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対人援助職のためのシェアリングサークル#1 開催レポート

先日9月4日(日)に、対人援助職を職業にされている人に向けたシェアリングサークルが、マインドフルネス・ビレッジ内にて初開催されました。ファシリテーターは、群馬県内の児童養護施設や公立中学校にて勤務するソーシャルワーカーであり、マインドフルネスの在り方を日々探求されている内田範子さんです。

今回はシェアリングの体験を含め、ビレッジのヨガ講師 山田直さんが開催レポートとしてまとめてくださいました。

「対人援助職の疲労と現状」


(私の職業はヨガ講師であり、厳密には対人援助職ではないのですが、今回は多方面からの参加を歓迎するという方針での開催だったおかげで、私も貴重なシェアリングの場に加えさせていただくことができました。)
内田先生のリードによるマインドフルネス瞑想で、まずはこの場にしっかりと存在し、くつろぐ状態になってから場が始まりました。そしてひとりひとりに、普段どんな活動をしていて、どんな思いでこの場に参加しているかを丁寧にシェアしてもらいました。

医療・介護・教育の現場に携わっている方の他に、サービス業、対人援助にこれから携わることを考えている方など、いろんな経験、視座をもった方々が集っていた感じです。そして最初に内田先生より、対人援助職の現状についてのお話を少ししていただきました。
援助の必要な人と実際にかかわって援助活動を行なっている人のことを対人援助職というそうですが、医療、介護、福祉、教育など、その分野は多岐にわたっています。そして人が人をケアするというとても尊くやりがいのある職種でありながら、その労働環境の現状はとても厳しいものだとも言われているそうです。

不規則な労働時間、低賃金、高い離職率ゆえの人材不足。激しい感情労働でもあり、職種の役割に囚われやすく、家に帰っても心が休まらないなど、お話を伺うだけでも心身への負担の大きさをとても強くを感じ、ケアする人の自体の早急なケアが必要のように思われました。
また、指導者が援助者の問題を聴き、適切な指導をしていく「スーパービジョン」という制度も、日本ではまだまだ不足しているそうです。
そしてとても重要な点が、「ピアサポート」という概念、形態が上手く機能しないということでした。これは、課題を抱えた同じ立場の人たちが共に支え合う活動のことで、従来の「支援する・される」という一方向の関係性だけではない、同じ立場の人だからこそ言える、理解できるといった関係性のサポート。それによって深い共感が生まれて心身が癒され、仕事への活力を育んでいくことができます。

海外ではこのシステムが導入されている施設が増えつつあるそうですが、日本の現状ではなかなか難しいとのこと。それは、つい同僚同士の愚痴のようなものになってしまったり、問題解決のための話し合いのような形になってしまい、「こうすべきだ」といったアドバイスを与える場所に変わってしまいがちだからだそうです。そうするといろんなジャッジメントが起こり、内面に在るものをありのままに共感していくような機会にはならず、心はなかなか休まりません。

「関係性のマインドフルネス」


そこで今回、このサークル内で中心となったテーマは「関係性のマインドフルネス」というものでした。

これは自分自身が深く話し、また同じように相手の話を深く聴くという、関係性の在り方を示しています。私たちの日常の中では、自分が他者に「ただ深く話す」こと、「ただ深く聴いてもらう」ということはほとんどありません。自分の言葉は誰かの意見によって遮られ、同じように誰かの言葉を自分の無関心さで拒絶してしまうことも多いと思います。
関係性のマインドフルネスでは、「自他を同時に聴く」「話しながら聴く」ということをしていくそうです。相手の話を深く聴きながらも、そこで湧き上がってくる「自分自身が今感じている思い」にも気づきを向けていきます。
たとえば患者さんが話をしていることに対して自分が不快感をおぼえていたとしても、そんな自分の思いにいい悪いのジャッジをせずに、「援助者だからそんなこと思ってはいけない」という役割への囚われも手放し、受け入れ、ただ深く存在していきます。患者さんも深く聴いてもらっていることを感じることでより開かれ、お互いの存在が共感していきます。そうすると「自分ー 相手」という二元性の壁を超えて、より一体感のある安心できる関係性が築けるようです。


「シェアリングによるくつろぎと癒し」


そして、その関係性のマインドフルネスを意識しながら、3人1組に分かれてのシェアリングを行いました。テーマは「セルフケアの難しさについて」。
私のシェアは、コロナ禍に入り一変したヨガの仕事の事でした。それまでは、住んでいる神奈川から都内のヨガスタジオなどに往復の時間をかけて通いクラスを提供して、夜にクタクタになって帰ってくる日も多かったのですが、それらが急になくなり、自宅でのオンラインでの仕事へと変わりました。
リアルな空間でのやりとりがほとんど無くなり、手応えをダイレクトに感じ辛いオンライン上のヨガはなかなか難しく、ストレスに感じることも多かったことや、家と仕事場が一緒になることでプライベートな空間との線引きが難しくなること。また、ヨガスタジオの持つ神聖さ、安心安全な空間作りが難しく、そんな中で集中し自分を律すること、心身を整えていくことに困難さを感じていることなど、なかなかひとりでの仕事の中ではゆっくり聴いてもらえないことを、丁寧に話すことができました。

そしてたまたま同じヨガ講師の方がシェアリングサークル内にいてくれましたので、そんな私のシェアについて深く共感してくれました。そのあとでその方のシェアリングを聴くにあたり、私も深い共感をもってそこにいることができました。その双方向のある関係性、間主観性の気づきなかで深く寛ぎ、癒されている自分がいることにも気づきました。

また、サービス業などの業種な方も同様に、なかなか自分の感じている思いを職場の同僚などにありのままに聞いてもらう機会が持てないことを感じているということも聞きました。そういった場合、業種を超えて互いに深く聴き合うこのような場所はとても貴重だなと思えました。


「大切にしたいこと」


このシェアリングサークルには「大切にしたいこと」がいくつかあり、内田先生が丁寧に説明をしてくれました。

・プライバシーを守り、自分が感じたことを心から話す。
・頭で解釈することから離れ、感覚をそのまま感じてみる。
・沈黙も含め、自他の持つスペースを尊重する。
・他者への比較や批判に優しく気づき、受けとめる
・画面をオンにして、お互いがその場にちゃんと存在する

これらの項目を聞いただけで何か心が軽くなる、救われるような感覚が湧いてきました。これはそのまま、私たちの日常に穏やかさをもたらしてくれる、マインドフルネスの実践そのものだとも感じました。
このシェアリングサークルで受け取った気づきを日常に持ち帰り、私自身も身近なコミュニティーの中からこの「大切にしたいこと」を広めていきたいと思います。
来月からも定期的にこのシェアリングサークルは開かれるそうなので、自分のセルフケアのためにも是非参加させていただきたいです。


(ライター:山田直)
・RYT500 ヨガ教師
ヨガ・自然食などを学び、現在はマインドフルネス・ビレッジにて食べる瞑想会を担当。

山田直さん

 次回開催


対人援助職のためのシェアリング・サークル (10月9日)


【主催:ティーチャーズ㈱ マインドフルネス・ビレッジ / マインドフルネス・カレッジ】
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