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魅力化とは本質を見極め磨くこと

2008年に島根県の離島で始まった高校の「魅力化」のうねりは、人口減少や少子高齢化に苦しむ過疎地域の切実な願いや地方創生の流れを背景に、着実に全国へと広がっています。
過疎地域にある高校の多くが、都道府県立という設置者の違いを乗り越えて、その高校の所在する市町村と連携・協働しながら、地域での探求活動や地域人材による学びを進めています。島根から遠く離れた岩手の地でも、地方創生に取り組む高校が地域との連携・協働による高校の魅力化に積極的に取り組んでいます。

そのうねりは、今年の1月に中央教育審議会から提出された『「令和の日本型教育」の構築を目指して』という答申で、地域と協働による高校改革という形で、国の方針としても明確に位置づけられました

この「魅力化」というのは不思議な言葉です。ちなみに「魅力化」という言葉を最初に打ち出したのは海士町にある島根県立隠岐島前高等学校です。
それまで「魅力」とか「魅力的」という言葉は使われていましたが、「魅力化」という言葉は一般的ではありませんでした。統廃合の危機に直面した島前高校を存続させるために、当初は「島前高校存続プロジェクト」という名前を考えていましたが、後ろ向きではなくピンチをチャンスに変えたいという関係者の願いを込めて「魅力化プロジェクト」としてスタートすることになりました。
この素晴らしいネーミングが無ければ、全国的なうねりは生まれなかったかもしれません。改めて言葉の持つ力を感じます。

海士町のまちづくりに深く関わっている枝廣淳子氏は、翻訳家としても有名で、アメリカ副大統領のアル・ゴア氏の環境問題の著書『不都合な真実』を翻訳された方でもあります。その枝廣氏がこの「魅力化」という言葉を英語に翻訳すると自分なら「魅力化とは本質を見極め磨くこと」と訳すと教えてくれました。私は「魅力化」を表す言葉として、これ以上ない的確な言葉だと感じています。

先日、県立学校の副校長先生を前に、文部科学省が進めようとしている高校改革や岩手県教育委員会が小規模校を中心に進めている魅力化の説明をしたときにも、この「魅力化とは本質を見極め磨くこと」という言葉を紹介しながら、学校の魅力化とは、何か新しいことを外から持ってきて付け加えるのではなく、学校の中にあるものを改めて見つめ直し、魅力・特色となる本質の部分をしっかりと見極めて、それ以外の部分を削ぎ落としていくことなのだとお伝えしました。

加えて、「魅力化の取組をスタートしたときにはどうしても業務量は増えてしまうものの、将来的には減っていかなくてはいけない。何故なら、魅力化とは削ぎ落とすことであって、もし、仕事量が減らない、魅力化をすればするほど仕事量が増えていくのだとしたら、それは本質的な部分で間違っているので、立ち止まって見直してほしい。」とお願いをしました。

私が学校の魅力化をライフワークとしても進めている背景には、この取組が学校の働き方改革につながっていくものだと確信しているからです。
だからこそ、中長期的に学校の業務量を増やしてしまう魅力化の取組は本質的なところで間違っている可能性が高いと訴えたいですし、「魅力化とは本質を見極め磨くこと」という枝廣氏の言葉は、高校の魅力化・特色化に取り組む多くの関係者に伝えたいです。


(参考)
下記の画像は、2015年にGoogleの検索エンジンで「魅力化」のワードを調べたときの検索結果です。島前高校から生まれた言葉だということがみてとれます




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