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【1話完結小説】君に贈る火星の(408文字)

僕が初めて君に会ったのは布団工場の1番奥、鍵のかかった檻の中。

君の背中には純白の大きな羽根があった。暗い工場で、君の周りだけがキラキラ光ってた。

君の大きな羽根からとれる羽毛で、布団工場…いや、それどころか僕らの村は成り立っていた。軽くて暖かいと評判の羽毛布団で、貧しい村は糊口をしのいでいたんだ。

君の羽毛は何度抜いてもすぐ再生する。でも羽毛を抜かれるたび、君は痛みに顔を歪めていた。

夜の工場で僕らは色んな話をした。君の仲間は北の森にいるらしい。仲間のところに返してあげたいな。

僕は悪い頭で考えた。

そうだ、僕ら人間が火星に住めば羽毛布団なんて必要なくなるだろう。そうすれば君は自由になれるだろう。

君に贈る人類火星移住計画、話して聞かせると君はポロンと涙を流して喜んだ。

僕はうんと勉強して研究者になり火星行きの巨大船を開発した。

でもその船を飛ばす為に必要な希少物質、それが君のポロンとした涙だと判明したんだ。

…ごめんね。

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