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大学中退して独立したら独立なんて必要なかった話①

自分への手紙でこんな気持ちになるとは思っていなかった。

かったるい卒業式が終わり教室でホームルームが始まった。ドラマのようなキラキラとした高校生活が現実にあるはずがない。僕の大したことのない高校生活もこれで終わるのだ。男子校で男臭い空気が充満しているこの学校からもこれでおさらばだ。

僕の通っていた学校は福岡では大きめの男子校。進学校を気取っているのにもかかわらず半数前後が推薦で進学先が決まる。推薦が受けれなかった人はまともに受験を受けたところで受からずほとんどが予備校にいき浪人するのだ。一番の進学先は予備校と揶揄されるほどだ。

僕のクラスは文系私立だった。文系私立はスポーツ推薦や推薦志望でクラスの半分近くを占め、9月頃には進学先が決まる。9月以降のクラス内は本当に学校から推薦されるべき人間なのかと疑ってしまうぐらい騒がしい。まるで動物園のような状態だった。進路が決まっている余裕からか、ABC〜が全て言えないスポーツ推薦の人間は騒ぎ、効率よく推薦をとった人間は寝ている。

受験期間になると登校する必要がなくなる。大学によって受験日が違うし受験前は自分で最後に受験勉強しろという意味なのだろう。まだ進路が決まっていない人からすれば自宅勉強時間なのだが、推薦で進路が決まっている人からすれば早めの春休みだ。


卒業式後のホームルームが始まる。今日はいつも以上に騒がしい。当然だ。推薦組にとっては早めの春休みで久しぶりのクラスメート。話したいことがいっぱいあるんだろう。受験に失敗した人は自分だけじゃないと安心感を得たいのか集まって

「後期受験がんばろう」と鼓舞しやっている。

僕は一人「早くおわんねえかな」と思いながらこれで最後であろう動物園のようなクラスを見てた。

すると白髪混じりの身長150cm程度のかわいいおじいちゃんの担任の先生が千と千尋のカエルのような声で

「最後に配るものがあるから名前呼ばれたものから取りに来てくれ。」

と騒がしいことなど毎年の通過儀礼の如くお構いなしで言った。

「尾崎ぃいいい」と呼ばれ

受け取ったのは茶色の封筒。

全員に茶色の封筒が行き渡ったところで

「この茶色の封筒はみんな覚えているかわからんが高校一年の入学した時に書いた卒業する時の自分に向けて書いた手紙だ。開けて読んでみてくれ。」

と千と千尋のカエルのような声で説明した。

そう言えばそんなものやらされていたなと思い出した。高校にもなって子供騙しみたいなことさせるのかなんて、書いた時思っていた。もらった今でさえそう思っている。こんなものを見たところで何も感じるはずがない。何か感じたとしても、まだ子供だった自分への小っ恥ずかしさぐらいだろう。

そんなこと思いながら封を開け3年前の自分へ向けた手紙を読んだ。

読み終えるとなんとも言い難い気持ちになった。

寂しさなのか。悲しさなのか。侘しさなのか。虚しさなのか。

自分への手紙でこんな気持ちになるとは思っていなかった。






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