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大学中退して独立したら独立なんて必要なかった話②

ホームルームも終わり教室を出る。廊下にあるスチール製のロッカーから自分の荷物を鞄に詰め込み靴を取り出す。廊下は同じような生徒で溢れかえっていた。男臭が充満する廊下をかき分けてながら1組の教室に向かった。

1組の教室の中を見ていると、僕のことに気づいた様子で「じゃあ俺行くわ!」と友達との話を切り上げ鳥部が出てくるのが見えた。

「お待たせ!尾崎!」

「帰ろう!鳥部!」

そう言って二人男が密集する廊下を抜け駐輪場へ向かった。

鳥部とは小中高の付き合いだ。と言っても中学3年の時からよく遊ぶようになった。今まで一度も同じクラスになったことはないが、中学3年の時に同じ塾だったというのがきっかけで話すようになった。鳥部は目鼻立ちがよく運動神経も良く明るい。どちらかというとイケているグループの人間だが、どちらかというとイケてないグループの僕となぜか馬があった。賢いにもかかわらず立ち回りが下手で、よく先生から怒られていた。よく先生から呼び出しにあい、特徴的な名前から学年では知っている人も多かったと思う。

二人で階段を降り駐輪場に向かいながら

「鳥部は西南で僕は福大。初めて別々の進路やね。」

「そうやね。尾崎が福大やから福大に行こうとしたら、親父から西南受かったんやから西南行けや!って怒られたわ」と自分は間違ってないかのように言った。

親父さんの言うことはごもっともだ。福大と西南両方受かったのだから、偏差値の高い西南に行くのが当たり前だ。志望校と滑り止め両方受かり、滑り止めに行く人間はいない。そんな当たり前のことを間違いのように言う鳥部に僕は面白さを感じていた。

錆びれたトタンの狭い駐輪場につき、いつものように自分の自転車のカゴに鞄を放り込み鍵を開ける。二人並んで通るのがギリギリの狭い駐輪場をゆっくりと抜け校門へ行く。鳥部は奥のほうに自転車のとめている様子だった。校門で鳥部が自転車を持ってくるのを待った。

待っている間、寂れた体育館を見た。そういえばこの体育館で、高校受験受けたななんて思いながら校舎に目をやった。この学校とは本当に今日でおさらばなのだ。

男子校だった僕たちの学校が、今年から女子生徒の受け入れを開始し、共学になるのだ。共学になるため校舎も建て替わることが決定していた。僕たちが通った男子校だった高校も、男子便所しかないトイレも、体育館下の食堂に続く老朽化したコンクリートの道も本当になくなってしまうのだ。この僕たちが通った学校は人の記憶の中でしか存在しなくなるのだ。

「お待たせ!帰ろう」と鳥部が自転車に乗って校門へきた。

二人で二度と通ることのない校門を出て家に向かった。





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