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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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超高校級の舞台ダンガンロンパ見ろ ネタバレなし紹介とバレあり感想



はじめに

補足とか注意点

このnoteは以下の2本立てでお送りします

① ダンガンロンパ THE STAGEを見てない人に向けてのネタバレなしでの見どころと作品紹介
 記事全体はめちゃくちゃ長いですがここ自体は短くてすぐ読めるので舞台版まだ見てない人どうか戻らないでここだけ見てください。
② 既視聴者向けの超大容量、全編ネタバレの舞台版感想
 ここがめちゃくちゃ長いです。物語全体+各キャラ一人一人の感想なので完全に舞台を見てる、見尽くしてる人を想定しています。


※ネタバレに関して
①のネタバレなし紹介はダンガンロンパ THE STAGE(長いので以降舞台ダンロンと表記します)のネタバレはありませんが原作のネタバレは含みまくっています。
ただしダンロン3に関しては筆者がアニメ版を見る前に舞台版を見ているので原作ネタバレなしで紹介します。まだ見てないみんなも舞台からダンロン3を見よう。
②の感想は原作1・2・3と舞台版1・2・3全てのネタバレありまくりです。当たり前ですが舞台版を見てから見てください!


※この感想に関して
あくまでも個人の感想であり見た人全ての総意とかそういう感じでもないし作った側の意志とかそういう感じのことを代弁するものでもありません。ただの感想の一つです。一応。



この記事を書いたきっかけ

(舞台の内容には関係ない、ダンロンが好きになった経緯の説明なので飛ばしたい人は飛ばしていいです。この文を押すと飛ばせます。

紅茶即乱と申します。普段は音ゲーをします。音ゲーをしない時は大体格ゲーマーの配信を見てます。
 当時プロ格ゲーマーのかずのこさんのファンだった自分は「ダンガンロンパ?あの大山のぶ代が出てる推理ゲーム?」ぐらいの認識しかないままに、かずのこさんの配信を見ながら日々を過ごしていました。ですがある日かずのこさんが初代ダンガンロンパの配信を始めたのがきっかけでダンロンという作品を知りました。
 当時は初代ダンロンが配信解禁されて色々な格ゲーマーがダンロンをやっていた時期(プロ格ゲーマーがスト6出るまで格ゲー以外で遊んでいたオフ期間という背景もある。)。古来から頭を使うゲームだとオワっていて撮れ高がありまくる格ゲーマーと推理ゲーム…面白いに決まってる!と見始めたのですが、まさかそこからダンロンシリーズ全体にドハマりするとは思いませんでした。

 かじゅ(かずのこさんの愛称)の配信はなんでそこで詰まるんだ!?というところで詰まったり、勝者が偉くて勝つことが全てという精神性から、生き残ろうと見るからに強そうな大神さんにすり寄ったり(この時点で苗木君に感情移入してダンガンロンパをどう推理するか?ではなくダンガンロンパの参加者になったらどう生き残るか?ということしか考えていない)、既プレー者が誰も気にしなかったであろうマシンガン(2章にちょっとだけ出てきて、その後ほぼ全てのプレイヤーが忘れてたであろう防犯装置。)を永遠に擦り続けたり、2章の途中であるプロ格ゲーマーにそっくりな人物がモブ役で出てきたり…。とにかく持ってるというレベルの面白さだったんですが、そのかじゅの面白さ以上にストーリーが面白く、気が付いたら初代ダンロンが好きになってました。

 そしてその後「初代ダンロンを摂取したい!俺にダンガンロンパをくれ!」といてもたってもいられなくなり、舞台ダンロン1のDVDを注文(当時は続きをやって世界を広げたいというより初代の世界にもっと深くハマりたいという感じだった。)。そして見た舞台1がもう面白いのなんの。
 
あまりにも面白くて、これを堪能した後に2をやらないは嘘だろ!と勢いでゲーム版2をやって2にドハマり。クリアした翌日には舞台版を見て当然最高に面白く、もう舞台ダンロンという沼に深く深くはまっていき舞台3を見て無事ダンロンシリーズと舞台ダンロンの大ファンが出来上がりました。

 という感じで俺をダンロン沼に引きずり込んでくれた舞台ダンロンを紹介するから見ろ!既に見てる人は俺の感想を見ろ!という記事です。シリーズ全体での最推しは小泉おねぇです。1だと舞園さんです。3だと十六夜さんです。どうぞよろしく。

霧切さんを"響子さん"と呼ぶのはかじゅぐらいだと知ったのはしばらく後だった
配信解禁5年後10年後は覚悟してるのでスーパー推理力に長けた格ゲーマー2待ってます。

① ネタバレなし紹介

舞台ダンロンがたぶん見たくなる無ネタバレ感想

●単純に出演者が豪華すぎる!
 
劇が始まる前、DVDパッケージ裏の出演者一覧を見て思ったこと…それが「演者豪華すぎない!?」
 まず主人公が豪華すぎる。舞台1の苗木君役は本郷奏多さん(後にアニメ3の御手洗の声優を担当)、舞台2の日向くんは横浜流星さん、舞台3の苗木君役は西銘駿さん。流石にどこかで聞いたことはあるであろう有名俳優揃い、そしてあまりにもイケメン揃い。

 主演以外では江ノ島さん役があの説明するまでもない大女優の神田沙也加さん(後にダンガンロンパV3の赤松役も担当)だったり、
田中クン役が井上正大さん(テニミュの跡部様や仮面ライダーディケイド)だったり、
澪田さん役は伊波杏樹さん(ラブライブ!サンシャイン!!の高海千歌役)だったり…誰々が出てるなら見たい!というファンが間違いなくいるであろうラインナップ。
 そして脇を固めるのは十神クン役の中村優一さん狛枝役の鈴木拡樹さん九頭龍クン役の植田圭輔さん十六夜さん役の神永圭佑さんといった、2.5次元舞台等で慣らした実力派俳優。

 他にも左右田役のいしだ壱成さん(神田沙也加さん並みに説明するまでもないであろうベテラン俳優)や2の十神クン役の西洋亮さん(検索したらどこかで見たことある!ってなるであろう体型が特徴的な俳優)など…渋っ!となる配役まで一通り備えています。言うまでもなく演者の演技力は全員折り紙付きです。


●まずキャラが動いてることに感動する!
 
劇が始まってまず真っ先に思ったこと…それが「苗木君が動いてる~~~!」
 原作だとずっと立ち絵だったキャラ達が常に動いている!原作だと声のなかったあのシーンやこのシーンがフルボイス!元々フルボイスの学級裁判も声だけじゃなく身振り手振りも使って、流れるような掛け合いと共に舞台を動き回りながら!一言で言えばダンロンのあのキャラ達が現実にいる!!これだけで既に物凄い満足度。

 とはいえ、「そうは言うけどダンロンのキャラを三次元に落とし込むのは無理があるから再現度的に興ざめするかも…」と思う人がいるかもしれません。そもそも見る前に私が思ってました!
 元々実写化が好きな方なので(テニミュ2ndを全部見たことがある。好きなドラマは映像研)、実写化というものに人十倍信頼は置いてますが…それでもダンロンのキャラは濃すぎるだろ!澪田とか装飾多すぎて描くのでもめちゃくちゃ手間なのに実写でどうやるんだ!?無理だろ!と思ってました!
 ところが無理じゃなかった!!舞台2の十神(とそれを演じる西洋亮さん)を見ろ!!!!

Cornflakes ビジュアル|スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE ~さよなら絶望学園~ 2017 公式サイト
(最終閲覧日:2024年3月23日) http://www.cornflakes.jp/dangan/2017/visual/

 これだけでわかってくれると信じてる!こんなに似てる十神クンがいますか!?舞台2にはいる!だから見ろ!!


●舞台ならではの原作補完にスタッフの愛を感じる!
 劇が始まって次に思ったこと…「舞台でキャラの新たな一面が見られるの凄くいい~!」
 舞台ダンロンの地味ながら推せる良さ…それが原作を補完する形での細かな追加シーン!例えば舞台1冒頭でのこんなシーン。
 『廊下は走ってはダメだぞ!』と石丸から皆へ注意があり、それを聞いた不二咲さんが走るのはダメだけど急がないと…!という気持ちが出て走りはしないものの早歩きで舞台袖へと駆けていく…!細かすぎる!注視しないとわからないぐらい細かいけどかわいい~~~~!!!ってなる!冒頭から一瞬で心掴まれるかわいさ!
 かわいさという主観を抜きにしても、その時喋ってない人にもスポットライトが当たるという舞台ならではの要素が入った地味ながらいい場面です。

 他にも舞台2で小泉さんが!!!!!小泉さんが喋ってない時でも横の方で写真撮ってる!!!!おねぇはかわいくて優しい!!おねぇとスタッフの全員にありがとう!!!
 
劇だと舞台に立ってる時は常に演技中。他の人が喋ってる横でそのキャラらしい行動を取る…そんな恐ろしく細かい部分も含めてキャラの新たな一面。こいつが大好き!という単推しがいる人はそのキャラだけ見てても全く飽きない。
 実際澪田とかは原作のイメージ通りに、喋ってる時も喋ってない時も常に舞台上をわいわいと動いていて目で追ってるだけでめちゃくちゃ楽しい!
 かと思うと七海はどんな時でもマイペースにゲーム機に向かっていて、静かなキャラはちゃんと静かに自分の世界に没頭することでそのキャラらしさを出していてこれまた見ていて楽しい。
 そして、そういう細かい部分で新たな一面を見せてくる人がいたりするのも舞台ダンロンの魅力の一つ。舞台2のあのキャラがあんなリアクションを取ったり…舞台3のあの人があんな行動を取ったり…誰が新たな一面を見せるのかは見てからのお楽しみ。


●驚きの舞台オリジナル展開!
 舞台が始まって最後に思ったこと…「えっ!?このシーンをこう改変してくるの!?」
 舞台ダンロンには上で挙げたような細かいけどニヤリと出来るシーンから、これやっていいんだ!?という大きな改変まで…舞台オリジナルの展開がいっぱいあります。
 細かい改変の例としては、"〇〇の正体は△△"的な原作だと後でわかる秘密をそれより前に匂わせるシーンがあったり。舞台を見てる人は全員(大体。ほぼ。…たぶん。)既プレーなので、ゲームだとストーリー上の謎として伏せないといけなかったアレやソレを判明前に盛り込める!実際、"この時は隠してたけどこいつらの関係性だったら原作であってもおかしくないな~!"というシーンがいっぱいで嬉しくなります。

 そして大きなストーリー改変に関しては、ネタバレにならないぐらいに説明するとゲームという制約から解放されたからこそ出来るまさかの展開。触れるとネタバレになるのでそれ以上は何も言えませんが…物凄くいいです!!!!見終わってから振り返ると「確かにこれはゲームでは出来ないな…」と思えるはずです。
 中でも一番衝撃を受けたシーンが舞台2でのある場面。そこを見るためだけにでも見ろと言いたいんですが、舞台2を見た時の自分と同じように何も知らないで見てほしいのでどういう改変なのか説明することも出来ないのがもどかしい。
 とにかく見てください。絶対損はしません。既に見た人はネタバレ感想を見てくれるとやっぱそこだよね!となるはず。


●演出面でも舞台ならではの良さが盛りだくさん!
 
ここまでに紹介したような、実写で見られるキャラ達新たなストーリーも舞台の魅力の一つですが、それ以外にも様々な舞台ならではの演出がダンロン THE STAGEを盛り上げてくれます。

 例えばクライマックス推理。コミック形式の原作だと、あくまでも事件当時こんなことがあったはず…に留まっていて、苗木や日向から見えない部分(どんな会話をしていたか、どんなことを思っていたか…とか。)が語られることはありません。
 それが舞台では本人による事件当時の再現!例えるなら刑事ドラマの自白シーン。被害者と加害者で会話しまくり。どういう風に死んだのかどういう最後の言葉を残したのか…全て見られます。苗木や日向から視点を切り離して物語を展開しても良い舞台ならではの演出で非常に気に入ってます。原作でも2だとなんか狛枝視点になったりするけど。

 そしてダンガンロンパといえばオシオキ、オシオキといえばダンガンロンパ。当然舞台ダンロンにもオシオキシーンはあります!
 原作の時点でビジュアル的にとんでもないインパクトがあった分、舞台ダンロンのオシオキは光や音やセットといった演出、そして演技の力で更に迫力あるものになってます。
 その中でも個人的には、オシオキ中にキャラの声が入ってくるのが特にえげつなさを増していると思います。内容は心情を思わせる呟きだったり、誰かの必死な叫び声だったり…BGMのみだった原作以上に見てても聞いてても胸が痛くなってきます。

 とはいえ、四方八方からボールが飛んでくるとかバイクでバターになるとかどうやって再現するの?と疑問に思うでしょう。そんな無理そうなシーンを再現するために頑張る縁の下の力持ち…それが舞台ダンロンシリーズの名アンサンブル、モノクマダンサーズ!!(※アンサンブル:役名がないキャラを演じる人。)
 
モノクマダンサーズの役割はとにかくメインキャスト16名以外の全て。オシオキ中はみんなで組体操みたいにセットになったり、ダンスで処刑中の雰囲気を表現したりして実現不可能に思えるあれやこれのオシオキを再現。普段も事あるごとに現れてBGMの中ダンスしたり、裁判中に証拠を手渡しにやってきたり、戦闘シーンではやられ役になったりキャストを持ち上げて迫力ある画を作ったりグンニグルの槍でぶっ刺したり。暗転中も休むことなくセットを持ってきて組み立てて走り去っていって…メインキャストだけだとただの会話劇になりそうなところを、休むことなく常に画面に動きを入れて盛り上げてくれます。

 そしてモノクマダンサーズというからにはモノクマ要素も当然ある訳で、舞台に出てくるときは常に原作のモノクマのように表情豊かに、ステージを彩ってくれます。楽しいシーンでは笑い、衝撃的なシーンではメインキャストと一緒に驚き、そしてオシオキシーンでは満面の笑顔
 そう!こいつらモノクマだからのうのうと笑ってやがるんです!!それがまーじ腹立つ~!とはいえ演じてる人も人間なのに悲劇的なシーンであろうと雰囲気に呑まれず笑顔を絶やさないそのプロ根性が凄い~!あっぱれ~!って感じで舞台ダンロンに欠かせない名脇役達です。

 そして舞台で欠かすことは出来ない音響。言うまでもなくBGM・SE共に原作の物が使われています!裁判中にあの原作のアガるBGMが流れ、苗木君が「それは違うよ!」と叫びあのパリーンというSEが流れる…それだけでもう感動モノ。音の力は偉大です。
 もちろん裁判中だけでなく日常シーンから最高に盛り上がるシーンまで…少し聞けば原作を思い出せるあのBGMが余すことなく使用されています。そしてなにより偉大なのは、劇伴に持ってきても一切違和感のない原作BGMのクオリティ!高田雅史さんはめちゃくちゃ凄いです。本当に。




ここしか入れる場所がなかった舞台ダンロンを買ったり借りる上での補足


①どこで見られるかわからないならDMM TVに行こう

 舞台ダンロンシリーズはなんとDMM TVで全作配信中!レンタル一週間980円!絶望的にお得!見るしかない!!DMMTVさんありがとう!!!
 もう一つの選択肢はDVD(かブルーレイ)。見たけどやっぱり手元に欲しい!とか最初からDVDで見たい!って場合は基本中古しかありません。大体3000円、高いのだと7000円ぐらいはします。そう考えると配信…絶望的に得すぎる…!しかし配信はいつか停止されることも考えられなくはないので何度も見返したくなるぐらい気に入ったなら買って損はありません。

 そしてDVDを買うメリットは手元に残せる以外にもあって、DVDには稽古中や公演の舞台裏映像が付いてきます!(初回限定盤のみ。通常盤には付いてきません。)もちろん配信版には付属していません。舞台裏でみんながニコニコ仲良さそうにしてるのを見ると人が死にまくって傷付いた心が回復します!!できればDVDも買え!!


②迷ったら再演版を見る

 舞台ダンロンシリーズには初演版【2014年/ダンロン初代・2015年/ダンロン2】と再演版【2016年/初代・2017年/2】があります。(3は2018年の1公演のみ。)複数タイトルあって困惑しますが、今から見るなら再演版1→再演版2→3の順番で特に問題ありません。

 再演版は様々な演出や展開が一新されています。そもそも初演版にはオシオキがありません。初演があってこその再演なので初演版を疎かにすることは出来ないし初演版だけのいい部分もいっぱいあるのですが、まあ再演版の方が初めて見るなら入りやすいと思うので…どっちもなんて時間的に見れないよという人は新しい方を見ましょう。

 ちなみに初演版は一部キャラのキャストが違っています。例えばダブルキャストの葉隠は、初演版・再演版共に片方は原作声優の松風雅也さんなのですが、初演版のもう片方はなんとお笑いコンビNON STYLEの石田明さん(再演版のもう片方はチョコプラの長田さん)。
 石田さんは役者としてだけでなく、初演版の演出も担当するというマルチな才能を発揮しています。そういう再演版との違いを確かめながら見るのもまた一興です。




ダンガンロンパ THE STAGE〜希望の学園と絶望の高校生~2016 
無ネタバレ紹介

桑田が名演!!
 
舞台版の桑田は原作以上にいいキャラに仕上がってます。演じるのは遊戯王5Dsの不動遊星役で有名な宮下雄也さん。その演技力に高校生というより気のいいおっちゃんって感じの顔だな…という第一印象は一瞬で吹っ飛びました。
 何が凄いかってクロ疑惑が出てきてからの必死さが凄い。もはや気迫すら感じてしまう程。そしてその必死さが、初めてダンロンの第一章をやった時のこれからの出来事への恐怖を掘り起こしてきて更に心に来る…まさに第一章のクロとして最高の演技を見せてくれます。
 他にもクライマックス推理やオシオキ時の舞台オリジナルの会話がいい。桑田の動揺とか後悔だったりが伝わってくるセリフで、元々同情されがちな桑田への印象が更に変わってきます。普通犯人になったらこれぐらい動揺するよな…という点ではある意味シリーズで一番クロらしい人物なのかもしれない。


葉隠が葉隠!!
 葉隠役は声優・俳優の松風雅也さん。まさかの原作葉隠役が舞台版で継投。本人なので言うまでもなく再現度は完璧。葉隠が一人だけそのまんま舞台にいる時点で見てて面白いのでそれだけで見る価値はあります。
 そして原作と同じだから起用された…というただの一発ネタで終わる訳もなく、元々役者としてデビューしていた松風さんの演技は完璧。うさんくささは少なくなりつつ、色んな場面でアドリブで笑いを取って舞台を和ますという、松風さん本人の要素が濃くなって更に頼れる年上キャラに!(松風さんは舞台当時40歳です。)
 20代と40代が同級生になるのが舞台ダンロン!舞台版の葉隠は一味違うべ!


石丸!!!
 
舞台の石丸は発言や行動で笑いを取るコメディリリーフ枠。天然気味の言動が面白いだけでなく、石丸の挙動は舞台だと物凄く映えます。
 モノクマの朝礼に毎回挨拶をする…という原作通りの行動を「おはようございます!!」とピシッ!と直角に頭を下げられるだけで面白い。時にはツッコミに回って松風さん葉隠のアドリブのボケをたしなめてたりもして、ボケもツッコミも両方出来るという非常においしい役どころで舞台の笑いをかっさらっていってます。
 そんな存在だけでおいしい役回りでありながらギャグキャラに留まらないのが舞台版の石丸。多くは語りませんが石丸には物凄くいい見せ場があります。こっちもいいかも…という新たな石丸の境地が見られます。石丸ファン必見。


江ノ島がヤバい!!
 ヤバい!!江ノ島ヤバい!!神田沙也加ヤバい!!後半神田沙也加劇場!!他の役者も実力派揃いなのにそれどころじゃない!!圧倒的!!一人だけレベルが違う!!一人で舞台を支配してる!!見ろ!!




スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE 〜さよなら絶望学園〜2017 
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田中が面白かっこいい!!
 
石丸からコメディリリーフ枠を引き継いだ男、それが田中眼蛇夢!
 あの中二全開の言動が面白いのは当然として、それ以上に舞台ならではの身振りが面白い!井上正大さん演じる舞台田中は体全体を使い、キレキレの動きで舞台をこれでもかと動き回る!ゲーム版が静の田中なら舞台版はいわば動の田中。
 そして石丸から引き継いだのはコメディリリーフ枠だけじゃない、田中にもめちゃくちゃかっこいい見せ場があります!同じく田中ファンは必見。


小泉おねぇが小泉おねぇ
 何度でも言いますが小泉おねぇがダンロンシリーズで一番好きです。まず舞台のおねぇはかわいい。顔がかわいい。ちゃんとそばかす。ちゃんと写真を撮る時片膝立てててかわいい。何もない時も舞台の端っこで写真を撮ってて小泉おねぇらしい。ひよこちゃんとの交流が増し増しでほっこり。
 かと思えばそんなかわいい要素だけではなく、2章のクライマックス推理は限られた時間の中で小泉おねぇという人物と超高校級の写真家という才能を最大限に掘り下げています。本当に見たかったものが見れました。これぐらいの気合入った掘り下げが他のキャラにもいっぱいあるぞ!!小泉おねぇが好きでも普通でも舞台2を見ろ!!


澪田の再現度が凄すぎるっす!
 澪田唯吹はあの声とハイテンションを完全再現してるっす!実写で!舞台上で!終始息も切れず!やべーっすよ!!第一声の「こんちゃーっす!」かあ、あ!唯吹!ってなったのは冬子ちゃん以来の衝撃だったっすね…!
 更に唯吹ソロの見せ場のライブシーンも当然あるっす。生歌で。生っすよ生。どんな体力と歌唱力してんだと思ったら、演じてるのがラブライブサンシャインで声優やってる伊波杏樹さんだった訳でー!いつもライブやってるならそりゃ息切れせずに歌えるっすよねー!とにかく唯吹のファンなら見た方がいいっす!
 あ、ちなみにクライマックス推理でどんな死に方したかも見られるらしいっすよ。原作だとぼやかされてた唯吹の死ぬシーンが見たいってやべーファンも見た方がいいっすね。あと日寄子ちゃんのやべーファンも。これ書いた人真昼ちゃんの死に方見られたって喜んでたっすよ。やべーっすね。


狛枝がヤバい!!
 
恐らく舞台版の○○という括りでは江ノ島の次に有名な野郎でしょう。舞台の狛枝はイカれてます。
 いやまあ原作の時点で大分イカれてたんですが、舞台版は終始「それにしてもここまでイカれてたか…?」と思ってしまうような圧巻の怪演。叫ぶ、目を見開いたヤバい顏をする、ステージから飛ぶ、皆に詰め寄ってドン引きされる…とにかくテンションがやばいです。
 そもそも原作みたいな爽やかながらねっとりとした気持ち悪さではなく、完全にハイテンションな気持ち悪さなので原作とはかけ離れてはいます。それでも見終わった直後には狛枝だったな…と思えて、後から振り返ってみると圧倒的再現度という意味の分からないキャラ。それが舞台狛枝。
 特に笑い方が凄いです。「ハーッハッハッハ…!」って声が上ずる高笑いが完全に緒方恵美の声と息遣い。あれを完全再現できる凄い演技力があるからこそ崩しまくった自分流の狛枝が出来るんですね。
 そして演技力もヤバければ、狂気の演技に引っ張られたのか行動も更にヤバくなっていて、原作以上に話をひっかき回し舞台を大混乱させてきます。原作でも大暴れだったあいつが更に暴れるとなると…もうめちゃくちゃ気になってきますよね!こいつが更にヤバくなってるという時点で舞台2の面白さは保証されてると断言していいでしょう。見ろ!
 そして、そんな怪演を見せたのは『戦国鍋TVの蘭丸役』で(個人的には。一般的には刀剣乱舞の舞台とか。)有名な実力派2.5次元舞台俳優、鈴木拡樹さんです。当時結構戦国鍋TVは見てただけに後に蘭丸役だと知って超びっくりしました。

舞台を見た後に「敦盛2011」を見ると狛枝の顔のイケメンが踊っててなんか面白い。
(戦国鍋TV…戦国時代を舞台に色々なコントをやるサラリーマンNEO的番組。ミュージックトゥナイトという有名曲のパロディコーナーが特に人気で、その中で一番代表的であろう曲が『信長と蘭丸』の『敦盛2011』。今でも歌えます。)


終盤がヤバい!!
 ネタバレなしなので何も言えないんですが見てください。誰が好きならとかじゃなくて2が好きなら見た方がいいです。




ダンガンロンパ3 THE STAGE2018〜The End of 希望ヶ峰学園〜 
無ネタバレ紹介

※絶絶はやっておいた方がいいです
 シリーズの外伝にあたる絶対絶望少女をやっておかないとある人物が登場する場面で頭にハテナが5個ぐらい浮かびます。(実体験)
 出来ればやろう!まあ最悪やらなくてもいいけどハテナが浮かぶ覚悟はしておこう!


全体的に再構成されたストーリー
 アニメダンロン3の未来編のみに絞って舞台化したのが舞台ダンロン3。最初に言った通りアニメを見る前に舞台を見たのですが、希望編含めて全13話は舞台化するのに長すぎず短すぎずのちょうどいい分量。

 そもそも1・2は原作がめちゃくちゃ長いので、尺の都合で仕方のないカットが結構あります。(2のあのシーン…本当の本当に入れてほしかった…!!でも仕方ない…!)そんな感じもあり舞台1・2は多少駆け足で、原作を遊んでから見ないとわかりにくかったりもします。いわば事前知識を入れてるのは前提であろう作り。ところが舞台3は舞台から見ても過不足なく楽しめる!つまり説明する部分をちゃんと説明した上で作品として一作で完結している!地味に凄いよね。

 そしてダンロン3は学級裁判もクライマックス推理もない異色作なんですが、それらがなくても舞台ダンガンロンパ3はストーリー展開と戦闘シーンという二つの見せ場がしっかり描かれていて非常に面白かったです。
 ストーリー展開は脚本で再構成している部分あり、原作通りだけど迫真の演技と演出力で黙らせてくる部分ありで、原作を知ってる人は「ここをこう改変してるの!?」と最高に楽しめます!もちろん知らなくても苗木君かっこいい…霧切さんクール…!でちゃんと楽しめます!
 戦闘シーンも舞台1・2で何回かあった戦闘シーンを更にスタイリッシュにしたという感じで、見ててワクワクしてきます。戦闘シーンが多いということはもちろんモノクマダンサーズも大活躍。舞台3はモノクマダンサーズファンの皆さまにも見せ場盛りだくさん!

