邪魔と言っても、今日から何日間も住む事になるのだが。

律:茉央も喜んでるし.....でも急になんで?

〇〇:あぁ.....ちょっとなな姉がな・・

〜〜

昨夜

〇〇:なんで俺がこの家を出て行かないとダメなんだ。

〇〇は七瀬から、この家を出る事を提案され

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凡豪の鐘 #50

凡豪の鐘 #50

文化祭まで後一週間。生徒らは本格的に準備を始める。運動部はクラスの出し物だけだが、文化部は自分の部活も並行して行わなければならない。

でもそれが楽しい。むしろ準備期間が一番楽しいんだ。

〇〇:はぁ........

楽しいムードとは一変して暗い男が一人。

美波:演劇....上手く行ってないの?ボソッ

〇〇:............まぁなボソッ

あの日以降、〇〇は練習に参加していない。

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凡豪の鐘 #51

凡豪の鐘 #51

美月:〇〇。ご飯できたよ。

〇〇:...............

美月:〇〇?

〇〇:.....ん?...あぁ、ごめん。

ベッドから起き上がって、食卓へ向かう。脳裏に焼きついて離れないのは、文化祭で見た真凛と悠真の姿だった。

〜〜

美月:............ソワソワ

〇〇:.......なんでそんなソワソワしてんの。

美月:へっ? ......ソワソワしてた?

〇〇:うん。飯

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凡豪の鐘 #52

凡豪の鐘 #52

〇〇:................

祐希:ねーねー、好きな食べ物なにー?私は沢山あるなー。嫌いな食べ物は牛乳!

〇〇:.....飲み物じゃねぇかボソッ

祐希:あ!やっとなんか話した!

部活は強制じゃなかった為、別に入らなかった。誰もいない教室に放課後残って小説を書く。そう決めていたのに....

〇〇:だー!お前しつこいっての!

祐希:えー?お話しようよ〜。

何故かこいつ、与田祐

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凡豪の鐘 #53

凡豪の鐘 #53

エンプティシェル症候群

日本名 抜け殻症候群。これは後になって付けられた病名だ。詳しい事はよくわかっていない。治療法も、何もかも。ただこの症候群になった人はもれなく、抜け殻のように物言わぬ人の形をした人形になってしまう。

祐希の症状は次の通りだった。それは突発的に身体のどこかの感覚が突然無くなること。耳や視覚、味覚でさえも突然に消え失せる。そして少し時間が経てば再びその感覚を取り戻す。

厄介

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凡豪の鐘 #54

凡豪の鐘 #54

ガッ ガッ

〇〇:お、来たな。

部室の扉がガタガタと揺れている。

ガラガラガラッ

律:おらぁぁ!!

〇〇:ナイスー

律が無理矢理扉をこじ開けた。

律:やっぱり悠真達来てたぞ......まぁ俺がボコったけど。

〇〇:やっぱりか....なんで俺達が和僧って気づいたんだろうな...

律:あー......たぶん俺のせい。 "俺"の妹に手出すんじゃねぇぞって言っちゃった。

〇〇:バッカだ

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凡豪の鐘 #55

凡豪の鐘 #55

シューーーー ゴトンゴトン

景色が移り変わってゆく。新幹線というのは、こんなにも早いモノなのか。修学旅行の時とは段違いのスピードで進んでいる気がする。

懐かしい景色が近づいてくる。今までいた町が、もう遠い記憶に感じる。意図的に遠い記憶にとして仕向けているのだろうか。

気を抜くと、あの家での思い出がひっきりなしに頭へ流れ込んでくる。

美月:......................

新幹

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凡豪の鐘 #56

凡豪の鐘 #56

〇〇:うぁあ......グスッ....あぁぁあああぁ...

無意識に脳が避けていたものに真正面に向き合う。そうなると激流となって流れ込み体が弛緩していく。蓋が外れると、後はもう止める術はない。

蓮加:.........ギュッ

〇〇:うぁ.....

蓮加は〇〇を抱きしめた。

蓮加:大丈夫....私達がついてるから。何があったか....話してくれる?

その声はどこまでも優しかった。

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凡豪の鐘 #57

凡豪の鐘 #57

ガラガラガラッ

一旦扉の前で立ち止まる時間も鬱陶しいと思って、すぐさま扉を開いた。

〇〇:お呼びでしょうか、お姫様笑

美月:ぷっ笑 なにそれ笑 そんな事思ってないくせに笑

〇〇:家主様だったな笑 

美月:声大きいって!......早く外行くよ。

〇〇:......足、うごかねぇのか?

美月:動くけど、車椅子で行きたいの。練習練習。

〇〇:........わかった。

美月:看護師さ

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凡豪の鐘 #58

凡豪の鐘 #58

司会:では登場していただきましょう。文豪先生です!

パチパチパチパチパチパチッ 割れんばかりの拍手と写真のフラッシュで袖から出てきた俺は目を瞬かせる。

ステージ中央まで行き、すでにそこに佇んでいる人物と握手を交わす。

律:よろしく....ぶふっ笑

〇〇:笑ってんじゃねぇよ笑

「おおっ!....あれが文豪先生か...若いな..」
「まだ20代前半とかじゃないのか?」
「それなのにあの作品量

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凡豪の鐘 最終話

凡豪の鐘 最終話

は?.....なんだこれ。は?

美月:私にさ、小説見せてよ!

鳥肌が立った。俺の目の前で故人が演技をしている。そっくりさんでもない、モノマネでもない。そして俺の目の前にいる奴はハッキリと言ったんだ。「山下美月」....と。

「なんだこの人!めっちゃ可愛くね!」
「演技めちゃくちゃ上手い!」
「ん?文豪先生の様子、なんかおかしくね」

チャット欄は盛り上がりを見せていた。〇〇は体を動かせない。

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