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4.4.2.1. 対策(1)メディア上のプロフィールの調整

「誰の」茶会なのか

第3章の小括で,「茶道団体」の活動をする上で重要なのは,「どの立場の」「誰が」その茶会をしているかであると触れた。


インフォーマントが茶会を主催する側になり,インターネット上などで本人もしくは茶会を依頼した第三者 [注39] がその茶会の告知をするときは,名前と略歴を載せる場合がある。

むしろ,インターネット上に告知が載るような茶会であれば,ほぼ必ずと言っていいほどプロフィールが掲載される


流派名ではなく個人名の公開

洋平さんは,茶会に合わせてプロフィールを調整すると語ったが,最も重要なのは,自身の所属している流派名を出すか出さないかであると述べた。

例えば日本庭園や神社,美術館の一角で行われる茶会では,亭主の名前は分からず,客に与えられている情報はほぼ流派名だけである。

茶会中は主に半東が話し(半東の名前も分からない場合が多い),亭主はただお茶を点てて去るのが一般的である。

逆に言うと,茶会の度に亭主としてのインフォーマントのプロフィールが公開されるのは,「誰が」お茶を点てるのかという情報が求められていることの表れでもある。


茶名の「効果的な」使用法

洋平さんは,企業や個人が茶会を依頼してくる場合についても言及した。

ある企業が茶会を企画し,その亭主をインフォーマントに依頼する場合,まずその企画を社内で通す必要がある。
インフォーマントが茶名を持っている(=ある流派に所属し,一定以上のレベルまで修練している)ということが,「(企画が通りやすい)材料になるんだったら,茶名は持っておいた方が便利」と洋平さんは続ける。


この場合は,流派に所属していることが「茶道団体」の活動に効果的に働くようだ。
プロフィールの調整は,流派からの異議や反応だけを意識して行われる訳ではないという一例である。


プロフィールの編集:顔の使い分け

洋平さんの例のように,分かりやすい指標や権威をプロフィールで示す必要も時に存在する。

平たい表現をするならば,顔の使い分けが求められているのが「茶道団体」であるということだろう。


前のセクション(4.4.1.1.)でも触れたが,茶会や亭主に関する情報はインターネット上で公開され,誰でも見ることができる。
そのため,実際の茶会の参加者“以外”を意識しながら,インフォーマントはプロフィールの編集は行われているのだ。


次項では,先の引用にも登場した「茶名」を例に見ていこう。


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[注39] 大輔さんも「色んなイベントお願いされるのとか。企業からもあるし,個人から,こういうことしたいんだけど来てくれないかっていう依頼もいただく」と語っていた。自主的に企画する茶会から始まった「茶道団体」であるが,依頼されて行う茶会も増えている。

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