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怒り(映画感想)

普通の日記ばかりだと話のネタが尽きてしまうので、その日観たり読んだりしたものの感想を書き連ねようと思い立ちました。

怒り

https://www.amazon.co.jp/%E6%80%92%E3%82%8A-%E6%B8%A1%E8%BE%BA%E8%AC%99/dp/B06XH6Z4VR

「怒り」は一度映画館で見たんですが、ふとアマプラのオススメにあったのをリストに追加していたので再度確認を…。
映画で演出されてない部分の描写が頭に過ぎるので、多分これむかし原作読みましたね。

以下感想


3組の話が切り替わるときの繋ぎ部分、A組の場面を映しながらB組の会話が入ってくる、みたいな撮り方なんていうんですかね。話としては不自然なんですけど、映画の見方としてはすごく自然で見やすい。

すごいのが出てくる俳優さんたちの自然さ。

演技が上手いから俳優さんなんだろうけど、その部屋の空気から漂う匂いが分かりそうなほど身近な演技なんですよね。
渡辺謙の少し雑な部屋に入り込む哀愁漂うシャツの背中とか、関係してる家族から見るデモとか、死の間際にいる母親を前にマチアプしてる妻夫木聡とか。
これは映画の撮り方ひとつによっても変わるんじゃないかな。

お母さんが亡くなるときの、病室へ入る直前に弱音を吐いてから何事も無かったかのようにお母さんの前にいき平然と振る舞って最後には泣きつく妻夫木聡。
画面には綾野剛のいる病室前しか映されていないのが想像をかきたてられますね。

そして那覇での夜。

レイプされているときの彼女が男2人に対して感じる抗えない強さ、横になんとか寄っていき電話をしようとする男の子に最初に言った言葉が「誰にも言わないで」とそのあとに続くのが「お母さん」という単語。
嫌悪感で胃が締め付けられて舌根がじりじりひりつく感じ。
あぁーー嫌だなぁーーと思うのがまた……どうして自分は嫌なものを観ているのかという矛盾。客観的に嫌なものを観ることで感じることがあるんだろうな。

綾野剛の自分のことを何も話したくないけれどこっちから与えたくなるような人柄。
森山未來のパッと見危ないように見えるけどそんなに悪い人じゃない雰囲気。
それに松山ケンイチが見せる目つきの悪さがヒリつきますね〜〜。
なにより宮崎あおいのギフテッドの演じ方、その子が悪いわけでも性格の問題でもなく、言葉にしづらい難しさをすごく真っ直ぐ表しているんじゃないでしょうか。

一緒にいる男がバイで好きで付き合ってるんじゃなく盗みに入ってるんじゃないか、名前を変えて転々としているのは前科があるからなんじゃないか。宮崎あおい演じる愛子が自分を「わたしなんか」と把握している状況。

自分の過去をひとに話せない人たちの話がまとまって終わりへ向かう加速具合。

田中(森山未來)が暴れてお店の中を壊し、長髪の間から覗く目、めちゃくちゃ怖い。テーブルへ飛び乗り屋根を伝って逃げる姿が野生動物で怖すぎ。


・オマケ

当時、Twitterで妻夫木聡と綾野剛ふたりが役に入り切るため3ヶ月一緒に過ごしていたんだとか。その生活の終わりもドラマチックで、どちらかがふらっと帰らなくなって終わった……というのがインタビュー記事でよく回ってきたのを覚えています。
役のためそこまでする……そしてその終わり方……詩的すぎ……

〜感想終了〜

綺麗に三組の話が交差して終わる、のではなく三組ごとそれぞれの終わりがあるのがとても好きです。
ネットのコメントではひとつにまとまらないから残念という人もいるみたいですね。私は逆に綺麗にまとまりすぎるのが嫌なので、この形の終わりでよかったなと思います。

離れ島での田中の
「お前俺の何を知っててハナから信じられるわけ?」

この喉元が冷たくなりそうなセリフ。
森山未來さんの一見ヤバく見えてそうじゃないけどガチでヤバい人の演技上手すぎ。こんな人が知り合いにいたら演技だとわかっていても人間不信になるかも。

気持ちが死ぬほどどん底のときは見れないやつかと考えるけど、いや、逆に明るく楽しい時こそ絶対に観ようとは思わないやつだと思う。自分の人生が楽しい時にわざわざ不快を摂取しようとは思わないから……。

今の私ぐらいまあまあ暗い気分で、こうやって感想を書けるぐらいでいられるときに観るものですね。
観たい人とタイミングを選ぶ、本当に。

物語として、決して希望ではないし光ではないし何かを考えさせられるような話ではない。画面の中に収まりきった話。
でも鬱になる〜ってほどの物語ではないのは、ただただ実際にあった事件の一部を模倣しただけの一本のストーリーを描くんじゃなく、三組の見ず知らずの人間を描いているから見やすかったのかも。

これもう上映されたのが8年前なんですね?
懐かし!

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