 特にラストシーンは最高にいい!舞台ダンロンシリーズを締めくくる作品に相応しい、見たかったシーンを見せてくれます。どういう場面なのかは自分の目で見てください!
 総じてアニメを当時見た人に見てほしいこそ作品です。もちろん見てない人も見てほしい。3の印象が変わるはずです。舞台から見た俺がめっちゃ楽しめたんだ!信じてくれ!!


十六夜さんが最高!!
 
舞台の十六夜さんは最高にキャラが立ってます。舞台での立ち位置としては石丸・田中から引き継いだ伝統のコメディリリーフ枠。しかし前の二人が動き回って笑いを取る動の笑いなら、十六夜さんはポツリと一言二言喋って笑いを取る、いわば静の笑い。今までの舞台ダンロンにいそうでいなかったキャラで凄く新鮮に映りました。
 特にダンロン3は最初から最後まで緊迫した場面が続くので、十六夜さんのギャグは場を和らげる清涼剤として非常に印象に残ります。
 そしてコメディリリーフ枠伝統のカッコいい見せ場も健在!!お前……その時のために…!!ってなります!なりました!
 十六夜さんのファンじゃなくてもいい!好きでも好きでなくても見ろ!アレを見たら絶対に十六夜さんが好きになる!私は好きになりました!!!


天願会長がいい!!
 舞台ダンロンにはコメディリリーフ枠以外にも2つ伝統の枠があります(※全部筆者が勝手にそう呼んでるだけ)。それがベテラン枠芸人枠
 若くてかっこかわいい俳優達に一人挟まるおじさん、(1だと葉隠役・松風雅也さん<当時40歳>、2だと左右田役・いしだ壱成さん<当時43歳>。)そして同じく挟まる芸人。(1の大神役・南海キャンディーズしずちゃん、2の花村役・三瓶等…)しかしそんなイケメン達に押されることもなく、ベテランだからこそ出来る俳優経験を活かした渋い演技や、コントでの演技力を活かした味のある三枚目の演技で、各々の演じるキャラにマッチした演技を見せてくれます。
 そして舞台ダンロン3の天願会長役は、なんと大ベテランでありながら大喜利名人として有名な芸人・バッファロー吾郎竹若元博さん<当時48歳>。ベテラン芸人だからこそ出来る好々爺な普段の一面と、後半で見せるあの一面の両方を演じきっています。
 そりゃ芸人かぁ…と言いたくなる気持ちもわかる!でも芸人さんってドラマによく出る人もいっぱいいるぐらい演技がうまいし、舞台ダンロンシリーズは全員キャラにマッチしたキャスティングがされてて当然演技もバッチリうまい!舞台ダンロン1と3を三回、舞台ダンロン2を四回見た俺が言うんだ!!信じてくれ!!!


これより先舞台版ネタバレありまくりの感想です。くれぐれも舞台版を見てから見てください。







②-1 ダンガンロンパ THE STAGE〜希望の学園と絶望の高校生〜2016 
ネタバレあり感想


展開とかの舞台全体に関する感想
 ダンガンロンパシリーズでお馴染みかつ話の根底になってくるのが、"〇〇だから"の展開。2では"ゲームだから"ゲーム世界が舞台だし、3では"アニメだから"アニメーターが重要なキャラとして関わってきたりとメタ要素盛りだくさん。
 ですが初代ダンロンにはそういうメタ要素が実はありません。実際2作目3作目…と続いたからこそ出来る変化球な訳で、1作目でそんな変化球を投げたところで大暴投ではある。でもそんな細かいことは置いておいて1にもそういうの欲しいよな~!と思っていたところで、舞台1のある改変…というかストーリーを一切改変してないのに演出の力だけで"舞台だから"のメタ展開を生み出した衝撃の演出でガツンと殴られるとは思いませんでした。
 その場面というのが物語終盤、江ノ島の口により「このコロシアイは世界の人々に配信されている」と語られる場面。このネタバラシ自体は原作と変わらないのですが、それが語られた後に苗木君達が客席の方を振り返って、腐川さん(ジェノ翔)が「見るんじゃねぇ!」と叫ぶあの演出!これ本っ当に凄い!!!
 わかりますか!?ここで苗木君がこちらを振り返ることでコロシアイを見てる世界の人々→舞台上の苗木君を見てる客席の私たちというメタ構図になってるんですよ!
 原作だと苗木君=プレイヤーという視点で遊んでるからネタバラシされても「えぇ!?俺達見られてたの!?」というタイプの驚きが来るんですが、舞台だと苗木君とプレイヤー(=舞台を見てる私達)が別の視点だから「えぇ…このコロシアイを見てる人々って…俺じゃん…!!」というメタな驚きがやってくるんですよ!!そしてジェノ翔が客席に向かって叫ぶことで、私たちは第四の壁を通してコロシアイを見て喜んでる悪趣味な野郎なんだ…!と自覚させられて完成する!そしてこれを原作の脚本は変えずにやっているのがあまりに美しい!細かい改変点ではありますが鳥肌立ちまくりだった大好きなシーンです。
 あと……やっぱりこの「コロシアイを見て楽しんでるの俺だ!」ってとこにはアレの要素もありますよね。あの……アレ。ここでネタバレを言うことのできないアレ。わかる人はああ確かにアレっぽいかもねと思ってください。

 調査パートで全員で調査してるのとかも地味だけど好きです。単純にみんな協力してて偉いな~頑張ってるな~感が出てるのもいいし、調査が掛け合いの形で進むのでテンポよく証拠が出揃っていくのもいい。裁判パートも同じくみんなの話し合いで進んで、苗木君がそれは違うよ!とSE付きで割り込んで話が進んで…ととにかくテンポが良くて爽快。この会話劇の形で調査や裁判が進むというのも舞台ならではだと思います(ゲームもテンポは良いけどどうしても会話の間を作らないといけないのはある。)。
 そして何より凄いのが、ダンガンロンパをどう舞台化するか?調査パートをどう進めるか裁判パートどうするか?みたいなことが舞台1の時点でほぼ完成していて、その形式をそのまま舞台2で使えるということ。後の舞台2で演出が改良というか変わってる部分はあるんですが、それでも細かい部分を変えるだけで大筋はそのままなので舞台1の時点で完成度がもの凄いです。

 それ以外にもセレスさんの事件とか石丸の最後とか江ノ島の圧倒的名演とか良かった点があまりにもありすぎるんですが、ありすぎるので各キャラの良かった点は1人1人個別に書きたいことを書き連ねてます。とにかく舞台の感想を一言で言うと最高でした。全体の感想は以上です。


舞園さやか - 後藤郁
 初代ダンロンで一番好きなキャラが舞園さんです(2だと小泉さん)。ダンロンといえば濃いキャラが多すぎるゲーム、そんな中で自分はあえて普通なキャラが好きなのかもしれない…という話を友人にしたら「舞園さんは普通じゃないだろ」と返されました。ひどい。
 でも正統派美少女のように見えて実は黒幕すら想定外の速さで桑田クンを殺しに行くヤバさがあるという二面性が舞園さんの魅力でもあるので、普通じゃないだろというのも核心を突いているのかもしれない。

 27分で死亡(実際に測りました。その後もクライマックス推理とかで出番はあるので実際に舞台に立ってる時間は27分より長いです。)という短い出番ながら苗木君の心に傷を残す、もとい視聴者に印象を残してくるのが舞台版の舞園さん。実写で見るとかわいいしリボンがでかい。あと太ももがいい。めっちゃいい。部屋を交換しようという相談の場面で舞園さんが苗木君に抱き着いてくるんですが、実写になるとこの子に抱き着かれたら苗木君もテンパるよな…という説得力がありました。
 そして、その抱き着いている時に舞園さんがギロッ…と顔を上げ、客席の方を見るのがあまりにもリアルで怖すぎる。普段のしぐさの可愛さと、学園から出られないと知った時のテンパリ具合や殺しに行く覚悟を決めた時の怖さという二面性がちゃんと27分の中で表現されていて、サヤカーもニッコリの舞園さんでした。もしかしたら原作でも苗木君から見えてないだけであんな顔をしてたのかもしれない…。

 特に印象に残ったシーンは上で挙げた抱き着くシーンと、クライマックス推理で残した舞台オリジナルの最後の言葉。舞園さんがダイイングメッセージを残したのはただの仕返しなのか、それとも苗木君を助けるために贖罪として残したのか?原作だとどちらとも取れるようにぼかされていましたが、それにちゃんとした答えが出ています。

舞園 (ト 虫の息で)……苗木クン、ごめんね……ごめんね……苗木…クン。

cornflakes,2016,舞台「ダンガンロンパ THE STAGE 希望の学園と絶望の高校生2016」オリジナル上映台本,P87

 こういう原作だと見えなかった場面に補完を入れてくるのが舞台版クライマックス推理の好きなところで、その上でこのシーンでは舞園さんがごめんねと謝ってるのが舞台版の優しさというか救いというか、救いを入れてくるタイプの愛を感じられて凄く好きです。
 原作を尊重するのならここはぼかしてもいいシーンだし、はっきりとした答えを出してしまうと蛇足だと言う人もいるかもしれない。でもそんなことは承知で俺は答えを出したいんだよ!苗木君を救ってやりたいんだよ!という改変した人の思い切りを感じられて好き…というのは考えすぎでしょうか。考えすぎでしょうね。
 とにかくほぼほぼ不満はないんですが一つだけ!舞園さん関連で一つだけカットされて悲しかったシーンがあります!苗木君の「ただの勘だよ」めっちゃ好きなのにカットされてて残念!!でもそこ以外は大満足です!

 細かい推しポイント:クライマックス推理で地味に「桑田君はもう現役じゃないけど私はこれからだから死んでくださいよ!」的なことを言っている舞園さん。いやまあ良心の呵責に耐えるための言葉なのはわかるんですが、だとしても自分をごまかす言葉でコレが出る時点でやっぱり舞園さんは普通じゃないと思います。
 舞台版では動機ビデオ見せられてから即解散なので地味に殺すのを決意するのが更に早くなっていたりと、舞園さんのヤバさも地味に増量されてます。

本当に怖い。


桑田怜恩 - 宮下雄也
 ネタバレなし紹介で先に書いたように、とにかく追い詰められてからの演技が凄かったです。当時から舞台でバリバリ活躍している実力派なだけに、必死の命乞いだったり罪を後悔しながら必死に偽装工作を行う演技、いわば人間臭い演技が物凄く上手い!そういう犯人としての必死さの演技に関しては舞台初代どころかシリーズ全作で並ぶものがいないと断言してもいいレベルでした。
 クライマックス推理の中で、葉隠の水晶玉を握りしめて白球に願いを込めるように「頼む頼む頼む…!あの時の力を…!」と何度もつぶやく場面があるんですが、「あの時の力を」という短い言葉の中に(原作だと桑田クンの通信簿でわかる)本当はまだ野球愛が眠っていたという要素と、でもそれを使うことになるのが殺人の隠蔽という辛すぎる状況…ダンロンらしい胸のえぐり方が詰め込まれていて物凄くいい原作補完だと思います。そして宮下雄也さんの演技はあまりにも迫力があり、二重三重に印象に残る。
 その後も生き残って必ず償うからと何度も呟いていたり、オシオキ前には苗木君に「罪を擦り付けようとしてごめん」と謝ったり…桑田クンの軽薄に見えるけど根は善人で常識的という面が舞台版では強調されていました。そして善人の部分がより強調されてるだけに、オシオキシーンはより見ていて辛い。1章でダンガンロンパの恐ろしさを観客に焼き付ける…という点では100点満点超えて150点の桑田クンだったと思います。

 特に印象に残ったのは舞園さんを刺してしまう前、「桑田君はもう現役じゃないけど私はこれからだから死んでくださいよ!」という言葉に対し叫んだ「オレにだってなぁ…夢ぐらいあるんだよぉ!」という言葉(cornflakes,2016,舞台「ダンガンロンパ THE STAGE 希望の学園と絶望の高校生2016」オリジナル上映台本,P85-86)。
 実際桑田クンのミュージシャンになる夢は理想的すぎるし、必死の努力でアイドルになった舞園さんからすれば芸能界をバカにしてると見えるのも当然ではあります。実際夢をバカにしたのが舞園さんの殺害対象になった決定的な理由ですし(…とよく言われるだけで実際どうなのかは舞園さん本人しか知りません)。
 でも、そんな傍から見ればワナビーにも程がある「ミュージシャンになる」という夢も、桑田にとっては本気の夢で、最後にはそれで激昂した桑田クンに刺されてしまうというのは舞園さんにとっては物凄い皮肉。
 根が常識人だから夢には常に本気だけど、軽薄に見えるからすれ違いが起きて悲劇が生まれてしまう…たった一言二言なのにここまで深掘りできるフレーズを補完できるのは桑田クンを知り尽くしてないと無理でしょう。今後何回も感想で言うんですが、舞台スタッフのダンロン愛は本物です。

 細かい推しポイント:カーテンコール(初回限定盤でのみ見られる特典映像の方。)で舞園さんと一緒にダンスして決めポーズ取るとこ。舞台はカーテンコールに入れば殺した殺されたの因縁はおしまい!レオンフィーチャリングサヤカ~~!!と嬉しくなる半面、こういうハッピーな未来もありえたんだろうな…と少し悲しくもあり。


不二咲千尋 - 石田晴香(AKB48) / ※泉貴(THE HOOPERS) / ※森山千菜美
(※奥仲麻琴さん・森山千菜美さんはトリプルキャスト、ダイジェスト映像のみ。)

 ※トリプル・ダブルキャスト…ある日の公演は誰々さんが不二咲さんをやり、別の公演では違う人が…という形式。
 舞台ダンロンシリーズではダブル・トリプルキャストの内、メインキャスト(実際は全員が等しくメインキャストなのですが、このnoteでは便宜上メインキャストと呼びます。)以外はDVDにはダイジェスト映像のみしか収録されていないため、各キャラの感想はメインキャストの演技を基本として書いています。俺だって当時からダンロンを知っていれば舞台行って見比べてどっちの演技もいいって感想を書きたかった…!

 シンプルに小さくてかわいい。事あるごとに怯えていたり、大和田クンとの掛け合いといった舞台だから見える挙動一つ一つがかわいかったです。特に大和田クンとの掛け合いは、1シーンだけではあるものの原作を補完するいい追加シーンがあってほっこりした気分で見てられました。
 いつも通りに人を煽りまくる十神クンに何も言えなくて逃げ出してしまった不二咲さんを大和田クンが追いかけてきて会話して、ついでにトレーニングの約束もして、そこに石丸クンも追いかけてきてサウナで決闘…という流れなんですが、どういう流れでトレーニングの約束をしたの?という原作補完を、石丸クンと決闘することになる流れの中で自然に追加していて流れとして綺麗。
 会話の内容も女子への対応に不慣れな大和田クン(ここは舞台版でキャラが変わってる部分です。詳しくは大和田クンの時に書きます。)の焦り方や、不二咲さんの弱いことを気にしてる態度、石丸クンの真っ直ぐすぎて強情ですらある姿勢が三者三様に描かれててすごくほっこり。そしてこういう追加シーンがあるだけに、三人とも2章でいなくなってしまうのが辛くて悲しくなってくる。仲がいいシーンをいっぱい追加することで。そんな仲がいいみんながコロシアイをするとより辛くなってくる…というダンガンロンパらしさをスタッフはよくわかってます。ただ単にファンが喜ぶシーンを入れよう!だけじゃないのが嬉しいけど許せねえ…!
 特に舞台版では秘密を暴露される…という動機が用意されていない分、あの場面で地雷さえ踏まなければ生き残れていたかもしれないと思うとよりやりきれない。地味にモノクマが動機を用意しているのは舞台1だと1章だけだったりします。

 割と序盤がサクサク進むので、出番は時間で考えると長くない…と思わせておいて、原作通りに(正確には3章での出番カットで5章が初登場なので原作通りではない)アルターエゴとして再登場。そしてそのアルターエゴもクラスメイト皆の写真を探したり、16人目の高校生の正体を調べ上げたり、学園長の最後の映像をみんなに届けたりと、大活躍どころではない大活躍。
 その上で(戦刃さんの裁判がなくなったので)こっそりとオシオキを受けることもなくなっていて、もしかしたら生存してるかも?と思えるような退場になっているといういい立ち位置を貰っています。
 前半と後半両方でちゃんと見せ場があり、そしてどちらにもかわいさがある(パソコンカタカタってやってるアルター不二咲さんかわいい。)いい不二咲さんでした。

 細かい推しポイント:配信・DVD版でのメイン不二咲さん役の石田晴香さんは、後にダンガンロンパV3の入間美兎の声優を担当しています。
 
舞台の不二咲さんを知っているとあの下品なキャラのギャップはえぐい。


大和田紋土 - 八神蓮
 舞台ダンロンの大和田クンは、原作の「わかりやすい粗暴なヤンキー」から「どこか渋さが見え隠れする昔ながらの硬派な族」へとイメージチェンジしています。女子の不二咲さんにどう接したらいいかわからずうろたえるというのは一般的な暴走族像より更に昔の一匹狼な感じがあるし、そもそもの喋り方とか動きが原作とはかなり別物。大和田クンに関しては原作を完全再現するというより、演じる役者さんの解釈と、その役者さんの持ってる味が合わさった結果キャラが変わったという印象を受けました。
 そしてそういう硬派キャラという新境地の大和田クン、最初はまあ「えぇ!?別物じゃん!」と当然面食らいました。それでもあぁこういうキャラなのねと理解してからはすぐに受け入れられて、見終わったころにはこっちの大和田クンありだな…と好きになってました。掌返しがすごい。

 舞台では硬派な部分が強調されているだけに、硬派な優しさが色々な場面で出ているのが印象に残ってます。そもそも苗木君を殴らないし、不二咲さんに対しては場面場面で面倒見がいい漢を魅せるし、何よりもちゃんと最後に石丸クンに謝る。もう本当にこうやって素直に謝罪して最後に男を見せてくれるのが見たかったんです。このシーンに導いてくれただけで舞台版のキャラ付けが好き。
 個人的に印象に残ったのが死後の不二咲さんに対する行動。原作だと男であることを隠し約束を守るために女子更衣室に移動したのですが、舞台版では不二咲さんの「強くなりたい」という強さを尊重して男子更衣室のままにしています。不二咲さんのための行動という点では同じなのに、「女子更衣室に移動する」と「男子更衣室に置いたままにする」で行動は真逆、そして尊重したものも「(不二咲さんが男だという)約束は絶対に守る」という兄の言葉と「(不二咲さんの)強さそのもの」で全く違うという、単純に尺の都合で変わっているだけに見えて深く考えてみると面白い改変だと思います。

 そしてその後も兄弟である石丸クンに妙な事考えるなと自分への投票を促し、石丸クンを見殺しにしてしまったことで本当の意味で覚悟を決めてオシオキに挑んでいく…というもう本当にこれが見たかったんだよという男気を魅せてくれました。
 昔ながらの人情には厚いヤンキーと見せかけて実は…という、あえて王道を外してきた原作から、硬派で不器用だけど最後には男を見せる族という王道そのものにイメージチェンジした舞台版大和田クン。ダンガンロンパといえばあえて王道をやらない、という認識がある上で更にあえて王道をやる!という舞台版の特徴の二重のあえてが一番色濃く出ていたキャラだったと思います。

 大和田クンのオシオキといえば作中屈指の現実離れしたオシオキ。舞台版でどうやって再現するんだろう…と思っていたんですが、モノクマダンサーズの小物を使ったバイク再現が面白くてかなり頑張っていました。
 とはいえ流石に舞台だとバターになるのはありえなさすぎてカット。その代わりにこっちでは兄貴の死因の交通事故要素(よそ見してトラックに撥ねられる)を拾っている皮肉なオシオキになっていてこっちも好きです。そもそもバターになるってなんなんですか冷静に考えたら。

 細かい推しポイント:「よりにもよって一番か弱いな不二咲さんを狙うなんて卑怯だよ」と言う朝日奈さんに対し「あいつが弱いって誰が決めた」と返すシーン(cornflakes,2016,舞台「ダンガンロンパ THE STAGE 希望の学園と絶望の高校生2016」オリジナル上映台本,P122)。
 油断してると聞き逃してしまいそうなぐらい短いシーンですが、舞台の大和田クンが不二咲さんの強さを尊重していることがわかるいいセリフです。


石丸清多夏 - 杉江大志
 一言で言うと舞台ダンロンのコメディリリーフ担当。あのお堅いキャラをそのまま舞台に持ってきたようなキビキビと固い動き(褒め言葉)とハキハキとした喋り方でまず雰囲気の再現度が完璧。そしてその雰囲気のままに石丸クンのキャラ通りに動いてるだけで笑いが客席から生まれるという、物凄くオイシイキャラでした。
 その動き方喋り方だけで既に面白いのもそうなんですが、天然ボケにも真面目さを活かしたツッコミ役にも回れるのが日常パートでの会話回しで強すぎる。舞台1~3全作を通してボケとツッコミ両役に回ったことがあるのが石丸クンのみというだけでこのポジションが貴重すぎ強すぎなのがよくわかると思います。(石丸クン以外だと田中に1回ツッコミを入れたことがある澪田ぐらい。)後は特に時々変な行動を取ってるのが面白い。エアバイクで帰るな!二人乗りするな!

 そしてコメディリリーフとして相当いい役回りを貰っておきながら、あまりにもカッコいい退場シーンまで貰っているのが舞台版の石丸クン。まずクライマックス推理中に外野から「兄弟やめろ!」と叫んでいる段階であまりにも悲痛。でも「舞台版では自白シーンでもあるクライマックス推理中に声で介入できるのって舞台ならではだよな…」と分析をしてしまう自分もいてどこか複雑。
 その後大和田クンへの投票タイムに移り、「信じない!俺は信じないぞ…」(cornflakes,2016,舞台「ダンガンロンパ THE STAGE 希望の学園と絶望の高校生2016」オリジナル上映台本,P145)と大和田クンと会話を続ける石丸クン。この時点でああ、原作通りにおかしくなってしまうのかな…と思っていたのですが、待っていたのはそれ以上に衝撃な展開でした。
 投票の結果、石丸クン一人だけが原作通りに不正解。なんですが……なんだか皆の様子がおかしい。そのまま石丸クンのオシオキに移って……え?え!!?
 あ、そういえば序盤の学級裁判ルール説明で…

霧切 つまり、多数決で犯人を当てれば犯人は処刑されるけど、もし不正解〔中略〕……ただし、間違った人物に投票した者は処刑対象になる……

(cornflakes,2016,舞台「ダンガンロンパ THE STAGE 希望の学園と絶望の高校生2016」オリジナル上映台本,P54)

 言ってるうううう!!!!!霧切さんちゃんと説明してるううううう!!!!!!

 舞台版で石丸クンが選んだまさかの選択肢、それが「兄弟の契りを守り、大和田クンと共に死ぬ」という選択。原作と大体同じだろと思って流していた舞台版オリジナルルールをここで拾ってくるなんて…!という衝撃もさることながら、単純にこの展開が良すぎる!原作通りぶっ壊れて石田になって最後には殺されてしまうより本人的には救いがあるかも…と思える!こういう感情を動かしてくるシーンは良さを説明しろと言われてもシンプルにいいからいいんだとしか言えない。
 そして細かいけれどこのシーンを更に良くしているのが、石丸クンの一人称の変化。元々原作だと石田になってしまった後は一人称は「俺」になるんですが、実際舞台版でもこの「俺」が追いつめられると出てるんです。だから見てる方はおかしくなったか…?と思うんですが、それが最後にはちゃんと僕に戻っている。

石丸 さあ、君たち、僕を刺し貫き給え!

(cornflakes,2016,舞台「ダンガンロンパ THE STAGE 希望の学園と絶望の高校生2016」オリジナル上映台本,P147)

 この変化があるからこそ、わざと投票を外すという選択が「壊れてしまって自暴自棄で選んだ」のではなく「最後の最後に本来の石丸クンに戻り自分の意志で選んだ」とわかるんです。
 大和田クンから男気を学んだ上で、原作みたいにおかしくなって上っ面だけ真似るのではなく本当の意味で男を見せ、兄弟の契りを果たす…最高の男だよお前は!

