![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/138869497/rectangle_large_type_2_7e6c839cc682c1c5d890c4ce866fc857.png?width=1200)
Photo by
happy_echium96
001「みつるとみちこ」みつる、家を出される
田中みつるは大正10年、田中家の4番目の子として生まれた。生誕の地は、しばらくして愛知県T市になった。
田中家は田舎の農家であった。自然の豊かな土地で、みつるは、幼い頃、近所の友達と、田んぼや畑、川などで遊んでいた。
兄弟仲は良く、特に一番上の姉であるみよは、いつでもみつるをかわいがってくれた。
しかし、みつるが9歳の頃、みよは田中家を出て遠いところへ行ってしまった。別れの日、みつるはただ泣きじゃくることしかできなかった。
その後、二番目の姉も同様に遠いところへ行ってしまった。
田中家は決して裕福ではなくて、4人の子供を成人まで育てることは金銭的に難しかった。
田中家は息子の源一が継ぐ。
ある程度成長したら娘は家を追い出されて遠いところへ行く。
いわゆる口減らし。それが既定路線、当たり前であった。
みつるが尋常小学校の高等科を卒業する15歳の春、みつるは父と母に呼ばれる。
どういうことか、みつるはもうわかっていた。
父の源二郎は言った。「もうわかっているな。達者で暮らせ。」
母はさめざめと泣いていた。
みつるは泣かなかった。
身の回りの荷物を持って、京都から来た男に連れられて、みつるは田中家を出て汽車に乗った。
もうふるさとにもどることはないのだろう。
みつるはぼんやりと考えていた。
(この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?