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3.1.1. フィールドの概要

本稿で茶道の描写をする上で,非茶道修練者には馴染みのない用語や制度が頻出する。
ここで一度,茶道教室内で何が行われているのか,最低限の説明をしておきたい。
各茶道具や固有名詞に関しては,本文に登場する度に,本文中か脚注で説明していく。


個人教授の茶道教室

一般に茶道教室では,点前というお茶を点てるための一連の動作を学ぶと同時に,客として茶の飲み方を中心に練習する。
教室の生徒数によっては,亭主(茶を点てる人)の役を練習する機会が少ないこともあるだろう。

茶道教室は大別して二種類あり,一つは個人教授の教室だ。
教授者の自宅が稽古場になっており,稽古に用いる茶道具も,教授者自身が所有しているものである。


もう一方は,公民館での市民講座,カルチャーセンターで開催される教室だ。
公共の茶室や道具を借りて,安価で指導を行うものであり,個人教授の教室とは明示的に区別されることが多い。


点前を習うための許可状

また,本稿でも頻繁に話題に上がる許状(「免状」とも)は,より貴重な道具を用いた高度な点前を習ってもよいという許可を意味する。
カルチャーセンターなどでは,その貴重な道具が揃っていないことなどから,この許状を得られないことがある。

逆に,個人教授の教室では許状の取得が前提となっている場合が多い。

そして本稿のインフォーマントはみな,個人教授の教室に通っている。


一例として,「入門」と「習事八ヶ條(別の流派では「小習十六ヶ條」)」といった許状を申請すると,抹茶を大量に用いた濃い緑色の「濃茶」を練ることが許される。
その許状を得るまでは,より簡単な「薄茶」しか点てることができないことになっているのだ。
(流派にもよるが,「薄茶」は黄緑色で水分の多い,いわゆる抹茶を想像してもらいたい。)


許状は何段階にも分かれており,入門レベルから一つずつ積み重ねていくことで,教授者になることのできる水準まで到達したとみなされるようになる。
教授者の中でも細かいランクに分かれているが,その説明はここでは割愛する。


茶名:茶道専用の名前

許状の取得の中でも名誉とされるのは,「茶名」を流派から授与されることだ。
茶名とは,流派指定の漢字一文字と任意の(もしくは教授者が指定する)漢字を組み合わせた,茶道修練者としての名前のことである。
この名前を用いることで,"茶名を取得できる程まで修練を積んでいること"を示すことができる。

家元と,その下につく教授者たち

また「家元」は,茶道の教えを家伝として継承している家系,特にその当主を指す言葉である。
個人教授の教室の質はそのまま,教授者の質──流派の中での位と換言可能──であり,それは家元との距離の近さで表されることがある。


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