見出し画像

神戸大の「医療機器開発における “日本型エコシステム”推進」の話を聞いてきた

先日、神戸大学医学部附属病院が進めている「医療機器開発における “日本型エコシステム”推進を目指した拠点整備事業」に関する話を聞いてきました。

このプログラムはAMED(日本医療研究開発機構)の「次世代医療機器連携拠点整備等事業」に神戸大が採択(他にも計14機関が採択)されたもので、医療機器開発を進める人材育成をメインとした内容とのことです。

今回はセミナーで聞いた話題について、自分でググって情報を追加した内容をまとめようと思います。

医療機器産業はグローバルで約50兆円。日本は1兆円の輸入超過

はじめに話があったのが、医療機器産業の市場規模と世界情勢について。

画像1

引用:経済産業省における医療機器産業政策について(PDF)

・市場規模はグローバルで約50兆円に。
・アジア、特に中国の伸びがすごい
・日本の医療機器は大幅な赤字(輸出6190億、輸入1兆6490億)

医療機器は「診断系」「治療系」「その他」に分類。治療系は欧米企業の独壇場

続いて医療機器を少し細分化しての解説。医療機器は大きく「診断系」「治療系」「その他」に分かれていて、診断系に比べて治療系は日本企業が存在感を発揮できていない旨が紹介されていました。

診断系:内視鏡、CT、MRI など
治療系:カテーテル、ペースメーカー など
その他:コンタクトレンズ、歯科材料 など

画像2

診断機器は日本企業がある程度の存在感(内視鏡はほぼ100%)

画像3

治療機器では日本企業は存在感なし

引用:我が国医療機器産業について(PDF)

ちなみに市場規模としては治療機器が約50~60%を占め、成長率も治療機器が高いため、この分野での競争力確保が重要になります。

診断機器はシーズドリブン。治療機器はニーズドリブン

続いては、診断機器と治療機器でなぜこの差が出るのかについて。講師の保多先生は

診断機器:シーズドリブン(テックドリブン)。技術が先に生まれて用途が後から生み出される。
治療機器:ニーズドリブン。臨床現場の課題が先に発見されて、それを解決する技術が後から生まれる

という違いがあり、その特徴から「治療機器の方が開発現場と臨床現場の連携がより重要になる」と結論づけていました。

創薬研究と医療機器開発の違い

次は薬の研究と医療機器の開発の違いについて。

・薬の開発は全体で10年以上、数年スパンの複数フェーズに分かれており、フェーズごとに役割分担がしっかりされている
・医療機器はもっと早いサイクルで開発を行われるため、事業構造・知財・薬事など全体像を把握した上で、開発を始める段階で出口を見据えた動きをする必要がある

という話がありました。

神戸大学では、この全体像を持って医療機器開発を行う人材を「メディカル・デバイス・プロデューサー」と名付け、その人材育成プログラムを行っているとのことです。
(自分が対象者に入ってるか怪しいですが、来年度の講座を申し込んでみる予定)

医工連携が進んでいるシリコンバレーに視察に行った話などもあり、セミナー後半はこのプログラムの話がメインとなりました。

医療機器業界と特許

講師の方が知財の重要性を何度も話されていたのでそちらも少し調べてみました。

医療機器と特許でいうと、手術支援ロボットのダヴィンチの特許切れの話題が今年に入ってから目に付きます。

米国での医療機器特許に関する話題は、2016年と少し古いですがこちらの記事によくまとまってるのであとで深掘りしてみようと思います。

医療機器の分野は医療機器メーカーや製薬メーカーによるスタートアップへの投資や買収が進んでおり、米国の製薬・医療機器分野での特許訴訟の損害賠償が高額になりがちなことから、スタートアップの段階から特許の重要性がある程度俎上に上りやすいように思います。

===

以上、医療機器産業の全体像や神戸大によるメディカル・デバイス・プロデューサー育成プログラム、医療機器と特許についてなどまとめてみました。

医療機器、ヘルステック、デジタルヘルスケアについては積極的に勉強会に参加していこうと思うので、可能な範囲でnoteにまとめていきたいと思います。

執筆:テクノ大仏 @tech_nomad_

サポートいただいた分は下記にまとめた本を読んで還元したいと思います! デジタルヘルスケア https://is.gd/4XCPtN スタートアップ×知財 https://is.gd/KHV8G8 中国スタートアップ https://is.gd/KG2zcF