 細かい推しポイント:「忘れろ、忘れろ、忘れろビーム!」。
 あの迷セリフは舞台版でもあります。何気に出てくるシチュエーションはアニメ版と同じです。
 原作だけでなくアニメからも要素を拾ってくるのがいい。愛。らーぶらーぶ。


山田一二三 - ※松尾駿(チョコレートプラネット) / 雨野宮将明
(チョコプラ松尾さんはダブルキャスト、ダイジェスト映像のみ。)
 正直なところ、舞台版だともの凄く影が薄かったです…。そもそも舞台ダンロンでは3章が丸々カットされています。石丸クンは原作でも2章が見せ場だったのに対し、山田クンは3章でセレスさんと共犯して遺言も残し、実は元からクラスメイトだったことまで示唆するという重要な役割を果たしていました。それをカットされては出番も少なくなるのも当然…と言いたいんですが、個人的に山田クンの影が薄かったのは別の理由があると思ってます。

 舞台ダンロン1では3章がカットされた結果、セレスさんが4章で大暴れ。その結果セレスさんと山田クンが投票を外して死ぬんですが(事件の詳細はセレスさんの欄で。)…。
 セレスさんが「何度もグンニグルの槍で刺し殺すのもう飽きたよ!」(モノクマ談)でちゃんと原作通りオシオキを受けるのに対し、山田クンはあっさりとグンニグルの槍で刺されて終わり。

山田 だって、セレス殿が自信満々だったからボクは、ボクはですね!…い、い、いやだーーーっ!
〔中略〕
山田 (ト 刺されて)い……や…だあああああぐ…ぎぎぎぎぎ。(ト 絶命)

(cornflakes,2016,舞台「ダンガンロンパ THE STAGE 希望の学園と絶望の高校生2016」オリジナル上映台本,P178)

 不憫どころじゃなくないですか???重要な手がかりになった原作の遺言に対して、舞台での遺言「ぐぎぎぎぎ。」って。舞台1でも2でも自分の事件がカットされてるキャラはその代わりに別の見せ場を貰ってたりするのに、山田クンが貰ったのは「ぐぎぎぎぎ」…。間違いなく舞台ダンロン全作で一番の不憫なキャラです。
 ただ、そういうメインを張る場面以外ではちゃんと活躍してます。そもそもあの独楽みたいな体型を実写で再現してる時点で面白いし、ボケ役としてちゃんと何度も笑いを取っていました。ただまあ…メインでの活躍が少なすぎて舞台から入った人はギャグギャラとしか認識出来ないんじゃないかってぐらいの不憫な扱いでした…。

 そんな山田クンを語る上で欠かせないのがキャストの豪華さ。ダブルキャストのチョコプラ松尾さんは今やバラエティで見ない人がいないぐらいの大人気芸人。ちなみに相方の長田さんは葉隠クン役のダブルキャストです。
 今では「え…チョコプラの二人がダンロンに…!?」というリアクションをされそうな豪華キャスティングですが当時は2人もブレイク前。ですがブレイク前とはいえキングオブコント準優勝から2年後、知名度は十分。
 そして配信・DVD版でのメインキャストの雨野宮将明さん。出演当時はほぼ無名の芸人さんですが、なんと今ではガーリィレコードチャンネルのレギュラーメンバーとして大活躍中。今やテレビとネット2方面で地位を築いている豪華2名が山田クン役に大集合、もしかしたら将来ブレイクすると見越した超高校級の分析力なキャスティングだったのかもしれません。

 細かい推しポイント:「バイキンマンがシャワーを浴びるようなもの」というよくわからない例え。普通に考えるとややウケぐらいの日替わりシーンですが、地味にダンガンロンパの世界にはアンパンマンがあるという考察が出来たり出来なかったり。まあ日替わりシーンでそこまで考えなくていいよね…地味に。
(※日替わりシーン:台本に書いてなくて公演中毎日変わるボケ。他の舞台ではボケ以外の日替わりシーンもあるが基本舞台ダンロンの日替わりはボケ限定です。)


セレスティア・ルーデンベルク - 池端レイナ
 とにかくセレスさんを語るとなると3(+4)章があまりにも比率が大きすぎる。もちろん普段の演技もいいものなんです。美人。セレスさんのおしとやかな雰囲気が出てるけどちゃんとキレる時はキレる。雰囲気の再現度はもう当然ながらバッチリです。
 それでも3(+4)章でセレスさん劇場とでも言うしかない超高校級のギャンブラー一世一代の大勝負を見せられた以上、アレが最高すぎてアレのどこが良かったかを語りつくすしかないんですよ!それぐらい舞台版でのあの改変にはセレスさんの魅力と、超高校級のギャンブラーという才能の見せ場が詰まりまくっています。

 まず舞台2章の時点で石丸クンが亡くなるという改変が挟まり、もうこの時点で見てる方に原作通りにはならない予感が漂ってきます。そして幕が閉じて一旦休憩。休憩終わって第二幕、始まると共にいきなり死体発見のアナウンスが流れ、被害者は…まさかの大神さん!
 
そしてここからがセレスさん(と山田クン)が存在する4章というifと、セレスティア・ルーデンベルク一世一代の大勝負の始まり。捜査パートもほどほどに裁判パートに移り、ここからセレスさんがどう事件に関わってくるのかな…と思っていると、裁判冒頭でジェノ翔の証言により「セレスさんが大神さんを殴打ちん」していたことがまさかの判明。そしてまさかまさかのセレスさん、裁判冒頭でそれを自白
 え?事件終わっちゃった…と思ったところで明らかになるセレスさんの真意、それは"大神さんの死因は自分で飲んだ毒か?それともセレスさんが殴打したことによるダメージか?"というセレスさん本人にすら解答のわからない運任せのギャンブルを仕組むこと!!
 推理関係なし・犯人即自白・最終的に運任せ…こんな事件ゲームでは絶対に出来ない禁じ手中の禁じ手。これをゲームでやっては4章だけ推理要素ないんだけど!となることでしょう。運頼みという点では狛枝の事件と似てはいますが、狛枝の事件はその運の中に隠された狙いがあるのに対し、セレスさんは狙いも勝機すらもない真の意味でのギャンブル。舞台ならではの良さが詰まっている大好きな改変です。

 そして個人的にこの改変を通じて変わっていると思っているのが、セレスさんの生死観。原作のセレスさんは「死ぬことなど怖くない」と言ってはいるものの、実際苗木君の目に映ったのは…でしたが、舞台版のセレスさんは死ぬ間際ですら震えることなく自分の気持ちに嘘をついてみせる、原作以上に人間離れしたギャンブラーという印象を受けました。
 実際原作のセレスさんは「どっひゃー」みたいな抜けた部分だったり、ほぼ詰みの状況でも最後まで粘ろうとする諦めの悪ささや、アルターエゴの秘密だけは最後まで守って処刑される仲間思いな部分があります。そういう要素は纏めて人間臭さとでも言えるでしょう。そしてそういう人間臭さが死ぬのは怖いんだという最後に繋がるし、「山田クンは殺してしまったけどアルターエゴの秘密は言わなかったし最後まで仲間であったよね」とフォローできたりもする。
 それに対して舞台版のセレスさんは「どっひゃー」みたいな愛嬌あるミスもなく冷徹に、非情に事件を完遂するし、抜けた大神さんの最後の言葉も聞こうともせず殴打ちんするし…。原作のどこかおちゃめな部分はどこへ!?という冷徹さですし、やったことは倫理的に考えるとフォローのしようがありません。

大神 (ト 息絶え絶えで)…セ…レスティア・ルーデンベルク、ま、まさか、お、お主が現れるとは………まだ希望はあったか。ならば……聞いてくれ。
〔中略〕
セレス テメーの気持なんか知るか!わたくしはなぁ、この中の誰よりも誰よりも誰よりもッ!ずーっと、ここから出たくてたまらなかったんだよぉぉおおッ!

(cornflakes,2016,舞台「ダンガンロンパ THE STAGE 希望の学園と絶望の高校生2016」オリジナル上映台本,P172-174)

 あまりにも非道すぎる。ですがそういう舞台版セレスさんだからこそ、学級裁判を運任せのギャンブルにしてしまえるし、死が迫っていようとも自分の心を騙すことができる。人間味があってどこか抜けてる原作版も、どこまでも非情で達観すらしている「超高校級のギャンブラー」な舞台版も、どちらも違った魅力があっていいキャラです。
 ちなみに舞台版ではオシオキの最後に消防車が突っ込むことなく、マリーアントワネットのまま死ねています。消防車来ないんじゃ普通の火あぶりじゃん!と思うかもしれませんが、舞台版のセレスさんにはこっちの方が似合っていると思ってます。モノクマーズの炎を表現したダンスも幻想的で綺麗。

 細かい推しポイント:カーテンコールでのスカートをちょこんと上げながら体を下げるお辞儀。おしとやか!お辞儀一つまでキャラを徹底してるのが推せる!あのお嬢様がやるタイプのお辞儀なんて言うんでしょうか。(カーテシーと言います。)
 でもキャラではなく素の役者さんとしてのお辞儀もそれはそれで見ていてジーンとくる。十神クンが絶対にやらないであろう120度のおじぎも、いつもの傲慢さと役者さん本来の誠実さのギャップでまた推せる!!結論としてはカーテンコールそのものが素晴らしい!!カーテンコールを考えた人ありがとう!!

いつもの十神クンはお辞儀すらしない気がするからこっちでいいのかもしれない


大神さくら - 山崎静代(南海キャンディーズ)
 あの南海キャンディーズのしずちゃんが大神さん…?いやまあ確かにボクサーやってたけど…という出オチだと正直思っていました。ですがそんな出オチで終わらないのが女優山崎静代。流石に原作の男らしい(というかほぼほぼ男にしか見えない)見た目や声とは別物ですが、それでも「不器用ながらも実は仲間思いで優しい」という大神さんの内面像は崩さない、第一印象は違うものの見ていくと内面は同じ…という舞台ナイズされた大神さんを演じ切ってくれました。
 あのしずちゃんの独特な喋り方や間の取り方が、大神さんの不器用な感じとマッチしていて妙に合っているんです。実際舞台上でも声は山崎静代そのもので似てる訳ではないんですが、なのに何故か合っていると感じる。
 なんというかもう似てるか似てないかを超越したハマりキャスティングとしか言い様がないんです。アクションシーンもボクシング経験を活かして軽快なフットワークとパンチを披露してくれるし、何が似てるかというと生き様そのものが似てるのかもしれない。

 そういう演技の良さは置いておいて、舞台版の大神さんは(4章だと)不憫な印象でした。原作の面子+山田に手紙を送っても誰も来てくれず(原作で来た葉隠すら来ない。腐川も入ってこず外から見てるだけ)、話す機会すらないまま、失意の中服毒したところでセレスさんがやって来て、全てを話そうとしても聞く耳持たずブン殴られて息絶える。
 そもそも裏切り者だから怖い!で来てくれなかったり殴打ちんされていた原作版と違って、舞台版では裏切り者と判明する前に手紙を出しているので誰も来てくれない=信用されていないということになるんですよね…。いくらなんでもかわいそう。

 実際4章の事件だけを見ると不憫ですが、それでも最後の遺言を読むシーンがあまりにも良すぎるので通して見ると不憫だとは全く思いません。裁判が終わってからモノクマが隠していた遺言が出てくるのは原作通りなんですが、苗木の遺言を読む声が途中から大神さんと重なり…舞台にもう一度大神さんが登場します。朝日奈さんに語り掛ける形で遺言を読み続け、朝日奈さんを抱きしめて別れを告げ、改めて本当の意味で舞台から退場していく…。
 イメージだろうと舞台では死んだ人が直接最後の言葉を残せるし、あの抱擁も実際にあったんです!!舞台では回想でも現実の形で舞台に登場出来るんです!!良すぎる演出!!舞台ならではの演出が好きで好きで仕方ない私に刺さるに決まってます。遺言の内容は原作通りながら、演出が内容があまりにも良すぎて好きなシーンです。

 細かい推しポイント:週末はレギンスを履いている。女子…。


朝日奈葵 - 佐藤すみれ(SKE48) / ※岩田華怜 / ※松田彩希
(岩田華怜・松田彩希さんはトリプルキャスト、ダイジェスト映像のみ。)

 とにかくあの衣装を実写にするとえげつない。実写にすると普段見えてる上半身以外も見えてえげつない…。何がえげつないかは…そりゃ…まあ…。

 そういう話は置いておいて、キャラの元気さ・明るさという朝日奈さんの重要な要素がかなり再現されてました。見た目だったり声を再現するのは簡単(やる側からすると簡単じゃないのはわかってますが、見る側が見た目でわかりやすいという意味です。)ですが、雰囲気を再現するのは難しい。その上で明るい雰囲気がしっかりと舞台上で再現されていてよかったです。
 特にその明るさが出ていたのが、朝日奈さんがメインで喋っていない場面。喋ってないのに明るさが出てる…?と思うかもしれませんが、舞台では他の人が喋っている場面でも常にみんなが横でリアクションを取っていたり、全く関係ない行動を取っていたりします。そこでの朝日奈さんの行動が大神さんと何か話していたり、大げさにリアクションしていたりでいちいちかわいい!

 朝日奈さんは皆を常に明るくする盛り上げ役というポジションではあるんですが、どうしてもそれがゲームだと表現しづらいところがあったと思います。喋ってない時何やってるか?なんてゲームだとわかるわけないですし。
 それが舞台になって日常での行動が可視化されると、朝日奈さんめっちゃ動いてる!周り明るくしてる!これがムードメーカーか!と見ていて感じる!舞台になって別の表現方法を取れるようになったことで、朝日奈さんの明るさが物凄くわかりやすくなってます。
 そして大神さんとの最後のシーンはよかった。物凄くよかった。二回目ですが舞台だと直接会えるのが良すぎる。そしてここで会えたのも、ゲームと舞台での表現方法の違いがあるがため。
 普段の日常面では常に舞台上を賑やかにするという縁の下の力持ち的な活躍を、そして見せ場では大神さんと1対1の対話という大きな見せ場を。「明るさ」と「さくらちゃんとの友情」という二つの特徴が舞台ならではの演出で最大限に発揮されている、凄くいい朝日奈さんでした。

 細かい推しポイント:大神さんと二人で学園を探索している時に、「我がお主の命を狙うとは考えなかったのか?」と尋ねる大神さんに対し、「さくらちゃんがそんなことするはずないじゃん。」と断言するところ(cornflakes,2016,舞台「ダンガンロンパ THE STAGE 希望の学園と絶望の高校生2016」オリジナル上映台本,P106)
 
短いシーンながらも朝日奈さんと大神さんが友情を深める場面を挟んでくるのっていいですよね…。実際こんな会話するんだろうな、したんだろうな、いやした。してる。ってなるのもまたいい。


葉隠康比呂 - 松風雅也 / ※長田庄平(チョコレートプラネット)
(チョコプラ長田さんはダブルキャスト、ダイジェスト映像のみ。)

  原作の声優が舞台版でも演じている時点で禁じ手中の禁じ手(いい意味で)。ただそれに尽きます。演者が同じな以上舞台の葉隠クンが何をしようと純度100%の葉隠クンなんですよ!なので演技に関しては「原作の葉隠クンとそっくり!というかそのもの!凄い!」以外の感想はありません!
 
年長者なのも3浪してるのも当時40歳の松風さんがやってるならそういうもんかと思える!実写で見るとやけくそな毛量のカツラもなんかもう合ってる!

 演じている人が本人なこと以外の点だと、日常パートの日替わりシーンで明らかにアドリブであろうボケで何度も笑いを取っていたりと、とにかく葉隠クンらしい、十神クン風に言うとおめでたい言動が全開。(そもそも日替わりシーンはアドリブを入れるものなのでアドリブなのは当たり前なんですが、それにしても葉隠クンらしい適当感がそれっぽすぎる。)
 そして胡散臭い商品を売りつけたり、内臓を売ろうとしたり、オーガちんを殴打ちんしたりといったマイナスな印象はほぼほぼ全カット。その結果うさん臭さはなくなって日常では能天気に笑いを取り、決める場面では決めるという理想の頼れる大人に仕上がっています。きれいなジャイアン的なきれいな葉隠。

 ただ1つだけ不満だったのは、その大事な大事な決める場面で「俺は自分の直感を信じることにしたんだ!」がカットされてること!今まであれだけ占い任せだった葉隠が、最後の最後に占いを捨てて自分の意思で絶望に立ち向かうと決めるのがいいのに!!
 舞台版だと先に苗木君が「占いは道しるべでしかないよ!」(cornflakes,2016,舞台「ダンガンロンパ THE STAGE 希望の学園と絶望の高校生2016」オリジナル上映台本,P231)と希望を撃ち込んでから葉隠クンが立ち上がる形になっているので、占いを捨てるという結論自体は変わっていないんですが…占いを捨てる決意のとこまで苗木君に言わせるのは…なんかこう……決して嫌いではないんですが…そこは葉隠クンに譲ってほしかった~~~~!!!!
 原作だと「希望を捨てちゃダメだ!」のセリフだけで終わっていたのを舞台ではしっかり一人一人に対して苗木君が喋るという演出なのはわかるし!こっちも凄くいいと思うんですが!…やっぱり「自分の直感を信じることにしたんだ」だけは言わせて欲しかったなぁ~~~~~!!!!でもそれ以外は文句なしだった!!!……だからこそ見たかったなぁ~~~~~~!!!

 細かい推しポイント:「模擬刀の先制攻撃だべ!」
 
この名?セリフは再演版舞台ダンロンにもあります。そして更に当然のように初演版の時点でこのセリフは存在しています。
 なので原作・アニメ版・初演版舞台・再演版舞台という4媒体で葉隠クン役に松風さんが起用され、そしてその横で模擬刀がネタにされ続けるという地味に凄い快挙を成し遂げています。


腐川冬子 - 七木奏音
 舞台ダンロンには再現度が高すぎるキャラが沢山いるんですが、その中でも腐川さんの再現度は群を抜いて高かったです。腐川さんは腐川さんとジェノ翔の実質2形態があるだけに、そのどちらも似ているのが凄い。
 腐川さんの時は常におどおどしていて、時々どもったりする声や雰囲気の再現が完璧。そしてジェノ翔になった時は打って変わってハイテンションになって、体のキレも増して動き回る。裁判台にハサミ突き刺してギィィィっとやったり、裁判台の手すりを歩いたりといった原作で絶対やってる!という挙動が完璧。声の方も裏返り方が完璧。「太陽のような朗らぁ↑(ここで裏返る)かさがあるのでーす!」とか腐川さんそのもの。
 普段の腐川さんの雰囲気が完璧なのも凄いし、原作に存在しないジェノ翔時の奇行を想像して引き出せるのも凄いし、そして何より全く違う2形態のスイッチが瞬時に出来るのが凄い。もはや腐川さんが憑依してると言ってもいいぐらいの圧倒的再現度でした。

 ただ、全体を通して見るとその目立ち方に対して意外なことに追加シーンをほぼほぼ貰えていなかったりします。それなのに色んな場面で目立っていたのはやはりあまりにも再現度が高かったから。原作をそのまま再現するだけで観客の注目を集められるぐらい演技にパワーがありました。あと舞台でのジェノサイダー翔は目立ちすぎる。あんなに舞台映えするハイテンション殺人鬼をそのままやられたらそりゃ目立つだろと。他のキャラが追加シーンで新たな一面を引き出していたのに対し、腐川さんは原作そのままのキャラを深堀りすることを徹底していたという印象でした。

 最後に一応大きな追加シーンがあることはあって、2章のジェノサイダー翔事件のくだりが色々変わってるんですが…そこは色んな意味で十神クンの見せ場なので十神クンに譲ります。

 細かい推しポイント:初回限定盤の特典映像での千秋楽カーテンコールで十神クンにお姫様抱っこされて登場するというファンサービス。十神クンはそんなことしないけどカーテンコールは見てくれてありがとう!ってお祭りだからもうしなくてもいい!!


十神白夜 - 中村優一
 (声優の中村悠一さんではないです。中村悠一さんと読み方が同じの俳優さんです。)

 ちゃんとした正統派なイケメンなのになぜか原作以上の愛され面白キャラになっている舞台十神クン。理由はなぜか恐ろしく声が通るのと2章で更なるポンコツになってるからの2点に尽きます。
 まず実際に見た人はわかる通り第一声から妙に声が太い。「あれ?通りすぎじゃない?」となるぐらい驚異的にステージに声が通る。原作でもいい声ではあったけどこういう太い系のいい声ではなかったよな…?と"十神クンの声がめちゃくちゃ通る"というだけで何故か面白い。
 ところが見続けていると舞台1の十神クンは"第一印象はクール系だけど中身は熱い系の感情を表に出すイケメン"なのかも?と理解が進んでいき、その声の太さもそういうキャラならそうなのかと納得(公式でそういうキャラになってるとか語られてるとかではなく個人的にそう思っただけです)。
 とはいえただの熱血漢になってるかというとそんなことはなく、不二咲さんや朝日奈さんに食ってかかる原作の嫌なやつ感は据え置き。熱いけど高慢で嫌なやつという本来両立しないであろうキャラが何故か両立していて面白いのが舞台版の十神クンです。

 そして、そんな熱い十神クンだからこそ2章で更なるポンコツになっているのが何倍も面白い。一応あんな偽装工作をした理由自体は"投票を間違えると死ぬ"というルールが出来たので「投票を間違えさせて一人でも多く敵を減らす」という、原作の「誰が厄介か見極める」より何倍もまともな(そもそも偽装工作する時点でまともではないけど)ものになっています。
 ただそれ以外はツッコミどころだらけです。そもそも腐川=ジェノサイダー翔だと知ったのが「たまたま廊下で変身してたのを見たから」。朝日奈さんが1章でジェノサイダー翔の話をするくだりがなくなったのでジェノサイダー翔のことを知ってるのが十神クン(と一応山田クン)だけになり、当然偽装工作が出来るのが十神クンだけだと一瞬で判明。自白も原作以上にあっさりで疑われたら即自白。そしてこれらを"俺は十神白夜だぞ"みたいな態度をしながら全部あの妙に通る声+舞台のハイスピード展開でやる。面白くないわけがないです。

 でもそういう熱くてポンコツになっている姿を見せているからこそ、4章以降で味方として活躍してくれるのが本当にカッコいい。さくらちゃんの遺言を見た後、ゲームから降りると宣言し「黒幕を潰すっ!!!」と叫ぶシーンは原作の十神クンでは考えられないぐらいの声の張り上げ方で、それ故に素直に熱くカッコいい!原作でも素直に熱かったシーンですが、舞台だとひねくれ部分がない(高慢部分はある。)正統派に熱いキャラになってるからこそ本当にカッコいい!!
 
原作の十神クンより妙に熱くて、その熱さのギャップが面白い。そしてその熱さから見せる更なるポンコツさのギャップがまた面白い。その上で熱さもポンコツさも見せた上で最後にカッコいいところを見せるのがギャップでカッコよすぎる!ありとあらゆる点でギャップ尽くし。そんな舞台版の十神クンでした。

 細かい推しポイント:2章の学級裁判でこよりを作って腐川をくしゃみさせるとこ。実写で見るとシュール。こういう変なことをちゃんとやってちゃんと面白いから舞台の十神クンはズルい。


霧切響子 - 岡本玲
 視聴前、一番舞台で見るのを期待していたのが霧切さんでした。単純にヒロインだから見たかったのもありますが、個人的に霧切さんの感情を出すシーンがどうしても見たかった。
 
原作で感情を出している声が聞けるのは本当に最後だけで、それ以外では動揺していても顔には出していなかったり、そもそも裁判パートじゃなくてボイスがなかったり。だからこそ学園長からのメッセージを見た後に感情を表に出して喋る霧切さんは凄くよかったです。
 感情を表に出すと言っても霧切さんのイメージに反するぐらい熱くなってるわけではなく、感情のままに喋った結果声が熱くなってしまう…そのぐらいの張り上げすぎない、温度のバランスが絶妙な演技。舞台上で演じるからこそ伝わってくる細かな感情の機微を一番活かしてたのが霧切さんだったと思います。見たかったものが理想的な形で見られました。

 原作の霧切さんはダウナー系でセリフも淡々と喋りますが、舞台の霧切さんには独特の力強さがあったと思います。声のテンションは原作通り抑えながらも声量には勢いがある、そんな感じの難しい発声。
 実際客席の後方まで声を届けないといけない関係上、どうしても多少声は張り上げないといけないので原作通りの喋り方で通す訳にはいかない。そんな制約がある中で声量の加減は凄く難しかったと思います。そこをちゃんと霧切さんらしい喋り方でありながら聞こえる範囲の声量で演じてるのは流石でした。特に第1章終わった後の苗木君とのやりとりは、舞台版の感情が少し見え隠れする喋りの方が励ましとしては合ってたと思います。原作のミステリアスで「もしかして苗木君のこと励まそうとしてる…?」ってテンションもいいけど。
 他にも、原作だと当初はミステリアスで次第にキャラを理解していく感じでしたが、舞台版は(重要キャラなことをプレイヤーに隠さなくていいので)最初からみんなのイメージする霧切さん。学園生活当初から普段の霧切さんを見られるというのも中々いいものです。

 そしてもちろん声以外の演技もバッチリです。舞台では常にみんなが動いている中、逆に一人落ち着いた様子で佇んでいるのが映える。表現の幅が少なそうで難しそうな静の演技をしっかりと演じきれるのが流石。まさに視聴前に楽しみにしていた、これだよこれ!という新たな霧切さんでした。あとゲームだと上半身だけだったから映らなかった太ももがよかったです。

 細かい推しポイント:初回限定盤の特典映像でのみ見られる千秋楽カーテンコールでのカップ麺探偵霧切響子!!!!!!!!!
 5章がカットされてるのでこのネタもカットかな…?と思わせておいてカーテンコールでだけ頭にカップ麺で登場してくれるというわかってるファンサービス!お前も初回限定盤を買ってカーテンコールを見ろ!!!!

舞台版ではカップ麺も動く。お辞儀しても頭から落ちない驚異の保持力。


江ノ島盾子 - 神田沙也加
 とにかくただただ演技がうますぎる。舞台素人でも大女優の演技って凄いんだなと思い知らされるやばさ。月並みな表現ですが江ノ島盾子が実際に舞台にいました。
 まずアングルが変わる度に性格が変わるようなキャラを演じられるのが凄い。それも原作ではテイクを重ねて収録しているであろうアレをノーカットで。しかもどれも似てる。しかもしかも頭にキノコ生えてる時の低い声とモノクマっぽく喋る時の高い声を一瞬で切り替えてる。その上で苗木君達とちゃんと掛け合い(一方通行の会話ではなく、相手のリアクションとしっかり息を合わせて喋っているという意味)までこなしていて凄いなんてものじゃない。
 当然ながら周りの演者さんも実力派の面子が揃っていて演技がうまいなんてものじゃないのに、その上で一人だけレベルが違う。舞台に再登場して以降は神田沙也加さん一人だけで演技力やばい!舞台面白い!舞台の力ってすごい…!!と思わせてくる、まさに一人だけで舞台を支配する江ノ島盾子のような大女優でした。

 舞台では4章(アルターエゴ)と5章(苗木君)のオシオキがなくなった分、江ノ島のオシオキは火あぶりにされた後グンニグルの槍で刺し貫かれて(戦刃さんと舞台版での石丸クン・山田クンと同じ)終わりになっています。戦刃さんと同じ最後になってるのがなんとなくいい。
 そして江ノ島さんの遺言。そもそも原作ではオシオキが始まってからノーストップでぺしゃんこなので遺言を言う暇なんてなかったんですが、舞台版では刺し貫かれた後に「なんであたしが…?」と戦刃さんと同じ遺言を残しています。
 普通に考えればまあ「なんでも何もお前が自分で自分にオシオキしたんだろ!!」とはなります。ですが戦刃さんのように「なんで私が(刺されてるの)?」(=なんで盾子ちゃん裏切ったの?)という意味で言ったのでなく「なんであたしが負けたの?」という意味だったのでは?と解釈すると、原作のように最後の最後に絶望に飽きた結果、「あたしが負けるなんておかしくない?」と素に返ったのかもしれません。
 まあ最後まで絶望に飽きることなく、悪趣味に姉の最後を真似しただけかもしれないし…解釈は自由。ただ見てる方としてはなんとなく勝ち逃げ感が薄くなってるのでこっちの最後もいいものです。あとプレス機で潰されてなんで腕が残ってるんだとかも説明がつくし。実際なんで残ってたんでしょうか…?

