見出し画像

酒好きになり店を出したら人に騙され人に救われた話⑥

面接翌日、緊張も入り交じる中、マリンメッセに向かっていた。

まだ、マリンメッセにも行ったことの無かった私は
その建物を見て感動した。

その相当大きな会場は長崎では
到底見れないようなサイズの建物だった。
初めての会場、見るだけでも緊張なのに
まだ、開演前の裏口から会場内へ入っていく。

”一般の人は誰も入れない場所から入っている”
その特別感にとてもワクワクしていた。

前日のミーティングでは
「黒の長ズボンにボールペン」を必ず持参。

これだけ聞いていた。
待ち合わせ場所に行くと
たくさんの黒ズボンを履いた同年代らしき人がたくさんいた。

間違いなく、集合場所はここで間違い無いんだと安堵して
荷物を整理して仕事の準備をした。

KAT-TUNのライブという高揚感に加え
初めて入るマリンメッセという建物に緊張していると
スーツを着た社員さんであろう人から
誘導され入口側の2階へと進む。

そこが仕事について説明をする場所だった。

その廊下からは入り口に並ぶ
多くのファンの方が見えた。

そのファンより先に会場内に入れるという
特別感に更に浸っていた。

完全にその時は”仕事”ではなく
”ライブ”を見に来た一般人だった。


そんなワクワクしていると
全体ミーティングが始まった。

いかつい社員さんのようなスーツの男性が
前に出てきて開口一番こう言い放った。

「仕事に来てない人は帰っていいからね!」

まさにその言葉は自分に向けて発せられたかのような
恐怖に襲われた。

ちゃんと仕事をしないと”まずい”
そう一瞬で我にかえった。

配置別に分かれてのミーティングが始まる。
中では、リハが行われているらしく
廊下での説明だった。

それぞれの配置に60名くらいいる中で
それぞれ1名のスーツを着た社員さんが説明をしていた。

その的確な指示や説明は
会場内に入らなくともわかりやすいものだった。

その時だった。
会場内から爆音が聞こえる
「Real Face」という曲が流れてきた。
そう、ゲネプロが始まったのだ。
初めて聞くプロのリハーサルに
一瞬で説明どころではなくなっていた。

音楽を楽しく聞いていると
あっという間に説明が終わって中の配置につくように言われた。

実際に会場内に入ると
『見たこともなく、ましてや初めての仕事
説明も最初しかロクに聞いていない』

そんな私がどこにいっていいかなんて
分かるはずもなかった。

そんな時だった
スーツを着た社員の方が優しく配置を教えてくれたのだ。
”なんと優しい方なんだ!”
その親切な対応にとても感動した

そして、いざ仕事が始まると
初めて見るライブに圧巻された。

身体に響くような重低音
館内に鳴り響く女性ファンの声

全てが私にとって初めてで
とても貴重な経験となった。

そして仕事が終わって
社員さんにお礼を伝えた。

「ありがとうございます!さすが社員さんだなと思いました!」


そう伝えると意外な一言が返ってきた

「俺、社員じゃないよ、大学生だよ。」

衝撃の解答だった
今まで社員さんと思っていた
大半がアルバイトだったのだ。
ましてや、同じ大学生。

”俺もスーツを着て
皆をまとめるポジションで働きたい”

ここから西日本シミズの”嘉松世代”と呼んでもらえた
所以のスタートだった。



この記事が参加している募集

自己紹介

最後まで読んでいただきありがとうございました。記事が気に入ったらシェアやいいねをしてもらえると嬉しいです。