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大学中退して独立したら独立なんて必要なかった話④

鳥部はいつものように僕の左側に座る。甘い缶コーヒーをプシュッと開け、僕のブラックの缶コーヒーにコツンと当てると飲み始めた。ゴクリと一口飲むと

「俺ついに中免とったよ!」

といつものように屈託のない笑顔で自慢げに言った。

「まじ!やるやん!」

と先にやられたと思いながら僕は言った。

僕たちはバイクに興味があった。正確に言えば、僕が最初に興味を持った。歳の離れた兄の影響だ。兄たちは高校生になると、バイクの中型免許を取りバイクに乗っていた。バイクを乗りこなす兄たちが、僕にはかっこいいヒーローのように僕の目には映った。僕の誕生日になるとまだ小学校3年生の小さな僕をタンデムシートに乗せ誕生日プレゼントを買いに連れてってくれた。大きなバイクを運転する兄は頼もしかった。兄の大きな背中に捕まると、自転車の何倍のスピードが出る怖いバイクの上でも、なんだか安心感があった。

僕は高校生になると原付免許をとった。原付免許をとり、鳥部に自慢していると鳥部もすぐに原付免許をとった。そしてバイクを買い二人でよく遊びに行った。自転車から原付に変わり移動範囲がびっくりするぐらい広くなったのだ。海や山に目的もなく遊びに行った。たった50ccのエンジンが僕たちに自由を与えてくれた。大学に入ったら中免を取ってバイクを買おうと二人でよく話していたのだ。

原付免許は僕が先に取ったのに中免は先に鳥部が取ったことに「僕も早く取らなちゃ」という気持ちが強まる。

鳥部は自慢げに免許証を見せてくる。免許書には普自二の文字が書かれていた。そのたった3文字がヒーローの証のように思えた。

「僕も早くとらんといかんな。」

そういうと僕は携帯電話を取り出した。教習所のサイトにアクセスに予約状況を見ながら

「鳥部は、なんのバイク買うか決めてるの?」

「やっぱり俺はアメリカンだな」

と答えながら鳥部はコーヒーに口をつけた。

僕は教習場の空いている時間に予約を入れ

「僕もぱっぱと免許とるわ!免許とったらバイク買って二人でどっかツーリングいこう!」

「おう!せやね!」

といつもの軽い感じで言った。

遠い未来は、僕には見えなかった。でも昔から憧れていたバイクに乗れば何か変わる気がしていた。




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