 細かい推しポイント:多重人格の一つでモノクマっぽく喋る時、後ろを向いた上で担いでいるモノクマリュックをこちらに見せるのですが、そのモノクマがかわいい!一家に一台欲しい。背負いたい。


苗木誠 - 本郷奏多
 一言で言えば男前。主人公はいわばその作品の顔。となれば歴代主人公はとにかくみんなイケメンで演技がうまくて若い、スーパー大人気若手役者が勢ぞろい。そして本郷奏多さんの苗木君は…主人公だけあって完璧な演技。最高の舞台ナイズされた苗木君でした。
 最初の方は苗木君にしては少し男前すぎるかな?とは思うけど「あはは…」と力なく笑うところはいい感じに気が抜けていてかなり苗木君っぽい。そして中盤あたりからは苗木君がカッコいいところを見せるにつれてその男前さが板についてきて、終盤で「希望は前に進むんだ!!」と喉から振り絞って声を出す場面はただただカッコいい。
 原作の緒方恵美さんの演技も当然カッコいいんですが、男が演じる苗木君だからこそ出る迫力が本当に凄い。ラストシーンを見てる時はずっと苗木君カッコいい~~~と心の中で叫んでました。イケメン俳優を推したくなる感情が心で理解できました。

 特によかったシーンはマシンガントークバトルを意識したであろう江ノ島との1対1での言葉のぶつけ合い。原作だと全章で登場するMTBですが、舞台においてMTBらしき場面が登場するのはこのシーンのみ。
 そしてその特別な一回が、苗木と江ノ島の直接対決というのがいい!クライマックス推理の「原作で毎回登場してるから毎回使おう、ただ再現するだけじゃもったいないから事件時になにがあったかを舞台オリで補完しよう」という演出もいいんですが、毎回登場してるのにあえて最も印象的な一回のみに絞るという演出もたまらない!こうやってMTBがとっておきの演出に使われたからこそ、二人の対決がより印象的なものになってる。それぐらい苗木と江ノ島の直接対決はダンガンロンパにとって特別なんです!

 そして神田沙也加さんの江ノ島が重ね重ね凄すぎるだけに、舞台の江ノ島が原作以上に強大で恐ろしく見える。それだけに彼女に立ち向かう苗木君も原作以上に男前でカッコよく見えて…もはやこの一連のシーンは二人の演技力だけで全てを引っ張っている感すらあります。幸運しかないのに江ノ島に立ち向かえる苗木君は凄いし、神田沙也加さんの超絶演技力に主役を食われずに張り合える本郷奏多さんも凄い!若手の頃から大人気なのには相応の理由があるんだなと思いました。苗木君とダンガンロンパ THE STAGE2016、大好きです。ありがとうございました。

 細かい推しポイント:舞園さんに抱き着かれてる時に苗木君の手がピクピク動いてるとこ。通信簿要素がカットされてて苗木君の日常シーンもカットされてる中、こういう細かいところで苗木君の一般人な部分を見せてくれるのがいいんですよ。




②-2 スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE 〜さよなら絶望学園〜2017 
ネタバレあり感想


展開とかの舞台全体に関する感想
 全体の感想としては、舞台1の特徴だった"みんなで進める調査パート"と"テンポ良くスタイリッシュに進む裁判パート"が更に洗練されていたなと思いました。
 調査パートでは証拠が見つかると日向くんにスポットライトが当たり、「そうか、○○ということは~」と独り言でコトダマの詳細を補完してくれる演出が追加。見てる方も証拠を見つけたんだなと一目でわかって情報を追うのが楽に。
 そして裁判パートでは、個人的に舞台ダンロンを代表する要素だと思っている"話し合いが始まるときに皆で裁判台をダンッ!とするアレ"が初登場。裁判パートに入るときはこれから裁判だ!というワクワク感を盛り立ててくれるし、裁判の焦点が変わる節目節目にもダンッ!してくれるので話の区切りがわかりやすい。狛枝の事件とかでは裁判も佳境も佳境!一体狛枝はどんな狙いを…!?という緊迫した場面でダンッ!して火蓋を切って、そこからノンストップで会話もヒートアップするものだから裁判の盛り上がりはもう最高潮。テンポの良い学級裁判に心地良いメリハリを加えてくれる、地味ながら革新的な発明だと思ってます。

 そしてピンポイントなシーンに関する感想…と言っても各キャラの印象的なシーンはそのキャラの感想の中で書いているので、全体の感想の中でまで触れたいシーンは終盤のアレ以外にありません。あまりにも衝撃的な改変であり、この記事を書こうと思った理由であり個人的に舞台ダンロン2が最高傑作だと思う理由であり…まあとにかく衝撃過ぎたシーン。そうです退場した77期生全員がアルター江ノ島inで蘇ってくるとこです。アレ最高すぎます。
 
まず舞台に全員蘇るというインパクトが物凄い。「えっ全員再登場!?」という驚きと「うわー推しが蘇ってる!また舞台で見られる~!」という喜びと「いや…でもこれ原作的に中身……」という薄気味悪さが同時に襲ってくる。ただまあこの時点では「日向が虚無った時のやつを早めに持ってきたのかな?でも実際に再登場させるのは憎いね!ここから江ノ島との一騎打ちか~!」ぐらいには思っていました。そこから待っていたのは更なる衝撃的な展開。
 そして中身がやっぱりアルターエゴ江ノ島だと判明し、退場……しない!!全員アルター江ノ島のまま喋り続ける!!本人が言いそうにないことを喋りカッコいいポーズを取り、全員で「江ノ島盾子ぉ!!!」の大合唱!そう!!77期生退場組に与えられた最後の大大大仕事!それが"江ノ島盾子の代わりに江ノ島盾子の現身として日向達の前に立ち塞がる”こと!
 ここからの演出の全てがとにかく大好きです。まずここで退場組みんなの見せ場を作ってくれたことが最高すぎるし天才!!!本当にありがとうございます!!!実際問題として退場が早めなキャラは(原作だとアイランドモードとかあるから最後までにっこりだけど舞台は退場してそれっきりなので)どうしても出る時間が少なくなる問題はありました。その分特典映像では最後まで出ずっぱりではあるんですが。十神クンとか特典映像だと映りまくってます。
 そこを全員登場させてしまうという大胆なのに違和感のない方法で解決してしまうのが本当に天才。原作の時点で全員登場はしてたんですが、あれはあくまでも日向くんの脳内イメージ。やっぱり実際に出てくるとインパクトが違います。しかもゲーム世界だから何が起きてもおかしくないのは原作の時点で言われてるから死人が蘇ってもおかしくない。そしてアルターエゴの人格を入れれば体を操れるから無理がある改変という訳でもないどころか原作であってもおかしくない改変なのが凄く綺麗だと思います。

 そして全員復活するインパクトもさることながら、その復活したみんなによる舞台ならではの演出が良い。良すぎる。ストーリー的に衝撃な展開であることと舞台ならではの演出が両立されているのがこのシーンが大好きな理由です。
 あのアルター江ノ島のみんなが代わる代わる喋る演出は不気味で、ただでさえみんな復活するわ喋り方が江ノ島だわで興奮しまくってる視聴者に、考える暇さえ与えず話をテンポ良く進めてくるものだから日向くん達が味わった困惑をリアルに味わえる。そしてここで喋っているのが"みんなの真似をしてみんなそっくりに喋っている江ノ島"ではなくあえて"完璧に江ノ島そのものの喋り方で喋るみんな"だからこそ、そのキャラ(とそれを演じる演者さん)の全く違った演技を見られて凄く楽しい!演者さんにとっては違った演技の引き出しを披露できる見せ場で、見てる方も「おねぇがそんなこと言わないもん!」という気持ちの中に「あれ…こっちのおねぇもクールで…」という背徳的な気持ちを味わえる二重三重においしい演出です。
 あとはやっぱり「あんたがカムクライズルだ!!」とみんなが合唱するシーンや、第0章にあたるシーンでみんながゆーらゆらしながら声を合わせるところの迫力が凄かったです。あの広い舞台にばーっと散らばって声と動きを合わせられると、舞台から一斉に声が襲ってきて物凄く声が響く!動きも集団行動(日体大のやつ)みたいに一糸乱れぬ動きを見せてくれて圧倒的迫力!
 そして声や動きが合ってるのはただ迫力があるだけでなく、「江ノ島が全員操ってるからみんな完璧に声揃ってるんだよな…」というこのシーン全体に漂う薄気味悪さにも繋がってきます。
 退場組全員の見せ場にもなり、舞台映えする演出も盛りだくさん、そして77期生のみんなが江ノ島に操られているのを無慈悲に見せつけてくる原作リスペクトな絶望感も盛りだくさん。どれをとっても最高で、原作の苗木君登場のサプライズに負けないサプライズ改変だったと思います。

 実際のところ原作2も舞台2も大好きなだけに!!どっちの展開もめちゃくちゃ良くてどちらも甲乙つけがたく素晴らしいですよ!!!
 最大の見せ場で前作主人公が登場するって展開も凄くいいんです!アルターエゴだとかで「まさか来るのか…?」と溜めに溜めておいて、霧切さんと十神クンまで一緒にやって来られたら興奮するに決まってるでしょう!
 でも77期生間だけで完結している舞台2も甲乙つけがたく良いんですよ!!シリーズをまたがない分物語の世界は狭くなってるけど、その狭くなった世界の中で"自分たちの物語は自分たちだけで決着を付ける!"と自分たちの力だけで江ノ島を打ち破って未来へ進んでいくのが本当にいい。
 原作で"苗木君達がやってきた時の興奮"と"物語の世界が広がって苗木君と並び立ったことで感じた熱さ"は本物だし、舞台で"77期生のみんなが出てきた時の興奮"と"狭い世界の中で舞台の登場人物だけで物語が完結することで感じたエモさ"も本物なんです。どっちが良いどっちが悪いとかじゃなくてどっちも良い!!どっちも大好き!!!そういうことです!!

 最後にどこにも書く場所がなかった小ネタ。カムクライズルはモノクマダンサーズが兼役してるとかではなくちゃんとカムクライズル役がいます。ですが江ノ島と違って存在自体が超絶ネタバレだからか公式サイトのキャスト欄にも載っていません。全体の感想は以上です。


十神白夜 - 西洋亮
 ボクらのリーダー十神クンが体型もそのままに舞台にやってきた!その再現度はもはや劇場に出てきた時点で笑ってしまうぐらい完璧。太ってるのにかっこよくて動けて演技が出来てと、一言で言えば"動けるデブ"。
 そして声はなぜか舞台1の十神クンにそっくりで、舞台1から連続して見ると「あ!舞台1の十神クンと声がそっくり!これは1の十神クンの偽物だ!」となる、もはや意味がわからないレベルでのスーパーナイスキャストでした。そもそも十神クンを似せるのは日向クンみたいな普通の体型の人を似せるのより何倍も難しいわけで、それが出来た時点でもう勝ちです。私の完敗です。対戦ありがとうございました。

 舞台での役回りとしては原作のように頼れるリーダー像を見せながら、場面場面で更にリーダーポイントを稼ぎまくっている原作以上のリーダー。花村に突っかかる九頭龍を止めたり、それで花村にお礼を言われることで花村との接点ができ、殺人に至るのがより悲しくなったり…。
 とにかくそんなリーダーの十神クンのおかげで舞台版のパーティは九頭龍まで含めて全員集合です。腹減っただけだ!とか言いながら料理を食べに来る九頭龍だったり、花村の料理によくわからない感想を言う澪田だったりは細かいけれど確かに見たかったシーン!

 細かいところだと超高校級の詐欺師なのが1章の時点で狛枝の野郎により明かされるのですが、それに対し「あいつが俺達を精一杯守ってくれたリーダーであることに変わりはない。〔中略〕十神の名にふさわしい誇り高いリーダーだった」(cornflakes,2017,舞台「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE さよなら絶望学園 2017」オリジナル上映台本,P82)と反論する日向くんがいい。あの十神クンは偽物だろうと俺達のリーダーなんだ!という言いたかったことをちゃんと狛枝にぶつけてくれている。そして実際舞台ではそれぐらい更に頼れる存在になっていた、まさに77期生のリーダーでした。

 再登場後はあの見た目でぶりっ子キャラで喋るのが面白い。動けるデブなので団体行動しているときもその体格とキレてる動きで目立つ。それに加えて声の演技もあの十神クンの声だけでなく色々な声色があったので、再登場後も中々に目立っていました。やっぱりあの体型を再現してる時点で勝ちですね。
 あと「予備学科生がぁ!!」って叫ぶとこ怖い。あの優しい十神クンにそんなこと言われると怖い。

 細かい推しポイント:パーティ中にダチョウ倶楽部の"一人がジャンプし。てその衝撃でみんなジャンプするやつ"をやるとこ。
 みんなちゃんとぴょんと飛んでてかわいい。くだらないというか急にやられるとふふっとなるギャグで妙に記憶に残ってます。


花村輝々 - 三瓶
 原作の花村とは全く違うのにまた別の良さが引き出てる、それが三瓶さん花村でした。芸人の三瓶さんを見たことあるならわかると思いますが、そもそも三瓶という時点で福山潤さんの都会のアーバンな風のようなさわやかな声の変態とはかけ離れてます。
 かといって似てないから良くなかったかと言われるとそうでもなく、三瓶さんの花村は原作のお母ちゃん思い要素や素が出た時の野暮ったさ、いわば田舎臭い面が強調されていて凄く良かったです。

 芸人は演技もうまいと言えど、流石に三瓶さんに演技のイメージはないし実際どこかたどたどしいところもありました。でもそのたどたどしさが要所要所でガッチリとハマっていて、演技では出来ない"コロシアイに巻き込まれた人間のリアルさ"をうまく表現してたと思います。これを見越してキャスティングしていたなら凄い。
 実際芋っぽい花村だからこそ裁判中追い込まれてる時には妙に現実くさい生生しさがあるし、オシオキシーンでの叫びは演技というより心からの叫びに感じられて更に悲痛。そのオシオキも原作の親心と子心を更に悪辣に活用したあまりにもえげつないオシオキに…。まさか揚げられるよりも心が苦しくなる死に方があるとは思いませんでした。死体のまま舞台から退場し、舞台袖からパチパチパチ…と揚がる音だけ流れる演出も更にキツい。こういう悪辣なとこまで含めてスタッフはダンガンロンパを理解してる!ゆぅるせないよねぇ!!

 ちなみに再登場後のセリフは一個のみ。アルター江ノ島なのが判明した後は全員で合わせて喋るとこ以外セリフが存在しません。なんでそんな…。

 細かい推しポイント:てるてるです。
 舞台花村の構成要素の2割ぐらいはあるシーンなので細かくはないんですが、それでも舞台の花村を語る上では欠かせないと思います。
 あまりにも唐突にブチ込まれるから一瞬ポカンとする。ただちゃんと面白かったし三瓶さんを起用するならやった方が絶対オイシイだろうしでオールオッケー。地味にカーテンコールでもやってます。


小泉真昼 - 蜂谷晏海 / ※山口真季
(山口真季さんはダブルキャスト、ダイジェスト映像のみ。)
 
そもそも何故小泉さんが最推しなのかこれから語るので少し長くなります。舞台小泉さんのどこが良かったかを説明する為に原作小泉さんのどこが好きかに触れる必要があるので語っていますが、面倒な人は線で囲まれてるとこは飛ばしてください。


 本当に何回でも言いますが小泉さんがダンロンシリーズで一番好きです。見た目の第一印象の時点で「この子好き!!!」となったぐらいには来ました。そばかすとカメラっ子って要素がジャスティス学園という格ゲーで一番好きだったランってキャラにそっくりなんです。そばかすはいい。
 そんな感じで最初は外見から好きになったんですが、小泉さんの内面を本編なり通信簿なりを進めて知るにつれてどんどん好きになっていきました。何よりも一番刺さったのが普通な女の子なところ。周りに濃いキャラばかりいる中で、一人だけ見た目からしてそばかすがあるような普通の女子。驚くと髪が逆立つのがせめてもの目立ち要素なのがかわいい。
 性格も女子には優しいけど男子にはツンツンして強気で、だけど事件が起こると耐えられなくなって弱気な一面も見せて、ちょっとチョロい(言い方悪いけど)一面もあって好きになったらストレートに思いを伝えてくる…ダンガンロンパとは思えない程普通!!!どこにでもいそうな女の子!!!だけどそれがものっすごくかわいい!!!
 かと言って超高校級の才能に関しては全く普通ということはなくて、コロシアイ学園生活の中でも笑顔の写真を撮り続けることで何かを残そうとする確固たる信念とプライドがあるのがいい!!その笑顔を撮るって信念がお母さん譲りなのも王道すぎていい!!!どこか幸薄そうだから幸せになって欲しいいいいいいい!!!!!!


 そしてそんな小泉さん最推しの自分から見た舞台小泉さんは…最高でした。ただただ小泉さんというキャラに長くない時間で最高の解釈を加えてくれた舞台版スタッフの全員に感謝しかありません。
 まずビジュアル。原作そっくりでかわいいのは当然として、常に16人いる舞台だと赤い髪色が原作以上に目立ってて視認しやすい。かといって目立ちすぎるかというとそんなこともなく、驚いた時に髪が逆立つのが無くなってるので舞台だと髪色以外は原作以上に普通になるという逆転現象が起きています。
 深読みしすぎかもしれませんがこの時点で原作の普通要素が強調されててニッコリ。あと太ももが凄くいいです。地味に太もも枠の系譜を舞園さんから引き継いでると思ってます。

 次に舞台での活躍。まず1章の時点でひよこちゃんと仲良くなってるのがほっこりします。パーティでひよこちゃんの写真撮りまくってるおねぇいい…。こういうとことか終里が人前で脱ごうとして慌ててガードするとことか、おねぇの面倒見の良さが出てるシーンがいっぱいあるの好き。
 今まで九頭龍があんな態度だったのに、2章で精神的に参ってるのを見ると放っておけずに真っ先に声掛けに行くの優しすぎますよ…。あとはやっぱり日向とフラグがおっ立つとこ。そうそう!!!おねぇは素直に好意伝えちゃうんだよ!!アイランドモードの最後とかもさあ!!一人だけあんなにも直接的にアレ言うの反則でしょ!!?って思いながらも横で左右田と澪田がわちゃわちゃしてて面白い。
 まあフラグはフラグでも立ったのは別のフラグだったんですが…。もしかしてそういう意図も入ったセリフなのか…?だとしたらスタッフはダンロン理解しすぎ。

 そして別のフラグがおっ立って小泉さんが亡くなってしまって、辺古山の真意が判明してからのクライマックス推理(2回目の方)。ここに舞台版の小泉さんの良さが詰まってると言っても過言ではないです。
 そもそも舞台版ではトワイライトシンドローム殺人事件が存在せず、小泉さんの写真が"E子が殺したという証拠を隠蔽したもの"ではなく、"九頭龍の妹を殺した犯人を見つけるための証拠を残しておくためのもの"に。トワシンが無くなってるので動機がトワシン組の誰かから小泉さん完全狙い撃ちになってるのが辛い。
 まあそれは置いておいて、モノクマが九頭龍に見せた写真が"九頭龍妹に関する証拠を残すため"になったことで、ここでの九頭龍との会話の下りが「復讐なんて間違ってるよ!」と命の危機が迫りながらも強気な態度を崩さないのは原作のままに、写真に対するプライドという写真家要素を引き出す物凄くいいシーンになってます。

小泉 確かにこの写真は、私があえて外したアプローチだよ。だから、動揺したの。この写真は人物を追ってない…状況を抑えてるだけ。多分、状況証拠とか、説明のために撮ったんだと思う。アンタの妹を殺した犯人の…証拠を残しておくために。
九頭龍 なん…だと?
小泉 写真家だもん。自分が撮った写真の意味くらい、見れば分かる。この写真は私が撮ったものだよ。…この写真を撮った状況までは思い出せないけどね。

cornflakes,2017,舞台「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE さよなら絶望学園 2017」オリジナル上映台本,P114-115

 「写真家だもん。自分が撮った写真の意味くらい、見れば分かる。」ってセリフ良すぎませんか?
 
原作のクライマックス推理の流れから無理がないままに、小泉さんが「写真を見ればその写真がどういう意図で撮られたかがわかる」ぐらい写真に関しての才能は本物なのがわかるセリフを盛り込んでくれて、そしてそれが"状況証拠を残すために写真を撮った"、"撮った写真のことはわかる"という点で事件中に超高校級の才能を活かすことに繋がっているし、何より"普通の女の子でありながら写真に対しては絶対誰にも負けないという強い誇りがある"というこれ以上ない程のキャラ立ちに昇華させてくれている。本当に何回見ても、台本を見返しているだけでも胸に来る最高の解釈でした。

 自分が舞台版のクライマックス推理が好きな理由に"その時何があったか"、"被害者と加害者はどんな会話をしたか"を知れるというのがあるんですが、小泉さんは最推しだけに(個人的な感情がめちゃくちゃ入っているのを抜きにしても)本当に満足のいくものが見れました。九頭龍がいないverでのひよこちゃんとの仲良しこよしもよかったです。絶対に記憶がなくなる前から友達だよ!!!!!
 そして舞台版のクライマックス推理でだけ聞ける小泉さんの最後の言葉。「え…あたしまだ…」(cornflakes,2017,舞台「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE さよなら絶望学園 2017」オリジナル上映台本,P115)という本当に普通の遺言で、小泉さんは最後の最後まで普通の女の子なんだ…と思わされるセリフなんですが、実は台本には作中では発されることのなかった(その前に事切れたから)本当に最後の遺言がカッコ書きで記されています。
 ですが「舞台で実際に発されてるセリフは紹介いいと思うけど台本にしか書いてないセリフを書くのもどうかな」と思ったのでここでは紹介しません。舞台では本来聞けない台本を持ってる人限定のセリフなので自分で台本を手に入れて確かめてください!!ただ本当に普通の子なんだなぁ…と思わされるセリフでした。

 最後に江ノ島に乗っ取られて登場するとこ。小泉さん推しなだけに、小泉さんにまた出番があるやった~!という気持ちと小泉さんが江ノ島に乗っ取られてる!やだ~~~!!という気持ちがせめぎ合って見ていて非常に複雑でした。あんな悪そうな顔小泉おねぇはしないもん!
 でも顔に手当ててポーズ取ってる小泉おねぇは正直かっこいい…!そういう訳で最後まで小泉おねぇがたっぷりの素晴らしき舞台でした。もう本当に重ね重ねありがとうございます。小泉おねぇファンからすると最高の舞台でした。

 細かい推しポイント:カーテンコールでひよこちゃんとあっちむいてホイするとこ!!!!!!!もうどこが良いかとか説明する必要あります!?かわいいなぁ~~~~~~!!!!!!!!

本当にかわいかったです。
(元ネタというか参考にしてるのは蜂谷晏海さんの小泉さんの公式ビジュアルです。タイトルの3苗木君も西銘駿さんの苗木君が元です。)


辺古山ペコ - 濱頭優
 原作をプレーしていた時から「あの早口を長回しなんてキラキラちゃんは役者さんにとって最大の見せ場だろうな!動きも付くしで舞台だと映えるだろうな~!」と思っていたのですが…まさかの全カット。ただそれ以上に見せ場がいっぱいあったので大満足です。いやそれでもキラキラちゃん全カットは惜しい…!!
 そもそもペコはカットされてる要素が多い。1章でトイレに籠っていたのがカットされていたり(停電時に"トイレなんか行ってる訳ないだろう"的なすまし声で普通にブレーカーあったぞって言ってるのがちょっと面白い)、下着当てのくだりがカットされていたり、ほぼ全員通信簿要素はカットされてるので当然なんですがモフモフ好き要素もなくなっていたり…。
 その分九頭龍との関係性を映すのに集中していた印象です。実際代わりに追加された関係性がわかるシーンは全部最高でしたし、第一キラキラちゃんがなくても事件は成立するので別になくてもいいとこはある。いやでも見たかった…!

 実写への落とし込みは完璧でした。見た目の再現が完璧なのは当然として、原作だと冷静で完全に大人な声の演技だったのに対して舞台版だと1の十神クンめいたハリがあって舞台に通る声。それが高校生っぽい若さがあっていい。感情を出す時もより感情が伝わってきていい。ただ原作再現するだけでなく、役者さん個人の解釈を挟むことで感情がより出るペコになったって感じでよかったです。演技のことなんてよくわからないですが。演技のことがわからなくても言い切れることとしては太ももがよかったです。

 そして追加シーンはどれもこれも最高。1章の時点でパーティに来るよう九頭龍に提言したり、モノクマが雷を落した時は自然に九頭龍を庇う様に前に出たり…原作を知らないとサッと流してしまいそうな細かい要素ながら、知ってると二人の関係性でニヤリと出来るいい改変。俺でなきゃ見逃しちゃうね。こういう追加シーンがあるからこそ九頭龍の「意見してくれて嬉しかったんだぜ」がより悲しくなるんですよね…。
 オシオキシーンは更に心に来るものになってます。ペコが戦っている間、九頭龍の叫びが聞こえてくるのが悲痛。舞台1の2章クライマックス推理での石丸クンといい、こういう場面で他の人の声が混ざるのは舞台ならでは。
 そして九頭龍の目を突き刺したのがオシオキ用の雑兵ロボでなく(モノクマに操られた)ペコ自身になっているのが本当にエグい。九頭龍のことを最後まで守ろうとしたペコにこれをさせるのがエグすぎる。贋作のオシオキをたった一点変えるだけでこんなに悪趣味になるなんて…いい意味で舞台スタッフの悪意が凄い。そういうモノクマ許せねえ!となる悪辣な部分を抜きにしても、殺陣シーンとしてペコの見せ場の一つです。

 最後に江ノ島に乗っ取られて登場するとこ(2度目)。えっ蘇るの!?という驚きがあるのは死んだみんな全員に共通してるんですが、特にペコは九頭龍くんにあんなことやこんなこと…なんて絶対ペコが言わないセリフ喋らせてるのが江ノ島の野郎ムカつく~〜〜〜!!!原作でも江ノ島が言ってたけど!!本人に言わせるのは外道すぎるだろうがよ!!そもそもデータ揃ってるんだから真似ようと思えば完璧に真似られる癖によ!!でもそういう普通見られない一面を見られるのがあのシーンの良さではある~~!

