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【1話完結小説】恐竜博物館
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恐竜博物館、夏休みの夜、少年達…こんなシチュエーション、ワクワクしないかい?
僕が小6の時、まさにそんな場面が訪れたんだ。昔はセキュリティが甘かったから、閉館後に僕と親友の宗介が取り残されても誰も気づかなかったんだろうね。
真っ暗な館内。月明かりで見るブラキオサウルスの骨格標本は、それはそれは巨大で美しい荘厳な影だった。
僕らは恐竜が大好きだったから、凄く興奮したよ。宗介なんて、その博物館のマスコットキャラの愛称募集に応募して、採用されてたくらいだ。愛称?ティラノサウルスのティラッぴーだよ。宗介曰く、ぴーだけ平仮名なのがこだわりなんだって。
でもいくら恐竜好きでも、流石に夜の暗闇は少し怖かったな。角を曲がるとそこにデイノニクスが待ち構えてるんじゃないか…って2人で無駄にびびりながらくっついて歩いた。見るのは好きだけど、食べられたいかと言われればそうではないからね。あ、ちなみにデイノニクスって映画ジュラシック・パークにも出てくる小型の肉食恐竜ね。
実際は、生きた恐竜に出くわすわけもなくて、僕らはただただ蒸し暑くて静かな一夜を過ごしただけだった。
ただ奇妙だった事と言えば、一度だけ喉が乾いたからトイレの手洗い場に行ってみた時。電気をつけたら正面の鏡に血まみれの女の人が映っててさ。それは怖かったな。こっちに向かってゆっくり手を伸ばしてくるんだよ。もうダメだ!って思った瞬間、どこか遠くの方から「クルルルル」って唸り声が聞こえてさ。それと同時に女の人は苦悶の表情で消えて行った。
宗介は「あれは絶対、ティラッぴーが僕らを助けてくれたんだ」って今でも信じてる。ティラッぴーの声なんて聞いたこともないくせに、幸せな性格してるよね。そういうところが宗介の好きなところなんだけどさ。
実は僕はあの夜以来、「クルルルル」っていう声が遠くからずっと聞こえてて、しかもそれが少しずつ近づいてきてるんだ。
宗介には言ってないよ。アイツ、びびりだから。
でも今では言わなくてよかったと思ってる。だってこの前すぐ近くで「クルルルル」って聞こえてきて振り向いたらさ、ティラッぴーがあの時の血まみれの女の人を咥えて立ってたんだ。そんな事知ったら、名付けの親としてショックを受けちゃうだろ?
それはそれとして、いよいよティラッぴーが今夜あたり僕の真後ろに現れそうなんだけど、どうすればいいと思う?ねぇ、お願いだから教えてくれないか。
来ルルルルルルルルルルルルルルル…。
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