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学校に求められる現代社会の役割

初めまして、現役高校教員でありながら、社会福祉士の目線で教育界のリアルを綴っていきたいと思います。

第1回目の投稿は、「学校に求められる機能」についてです。

家庭機能は学校の中にある

W.Fオグバーン(1886~1959年,アメリカの社会学者)は、家庭機能を7つに分類し、その機能のほとんどを外部に委譲できると考え、「家族機能縮小論」というものを提唱した人物です。

7つの「家庭機能」は、①愛情機能 ②経済機能 ③教育機能 ④宗教機能 ⑤娯楽機能 ⑥保護機能 ⑦地位賦与機能があります。

元々、この全てが家庭で担われていた訳ですが、学校教育というシステムが確立してからは、③の教育機能を外部が担うようになりました。しかし、現代の学校はそれ以外の機能も担わされているのが現実です。

例えば、⑤娯楽機能ですが、家庭の中で十分に余暇活動ができない子供たちは、当然学校の中で遊びを覚えたり、保育園などで遊んだりしています。

また、⑥保護機能では、家庭内での虐待等があった場合、教育機関がその子供たちを保護していかなければいけません。

まぁ、このように色々と家庭から消えていったものがある中で、オグバーンが唯一委譲できないものとして挙げたのが、①の愛情機能とされています。

しかし、「①愛情機能」も現代では教育機関が担っています。ネグレクト等の虐待で両親から愛情を注がれていない子供たちは、高校生になっても教員に甘えてくるのです。愛情不足の子供たちは、精神的に非常に不安定になり、健全な人格形成が促されないことが多々あります。

愛情不足

アタッチメント(愛着)不足の子供たち

愛着や愛情が不足している子供たちの多くは、家庭環境に問題があるとされています。例えば、虐待を受けていたり、児童養護施設で育ったりした子供たちです。(そんな子供ばかりではないのですが、偏見だとか言わないで… 結構、教育現場では成育歴も重視しながら生徒たちと関わり、仕事をしてます。)

J.ボウルビー(1907~1990,イギリスの医学者)は、1960年代に「アタッチメント理論(愛着理論)」を提唱しました。

なぜ、アタッチメントが大事か、その実験として有名なのがハリー・ハーロー(1905-1981年)のアカゲザルを用いた実験です。

生まれたばかりのアカゲザルの子どもを母親から引き離し、針金でできたお母さん人形と、温かい 布のお母さん人形で育てた実験です。ちなみに、針金のお母さんの方にだけ哺乳瓶が取り付けられています。

今までは、栄養を与えてくれる存在に愛着行動を示すと考えられてきましたが、この実験結果としては、「暖かい布のお母さん人形」を好んだのです。この結果から、「身体接触の心地よさ」が愛情表現には非常に大切だということがわかります。さらに、安心できる存在を確保することで、未知な領域との接触も積極的に図るようになります。

つまり、愛情不足の子供たちは、家庭が安心できる場所でない子供が多いということです。

教員の仕事量が多いって本当!?

本当です。

ここまで来ればなんとなくわかりますよね?今まで家庭が担ってきた機能が教育現場に流れ込んできていることは明らかです。

つまり、「教育現場でに家庭機能をやれ!」と言われているようなものなんです。

学校は、新しく学ぶ知識を勉強する場所ですが、勉強をサポート(復習)するのは家庭の役割です。しかし、家で勉強する習慣がない子供たちはたくさんいます。小学校から一度も家で勉強をしたことがない子供が高校まで来ると、それはもう大変です。

だから、保育園や小学校の先生は、失われた家庭での教育機能を保護者に指導・助言し、「家庭で勉強させる習慣」や「保護者から子供へ教える技術」を復活させることが望まれているのではないでしょうか。

義務教育の先生が忙しいのは重々承知の上で、また「そんなこと知ってるわ!」「親への指導をするなんて当たり前だろ!」と言われるのを覚悟で、児童生徒と保護者への初等教育をよろしくお願いします。


余談

朝寝坊する生徒を、出席日数が危なく、これ以上遅刻をすると卒業できなくなるからって、家庭訪問して起こして迎えに行くなんて、もう学校の役割を超えてますよね笑(保護者の役割だろ…)

といことで、学校に求められる機能や役割についてでした。

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