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大学中退して独立したら独立なんて必要なかった話⑥

そんなに需要あるのかと疑うぐらい大きな駐車場を構えた地元の手芸用品店で僕と鳥部は待っていた。24時間営業のスーパーと兼用で利用できる駐車場とはいえ、手芸用品店にしては広すぎる。手芸用品店は営業時間が終わって周りは暗くなっていた。手芸店の入り口から手芸用品店とは縁のなさそうなバイクが入ってきた。

「多分あれやね」

「せやね」

と最小限の会話をしながら待っているの僕たちの前にバイクが止まった。先日の同じように白田とはぎがバイクと原付に乗って現れたのだ。白田とはぎはヘルメットをとっていると、後ろから長髪ロン毛のパーカー姿の男が近づいてきた。見知らぬ男に僕は身構えると

「末石も呼んだんよ!」と明るい感じで白田が言う。じゃあ早めに言ってほしかった。少しびびってしまった自分が恥ずかしくなった。しかも知っている人に対してだなんて。

末石も小学校、中学校と地元が同じ人間だ。末石とは同じクラスになったことがなかったが、中学校3年生の時、鳥部と同じクラスだったことを覚えている。放課後鳥部と帰ろうと鳥部のクラスにいくと、鳥部は末石と、もう一人同じクラスの金子と3人でキャッキャキャッキャと遊んでいたのを覚えている。その時に顔を合わせていた程度の関係だった。

久しぶりに見た末石は身長は伸びすらっとしたスタイルで、髪も長くカッコ良かった。僕と同じぐらいの身長のイメージだったが僕よりもかなり身長が高くなっている。

「久しぶり!鳥部!オザも!」

とかっこいいスタイルとは似つかわしくない明るい声で末石は僕たちに挨拶した。変わらない声質と地元の人しか呼ばないあだ名で、懐かしさを感じていた。がっつり話したことのない人でも地元の人は僕のことをあだ名でオザと呼ぶ。中学校1年の担任の先生もオザと僕のことを愛称で呼んでいたほどだ。そんな昔の記憶が蘇りながら、恥ずかしさを打ち消すように僕は言った。

「末石も来るなら二人乗りしてくればよかったやん」とバイクの二人乗りが免許取得から1年以上たたないとできないことを知りながらニヤニヤと茶化しながら言うと

「1年以上経たないとダメやん」と真面目に返す白田。

まるで今までずっと友達だったかのような会話。つい最近一度だけあっただけなのに。地元が同じという共通項とバイクが好きというだけでここまですぐに仲良くなるのかと僕は内心びっくりしていた。

この日から僕、鳥部、はぎ、白田、末石はよく集まり遊ぶようになった。暇があれば夜のスーパーの前や僕の家などに集まり、学校の話やバイトの話、バイクの話、とりとめのない話をしていた。話すことが尽きないことに自分でも驚いてしまうぐらい集まって話していた。僕はこんな日常がいつまでもいつまでも続くと思っていた。


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