台湾・謎の茶品種「猫耳」
今日の記事は毛色が違うぞ!猫だけに!
そして大変マニアックな上、オチがありません。あしからず。
古い茶関係資料の謎用語
最近国立国会図書館デジ☆コレで文献をあさり散らかしているのですが、古い資料にはおもしろい言葉がたくさんあります。たとえば、
茶力とか。ちゃぢから…今でいう「煎もちのよさ」ですかね。
猫耳とか…ฅ^•ω•^ฅ
…猫耳?
猫耳種とは
前に国産紅茶の歴史でチラっと書…いてないわ続き書かなきゃ。失礼しました。この品種、実は台湾を統治していた時代の日本と深く(?)かかわっているのです。
明治初期、世界の流行りに乗って国産紅茶を作り始めた日本。良い紅茶を作るためにインドや中国のチャノキの種をゲットし(詳しくはリンク先のnoteへ!)、約20年後の1895年に日清戦争での勝利により清から台湾を割譲されます。
かつてポルトガル人がフォルモサ、「美麗島」と呼んだ通り、輝く緑が海の青に縁どられたほんとうに美しい島。そこに日本は総督府をぶっ建て、1903年には新しい茶樹栽培試験場を平鎮に設立しました。*1
またその少し前の1899年には三井合名会社、現在の三井農林が茶園を作っています。のちに生まれたのが「日東紅茶」ブランドです。余談。
沖縄よりさらに南の台湾は茶樹、特に寒さに弱いアッサム系品種の育成にも最適で、清から持ち込まれていたチャノキやヤマチャにも恵まれており、日本政府が入ってきたときには約30種の茶品種が確認されていました。そのうちのひとつが「猫耳種」だったのです。
生まれ故郷というか採取地は現在の桃園市楊梅区のようですね。
せっかく現地に合った品種も多々あるのなら、使わない手はない。日本はこれらの品種を使い、紅茶だけではなく烏龍茶や包種茶の製造試験を行います。
猫耳の見た目と味
さて、猫耳とはどういう品種だったのでしょう?いくつかの文献から拾ってきました。
葉の先が丸くて小さな楕円形。若芽は赤紫色っぽく淡い色で、光沢少なめのマットな感じ、なお晩生。といったところでしょうか。確かに小さなお茶の葉の先が丸かったら猫耳っぽいかも。日本の品種だとこまかげみたいな感じなのかしら(ちっちゃいイメージ)。
あとそういえば、以前「中華圏では小さくて愛らしい楕円形ものに猫耳って名前を付けることがある」と教えていただきましたね。クッキーとか、オレッキエッテみたいな麺とか。
そして、何より気になる味と香り!烏龍茶の製造試験結果についての記述はこんな感じでした。
「悪くはないけど、烏龍茶として決して優良とは言い難い独特のにおい」(´・ω・`)ショボーン ネコチャン…
もっとも、そういう一筋縄ではいかないあたり猫っぽ…い…かもしれない?あと、収量(同じ面積でどれくらいとれるか)ではぶっちぎりだったみたいです。
ちなみに同時に行われた試験では青心(たぶん青心烏龍)の評価が高く、宇治種実生が残念ながら最弱でした。適材適所ってことね…。
猫耳、台湾のどこかに残っているのなら、一度はお目にかかってみたいものです。
はい。予告通り、オチなし!
参考文献
*1『紅茶百年史』,全日本紅茶振興会,1977.11. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/11989100 (参照 2024-04-13)
*2『茶業界』14(3),静岡県茶業組合連合会議所,1919-03. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1589735 (参照 2024-04-13)
*3 台湾総督府殖産局 編『台湾茶業一班』,台湾総督府殖産局,大正9. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/944821 (参照 2024-04-09)
*4『台湾総督府中央研究所農業部彙報』第58号 茶樹品種試驗成績 第一報告,台湾総督府中央研究所,昭和3-4. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1051404 (参照 2024-04-09)
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