彼女たちの魂は。
この世界はゆるやかに、そしてなるように進む。
誰かが気にしていようとも、
僕が居ようとそうでなくとも。
いつの間にか起こっている風荒れや、
暴虐的なまでの土砂降りが、
人の時間を削り、
流して、
始まりに戻していく。
その繰り返しなだけだと思った。
僕の日常は、いつも。
窓から入ってくる風と、
近くに伸びている、とても大きな木の一点を、
何も考えずにぼーっとしてみることしかなかった。
ベッドの上からリモコンを操作して、
たまにしかつけないテレビも、
つまらない物ばかりで、
何も変わり映えしなかった。
でも。
何がきっかけだったのか、
開いた窓から強く吹き付けてきた風を感じたあと、
何気なくつけてみたテレビの中には、
何処かで行われているライブ中継が繋がっていた。
それまでは歌手も、バラエティに出ている芸能人も。
僕にとっては、違う世界の何かで。
何処か、、冷めた目で流し観していたんだろうと思う。
固まりかけた氷のようか、
それとも、溶けかけの氷だったのかはわからないけれど、
彼女たち6人が一生懸命に歌って踊る姿は、
僕にとってはとても眩しく見えた。
停電が長く続き、街の空気が、
暗がりと共に、腐っていくような雰囲気の中で。
生きることを諦めないようにと、
真剣に光へ向かって走り続けている。
――そんな想像さえ簡単で。
繰り返し続けることはむずかしい。
そんな当たり前のことを一心腐乱に、
収拾のつかない事態にまで押し上げる彼女たち。
そんな彼女たちを観ていると、
気持ちがアツクなってきて、
あんなに眠かった日々が続いていたのに、
身体の中から電気を当てられて、
目覚めていくような気持ちがした。
石のように硬くなった身体を、トンと叩いた。
急に、身体が柔らかくなることは――もちろんなかった。
でも、だんだんと、心が蘇ってきているような気がする。
ただのBGMにしようとしていたテレビの中継を、
食い入るように観ていた僕は、
とてもお腹いっぱいになった気分になって、
ふと窓の方を見渡して気が付いた。
窓の向こうから絶えずに咲き誇っている、
いくつかのさくらの花びらが純粋に流れてくる様子と、
凛々しく佇んでいる、自然の愛の色をした桜の木の姿を。
周りの景色がこんなに綺麗だったことを思い出して、
僕は一つの目標を掲げた。
少しでも身体を良くして、
さっきみたアイドルのひとたちのライブに行ってみたい。
気持ちの死んでいた僕が、
生きている彼女たちの魂を感じて考えた。
それが僕のリベンジの第一歩目なんだ!!
これは、あったかもしれない少年の一頁。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?