 細かい推しポイント:1回目のクライマックス推理での、西園寺の「おねぇの写真ってキラキラしてて好き!」とペコの「これも正義のため!」というセリフ。
 キラキラ正義という2フレーズをバラ撒くことでどうしても入りきらなかったキラキラちゃん要素を拾ってると私は考察してます!!


澪田唯吹 - 伊波杏樹
 澪田のテンションの高さが完璧に再現されてました。演じてる人が本職声優なだけあって声の演技が物凄くうまい。声の出し方や雰囲気が似てるとかはあっても声自体が原作にそっくり!なんて舞台澪田ぐらいのものじゃないでしょうか。
 舞台上での動きもいつでもコミカルで、澪田がやりそうって変な動きを喋っている時も喋ってない時ですらやっていて見ていて楽しい。田中と並んで最高に舞台映えしていて、イメージ通り常に舞台を盛り上げてくれるムードメーカーでした。
 そしてライブでバリバリやってる人なのでライブシーンも君にも届けをまさかの生歌で披露。あの歌を舞台上で息切れもせず歌いきれるの凄い。テンション高い・歌うまい・声が澪田そのものと揃っていてはもう澪田としか言いようがないです。お前は澪田だよ。

 そしてクライマックス推理では、一切語られることのなかった澪田の最後が遂に語られています。原作で唯一と言っていいぐらい事件当時の情報が全く出ない事件なので気になってた人も多いんじゃないでしょうか。私は舞台見る前の楽しみTOP3に入るぐらい気になってました(1位は小泉おねぇに関する全てで2位がキラキラちゃん)。
 ろくに事件詳細もわからない中でよく言われるのが「絶望病の中で何もわからないまま絞殺されるなんてかわいそう」的なこと。舞台スタッフも流石にそれはかわいそうと思ったのか、舞台での澪田の詳細な死因は変更されていて「絶望病が完治した上で罪木に呼び出され、信じていた澪田に睡眠薬を打ち込まれ『蜜柑ちゃんなんで!!』と叫ぶ中意識を失い首を吊るされる」というものになっています。
 …何もわかってないままの方が幸せなんじゃないかなあ!?いや意識もないままに死ねたからまだマシか!?ダンロンを理解してる舞台スタッフよぉ…!ちなみに細かいことですが死因が絞殺でなく「眠っている間にロープで首吊りさせられる」になっているので、狛枝の司法解剖メタになっています。まあ舞台狛枝は3章時点で裁判する気がないので関係ないんですが…。

 最後に江ノ島に乗っ取られて登場するとこ(3度目)。澪田は普段が明るいだけに、アルター江ノ島が入ってる時のクールで悪い演技がカッコいい。ギャップいいよね。中身は江ノ島だから何もよくないんですが!!
 そして本職が声優だけに、江ノ島時の演技がアニメっぽく大げさなぐらいカッコよくてそれが澪田に凄く合ってます。総じて普段明るくて目立ってる分やっぱりというか、あのシーンでも当然目立っていました。クールな澪田が見られるのは舞台ダンロン2だけ。

 細かい推しポイント:2章の海に行くくだりで手を広げてわーってやる原作のポーズしてるとこ。原作の立ち絵再現!基本ながらグッとくる~!


西園寺日寄子 - 水越朝弓
 そもそも子供キャラのひよこちゃんを実写でやるのが割と無理があるんですが、その上でめちゃくちゃ頑張ってたと思います。こう書くと再現度が良くなかったように聞こえますがそんなことないですめっちゃ良かったです。
 ちゃんと身長は皆と並ぶと低いし、小泉おねぇに甘えるとこも容疑者に仕立て上げられて泣きわめくとこも、挙動・声どちらも子供っぽくてかわいい。難しいし再現度70点なら嬉しいよという所を90点台出されて大満足でした。100点は江ノ島。
 ただ一点だけ、「ぷーくすくす」の発音が何故か「ぷぅ↑くすくす↑」なのが気になってはいます。原作だと「ぷー↓くすくす」。

 特に舞台版のひよこちゃんは良い子度が超大幅アップしててかわいい。原作だと序盤は嫌われかねないキャラだったんですが、舞台版は序盤から良い子で見ていてほっこりします。1章から小泉おねぇと仲良くしてるし、悪口らしい悪口も罪木(と狛枝)ぐらいにしか言わない。悪い行動も自己紹介の時ありたんを潰すぐらいだし、くさい要素もカット(腐川さんは舞台版でも臭い。かわいそう。)されてます。辺古山が九頭龍との関係性中心にしてそれ以外をカットしていたのと同じように、ひよこちゃんは小泉おねぇとの絆を中心に描かれていた感じがします。
 小泉おねぇとの絆に関することだと、やっぱり3章から小泉おねぇのカメラを受け継いで登場してくれたのが最高によかったです。ゲームでも3章で小泉おねぇの祭壇を作ってくれてはいたんですが、どうしてもギャグ要素が含まれている感じが見ていてしたのは事実。
 いやあれがひよこちゃんなりに死者を思っての行動なのも、ひよこちゃんのセンスがおかしかったのが悪いのもわかるし、実際ちゃんと小泉おねぇを追悼してくれたことは嬉しかったんですよ!でも半分ギャグでしょアレは!!
 そこを舞台版ではちゃんと王道を外さずにおねぇの思いを受け継いでくれたのが本当に嬉しかったです。ここに限らず舞台版は王道を外さず見たかったシーンをやってくれるのが舞台版の好きなところです。
 最後に、ひよこちゃんも澪田と同じくクライマックス推理でろくでもない目に遭っているのですが詳細は罪木のとこで。

 細かい推しポイント:江ノ島に乗っ取られて登場するとこ(4度目)の「あ、人工知能ね?」の言い方。大人っぽいひよこちゃんが見られるのは舞台ダンロン2だけ…ではないか。そもそも原作で大人時の写真あるし。


罪木蜜柑 - 倉持由香 / ※高野祐衣
(高野祐衣さんはダブルキャスト、ダイジェスト映像のみ。)
 DVD版メインキャストの倉持由香さんはグラビアアイドルだったり、プロ格闘ゲーマーふ~どさんの奥さんだったりで有名(ふ~どさんの奥さんがまず出てくるのは格ゲー勢だけです。)なので、以前から知ってはいました。ですがまさか演技までうまいとは思いませんでした。
 グラビアアイドルで絵も上手くてe-スポーツチームのプロデュースも担当していてモダンリリーでマスター行ってて更に演技も出来るとかあまりにもマルチタレントすぎませんか???

 普段は「つつつつ罪木蜜柑ですぅ!!」ってどもりの演技が罪木らしくてうまくて、そして豹変後はとにかくヤバい。原作以上に目が血走っていて、叫び声は「はあ~~~~~~!?」って声が裏返りながら叫んでいて声も顔もとにかく迫力満点。原作の虚ろな目でキレてる感じから完全にブチ切れてる感じになって何倍も怖くなっています。
 総じて舞台腐川さんのように雰囲気をしっかり捉えながら、おどおどしてる普段と狂気の入った豹変時の二面性を演じ分けていてすごく良かったです。

 舞台の罪木は中々にいい見せ場が多かったんですが、その中でもやっぱりクライマックス推理がもう本当にヤバすぎました。狂気全開。
 お注射を澪田にぶっ刺して澪田を昏睡させる…というところまでは澪田の感想で書いた通りなんですが、その後それを見ていた西園寺に近づき躊躇なくメスで喉を掻っ切り、西園寺の死体にキスするという…もう狂気としか感想を言いようがない犯行シーン。
 原作だと罪木のクライマックス推理は不明瞭だったのでどんなものが見られるかワクワクしていたんですが、蓋を開けてみたら想像の何倍もヤバいものを見せられました。初見の時「え?キスした?????」って一瞬思考停止したぐらい本当にヤバかったんですよあのシーン。だからこそヤバイ狂気としか感想言いようがないんですよ。だってヤバいんだから。本当にヤバいと語彙が少なくなるんですよ!!!!!!
 そんなヤバいシーンだけに留まらず、なんと舞台版罪木はクライマックス推理後に77期生が全員"超高校級の絶望"であることを暴露するという大役まで担ってます。見てる時もここでバラすの!?という衝撃がありました。まあ狛枝の野郎がもっとヤバいことをその前にバラしているんですが…。
 そして罪木の最後の見せ場のオシオキシーン。原作だと無表情でベッドに寝ていたんですが舞台だと寝てる時まで笑っていて、舞台版はやっぱり狂気が全開になっていてヤバい。その後注射ぶち込まれてお空にぶっ飛んでいくんですが……なんで小道具のロケットが三角コーンだったんすかね?
……なんで小道具のロケットが三角コーンだったんすかね?いやなんでなんすかね?
 
4回見ても三角コーンだった理由はわからずじまいです。舞台ダンガンロンパシリーズ最大の謎です。

 最後に見せ場というか、罪木ならではの特徴的なシーンに関して。
 舞台ダンロンは西園寺のくさい要素とか終里の下ネタ要素とか、いわゆるセンシティブな要素が大体削られた「ダンガンロンパやさしいエディション」だったりします。葉隠も殴打ちんなくなってるし内臓売ろうとしなくなってるし。
 ですが罪木だけ、あの例のポーズを2回も晒すという何というか気合の入りまくってる原作再現を見せてくれます。まああのポーズは花村のトリックに関わってくるからカット出来ないと言われればそうなんですが、それにしても説得力ある改変しまくってる舞台スタッフならその気になれば別のトリック入れられると思うんですよ。このシーンが罪木を語る上で絶対に欠かせないシーンだと判断されたんでしょうか。まあ確かに忘れられないポーズではありますが…。

 細かい推しポイント:初回限定盤の特典映像で、”舞台初日の楽屋裏”にて無事公演が終わり号泣している倉持由香さん。
 
倉持さんは配信中に事あるごとに(主に旦那のふ〜どさんが活躍している時)泣いていて格ゲーファンから「倉持号泣」とか言われたりしているのですが、舞台ダンロン2でもしっかり泣いています。

元ネタは倉持由香さんが自分で描いたTOPANGAワールドチャンピオンシップの応援絵です


弐大猫丸 - おにぎり(ニューロマンス)
 
自身の事件がカットされた被害者枠と言うと山田と同じなんですが、山田と違ってその分見せ場をしっかり貰っていたのであまり不憫感はなかったです。山田はなんであんな不憫なことに…
 再登場した時はあの見た目で投票してして~ってぶりっ子してくるのが面白かったし、何より前半での終里との絆がより濃くなってるのがいい。やっぱり舞台版は特定のキャラの関係性を描くのに絞っている感じがしました。普段から舞台の横の方で一緒に喋ってるし、やはり終里を守るために戦う戦闘シーンがかっこいい。原作では争うことになった田中に背中を預けるのベタだけどいいですよね!
 そしてロボ化を挟まず直接死んでしまうせいで、「選手を守るのがマネージャーの仕事だからのう…」というセリフが更に心に残る。その前にも終里に対し「お前は軽率なんじゃ」とたしなめているからこそ残る。そして見てる方の心にしっかり残るからこそ、作中でも更にしっかりとしたメッセージとして伝わるわけで…舞台上の終里がちゃんと責任を感じてるなと伝わって来てよかったです。原作みたいにもう一回殴りにいかないし。
 4章が丸々カットされたことで逆に、最初から最後まで終里のマネージャーをやっていた弐大というキャラがより濃くなったという感じでした。弐大のおっさん…かっこよかったぜ…。

 ただまあ、原作だと弐大の一番印象的なシーンはロボなのも事実なので見たかった気持ちもどこかであります。でもロボはいくらなんでもギャグすぎて舞台の作風とは合わないからカットされるのもわかるし、実際舞台の弐大を「超高校級のマネージャーで終里のマネージャー」という点だけ絞って描くのには凄く良かったし。そもそもロボにマネージャー要素一切ないし。
 でもやっぱり死ぬのが殺陣シーンなのはちょっと不憫な気もする…!どっちも良かっただけに悩ましい問題です。カップ麺霧切さんみたいにカーテンコールでだけロボになるとかあったら面白かったのに!自分の知らない公演であったのならごめんなさい。

 細かい推しポイント:本来終里を庇って退場していた3章で、絶望病にかかった終里を見て「終里が突然おなごらしくなったぞぉぉぉ!」と叫ぶとこ(cornflakes,2017,舞台「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE さよなら絶望学園 2017」オリジナル上映台本,P129)。
 そういえばここ原作だと退場してたな…というのを忘れそうになる、あまりにもありそうで自然な反応。オレでなきゃ見逃しちゃうね。


田中眼蛇夢 - 井上正大
 
舞台版のこの男が嫌いなやつがいるだろうか!?いやいない!!あまりにも目立ちすぎていた男!!それが田中!!眼蛇夢ッ!!!
 とにかく面白くて立ち振る舞いが舞台にマッチしていてカッコ良い場面もあってという、石丸クンとは別の形で理想的なコメディリリーフ枠でした。舞台の田中クンは原作の"ダウナーで中二言動で喋る神秘的なキャラ"から、"常に舞台で動き回り、言葉以上に動きで語る(もちろん言葉でも語りまくる。)活動的ミステリアスキャラ"になってるのですが…これがとにかく舞台で映える!
 声質的には杉田というより檜山な声が舞台に響く!自己紹介の「俺様は!!!田中!!!眼蛇夢ッ!!!!」から声量120%!そして演者さんが仮面ライダーディケイド故に動きがキレッキレすぎる!!体全体で謎のポージングを取る動きだけでうるさすぎて面白いし、かと思えば急に謎にステージから飛び降りたりしてもはやカッコいい。Q.なんで田中クンはただの飼育委員なのに弐大に勝てるぐらい強いの? A.ディケイドだから。
 それでも時にはマフラーに顔を隠し沈黙と無関心を追い求める原作の田中らしさもあって、田中クンのイメージが崩れるやりすぎな演技という訳でもない。舞台だと伝わりづらい中二的言動はカットして代わりに雰囲気や動きで中二っぽさを出し、原作のダウナー要素はシャイな一面だけで表現するのが動と静という感じで舞台に合いすぎてる。田中クンと澪田を目で追ってるだけでも全く飽きない、まさに最高に舞台映えするキャラです。

 そして3章の田中はただただカッコ良すぎる!3章裁判の冒頭で日向が犯人だと追い詰めるのが狛枝から田中になっているのですが、その理由があまりにも粋。
 「狛枝に予備学科生という事実を(3章の時点で)突きつけられ、事件現場の捜査すら出来ないほど愕然としている日向をわざと追い詰め、犯人ではないと自分の力で証明させて立ち直らせる」ってカッコ良すぎませんか!!!??日向が追い込まれるという大筋は一緒ながら、狛枝が3章で既に味方してくれない事とか日向がまず無罪を証明しないと推理が進まない事とかを無理なく解決していて、それでいてあまりにもカッコいい田中眼蛇夢劇場!!

日向 田中…お前、全部わかってて。
田中 闇の中に身を潜めば光を見付けるのみ。貴様が見付けた希望を信じて、進め。

cornflakes,2017,舞台「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE さよなら絶望学園 2017」オリジナル上映台本,P154

 反則ですよこんなの!!!!最高!!!

 上のシーンに並ぶぐらいカッコよくて印象的なのが、田中と弐大が共にモノクマに立ち向かうまさかの戦闘シーン。原作のクロのまま地獄へ散っていく田中も"弱肉強食"という死生観が出ていてカッコ良くて好きなんですが、やっぱりソニア達を守るためにモノクマに挑んで散っていくのはストレートにカッコ良すぎる!!原作で殺し合った相手と共闘するという王道すぎるけど見たかった展開!今まで散々熱い田中眼蛇夢を見せられていたからこそ、お前は本当は熱い男だもんな!だからこそここで戦おうとするんだよ!と感情移入できる!
 そして原作での「生きることを諦めるな」という去り際の言葉もちゃんと使われていてもう最高。原作では誰かを殺してでも生を掴む(そして自分だけが生き残るならそれはそれで)という悲しい戦い方だったのが、今度は真の意味でみんなのために戦って生を切り開こうとした田中クン…お前は最高の男だよ…。

 最後に破壊神暗黒四天王かわいかったです。小道具扱いなので出番の時はモノクマダンサーズがどこからともなく持ってくる。田中が呼ぶとモノクマダンサーズがふりふり動かすのかわいい~。
 とはいえ常にモノクマダンサーズに持たせるわけにもいかないので、出番としては自己紹介の時に出てくるのと3章で紙切れを拾うぐらいでしたが。…舞台で飼育委員要素更に薄くなってるなこいつ?牧場もなかったし。

 細かい推しポイント:正直ありすぎて困るレベル。花村がチキン持ってくる時に「まだ力を隠してたというのかぁ!」って叫ぶのもいいし、2章で海に行きたいの言えなくて一人サルのバルーンと戯れてるのもいいし、(地味に2章で田中も捜査に混じっています)初回限定盤の田中眼蛇夢誕生日サプライズお祝い会からの田中眼蛇夢マジックショーもいいし…。田中は細かい場面で目立ちすぎなんですよ!


狛枝凪斗 - 鈴木拡樹
 とにかく色々な意味でダンガンロンパ2を象徴するキャラであり、舞台においてもそれが変わることはないのですが……それにしても舞台の狛枝はヤバすぎる。原作の狛枝の"希望を狂信しての奇行"に、"狛枝がやりかねない更なる奇行"と鈴木拡樹さんのハチャメチャに凄い演技力による怪演が合わさった結果怪物が生まれてしまいました。あまりのインパクトで一度見たら二度と忘れることの出来ない最狂の狛枝がそこにいます。

 まず演技がとにかくヤバい。豹変する前は原作通りさわやか野郎の皮を被っているのですが、その段階で既に面白い。初対面で「ボクは狛枝凪斗!」って握手しないだろお前。妙に元気よくクジを取り出したり十神クンの死体を見付けた時は迫真の絶叫を見せるし、ノリがいいを通り越してもはや暑苦しい。それが意味が分からなくて面白い。田中や(1の)十神が熱いのはわかるけどお前はおかしいだろ。
 そして豹変後は一言で言えば狂人。顔はバキバキに目を見開いていてもはや顔だけでうるさいし、叫びまくるから実際にうるさいし、かと思えばボディタッチしながら静かに「それは違うよぉ…」と原作以上に気持ち悪く囁いて緩急を使い分けてくるし、なんか舞台からシャッ!!って叫んで飛び降りるし、裁判台でみんなに詰め寄ってガチ目にドン引きされるし。澪田に引かれるは相当だぞお前。初見の時はこいつが何か行動したり喋る度に笑ってました。

 特にヤバかったのが笑い方。基本的にはヤバい人の笑い方でありながら、所々声が裏返る時の声と息遣いが完全に緒方恵美さんの狛枝のそれ。流石に原作の狛枝はそこまでぶっ飛んでないしどう見ても狛枝ではないのにこれは狛枝だと確信させられる…そんな異次元の演技力でした。
 個人的な考察だとこのイカれた狛枝は原作ゲームのクライマックス推理で悪そうな顔をしてる狛枝のイメージがどこかにあるのかなと思いました。
 そもそも原作の立ち絵にあんな顔芸レベルの叫び顏してる狛枝って無いんですよ。本編だともっと静かに狂ってるイメージ。そこを本編の絵とも違っていてわかりやすく狂ってるクライマックス推理の狛枝を参考にしたのかなと勝手に思っています。

……意識して怖い表情にすることを心掛けました。でも発売後は、かわいい顔をしてありえないことをするという狛枝像のほうが正しかったのかなと思いましたね。

週刊ファミ通編集部,2013,ダンガンロンパ1・2 Reload 超高校級の公式設定資料集 -再装填-,エンターブレイン,P441

 演技がヤバければ舞台中での行動もヤバかったです。1章ではちゃんと(ちゃんと?)原作通りに暴れたかと思えば、2章ではモノミが裁判が始まるまで解放してくれなかったので推理パートに登場せず。そのせいでみんなの足跡を調べる下りはカット。結果的に捜査パートで協力するという好感度上げ要素が無くなっていて本当にずっと狂人。結局2章でやったことは九頭龍を追い詰めることだけ。こいつよぉ…。
 2章終わりでは「皆の才能に応じたプレゼント」が支給され、狛枝にも拳銃が配られます。そのまま2章でやるのは早すぎるけど一応原作通りロシアンルーレットを行い、この時点で日向が予備学科だったり皆が超高校級の絶望だったりの証拠ファイルを獲得。
 
そしてそのまま澪田達が死んでから日向が予備学科なことを暴露し、まさかの3章の時点で裁判に参加したり調査するのを放棄。日向をわざと疑って罪木を追い詰める頼りになる要素もカットされ、本当の本当にずっと狂人。かと思えば西園寺の死体を見付けた時は本気でびっくりしていたり、あれだけ「足引っ張らないでよ」とか啖呵を切ってきながら裁判中に日向の推理に「なるほどねぇ…」と感心したりと、そういうところで原作の愛嬌を残していて面白い。
 そしてそして問題の5章。まず弐大達がモノクマと戦っている中、我関せずでモノクマのグンニグルの槍を持って行ってどこかに消えます。せめて弐大達の最後はちゃんと見届けろ!!あと槍持ってくな。
 そして弐大達が殺されてしまう間に色々と準備して再び皆の前に現れ、まさかの爆弾とロシアンルーレットで使った拳銃の二段構えで日向達を脅迫。いや拳銃は流石にダメだろ…!!そのまま狂気的な高笑いと共に爆弾を爆発させながら客席を通り退場。希望は前に進むんだあああああああああ!!!!ボガーン!!!!!!イカれてる。それはそれとして客席で目の前で見れた人は羨ましいです。

 その後は波乱もなく死体となって(ここで死ぬのが原作だと波乱ではあるんですが原作通りなので…)再び登場。死に方がXの字で寝転がっているのから十字で磔に変更されていて、死体になってすら色々とヤバい。(原作では)像を立てて欲しがってるし裏切り者に殺されるし一回死んで蘇るしで…具体的に何がとは言いませんが何らかに似ていてヤバい。思い返すと舞台版では像を立てて欲しがる俗っぽさもなくなっていて完全に狂人に振り切ってました。
 そのまま推理は進みクライマックス推理へ。原作の狛枝ですら口にガムテしてやっと声を殺していたのに、ガムテなしで自死し切るんじゃない!
 その時点でヤバいのにクライマックス推理に介入するんじゃない!!気軽に死者がクライマックス推理でこっちに向けて喋るな!こいつヤバい!!
 
