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英文法解説 テーマ3「受動態」 第5回 受動態の後ろってbyだけじゃない、という話
「受動態」の解説は、今回で最終回になります。これまで「態」という概念や受動態の構造について解説をしてきました。今回のテーマは、「動作主を表すby以外の前置詞」です。
一般的に、能動態を受動態にすると、S(主語)にあった名詞が受動態では「by+名詞」という語順で「be動詞+過去分詞形」の後ろに置かれることが多いと思います。例えば、John spoke to me just a minute ago.「ジョンはついさっき前私に話しかけた」を受動態にすると、I was spoken to by John just a minute ago.のようになります。たいてい、この「by+名詞」は「~に(よって)」と訳されることが多いでしょう。このケースでは、「私はついさっきジョンに話しかけられた」となります。
このように、受動態の後ろには、「~に(よって)」を表す「by+名詞」を置くというパターンが固定化されてしまう傾向がありますが、実はそうとも限らない、というのが今回の話です。大きく分けて二つの話があるので、順を追って説明していきましょう。
by以外の名詞を用いるパターン その1
例えば、次のような日本語の文を、受動態を使って英語で表現してみましょう。
実は、この英文法解説シリーズで初めて例題を出してみました。たまにはこういうのも良いかもしれませんね。それはさておき、どうですか?分かりましたか?まあ、こういう流れで出題したので、「byではないな」と推測した人も多いかもしれませんが、正解は、(1)がwithで、(2)がbyです。
まず、(1)ですが、受動態の後ろに「鉛筆で」とあるので反射的に「by a pencil」としてしまいがちですが、「by+名詞」は「動作主」と言って、その動作をする主体のことです(簡単に言うと、能動態に戻したときに「主語」になるものです)。この文を能動態にしたときに、A pencil must fill in this form.とするのはおかしいです。「鉛筆で」というのはあくまで「道具」として、という意味なので、むしろ、You must fill in this form with a pencil.とすべきなのです。よって、withが正解です。
(2)に関しては、「私のいとこから」とあるので、fromを入れたくなりますよね。でも、ここでも、能動態にすれば話が見えてきます。電話をする「主体」が「私のいとこ」なので、My cousin called me last night.が能動態の文になります。当然、「主体」であるMy cousinをbe calledの後ろに置くと、動作主なので「by my cousin」になる、ということです。fromとbyの違いは、be called from behind by someone「後ろから誰かに呼ばれた」のfromとbyの役割を考えると分かると思います。前者は、「声をかけられた際の、その声の出どころ」、後者は「声をかけた動作主」を表しています。
このように、「by+動作主」という語句と「~によって」という日本語訳は、必ずしも一致するものではない、というのを知っておいてください。
by以外の名詞を用いるパターン その2
もうひとつ、こんなパターンもあります。ここでもまた例題を用いて説明します。
どうでしょうか?「さっきの例題で、by以外の何かだろうと思っていたら(2)の正解がbyだったので、今回も裏を突いてby!」というナイスな反応をした人もいるかもしれませんが、残念ながら違います。正解は、(3)がtoで、(4)がinです。
実は、「動作主」であっても、byを使わないケースがあるのです。今回のケースで言えば、be known to ~で「~に知られている」とかbe absorbed in ~で「~に夢中だ」とかです。よく、be surprised at「~に驚いている」という表現を見かけると思いますが、あれもそうです(ただ、surprisedの場合は、実は「by+名詞」でもいいのですが)。
他にも次のようなものがあります。これらは、文法的なルールによって決まっているというよりも、各動詞の語法によって決まっていると考えた方が良いかもしれません。つまり、慣用的な使い方(=イディオム)として処理してしまう方が、特に受験生にとっては実践的かと思います。
be known toと違って、be known forは「(名物・名所・特長など)で知られている」という意味です。また、be caught inのようにcatch「捕まえる」という意味から少し離れてしまうものもあるので注意が必要です。
というわけで、ここまで5回にわたって「受動態」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?受動態の話だけでかなりのボリュームになってしまいましたが(「文字カウントを確認したら、5回分まとめて1万文字オーバーです」、これでも基本中心にポイントを絞って書いてきたつもりです。もしかしたら、今後さらに書き足すかもしれません。そして、このように英文法解説シリーズの記事を書いていくことで、受動態の苦手な中高生や学び直しの大学生や社会人の方々、そして教壇に立つ同業者の方々に少しでも参考になればと思っています。
では、また次のテーマで。
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