舞台降りて「やあ日向クン」って話しかけてくるんじゃない!"狛枝がどういう狙いで事件を起こしたのか?"をわかりやすく整理したい、なら狛枝自身に喋らせよう!はいい発想だけど介入するんじゃない!!
 BGMが鳴り止み日向クンと狛枝二人の演技だけで会話が進む、演者さんの実力が最大限に発揮されるこれ以上ない見せ場なんだけども!
 「フィナーレに役者が舞台を去るのは当然でしょ?」というセリフ(cornflakes,2017,舞台「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE さよなら絶望学園 2017」オリジナル上映台本,P198)は凄くいいんだけど、クライマックス推理で主人公に話しかけてくるというちょっとメタ入ってる演出の中で"舞台"という言葉をあえて使うことで第四の壁を意識させる凄くいいセリフなんだけど!介入するんじゃない!!!だって第四の壁まで意識されたらイカれ具合が天井を突破してるから!!!
 原作でも最高に面白く衝撃的だった5章が演出と鈴木拡樹さんの力で更に衝撃的になっていて、退場の瞬間までとにかくヤバすぎて演技が上手すぎる最高の狛枝でした。

 最後に江ノ島に乗っ取られて登場するとこ(5度目)。単純に演技が上手いので江ノ島inのクールな狛枝が見てて嬉しい。主役格なので再登場時も単純にセリフが多く、狛枝がメインを張る0章もあるのでここでもかなり目立っていました。
 その上で何よりいいのが、日向が江ノ島inの偽物たちを「狛枝が『江ノ島のおかげで』なんて言うはずがない!」と論破するシーン。

日向 …最後まで七海だけを生かすという希望を信じた狛枝が。絶望である俺たちを命に代えても滅ぼすと決めた狛枝が、こんな結末を「希望」だなんて…言うはずがない!お前こそが狛枝が憎んでいた、「絶望」そのものなんだ!!

cornflakes,2017,舞台「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE さよなら絶望学園 2017」オリジナル上映台本,P214

あのヤバい男が決め手というのはなんだか悔しいですが、それでも狛枝を信じてるからこそ"狛枝はそんなこと言うわけがない、モノクマが操ってるんだろう"と論破するのはかなり説得力があるしグッと来る。
 モノクマの「悪意を信じるからこそ悪意を疑う」にも、七海の「信じる事と疑う事は反対の事じゃない」にも繋がってくる凄くいいセリフだと思います。あと原作だと(日向に論破されて江ノ島が登場する役目が)偽物とはいえ苗木の役目だったところが狛枝の役目になってるのもなんかいい。狛枝も喜んでることでしょう。

 細かい推しポイント:自己紹介パートで小泉さんが写真撮る時ノリノリな狛枝。正直原作でもやりそうではある。

謎のポーズ


七海千秋 - 伊藤萌々香
 舞台の七海(というか舞台ダンロン3部作の主人公とヒロイン全員)に関しては、原作の誰々/舞台の誰々という感じに切り離して語れる存在ではなくて、原作の七海の延長線上にある存在だと個人的に考えてます。
 他のみんなは追加シーンが多くてキャラの受け取り方も変わってくるんですが、主役とヒロインは舞台を見終わってもキャラの受け取り方がほぼ変わらない。ただし変わらないといっても「原作と同じで何も印象変わらんかったな…」のネガティブな変わらないではなく、「原作と性格は同じだけどこのキャラのことますます好きになったな~!」のポジティブな変わらない。
 原作のキャラそのままを舞台で再現した上で深堀りしてくことで、"キャラの方向性は同じだけどより解釈されたキャラ"を見れた…という感じ。実際七海も細かい追加シーンは多いけど大幅な改変はほぼありませんでした。
 そして原作をそのままやるとなると、他のみんな以上に完璧に近い再現度を要求されるのでハードルも物凄く高くなる。実際七海も霧切さんも日向くんも苗木君も人気キャラだから元々ハードルは高いのにそれ以上!そこを当時19歳という若さながら完璧な七海を演じ切った伊藤萌々香さんがただただ凄いです。でもよく考えたら現実の七海はそれより若い。

 伊藤萌々香さんの七海は原作通りのキャラな上で、所々原作よりも元気が良くて感情を出てくる七海。まず原作そのままにかわいくて、あの間の延びた喋り方も完全再現で原作のふわふわしたかわいさをちゃんと出てます。自己紹介の「七海千秋でーす。」の一言目から完全に七海の喋り方でした。みんなが(舞台だから)ハキハキと喋る中、一人だけゆっくり喋るものだから目立って余計にかわいい。みんなで探すぞー。のとことかテンション高いのか低いのかよくわからない独自の雰囲気が出ててめっちゃかわいい。
 行動も常に舞台の隅っこでゲームしてたりして七海らしい。原作だと立ち絵と文字だけでゲーム中なのを表現してましたが、舞台だとちゃんと携帯機を持って指でポチポチ…と操作しているから没入してる感じが出てる。それとかわいい。
 そんなマイペースさを身に纏っている中で、感情を出す時は出すのが「原作だとマイペースだったけど、高校生なんだから本来これぐらい無邪気でもおかしくないんだよな…」と若さを感じられてしんみり。
 終里にビンタする時は原作以上に気迫が出てるし、「おい!なにうじうじしてんだ!」と発破をかけるシーンは原作だと緩い感じのまま口調だけ強かったのが、舞台だと「本気で日向を救おうとするならここまでやるよね」って感じに叫ぶ本気の発破のかけ方でよかったです。
 そしてそういう風に原作よりも元気が良くなっている分、自白のシーンは明るさとの対比で凄く悲しくなる。原作通りに静まり返った舞台でせめて明るく振舞おうとしているんですが、静かな分その声が舞台に響いて辛い。胸が痛む。原作でも辛かったですが益々辛い。ただ、何よりも本当に舞台上で七海が泣いていたんだから感想なんてそれ以上何を書いても野暮じゃないですか……。舞台だろうと原作だろうとあのシーンは本当に辛い。

 追加シーンが少ないと言っても、少ない中で印象的な追加シーンは何個もありました。原作だと3章まであまり目立ってはいませんでしたが、舞台だとメインではないけれども序盤からしっかり見せ場を作っていて好き。
 具体的には狛枝の相棒要素が1章にしか残っていない分、七海が序盤から相棒っぽくなってます。裁判ではしっかり大事なことを言うし、裁判でも普段でも七海が喋ると皆が騒ぐのをやめてくれて、そこで分かりやすく大事なことを言う(みんなにとってもお客さんにとっても)のが多かったイメージ。そういう意図してないのに注目を集める言動の仕方が七海らしい。
 他にも日向の相棒要素だと、3章で呆然としている日向くんの分まで頑張ろうと、代わりに中心となって捜査を進めるのがよかったです。でも原作の日向くんとの共同捜査もいいものだったからどっちも捨てがたい!接着剤(接着剤ではない)食べるのは舞台でも見たかった。

 そして何より本当に良かったのが、終盤の日向との会話で、別れの前に七海が"希望のカケラ"を手渡しするシーン。もう本っっっっっ当に良い!!!!!!!最後に形の残る何かが遺るだけで凄く感動するのにそこで「まさか!」の原作要素を持ってくるなんて!!
 いや正直、原作で最初にウサミから"卒業するためのアイテム"とか言われて渡されはしましたけど即モノクマに乗っ取られてフェードアウトだから本編での印象は薄いじゃないですか。アイランドモードではちゃんと使われてたけどあくまでも本編だと飾り。それを最後の最後の一番大事な場面でちゃんと回収してくる!!本当にこの島から出るための希望になってる!!
 それに最後に希望のカケラを渡されるから、原作と違い日向達のその後がぼかされているラストなのにも関わらず、七海の希望があるなら絶対お前は日向のまま帰れる!!!って確信出来るんですよ!!!!良すぎませんか!!??
 そして、その希望のカケラを手に日向が「ありがとう」って七海に言うのが良すぎる!!!!伝わる形でその言葉を口にしてくれてありがとう!七海も最後に舞台に姿を出してくれてありがとう!ちゃんと聞いてくれていてありがとう!!!!!舞台の七海も原作の七海もダンガンロンパという作品も全てが大好きです!!!!!

 細かい推しポイント:2章の日常パートで相変わらずゲームに熱中していたら、九頭龍クンに机を思いっきり叩かれてビクッ!!となる七海。
 かわいい。でも机叩くのはやめてあげて。

ここで九頭龍の服がよれよれになってるのも更に細かいですがいい


終里赤音 - 高橋ユウ
 
簡単に言うと下品な一面がほぼほぼ無くなっていて、ただバカだけど優しい子になっていました。演技の雰囲気も朴璐美さんのイケメン感すらある大分男らしい声から底抜けに明るい感じになっていて、そのバカさで澪田と一緒に舞台で動き回るのが見ていて楽しい。
 そしてちゃんと肌黒だしアクションシーンではバリバリ動く。舞台版で全員良い子度が大幅アップしてる中(狛枝を除いて。あいつは何なんだ。)、終里も例に漏れず良い子になっていてほっこりと見てられました。

 特に(弐大のおっさんの感想と大分被りますが)弐大のおっさんとの友情が濃く描かれていたのがやっぱりよかったです。食堂で皆で集まっている時とかに後ろで喋ってるのもそうなんですが、メカ弐大がカットされて直接的な死因が無鉄砲に戦ったことになったのが見てる方も終里にとってもかなり衝撃的。舞台の終里はより強い反省と覚悟を背負ってるんだなというのが伝わってきます。というかアレあった後もう一回挑みに行くのは流石にどうかと思う。
 おっさんと田中を亡くした後、怒りに我を忘れて敵討ちに行こうとする時の感情丸出しの演技もいいし、七海に諭されて必死に感情を抑えて納得しようとする演技もいい。バカなだけでいい子ではあるんだなというのがわかる。

 舞台版ならではの好きなセリフは5章で日向が言った「狛枝は、俺たちにロシアンルーレットを仕掛けたんだ!」というセリフ(cornflakes,2017,舞台「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE さよなら絶望学園 2017」オリジナル上映台本,P193)。正確には終里のセリフではないんですが、「死因はなんだ?→消化弾の毒だ→なんで毒なんだ?持ってた拳銃で死んでればよかったのによ!(終里)→拳銃!そうか!ロシアンルーレットだ!(日向)」という流れなので終里のセリフということでいいでしょうもう。
 原作で行ったロシアンルーレットと狛枝の運任せの事件をかけた粋なセリフなのが凄くいいし、バカキャラが何気なく言ったことが事件解決の糸口になるって推理モノあるあるだから面白いセリフ。そしてそんな面白いセリフが原作の流れに終里の一言を付け足すだけで成立してるのが美しい。目立ってるわけではないですが地味にかなり好きなセリフです。

 細かい推しポイント:どこだか忘れたんですが澪田と一緒にこんな感じ↓に横に体が動くとこ。2章のどこかだった気はするんですが…。

流石にこういうシーンまでどこにあったかは覚えてない…!


ソニア·ネヴァーマインド - 中田クルミ
 
舞台ダンロン2でソニアさんがフォーカスされていたのは"王女感"。原作だと祖国が変な風習で言語センスもどこか変で趣味も変わっていて、一言で言うと"変な王女"。ですが舞台版ではそういう変要素をバッサリカットしていて、舞台だから表現できる立ち振る舞いのおしとやかさや、動き一つ一つの上品さで王女感を表現していました。
 「許します!」とか「褒めてつかわします!」とか原作通りのセリフに王女そのものの身振りが加わるだけで高貴さ大幅アップ。伸ばした手の指がちゃんとピンと揃っていて更なる高貴さ。舞台で元あるキャラが普通になるなんて小泉さんかソニアさんぐらいなものなんですが、原作で変な王女というわかりやすいキャラがあるのをあえて"普通の王女"というキャラにシフトして、それでちゃんとキャラ立ちしているのが面白くて良かったです。小泉さんはそもそも普通なのがキャラなので方向転換ではないです。

 舞台で王女感の次に強調されていたのが田中との交流。裁判中に田中と決めポーズ決めるのが見てて面白かったです。ゲームでも裁判中妙に息が合うシーンはありましたが、舞台になると振り付けまで付くので見てる方の注目集めまくりです。
 そして田中との交流で言うと、(展開としては原作通りではあるんですが)日向の説得で一人一人立ち上がっていくところで最初に立ち上がるのがソニアさんなのが凄く好きです。田中が皆を守るために戦ったから「生きることを諦めるな」という言葉がソニアさんにも見てる側にもより深く刻み込まれていて、その言葉が残ってるからこそ生きるために誰よりも真っ先に立ち上がるのがいい。そして舞台版だと普通の王女だっただけに、ただの王女のソニアさんが真っ先に立ち上がったのにより成長が感じられていい。
 展開は原作通りでも、舞台版でソニアさんと田中のキャラが変わっていた分みんなの成長がより感じられて好きなシーンです。

 最後に舞台とあんまり関係ないんですが原作ゲームのソニアさんの発言を論破する地点で2回詰まっていて、そのくだりが両方ともカットされていてちょっと寂しかったです。ひよこちゃんがライブハウスに行ったのは鏡を見に行ったからだろ!!!!!!!!だから鏡のコトダマであってるだろ!!!!!

 細かい推しポイント:「褒めてつかわします」の前に「ストーカーの左右田よ、」と付け加えるところ。
 左右田の名誉のために言っておくと舞台の左右田はそこまでストーカーしてません!!不憫な左右田…。


九頭龍冬彦 - 植田圭輔
 
まず皆と並ぶとちゃんと身長が低いだけで100点満点。そこを妥協すると九頭龍じゃないのでしっかり役者さんを選んでるのがわかって嬉しい。更にちゃんと童顔なのもあってもう見た目だけで完璧に九頭龍。
 かと思えば声は原作よりも大分ドスが効いていて、キレてる時とか完全に極道の迫力で原作よりめちゃくちゃ怖い!その凄みが舞台だと響いて、全体的にやさしい舞台においても原作序盤のあのピリピリした空気を思い出させてくれます。

 そんな大幅に怖くなってる九頭龍ですが、優しさ自体はみんなと同じく序盤から大分増えてます。まず1章でパーティに来るし、3章では自分が予備学科生だと知って落ち込む日向に対し檄を飛ばすいいシーンもある。ペコが序盤からちょっかいをかけてくれるおかげで九頭龍もかなり柔らかくなってます。
 そして柔らかくなってる分、2章での改変で受ける仕打ちがえげつなすぎる。原作でもほぼトワシン組と九頭龍狙いだったのが、舞台では妹の死体の写真をモノクマに見せられ、更にその上で部屋に鍵まで掛けられ朝まで一人きりという容赦なさすぎる仕打ち。
 九頭龍が原作より優しくなっていても、ペコが原作より柔軟になっていても流石に会えないとどうしようもなく、精神が擦り切れた上で小泉さんと対面することになるという…あまりにもひどすぎますよ!!そりゃあんな強引な行動も取るよ!という完全に九頭龍と小泉さん狙い撃ちの動機。そこまでされる謂れがありますか!?原作より柔らかくなってる分あまりにも可哀そう。
 ちなみに舞台版で九頭龍妹として映し出される写真はどう見てもE子(サトウ)さんです。なぜそんなことに?菜摘ちゃんイメチェンした?舞台ダンロンシリーズの謎の一つ。

 そこから2章は裁判パート・クライマックス推理・オシオキシーンの演技どれもこれも、とんでもなく気迫が入った叫び声に焦りとやりきれなさが詰まっていて素晴らしいんですが、特に好きなシーンは狛枝と辺古山の問答の末に九頭龍が力なく裁判台に座り込むところ。言葉にするとシンプルなシーンなんですが、実際に見た人ならわかると思いますが悲しみで力が入らなくなるってこういうことなんだなと思える圧巻の崩れ落ち方で、めちゃくちゃ迫力があります。
 それとオシオキの後、自身も重傷を負いながら必死に足を引きずってペコを追いかけ倒れ込むところ。これも足を引きずりながらの走り方と倒れ込み方があまりにも凄い。もはや気迫どころか鬼気迫ったものすら感じるぐらいの体の動かし方。植田圭輔さんはこういう体で表現する演技が舞台通して物凄く上手いです。あとペコの所でも言いましたがペコに目を刺されるのはあまりにもひどすぎる。

 そして3章で死の淵から帰って来て再登場するんですが、九頭龍は原作通りに眼帯と……辺古山の残した竹刀を背負っての再登場というスーパーサプライズ!!!!!!!!
 ひよこちゃんのカメラもそうなんですが、やっぱり亡くなった人の思いをこういう形で受け継いでくれるのは凄く嬉しい。ただ復帰のタイミングが西園寺が死んでからなので西園寺に対する直接の謝罪がなかったのはちょっと寂しい。原作の「小泉おねぇなら呆れて笑いながら許すと思うから…」が凄く好きなんですやっぱり。
 当然竹刀背負って帰ってくるだけでもう大興奮なんですが、その上で「ペコ…借りるぞ…」があまりにも最高すぎる。このシーンに関してこれ以上に語れることがありますか!?あまりにも王道すぎる!カッコ良すぎる!!反則!!!九頭龍に関してはこのセリフだけで5億点だよ!!それぐらい最高のシチュエーションでの最高のセリフ!!!ありがとうございました!!!

 細かい推しポイント:カーテンコールでのお控えなすってポーズ。推しポイントに関してもこれ以外ありますか???ってレベル。横にペコもいるのが良すぎる。最高。

既に誰かやってそうなネタ


左右田和一 - いしだ壱成
 いしだ壱成…いしだ壱成!?あの大ベテランの!?(当時)42歳だぞ!?それが高校生!?というのが最初の印象でしたが、見ていくうちにどんどんいしだ壱成さんの左右田と左右田というキャラそのものが好きになっていきました。
 いや原作から好きですよ。好きなんですが「俺こんなに左右田のこと好きだったんだ…」と実感しました。正直今だと推しのTOP3ぐらいに入ります。42歳ということを感じさせないビジュアルも当然よかったんですが、とにかく演技と舞台の演出の相乗効果が最高によかったです。

 「日向の相棒」と言うと狛枝だったり七海だったりしますが、「日向の親友」に関しては左右田以外にはいないでしょう。相棒が捜査や裁判で日向を助けてくれるのに対して、親友は普段一緒に騒いだりするいわば日常の象徴。実際左右田は裁判だとほぼほぼ役に立たない(4章だかの裁判冒頭で捜査手伝ってたら普通ありえない発言した時はこいつマジか…!?って思った。)けれども、ビデオカメラを作ったり周囲の空気を賑やかにしてれたりで日常の親友としては凄く頼りになる。
 そしてそういう目立たない日常を舞台の横で生き生きと見せてくれるのが舞台なわけで、実際舞台を見てから左右田が何倍も好きになったぐらい輝いていました。軽薄に見えるけど実は空気が悪くならないよう色々考えていて、でもまあ芯の部分はバカで天然な部分もある。というキャラにいしだ壱成さんがピッタリハマってる。
 特に顔の演技が凄かったです。舞台の誰よりも表情豊かで笑いも驚きも顔だけで表現出来ているんですが、特に細かい感情の動きが凄い。原作でもひよこちゃんに地味だと指摘されてたんですが、その通りちょっと喜んだり何とも言えない顔をしたり…という地味な表情の機微がうまい。澪田がなんでも顔に出すのとは違う感情の出し方です。

 特にそういう演技の良さとムードメーカーとしての良さが出てたのが2章で事件が起きるまでの一連のシーン。九頭龍が新しい動機のことを皆に問い詰めて空気最悪の中、小泉おねぇとひよこちゃん、終里と弐大のおっさん、九頭龍と辺古山の3組が各自で行動し始めて…という場面。
 左右田が日向とソニアさんを海に誘ったところに澪田や罪木が合流して左右田が喜ぶんですが、ここの喜び方がいい。大げさに喜んでるんだけど自然。バカだけどバカすぎない。
 その後小泉おねぇが死んでしまって、その死体を見た左右田が絶叫するんですがこの叫び声もいい。理解が追い付いてない時の驚き方。そして皆が集まってくる中、左右田が呟いた原作通りのセリフ。

左右田 なァ…さっきまでオレらっていい感じだったよなァ…海水浴だっつってはしゃいでよォ。それが…どうしてこんな事になっちまってんだよォ!!

cornflakes,2017,舞台「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE さよなら絶望学園 2017」オリジナル上映台本,P97

 原作通りではあるんですが、原作を一通り経験した後の舞台では凄く印象に残りました。左右田が小泉さんを含めてみんなを仲間と認識してたのもそうだし、感性が普通な左右田なりに明るい雰囲気を作ろうと頑張っていて、それがうまくいったからコロシアイなんて起きないって安心したところにこうなってしまって…という優しさとやり切れなさが詰まっていたのが今ならわかる。
 そういう感じで狛枝とか澪田みたいな派手な演技はないけれど、原作通りみんなをちゃんといなして話を回して明るくしていて、その挙動の細かな演技にベテランの味が光る。本当に何回も見れば見るほど好きになっていく左右田でした。

 そしてラストの説得のシーン。ソニアさんは生きることを諦めるなという強い遺志があるからこそ最初に立ち上がるのがいいんですが、逆に左右田は最後に立ち上がるのがいい。
 
左右田だけ誰かの遺志とかがあるわけでもないのに、皆が前に進もうとしているから、それと日向の親友だからという点だけで付いてきてくれる。自分で「お前らがやるなら」って言っちゃうぐらい軽薄。その上でそういう流されやすいところまで含めて最高の親友だと思ってます。

 その後の本当の本当にラスト。好きです。断言します舞台ダンロン2で二番目に好きなシーンです(1位は舞台に全員が蘇る衝撃の展開)。

左右田 オーイッ!オレはオメーらの事も他の連中の事もぜってーに忘れねーからな!オメーらも覚えとけよ!オレの名前は、左右田和一だからなーーー!

cornflakes,2017,舞台「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE さよなら絶望学園 2017」オリジナル上映台本,P239

 何がいいって全部いい。絶対に忘れないという言葉の意味は原作そのままなので多くは語らないんですが、これを舞台上(ゲーム内の世界)の誰かに言うのでもなく、舞台から客席(ゲーム外の世界=現実世界)の方に向かって叫んでるのがいい。そこに向かって叫ぶってことはつまり死んでしまったみんなに対しては生き返ると信じて、そして生きているみんなに対しては全ての記憶が消えても覚えていると信じて言ってるってことじゃないですか…。本当に仲間思いだよ…。
 そしてもう演技があまりにも良すぎる。ここに関しては絶対にいしだ壱成さんじゃないと出来ない魂の入った叫び。もうこの叫びの良さは言語化出来ません。それぐらいの感情の詰まり具合でした。ベテランは凄い。お前みたいな名演のこと忘れられる訳ねぇだろ!!

 細かい推しポイント:3章でビデオカメラ持ってる時ついソニアさんにお辞儀して「ありがとうございまーす!」カメラギューン!で足元映すとこ。
 あれ左右田が実際に撮ってる映像をリアルタイムでモニターに映してるってことだから地味に面倒なカメラの使い方してるよね。地味に。


日向創 - 横浜流星
 やっぱり一言で言えば男前。1の苗木君は苗木君にしては凛々しすぎないか?という感じでしたが、日向くんは男前でも全く違和感がないキャラな分カッコ良かったです。七海と同じく原作通りを要求される中で原作通りに最高に人間らしくてカッコ良い主人公を魅せてくれました。

 舞台の主演にはイケメンを置きたいよねという興行的に当然のことを除いても、舞台で苗木君や日向くんを魅せるためには正統派にカッコよくて男前でイケメンなのって絶対必要だと思います。
 そもそも冷静に考えるとダンロンの歴代主人公はキャラが普通すぎる(赤松さんとかこまるはまだ舞台化してないので一旦置いておいて)七海とか霧切さんはマイペースだったりクールだったり、いわゆる演技プランの核になりそうな個性があるけども、苗木君も日向くんも主人公としては余りに普通すぎる。まあ話進めていくうちにバリバリに個性が出てくるんですが序盤の間は普通だしそこも置いておいて。
 操作キャラであり主人公だった時は、常に一人称視点だから意識しなくても目立つし個性がないとかあまり気にならないので「コロシアイ生活に巻き込まれてしまった取り柄もない普通の高校生」もあまり気にならなかったんですが、個性豊かな16人を俯瞰して見られる舞台ではあまりにも普通すぎる!そこをカッコ良さと演技力で舞台を掌握して、原作を知らずに舞台に来てる人にも「普通の高校生なのにこんなにカッコ良くて目立ってる!」と思わせるパワーが必要となればそりゃ実力派の人気若手男優が選ばれるよなと感じました。

 日向くんと苗木君の二人の主人公を比べてみると日向くんの方が感情豊か(苗木君が無感情という訳ではないです。)という印象があるんですが、特に舞台ではその感情が生き生きと出てたなと思います。
 苗木君は能力も性格も至って平凡ではあるけど、心は絶対に折れなくて希望に向かって進み続ける男で本当にかっこいい。いい主人公ですよね…。
 それに対して日向くんはフィジカルとかは苗木君よりも強いけど、そもそも本科の生徒ですらない一予備学科生。そしてそれにコンプレックスを抱えていて、江ノ島の前で虚無ってしまうぐらいメンタル的には本当に普通の人間。でもだからこそ最後に七海に支えられて立ち上がるのが本当にかっこいい。そしてそういう人間臭さがあるからこそ日向くんは凄く感情豊かに見える。どっちもいい主人公ですよ本当に…。
 舞台の苗木君の見せ場が江ノ島と対峙しても折れることのない直接対決でのかっこよさなら、日向くんの見せ場はただの予備学科生だから一回は折れてしまうけど、そこから立ち上がる喜怒哀楽全ての感情を使った演技だと思います。
 普段の左右田達とバカやってる時は高校生らしく明るく、狛枝とクライマックス推理で直接会話する時の怒りも悲しみも混じった演技は「お前を信じていたのに」というやり切れなさが伝わってくる。原作をただなぞるだけでなく、舞台完全オリジナルの狛枝に対する独白をここまで感情を入れて演じてくれることが日向くんというキャラに入り込んでくれてるんだなとわかって凄くいい。
 七海のオシオキの時の「七海!」という心からの叫びはただの叫びでありながら本当に悲しくて、そしてかつての仲間達から「お前はカムクライズルだ!」と突きつけられる一連のシーンでは、同じ叫び声でもこっちは絶望して現実を受け入れられず叫んでる声色で聞いてて心が苦しくなる。
 そして最後にそれらを乗り越えて立ち上がってからは熱い。本当にもうただただ名演で熱くて最高でしたとしか言いようがないです。ダブルそれは違うぞ言うまでもなく最高だしそこからみんなを説得するのも熱すぎて最高。
 ダブルそれは違うぞからは大体全て原作通りなんですがそれでも120点で原作通りのセリフを演じ切ってくれました。そういう様々な感情を出す日向くんに、感情の演技が物凄く上手い横浜流星さんの舞台日向くんが最高にハマりっていて最高でした!もうこれ以上書けることはありません!だって実際に最高なんだから仕方ないだろ!
 そして七海の感想でも全く同じことを書きましたが最後に舞台上で七海にありがとうと言ってくれてありがとうございました。ありがとうと言いたいのはこっちの方です。日向くんとスーパーダンガンロンパ2 THE STAGE2017、大好きです。ありがとうございました。

 細かい推しポイント:3章の裁判パートで破壊神暗黒四天王が持ってきた紙(ひよこちゃんを隠してた白黒のやつ)を日向くんがくっつけるシーンがあるんですが、あれ絶対ズレてる。
 
サッ…ピキーン!ってやってるけど絶対ズレてる。地味にじゃなくて普通にズレてる。もう一回見る予定のある人は注意して見てください。絶対ズレてます。

ズレてる




③-3 ダンガンロンパ3 THE STAGE2018〜The End of 希望ヶ峰学園〜 
ネタバレあり感想


展開とかの舞台全体に関する感想
 まず最初に、アニメを見る前に舞台を見たのでキャラクターの再現度がどうだったのかがわかりません。なので各キャラの感想でも再現度については書いていません。勝手に書いていた各キャラの細かい推しポイントも同じく3に関してはありません。
 それでも(アニメ版より先に見ても)物凄く面白かったです。ちゃんと初見でも話に入れるよう未来機関や苗木君の状況だったり絶望編での出来事を最初にしっかり説明してくれるし、本来絶望編まで見てないとわからない"幸染先生ってどんな先生だったの?"とか"御手洗君とか宗方さんとか逆蔵さんって絶望編で何やったの?"とかを都度都度回想で補完してくれるので、3からの新キャラのみんながどんな人物なのかちゃんと把握できて好きになれました。
 そして1からのキャラは、苗木君は舞台版特有の男前さが成長後の苗木君にピッタリとハマっていて物凄くカッコいい。見せ場も多くまさに主人公という大活躍。霧切さんはいつも通りにクールで探偵としての活躍も沢山、そして成長したからこその感情を優先するような行動もあってやっぱり大活躍。朝日奈さんは1の頃から全く変わらずに明るくて、その明るさが常に緊迫している舞台3に安らぎを与えてくれる。
 苗木君達しか知らないけど見るか~ぐらいの気持ちで見ても物凄く楽しめて、新キャラも旧作キャラのみんなと同じぐらい好きになれる。そして当然旧作キャラに関しては「これが見たかったんだよ!」という成長した姿が見られて大満足でした!

 全体の感想内で特に触れておきたいシーンとしては、未来機関の兵士に襲い掛かられた苗木君を死んだはずの黄桜さん達が助けにくるところ。2の死んだみんなが絶望を与えるために復活するのも超衝撃的な展開でした。でも正統派にピンチを救うためにやってくるというのもやっぱりカッコよくて好き!
 そして復活した理由も"忌村さんが解毒薬を作っていたから"(より正しくは舞台版だと死後しばらくでも大丈夫な毒だったから)という無理のない理由で、無茶な改変という訳でもないのがいい。そんな大好きなシーンなんですが、原作だとここで助けに来るのが日向くん達(そもそも御手洗君の説得するのも日向くん達)だと聞いた時は凄くびっくりしました。そういう意味ではアニメを先に見ておいた方が舞台版を見た時に「え!?ここで黄桜さんが来るの!?」ともっとびっくりしたのかもしれません。
 実際苗木君の説得もアニメ版の日向くん達の説得を先に見た方が比較で楽しめたと思うし、各キャラも舞台版での再現度を比較しながら楽しめたとは思います。特に雪染先生・宗方さん・逆蔵さんの74期生と御手洗君は(舞台の内容だけでもある程度は掴めとはいえ)絶望編の内容あってこそだとも思う。
 それでも舞台版から先に見たからこその面白さもいっぱいありました!舞台ダンガンロンパ3はアニメ版を見ていなくても面白くて、見た後にはアニメ版を見たくなる!
 舞台1・2は原作プレー済だけど舞台3は原作未視聴…という珍しいであろう見方でも全作楽しめる、それが舞台ダンガンロンパシリーズです。

 最後に映像出演のみのみんなに関して。映像のみで出演している十神クン(演:中村優一)、葉隠クン(演:松風雅也)、江ノ島(演:神田沙也加)の三人は唯一舞台1から続投で出演しています。特に神田沙也加さんに関しては2でも江ノ島として映像出演しているので、3作連続で江ノ島役を演じるという快挙を成し遂げています。まあ江ノ島は1のあの演技見せられたらもう神田沙也加さん以外考えられないですよ…。
 十神クンは出番は少ないけど目立ってました。名乗りが「十神の名にかけてな!」から「十神白夜の名にかけてな!」になってるのが"十神家はなくなってしまったから名乗りは変わったけど、自分の名前を名乗ることで自分だけの力で十神家再興のために頑張ってる"というのがわかって好きです。
 葉隠クンはいつも通り。やっぱりゲーム版そのままに葉隠クンそのものでした。元々ハマり役(というかそのもの)なんですが、作中で老けてる分松風雅也さんの雰囲気に似てきて更にハマり役になってたと思います。
 江ノ島は十神クン以上に出番は少なかったですが同じく目立ってました。逆蔵さんに蹴り入れて土下座させるシーンが壮絶すぎる。あと御手洗君の言葉にカットインするアレ…めちゃくちゃいいですよね…。全体の感想は以上です。


雪染ちさ - 高橋りな / ※七海
(七海さんはダブルキャスト、ダイジェスト映像のみ。)
 ダンガンロンパで七海と言われても千秋しか浮かばないと思いますがちゃんと七海という芸名の方です。
 前情報で77期生の教師で宗方とも仲が良いという所は知っていたのでこれは重要キャラだなと思っていたんですが22分で死んだ!!!コロシアイ始まった途端に死んだ!!舞園さんよりずっと早い!!という感じでびっくり。
 まあ流石に絶望編主人公の重要キャラが22分で完全退場する訳もなく、回想で何度も再登場するんですが…ノリノリで人殺してる!!!しかも殺し方がエグすぎる!!で二度びっくり。口にナイフ突っ込むって…。そういう狂気性は舞台2の罪木と似たものを感じました。まあどちらも絶望に染まっていたから当然なのかもしれません。

 ただ終わってみれば物凄く可哀そうな人でした。絶望編ではめちゃくちゃいい先生だったらしいし、洗脳させられる前も御手洗を逃がそうとしてたし、最後まで宗方を心配していたし…凄くいい人なのが回想だけで伝わってくる。それがああなってしまうんだから悲しすぎるし絶望は怖い。宗方が絶望許せんになるのも当然だと思います。だからこそ最後の最後の御手洗の言葉で誤解が解消されてよかったです。あれは宗方だけじゃなくて雪染先生にとっても救いですよ!本当にいい追加シーンでした!
 そして見た後に色々調べて、原作だとあのシーンが無いと知って三度びっくりしましたね!こういう「え!?原作だとアレないの!?」要素を知る度にアニメから先に見ればよかったなぁ…とは思います。雪染先生というキャラは絶望編の優しい教師の一面を見てこそだとも思うので余計に。でも舞台から先に見るというのも凄く珍しい見方ではあると思うしそれで楽しめるのも伝えたいし…。舞台から見たことを後悔してはいません。


万代大作 - 一徹(トリテン)
 正直なところ原作を見てないので再現度もわからない上にあまりにも出番が少ないので(ゴズさんも含む)語れることが少ない!!
 
ただまあ気になる部分が多いキャラではあります。なんでネギで戦ってるんですか…?どこかの首領のパッチ?超高校級の農家ってそういうことじゃなくない?原作でもネギで戦ってるの?
 そのことわざ何…?多分このことわざ日替わりなんだろうな。
 なんか死んだ…。舞台開始27分で死んでるし。舞園さんと全く同じ分数だし。
 NG行動ひどすぎない…?ずっと目閉じてれば死ななかったんでしょうか。心眼枠でダンロンに殴り込みしろ。
 死んだ時の周りのリアクション薄すぎない…?これがNG行動か恐ろしいぐらいで流されてるし。人が死んだんだぞ!?
 声高くない?って思ったら原作だと釘宮さんだったの…?なんで…?あれ結構語ること多いな?

 なんというか蘇った時もうおおおおおお十六夜さんが蘇ってる!!!黄桜さんも!!!……農家も蘇るの!?というちょっとベクトルの違ったびっくり感。実際冷静になって舞台を見ると万代さんはちょっと皆との接点がなさすぎませんか!?死ぬまでに苗木君と舞台オリで交流してあの万代さんが蘇った!!!感を出してもよかったんだよ!?それか雪染先生みたいに回想で何度か出てきて死んだ後も存在感を残してもよかったんだよ!?あれ結構語ること多いな!?
 総じて舞台版だと、黄桜さん十六夜さんと肩を並べて蘇る重要なキャラになっていたり、それなのに最初死んだ時の皆の反応が薄すぎたり、ネギを武器に何度も戦ったり…といった1個だけだと困惑する要素が何個も何個も重なった結果裏返って面白いネタキャラになった感があります。この変な立ち位置を狙ってやったなら凄い。ここまで変な要素詰め込まれてるとまあ好きになるよ!


グレート・ゴズ - 大久保圭介
 物凄くいい人なのはわかるんです。あのコロシアイ中継を見た上で苗木君のファンになるという純粋な心の持ち主だし、そんな苗木君を守るために逆蔵達にシュートを仕掛けに行く熱い正義感の持ち主でもある。
 そんな欠点のない良い人がすぐに死んでしまうのがダンガンロンパ。話が人一倍通じて頼りになる人が序盤に死ぬのは2の十神クンに繋がるとこがあると思いました。ずっと気になってるんですがあの時朝日奈さんがもう少しモニターに近かったら朝日奈さんが死んでたんでしょうか?

 …未来機関に相応しい物凄くいい人なんです!それ故にクセが少なくて万代さん以上に語ること少ないんです!!いい人なのに不憫すぎる!!万代さんはその後出番があるので終わった後も印象深いんですが、ゴズさんはあれでガチ退場だから万代さん以上に終わった後の印象が薄い!
 終始マスクを被っているので役者さんの顔もわからないし。カーテンコールでも脱がせてくれないし。地味にマスク付けたまま演技やアクションするの大変そうだけど伝わりにくそうだし。地味に。声も結構こもってたし絶対息苦しいだろうしかなり大変そう。こんなとこまで不憫!
 ちなみに初回限定盤特典映像の大千秋楽カーテンコールではマスクを脱いだゴズさん…というかただの大久保圭介さんが見られます。ゴズさんファンは必見!


天願和夫 - 竹若元博(バッファロー吾郎)
 天願和夫のこんなNG行動は嫌だって何なんですか!?!?!?!?!?
御手洗の「今ですか…?」がもっともすぎる。
 こいつは食えないジジイなのか食えるジジイなのか…?という序盤の疑念がどうでもよくなる、舞台1~3通して一番と言っていいレベルのはっちゃけシーンでした。ダンガンロンパの中でも特にシリアス続きの舞台3に唐突に大喜利が挟まるだけでめちゃくちゃ面白い。緊張と緩和理論ってやつなんでしょうか。
 あとあのシーンで霧切さん絶対に笑いこらえてますよ!ああいう「ギャグシーンで役者さんが笑っちゃったりする素が出る場面」を見ると福田雄一さんの長回しシーンが思い浮かぶんですが、そもそも福田雄一さんが舞台出身の人なので因果が逆(舞台だとよくある光景でそれをドラマに取り入れた)なのかもしれない。
 ただあの唐突な大喜利も「どんなNG行動が厳しいんですかね」という御手洗の質問を躱して、ついでにほがらかな面もあるジジイと思わせるためだと考えると…やっぱり食えね~!全てを知った後に見返すとあの面白かった大喜利すら憎たらしく感じて…いややっぱ面白い。アレはずるいって。

 バッファロー吾郎竹若さんの好好爺に見せかけたやばいジジイの演技も凄く上手かったです。単純にお爺さんの演技がうまい。普段はいい人に見えるし実際頼れるし面白い一面もあるんだけど、例の「ついやってしまったよ」の一言に見える狂気が凄い。なんでもない一言なのに希望を求めすぎておかしくなってしまった人感を出してくるのは流石ベテランって感じでした。
 舞台全体を通して見てみると、普段の面白いおじいさんの一面、質問に嘘を言えないという自分のNG行動すら利用する狡猾な一面、そして純粋に希望のために行動する希望狂いの狂気の一面の3つを併せ持った黒幕って感じでかなりいいキャラだったと思います。
 そしてその3要素を竹若さんがしっかり演じきっていたのでより魅力が出てくる。当初はバッファロー吾郎竹若!?って思ってたんですが見てみると驚きのはまり役というキャスティングでした。あの大喜利シーンも竹若さんがリアルで大喜利得意だからですし。
 実際序盤で天願和夫のこんなNG行動は嫌だで心を掴まれたからこそ終始面白ジジイという目で見れたので、あの大喜利はキャラ付けの点でもめちゃくちゃ重要だったと思います!霧切さんが大喜利で笑いこらえるキャラって一面も見られたし。

 ちなみに天願会長は仕込み針を飛ばして戦っているんですが、舞台中では一切説明が無いので気を飛ばしてるのかな?と見てる時思ってました。大神さんなら飛ばせそうなのが悪い。

今ですか?だよ本当に


忌村静子 - 永島聖羅 / ※船岡咲
(船岡咲さんはダブルキャスト、ダイジェスト映像のみ。)
  見た目は怖いけれどコロシアイの中でも誰かを助けようと行動してたって優しい心の持ち主なのがいい。最初は薬飲んでおかしくなってるし変な人なのか…?と見た目も相まって思ってたんですがめちゃくちゃいい人でした。でもドーピング薬作るのはマッドサイエンティストだと思います。

 大人も多いし舞台が未来機関だからというのもあって舞台3は人間が出来てる人が多かったって印象です。誰かを助けたいって行動がちゃんと霧切さん達を助ける鍵になっていて報われてよかった。でも自分はNG行動で死んだわけではないので助からないのが悲しい。正直舞台の演出的にずっと影踏まれて死んだと思ってました。でも紛らわしいというよりは、忌村さんが死んだと思わせて実はNG行動で死んだのは十六夜さんだった!という舞台演出を活かしたミスリードと考えた方がいいかもしれません。実際騙されました。

 解毒薬を作るというストーリー上での大活躍もそうなんですが、戦闘シーンや回想シーンでの出番も多くて地味ながら活躍は多かったです。特に戦闘シーンは素手で戦うキャラなのもあり黒スーツって衣装が映えてかっこいい。ドーピングする時も背後でモノクマダンサーズが動いてて、強くなったのが視覚的にわかりやすい。
 回想シーンはあの衣装のままランドセルだけ背負って小学生時代やってるのがシュールで正直面白かったです。流流歌との友情もスレ違いで悲しかったんですが…糖質オフのお菓子作ればよかったんじゃないでしょうか…?とは今でも思ってます。ねえ、バームクーヘンの穴からるるかを見ちゃうのをやめる薬、作れる?
 ねえ、バームクーヘンの穴から


十六夜惣之助 - 神永圭佑
 一言で言うと舞台ダンロン3の最推しキャラです!
まずシンプルにイケメン。イケメンは強い。それに加えて石丸・田中の系譜のコメディリリーフというだけで好きになるに決まってます。
 笑いの取り方も石丸や田中が動きで笑いを取るタイプなのに対して、十六夜さんは一言二言ボソッと喋って笑いを取るタイプ。舞台版田中がテンション高めだった分テンション低めに笑いを取るキャラの役割が移ってきた感じがあります。そして特に舞台ダンロン3は終始シリアスなので、十六夜さんのギャグが癒しになる。こんなNG行動は嫌だと同じ理論ですね。特にギャグを言うキャラが十六夜さん以外だと万代と天願ぐらいで、万代は序盤で退場するし天願は大喜利だけだから余計目立つ。
 そして戦闘シーンもカッコいい。鍛冶屋とクナイに何の関連があるのかはわからないけど(自分で作ったクナイなのはわかるけどクナイ以外でもよくない?)クナイを刀代わりにするのはやっぱりカッコいい。
 そして今までのコメディリリーフ枠の例に漏れずにシリアスなシーンでは物凄くカッコいい。流流歌に裏切られるところは全てがあまりにも男前。ああいう変なことばっかり言ってた男が最後に真面目な行動を取るのがいい!流流歌に対する愛は本物なんだな…ってギャップがカッコいいし、流流歌を責めるわけでもなく「それは裏切りなんかじゃない…」と許す行動もカッコいいし演技もあまりにも熱が入っていてカッコよすぎる。別れのキスのシーンは美しい…と息を呑んでしまうほど綺麗でした。舞台ダンロンのコメディリリーフキャラはみんなギャップのカッコよさがあるのがズルい!ギャップ最高!!

 そしてそしてやっぱり最後の宗方との会話があまりにも良すぎる。宗方との愛する人を失ったもの同士での会話というシチュエーションが単純にいいのに、最後に十六夜さんが言う言葉が「悪いことを言う…」という普段の口癖なのが本当に最高!!あの口癖そのものと十六夜さんというキャラがめちゃくちゃ魅力的になってる!普段から言っていた口癖をこの場面で持ってくるのが最高にわかってる!この口癖はこのシーンのためにあったんだなお前…!と幻覚を見るぐらい(原作だと十六夜さんは死んでるのでこんなシーンありません。)にはぴったりハマってます。
 普段のギャグも戦闘シーンも舞台映えして、原作通りにカッコいいシーンは当然カッコ良くて、舞台版で追加された最大の見せ場まであって…好きになるに決まってるでしょう!舞台映えという点で十六夜さんに勝てるキャラはいません!文句なしの最推しです!


塔和モナカ - 市川美織
 正直なところよくモナカのことはわかりませんでした。これまた絶絶をやる前に舞台版を見てしまったので、絶絶前提のキャラ付けが全く把握できていません。アニメ3を見る前に舞台3を見ても大丈夫ですが絶絶はやっておきましょう!まあこのネタバレ感想をここまで見てる時点で絶絶やってない!って人がいても手遅れなんですが!一応見てなくても話についてはいけます。
 その上でモナカに対する印象を書くと見るからに怪しいけど怪しすぎて黒幕じゃないな…というミスリード要因。追いつめられると一瞬で降参してニートになるので月に逃げまーすって言いだす飽きの早さには江ノ島っぽさを感じました。ただこいつが絶絶の黒幕なんだとしたら反省してなさすぎじゃないですか!?さらっと月光ヶ原さん殺すんじゃない!!
 まあ黒幕が反省するような作品じゃないと言えばそうなんですが…。急に歌い出して舞台をミュージカルにし出すし、やり放題して去っていったって感じでした。恐らくですがこいつはアニメ版より反省してないですしやりたい放題してます。

 そういう訳でモナカはキャラ性すらぼんやりとしか把握できなかったんですが、そういう点を抜きにしてもモナカ役の市川美織さんのキャラ作りは凄まじかったです。何が凄かったかって、本来どの役者さんも素で映っている特典映像の楽屋裏で一人だけモナカのキャラを崩していなかったのが本当に凄い。
 
あのぶりっ子キャラで楽屋裏のカメラに写って、舞台袖から引っ込むときも「モナカは月に行ってきまーす!」と退場するあまりにもプロ意識の塊。最終的なモナカの印象は"圧倒的プロ"。キャラは掴み切れませんでしたがそのプロ根性で記憶に残ったキャラの上位を掻っ攫っていきました。


月光ヶ原美彩 - 三秋里歩
 よくわからないモナカちゃんに舞台開始前の時点で殺されていたというあまりにもよくわからなくあまりにも不憫な人。ゴズさんだって舞台開始時の時点では生きてたよ。一言も喋ってないので喋るのがNG行動か?と思ってたらただのロボでした。

 動く時は車椅子、喋る時は映像が声を出すという舞台泣かせにも程があるキャラです。段差を移動する時はモノクマダンサーズに持ってもらうんですが、それ以外の時はダンサーズに頼らず一人で動いてるのが地味に「あの車椅子どうやって動いてるの?」と気になります。一人だけ映像が流れるタイミングと動きのタイミング合わせる稽古してたのも大変すぎると思います。

 ただまあ…モナカのことが絶絶をやってなかったせいでよくわからなかったのでこの人もよくわからなかったです。新世界プログラムの開発者の一人だったりあのウサミを使って喋ってたりと、描写だけ見ると凄く重要そうなキャラなんですが、あまりそんなことはなかった。黒幕と見せかけてそうじゃないキャラという意味では中々重要ではあるんですが。
 それでもモナカと一緒に無表情でダンス踊ってるところがめっちゃ可愛かったのでそれだけで最高でした。あとあのモノクマダンサーズがミサイルになって飛んでくやつは流石にギャグだと思います。罪木の三角コーン並みにギャグ。

かわいいね(一人はロボ)。


黄桜公一 - 永山たかし / ※玉木健仁
(玉木健仁さんはダブルキャスト、ダイジェスト映像のみ。)
 ダンガンロンパとしてはシリーズ通して珍しい大人の登場人物。そもそも学園が舞台なので大人は滅多に出てこないんですが、それにしても外伝とか抜きにすると霧切さんのお父さんぐらいしか出てこないぐらい大人は珍しい。
 その中で正統派にシブくてカッコ良くて人格者のおじさんという、ダンガンロンパの世界にも頼れる大人はいるんだぞ!と教えてくれるキャラでした。3のもう一人の大人が黒幕なだけに余計いい人に見える。

 特に黄桜さんが大人なのを感じさせるのが、事あるごとに発する「まだまだ若いねぇ~」というセリフ。今までも精神的に未熟なキャラとどこか達観してるキャラが同じコロシアイ学園生活を送っていたわけですが、実際はどこまで行っても同じ高校生でそんな大人びてるキャラも通信簿を進めてくと若さが見えたりする。
 でも黄桜さんは完全に大人で、超高校級の皆より何十年も長く人生を過ごしている。そんな大人にしかこのシブいセリフは許されません。葉隠は3ダブだから人生の先輩ではあるけど3ダブするようなやつは苗木達と対等でいい。

 そんな頼れる大人なのでカッコいのは当然なんですが、ひねくれたキャラが多い中で正統派にダンディなのがシブさを際立たせていて更にカッコよかったです。
 戦闘シーンも派手なアクションで魅せるわけではないけど一瞬でミサイルをバラバラにしたり、月光ヶ原さんのNG行動を瞬時に把握して追い詰めたり、逆蔵さんを罠にハメたりと、絡め手まで使うまさに大人の立ち回り。
 舞台版だと黄桜さんが月光ヶ原さんロボwithモナカと対峙していて、その結果黄桜さんの戦闘シーンが増えていたりモナカと対話するのが黄桜さんになっているんですが(結果的に黄桜さんの活躍も増量。嬉しいね。)通信が途切れた月光ヶ原さんロボをいじっている時に「左右田がいりゃな…」とボソっと呟いていたのが地味に好きです。こういう前作要素の匂わせっていいよね!地味に!まあ3の舞台ということを考えると2というより絶望編の匂わせなんですが。
 そして最後も霧切さんを守るためにNG行動を破ってまで行動して、昔の友人との約束を守り忘れ形見の霧切さんに未来を託して落ちていく…どこまでカッコつければ気が済むんですか!!最高のダンディですよ!もう超高校級のダンディ!

 その後は死んだかと思わせておいてまさかの再登場。ダンディですからそりゃ再登場ぐらいしますよ。当然再登場後もカッコいい。こういう保護者枠は死んだと思わせて生きてたりする物。
 …なんですが、霧切さんを守るために弓喰らってその上で落とし穴に落ちたのによく生きてましたね!!?毒以前に弓と落とし穴のダメージで死にませんか!?頑丈すぎませんか!?恐らく朝日奈さんがあの後落とし穴から引っ張り上げて解毒薬飲ませたと思うんですが朝日奈さん力持ちすぎませんか!?あとどうでもいいですがあの落ち方だと細かすぎて伝わらないモノマネのやつの落下シーンにしか見えなくないですか!!?
 正直未だによく生きてたなって思ってるんですがまあ舞台通して黄桜さんカッコ良すぎるし生きてた方がいいよねで許す!あの弓刺さるシーン「えっ!今のどうやってやったの!?」って驚いたぐらい迫力あったので許します!

 あと「狛枝が戦国鍋TVの蘭丸」並みに伝わったことがないんですが実写黄桜さんはDJ Mass MAD Izm*さんに似てると思ってます。帽子で判断してるだけ。


安藤流流歌 - 山下まみ / ※石田安奈
(石田安奈さんはダブルキャスト、ダイジェスト映像のみ。)

 本当に申し訳ないのですが正直なところ流流歌の理解はあまり出来ませんでした…。ギリギリ出来ませんでした…。モナカみたいにキャラを掴めなったのではなく、どんなキャラか掴んではいるけどその行動に納得が出来なかった感じです。忌村さんとのすれ違いも糖質ゼロのお菓子作ってあげろよ!!って思うし(超高校級なんだからそれぐらい出来るだろ!!)、十六夜さんを殺したのも、裏切られる前に裏切るじゃないんだよ!!愛してるなら信じてやれよ!!と思うし…。
 ただまあその当人の十六夜さんが許している以上、見てる方がそれ以上言うのは野暮なのかなと思います。理解できなかったというだけで嫌いとかではないですし(重要。)裏切られたり興味を失われるのを異常に恐れてる人なのは理解できるし。そもそも苗木君も言ってたように悪いのはこういう状況に追い込んだモノクマ!お前じゃないか!

 そもそも演技がどちゃくそ良かったです。事前にバカップルぶりをちゃんと描いてただけに、それを泣きながら裏切るというのが演技も舞台の演出も良いだけにちゃんと悲しい。裏切るのかよ!という是非はともかく、こういう"苗木と江ノ島"だとか"日向と狛枝"だとか「二人だけの世界で一対一の演技勝負」というのが面白くならないはずがない。舞台ダンロン3で好きなシーンの上位に間違いなく入ります。
 何気にダンガンロンパで最初からカップルのキャラって初めてだっただけに、こういうベタなロマンスシーンも新鮮でよかったです。あと太ももが凄かった。舞園さん→小泉さん(とペコ)という舞台ダンロンの太もも枠(勝手に言ってるだけ)を継承してると思うんですがその中でも流流歌は特に凄かったです。

 細かいネタだと出口があるとバレないように黄桜さん達の注意を引いている時、「好きな人をバームクーヘンの穴から見ないでどうやって見るの!?」と引き止める流流歌と「ガン見。」と大人の返答をする黄桜さんが好きです。なんだかんだ流流歌もこういう細かいとこで十六夜さんを引きずっているのがわかるので嫌いになれない。
 ただ、そもそも十六夜さんのバームクーヘンの穴連呼自体が日替わりネタなので、ここの会話も日替わりネタだったりするんでしょうか?


逆蔵十三 - 鮎川太陽
 御手洗殴るな!!!!当初は事あるごとに御手洗を撲殺しようとしてくる血気盛んな人ぐらいのイメージで当然いい印象もなく。でしたが見ていくうちに一見強い奴だけどバラされたくない弱さがあるという大和田っぽいキャラだというのがわかって好きになりました。
 そしてそういう秘密を抱えていただけに、最後の最後に今まで縛られてたものから解放されコロシアイのルールを外れて大暴れする姿には残姉のIFの大和田を見た時に近いスカっとした感じがありました。でも御手洗殴るな!!苗木殴るならまだ理由はあるけど(でも殴るな)御手洗殴るのはおかしいだろ!!!

 ただまあ100万回言われてるとは思いますが冷静に考えるとやってることは割と元凶寄りでもある。実際宗方を思ってるなら報告しろ!しなかったから世界こんなことになってんねんぞ!(あとそもそも江ノ島に負けんな!!)というのも凄くよくわかるんですが、もう感動したからそれでいいんです!!
 特に自分の場合は舞台版3から入った(ことで舞台の演出と演者の力に圧倒させられた)のも一因だとは思います。実際あんな息も絶え絶えになりながらの迫力ありまくりの独白を、最後の見せ場と言わんばかりの長回しで見せられたら嫌いになれるわけがないです。
 アニメにもアニメの良さがあると思いますが、演者さんが声や表情や身振り手振り全て使って全力で一人の人間を演じるという点ではやっぱり舞台に勝るものはありません。それぐらい感動しました。まあそれはそれとして超高校級のボクサーなんだから江ノ島には負けるな。

 感動したというのもそうなんですが、あれだけ敵対してた苗木を自分の腕を切断してまで助けに行って、その後自分の命よりも宗方のことを優先して電気落としに行った時点でちゃんと贖罪になってると思うんですよ。隣についやってしまった人がいる分償おうとしてるだけいいでしょうがよ!!
 
再度言いますが舞台の演出めっっっちゃいいし、そして何より「これ以上俺をみじめにさせるんじゃねえよ…!」ってセリフが凄くいい。あのまま苗木の言うとおりに協力して動いてれば、そうでなくても止血とかしてれば命は助かったかもしれないのを、苗木への嫉妬心だとか宗方への思いだとかで振り切ってしまった凄いセリフだと思うんです。
 苗木は希望を伝染させるコトダマの力を持っているのに、その希望よりも強い意志で手を払いのけたんですよ!それぐらいの意志を持った行動なんだからもう許す!!御手洗に蹴りぶち込んだのも……舞台版だと万代さん生きてるからまあ許す!!

 個人的に一番好きなシーンは雪染先生が絶望に染まっていたことを知り豹変した宗方を見て「あ、いやその…」と素に戻るシーンです。あんな緊迫した場面で急に素に戻られるから妙に面白い。こんなNG行動は嫌だといい3はシリアスな笑いが多いです。
 こう書くとギャグシーンとしか思えないですが実際は長年の付き合いの逆蔵から見ても(素に戻ってしまうぐらい)宗方の様子がおかしいというのがわかる場面でもあります。あるんですがただ素への戻り方が急すぎるしあまりにも素すぎるので面白い。
 個人的にはああいうキャラを通して役者さんの素が出るシーンは大好物です(霧切さんが大喜利中に笑うのとか)。物凄く細かいですが舞台の逆蔵を語る上で欠かせないシーンだと思ってます。
 それ以上に細かいことだと顔の雰囲気が武田真二さんみたいだと思います。


宗方京助 - 仲田博喜
 当初は逆蔵と一緒に苗木君殺そうとするし人の話聞かないわ、出てくる度にツダケンみたいな声で物騒なことを叫ぶわ、仕舞いには急に客席からスポットライトと共に現れて「いたか絶望めぇぇぇ!!!」と叫びながら突撃するわ…舞台3での狛枝枠(怪演で視線を釘付けにする担当)だこれ!舞台ダンロンのヤバいやつは客席から現れて叫ばないといけない決まりとかあるんだろうかとか思ってました。すみませんでした。
 
全てを知った後だとあの狂ってるように見える姿も雪染先生が死んで限界が来てしまったんだな…と同情100%で映る。初見だとツダケンみたいな声で叫ぶ度に笑っててすみませんでした。ここまで悲しい人はいないですよ…。
 というか74期生は3人とも悲惨すぎる。宗方さん最後に救いがあって本当によかったね…。

 その救いというのがエピローグで御手洗から語られる、"雪染先生は洗脳される直前まで宗方さんのことを思っていた"ということなんですが、それを聞いた宗方さんが「雪染先生と逆蔵を背負っていく」と決意するのが凄くグッときました。
 ダンガンロンパで死んだ人を「背負っていく」と表現する以上、「引き摺っていく」ことを選んだ苗木君との対比になっているのはもう明白でしょう。それぐらい引き摺っていくという苗木君の言葉はダンロンで重要。
 苗木君と宗方さんでは考え方が違うのをこの対比で表現した上で、それでも二人とも乗り越えることは選ばずに死んでいった人達を忘れずに生きていく…"残されてしまった者の生き方"という根本の部分は変わらない。そういう大事なことがこの短いシーンに詰まってると思います。
 特に宗方さんは一度雪染先生のことを忘れようとしただけに、最後の結論が背負っていくことなのが…最高にいいですよね…。

 宗方さんは序盤~中盤は(狛枝の前例もあったので)つい笑ってしまうぐらいもう怒りの演技が凄いんですが、終盤の霧切さんが亡くなった後の苗木君との会話だとか、逆蔵との最後のシーンの悲しみの演技も凄い。
 怒ってる時は殺気がこっちに伝わってくるぐらい迫力ある声で苗木君に襲い掛かっていくし、泣いてる時の声にもならない声を振り絞っての「ちさ…」という呟きは序盤が嘘のように静かで凄く悲しい。
 
何が言いたいかというと仲田博喜さんはそういう感情を前面に出しての演技が全体通して物凄く上手い!感情を表に出しまくるけどイカれた人という訳でもなく、あくまでも苗木君以上に辛い目に会ったせいでおかしくなってしまって、それでも最後には雪染先生と逆蔵のことを背負って生きていく裏の主人公…という今までのダンロンにいなかった難しいポジションのキャラクターに要求されることを全て演じ切っていたと思います!
 あと舞台の途中で天願会長から全てを(実際は全てという訳でもなかった。会長許せねえ…)聞いた後、白のスーツを脱ぐと中から灰色のシャツが!という感じで衣装チェンジするのとか物凄くわかりやすくおかしくなっちゃった…という演出でよかったです。
 清廉潔白な感じの白からグレーになると鈍感な自分でも流石に心情表現的なアレなんだな…と察せる。袖めっちゃボロボロだし。あれも心がボロボロになってしまったという心情表現にちがいない。
 ただそういう難しいこと抜きにしてもあの衣装替えはカッコよかったです!衣装としてはスーツにシャツというシンプルなものながらそのシンプルさがカッコいい!あと2の九頭龍にも通じるものがあるんですが舞台中で衣装を変えるのって凄く映えるよね!大好き!正直超高校級の生徒会長がなんで剣使えるのかわからないけど制服で日本刀持ってるの凄く映えるからいいよね!大好き!


御手洗亮太 - 木津つばさ
 正直に言いますがこいつが洗脳ビデオを作ったという核心部分は見る前から知ってました。なのでまあ最後まで生き残るんだろうな…と思って見ていたのですが、まさか洗脳ビデオのことを知っていながらえ!?何やってんのお前!?まさかお前ラスボスなの!?という衝撃を味わうとは思いませんでした。
 希望のビデオのことまでは知らなかったんですよ!!中途半端に3を知っていたからこそ味わえた最高のショックだったと思いますがまあ普通に何も知らないで見た方がショックですよね。

 振り返ってみると御手洗はあえてわざとラスト間際まで目立ってなかった(目立たたせてなかった)なと思いました。途中で御手洗が印象的だったのは苗木君がスピーカーでコロシアイを放棄すると宣言する場面で「なんでそんなに強いんだ…」と呟いていたとこぐらい。最初はちょっと引っかかるけどなんでもない言葉、ぐらいに流してたんですがもう一回見ると自分がやってしまったことの罪悪感を抱えながら、どんな時でも前に進む苗木君を目の当たりしての凄く重い言葉なのがわかる。
 あと逆蔵に殴られるとこと天願会長の大喜利に「今ですか…?」という素の反応をするとこ。お前が「どんなNG行動が厳しいんですかね?」って聞いたからああなったんだぞ!反省しろ!

 そして最後の最後まで目立ってなかった分、希望のビデオを使うと決意してからの色々があまりにも良すぎる。演出も演技もセリフも全てが最高でした。
 目立ってなかったあいつがまさか最後に立ちはだかるなんて…!という衝撃ももちろんあります。特にダンロンシリーズのラスボスは今までずっと完膚なきまでに悪い奴(というか江ノ島)だっただけに、悪人という訳ではない御手洗と対峙する展開に唸らされました。
 それももちろんあるんですが、御手洗が理想の未来を泣きながら語るのに江ノ島がシンクロする演出!!!あれ本当にいい!!!良すぎる!舞台ダンロンシリーズでもトップクラスの衝撃!
 御手洗からしたら自分の罪を償うための選択だし、理想の未来のための行動ではあるんだけどそれは悪そのものの江ノ島と裏表の思想で(だからこそ悪人ではない御手洗であってもそれは違うよ!と論破しないといけいないんだ!)…と一瞬で理解させてくるもう本当にダンロン大好きじゃないと出来ない演出!
 そして、舞台3は"舞台ダンロンシリーズ"と"苗木君と江ノ島の因縁"の完結編なんです!!やっぱりその最後を締めくくるのが苗木君と江ノ島の対峙というのが最高すぎる!!未来編だと江ノ島は死んでる中でよくこんな自然な形で江ノ島との対話を作ってくれた!!(あと前提として最後に来るのが苗木君なのもいい改変!)もうそれだけで、このシーンの後に苗木君と霧切さんが一緒に御手洗を説得する…というだけで100点満点です。

 というだけで100点満点なんですが、江ノ島がシンクロする演出以上に好きなところが一つあります。(それも足すともう200点満点だよ!舞台3最高!!)それが、苗木君が最後の最後に言った「ボクらは未来機関…」という言葉。
 本来もっと色々な説得の言葉があると思うんですよ。こんなことしても贖罪にはならない…とか、キミとボクは仲間じゃ…とか友達じゃ…とか。でもそれはその場にいる苗木君と御手洗(と霧切さん)の二人の間で終わる言葉でしかない。その関係を二人の間で終わらせずに、ボク"ら"は希望の象徴の未来機関なんだ、御手洗クンの罪はボクや霧切さんや宗方クンや死んでしまった仲間で背負っていくから立ち向かおう…と未来機関のみんなに広げているのが本当にいい。
 苗木君が一緒に背負っていくで終わらせてもいいのを、未来機関みんなで背負っていくと言ってくれたのには御手洗にとっても救いになっているはずだし、それをちゃんと言ってくれる苗木君が本当にかっこいい。200点満点の最高のシーンでした!

 細かいネタだと御手洗役の木津つばささんはめちゃくちゃイケメンです。舞台上だと髪型だったりメイクだったり演技だったりでなよっとしていてあまりイケメンという感じでもないんですが、特典映像での木津つばささんは顔が良すぎる!美形揃いの舞台ダンロンの中でも飛びぬけて顔が良い!もう顔だけでファンになってしまいそうなぐらいの美形!そしてそんな美形が、御手洗のキャラ上イケメンになりすぎないよう舞台ではあえてセーブされているという事実よ。あえてイケメンを抑える演技ってあるんだ…という衝撃を受けました。


朝日奈葵 - 飯田里穂 / 工藤紬
 終始シリアスな舞台3の中でも一番シリアスだったのは苗木君を取り巻く環境だったと思います。周囲に頼れる人間もほぼおらず、一番頼りになる霧切さんが別行動のことが多い上に逆蔵は殴り殺そうとしてくるし宗方は斬り殺そうとしてくる。1のみんなめっちゃ仲良かったんだな…とありがたさを噛み締められる四面楚歌状態。
 そんな中で常に苗木君と一緒に行動していて、常に苗木君を励まして舞台まで明るくしてくれる朝日奈さんが本当に輝いて見えました。

 ムードメーカーという点では2の左右田や、そもそも1の朝日奈さん自身と同じではあるんですが、1や2よりも緊迫した雰囲気の中で明るくしてくれるのが本当に貴重。3のメンバーの中でも朝日奈さんにしかできない役割です。
 そして何よりも霧切さんが死んでしまう一番辛い時に励ましてくれたり、忌村さんの薬や霧切さんの手帳を見つけたりと、"いなくなった人の意志を受け継ぐ"という非常に大事な役割も背負っていることで、朝日奈さんがいることの重要さが1よりも更に強くなっていたと思います。2だと七海が相棒でありヒロイン、左右田が親友、3は霧切さんがヒロイン、朝日奈さんが相棒であり親友というイメージ。
 すぐ上で挙げた苗木を励ますのとか忌村さんの薬を見つけるのとかはまさに相棒という活躍だし、クロールパンチ(多分日替わりネタ)だとかコロシアイが終わった後のエピローグ的会話で「十神も苗木のこと心配してた」とか付け足して見てる方を笑顔にしてくれるのは明るい親友の朝日奈さんにしかできない。
 そして何よりも、その明るい朝日奈さんが苗木君の相棒になって縁の下的な活躍をするというのが1の頃からの成長を感じさせられて凄くいい!あのコロシアイ学園生活を苗木君達と一緒に生き残ったんだから絆も深まるしこれぐらい強くなってて当然だよなあ!という謎の後方ゴズさん面。
 舞台1での舞台を明るくする仕事人っぷりはそのままに、成長した相棒としての活躍まで見せてくれる、舞台3を語る上で欠かすことのできない名ムードメーカーでした。


霧切響子 - 岡本夏美
 
舞台3を見る前、個人的に「1生存組のメインキャスト変わって大丈夫なのかな?」とはちょっと思っていました。舞台1も2もめちゃくちゃ面白かったのでキャスティングは当然信頼しきってるんですが、それでも霧切さんは特別。常に感情を出さないけれど舞台だから声も張らないといけない、でも感情を出す時は動揺したり声が震えている…そんな難しい役を演じ切った舞台1の霧切さんが良すぎただけに、そのイメージを超えられないんじゃないか?というか自分がそのイメージを崩されるのに抵抗が…とか考えていました。
 結論としては全くの杞憂でした。舞台1のキャラを踏まえた上で、しっかりとそれを成長させてくる求めていた霧切さんが舞台にいました。

 舞台3の霧切さんは探偵としても成長していて、とにかく霧切さんに求めてた活躍を見せてくれます。壁の傷で建物が丸ごと移動したのに気づいたり(後で見返すと序盤で壁の傷に気づくシーンがあるのが細かい!)、十六夜さんの死因を見抜いたり、最後に御手洗を説得する時に駆けつけてきて(ここで復活するの本当に熱かった!!!最高の登場シーンだと思います!!!)、「あなたは罪悪感に囚われていて…」という冷静な指摘で説得したり。苗木君を助けるために駆けつけてくれるというめちゃくちゃに熱が入る場面ではありながら、そんな中でも霧切さんらしく冷静な説得から入るのがクールな霧切さん感が全開で好きです。
 ……軽く流されてましたが死体の唾食べたんですか…?口から成分が出てくるぐらい強い毒だったらどうするつもりだったんですか!?御手洗もドン引きますよそりゃ。七海は接着剤(接着剤ではない)を食べるし霧切さんは死体の唾を食べる。
 あと序盤の苗木君朝日奈さん月光ヶ原さんの3人がNG行動教えあうシーンで、霧切さんが「隠す方が賢いでしょ」ってスタンスだったのが今となっては印象に残ってます。当初はああ霧切さんらしいなと流していたんですが、そりゃあんなNG行動だったら苗木君が知ったら霧切さんの命を優先しますよね…。だから御手洗にもNG行動が何なのか言ってなかったんですね…。手袋外して苗木君に手を重ねるところも苗木君に感化されて自分が変わったと話すところも凄く好きなだけに本当にショックでした。その分復活してくれた時は本当に嬉しかったです。忌村さんも朝日奈さんもありがとう…。
 …冷静になるとあのNG行動霧切さん狙い撃ちすぎて可哀そうすぎませんか?あと"苗木君が4日目まで生きてる"って行動というより状態じゃないですか…?"4日目まで生きてる状態で迎える"と書けば行動ではあるんですが…まあ黒幕が悪い。ゆぅるせないよねぇ!

 そういう探偵としての活躍だったり、苗木君の命と自分の命という究極の選択の中で、原作1の5章とは違って苗木君を優先したりだったり…のいわゆる「作中こういう行動を取ったから成長したよね」要素も好きなんですが、舞台3の霧切さんは舞台1の霧切さんを意識したであろうキャラ作りを見せてくれるところ(そしてそれを通して霧切さんの内面が1から3で変化したのを見せてくれるところ)が凄く好きです。
 そもそも舞台1の霧切さんの何が良いかって、原作だとボイスがなかった感情が揺れ動きながら喋るシーンをフルボイスで演じてくれている点が良い。そういうシーンがあるから舞台1の霧切さんは原作よりも感情豊富に見える…というのは1での感想に書いた通り。
 そして、舞台3の霧切さんが恐らく舞台1の霧切さんを意識して役作りしている(個人の見解です。)からこそ3の霧切さんは1以上に感情が至る所で出てる!この舞台1から成長した姿が舞台3…というキャラ作りの引継ぎが本当に好きなんです!舞台を3作通して見た人に対する最高のファンサービスだと思います!
 だって「舞台3は舞台1とは別物だから原作通りのキャラ作りでやるか…」って感じにリセットしてもいいじゃないですか!それなのにあの霧切さんに仕上がったということは絶対役を作る上での土台に舞台1の霧切さんがあるんですよ!いや全部想像ですよ!!!でも約3か月の間に舞台1から3まで通して見て脳を焼かれたらこれぐらい想像したくなりますよ!!!!
 具体的に演技的なことを言うと3の霧切さんは凄く(霧切さん比で。流石に澪田とかあのぐらい感情出てるわけではない。)感情が出てます。普段の喋り方の時点で1の霧切さんより感情の入ってる抑揚になっていて、声を張るのももう当たり前という感じ。
 苗木君がNG行動公表した時とか嬉しそうな顔してるし、自分が変わったと話すところもその後に手袋外すところも静かな熱が凄く籠ってる。あと大喜利中笑ってるし。そういう演技から出る細かな動作の一つ一つに感情が入っていて、霧切さんが今までより感情を出すようになった…としんみりできる。謎の後方仁さん面。それか後方黄桜さん面。
 要するに行動という目にわかる部分だけでなく、感情という内面でも成長してるのがいいよね。そして舞台1→3でキャラ作りをちゃんと引き継いだからこそ、内面の成長を見てるこっちも感じられていいよね!ということです。

 舞台ならではの要素ってまあいっぱいあると思うんですよ。キャラが動いてるところだったりフォーカスされていない時のキャラが見られるとかクライマックス推理の詳細がわかったりとか。舞台1の霧切さんが"全部フルボイス"なのを最大に活かしたキャラなら、舞台3の霧切さんは"同じキャラの成長後を別の人が演じる"要素を最大に活かしてると思います。舞台1からのイメージの引継ぎがありながらも、成長してるからこその新たな境地が別の演者さんが演じることで開かれる…というのはまさに舞台ならでは。演技を通してキャラクターの成長を描くという点では苗木君を超えるぐらい輝いていました。

 それと小ネタもいいとこなんですが、特典映像の千穐楽カーテンコールで稽古中に20歳になったと言っていて物凄くびっくりしました。20歳であのクールな霧切さんを演じられるの凄くないですか!?


苗木誠 - 西銘駿
 個人的に舞台ダンロン3は苗木君(と江ノ島)の物語の完結編であると共に、苗木君達78期生の成長した姿を描く物語だと思っています。
 まあ簡単に言うととにかく苗木君が活躍しまくる!今までの舞台では江ノ島だとか狛枝だとか、影の主役的な人物がいてその人が舞台の注目を集める(でも最後は苗木君や日向くんがちゃんと活躍するから主役を食ってるという訳ではない。)という感じでしたが、舞台3では序盤から苗木君が活躍しまくる!
 やっぱり1から見てると苗木君って特別な存在なんですよ。ゲーム2で出てきた時とかめちゃくちゃ興奮しましたし。それぐらい興奮したあのシーンをあえてカットして舞台2の物語を日向くん達だけで完結させた分、舞台3を苗木君達未来機関だけで完結させることが自然になっていて、そして苗木君達だけで完結しているからその中心にいる苗木君が凄く輝いてる!!日向くんが駆けつけてくるのもいい展開なんですよ!!!そっちもいいけど舞台3だと御手洗を説得に来るのは苗木君じゃないとダメなんです!!日向くんなのも凄くいいけどね!!!(重要。)
 
そしてやっぱり苗木君をそこに持ってきた上で江ノ島を間接的に登場させることで、ラストが苗木と江ノ島の対決の構図になってるのが良すぎる!!これがあるからこそ舞台3は苗木君の物語の完結編なんですよ!

 成長した苗木君は舞台特有の男前なのが全く違和感がないぐらいカッコよくて、そして成長後の苗木という重要すぎる役を演じる西銘駿さんも当然の如く演技力が高すぎました。
 舞台を見てて最初に苗木君の成長を感じたのが、自分のNG行動を公表するシーン。コロシアイなんてやめましょうという甘ちゃん思考(でもそれが苗木君の良さ)はそのままに、コロシアイを止めるためにNG行動を公表しながら、自分の思いを堂々と話す姿に苗木君成長したわね…と後方霧切さん面。そしてそういうキャラとしての成長もいいんですが、激しい動きもない実質一人喋りにも関わらず舞台を掌握できる西銘駿さんの演技力が凄い!
 洗脳ビデオを見るシーンはとにかく西銘駿さんの泣け叫び方と発狂しての笑い方の表現が凄まじい。こういうただ凄いシーンはただただ凄いとしか言えない。見た人なら伝わると思いますが本当に迫真の演技でした。そして普段の苗木君からは絶対出ない表情なだけに、洗脳ビデオの怖さがしっかりと伝わってきました。

 そういう一人だけで演技する時の演技力も凄いんですが、誰かと1対1で対話する時の演技も凄い。宗方さんと対峙するシーンはとにかく熱くて迫力があって悲しい。あのコロシアイ学園生活を経験して、死んでいったみんなのことを引きずって生きていくと決めた苗木君だからこそ、雪染さんを忘れるなんて言うなよと言えるのがいい。
 そして本当に大好きなのが最後の御手洗の説得。御手洗の考える希望に対してそんなものは希望じゃないと否定した後に、「辛かったんですよね…」と寄り添えるのが本当に優しくて好きです。あんな世界が滅ぶかどうかの緊迫した場面でも、"未来機関の仲間だからこそ、どこかで道は間違えてしまったけど希望のためという志は同じのはず"…と寄り添える苗木君は優しすぎる。それでも希望のビデオを流すという行為そのものはなあなあにしないで「それは違うよ!」とちゃんと否定できるのがいい。本当にここで「それは違うよ!」を持ってくるのは良すぎますよ…。やっぱりダンガンロンパと言えばこのセリフですよ。
 そんな好きなシーンだらけの御手洗の説得で細かいけれど好きなのが、苗木君が御手洗の方を見ずに、客席を向いて演技していること。
 
1対1での対話シーンとは"江ノ島と苗木"なり、"日向と狛枝"なり、"日向と七海"なり、舞台ダンロンシリーズで色々あります。(そして言うまでもなく全部名場面。)でもそれらのどれも顔を向かい合わせての対話で、二人とも客席の方を向いての会話なんて当然ありませんでした。会話してるのに顔を合わせないなんて不自然だし、何より表情で会話の間を計れない分演技が難しすぎる。
 観客からすると苗木君も御手洗の顔も見れていいな~ぐらいですが、西銘さんからするとお互いの間合いも表情もわからない上にBGMもなく、大事なシーンなので一切の失敗も許されない、聞こえてくる声のみが頼りのただ一人での真剣勝負。このシーンがどれくらい難しいかなんてそれ以上考えるまでもないと思います。
 そしてこの演出、舞台ならではの演出だし見栄えが良いし難しさも想像できて好き…というのもあるんですが、御手洗からすると苗木君に対する拒絶と眩しさで苗木君の顔が見れないという心情表現になってる(と解釈しています)のが好き。心情表現と舞台上での見栄えを両立した凄くいい対話シーンだと思ってます。

 今までは戦う相手が徹頭徹尾悪役で絶対倒さないといけない江ノ島だったのに対して、3で苗木君と対峙するのはどこかでボタンを掛け違えてしまっただけで希望を目指したのは同じな仲間というのが3のいいところ。そういうまた別の正義と対峙することで苗木君の絶対に曲がることのない希望がより強く輝くし、宗方さんや御手洗とぶつかり合って何かを変えようとするという役割は苗木君でしかできない。
 でも何があっても折れないという訳ではなくて、霧切さんが死んでしまった時は折れてしまいそうになるのが等身大の人間っぽさがあってまたいい。そしてそんな時に朝日奈さんが支えてくれるのが朝日奈さんがいい仲間すぎて好きだし、そういう弱さがちゃんとあった上で、弱いからこそ誰かに支えられて生きてるんだとわかっていい。
 そういう弱さがあるこそ御手洗を説得する時、「なんでそんなに強いんだ」という言葉に対して「ただ強いわけじゃない」と返すのに説得力がある。そういうどこか人間離れした希望の意志力と、人間味のある普通な部分の2つを持ってるのが苗木君の魅力。
 やっぱり苗木君も日向くんも本当にいい主人公ですよ…。舞台3作通して視聴して、そして感想も書いてキャラを再認識して改めてそう思いました。苗木君とダンガンロンパ3 THE STAGE2018、大好きです。ありがとうございました。


おわりに

 舞台ダンロンシリーズは最高に面白いです!!!!!!この感想を踏まえてもう一度見返してみるのもいいかもしれないし、見返してみるとこのめちゃくちゃ長い感想でも拾い切れていないネタがあるかもしれない!!
なので何回でも見てください!!!!

 それとニューダンガンロンパV3 THESTAGE~みんなのコロシアイ新学期~待ってます!!!!!!!!!!!!マジで待ってます!!!!!!!!!!
 舞台で映えそうなキャラもシーンもいっぱいだし!!!とにかく色々な諸々が舞台でやるにはめちゃくちゃ難しそうですがやればなんとかなるってやつだよ!!!!再現が難しい以前に舞台をまたやるのが現実的にほぼ無理だとしても言わないと始まらないし何も伝わらないので言います!!!待ってます!!!

 あと超探偵事件簿 レインコード THESTAGEも待ってます!!!!!!!!!!!!!どっちも見れたら物凄く嬉しいです!!!

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