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「副業」は地雷? 依頼者側から見た副業フリーランスデザイナーの印象と仕事に対する意識の話

元WEBデザイナーが、デザインの仕事についてつらつらと書いていきます。今回は、フリーランスデザイナーに仕事を発注する側、フリーランスデザイナーとして仕事を請負う側、どちらも体験したことのある筆者から見た、副業フリーランスデザイナーの印象について語ります。職業訓練、スクールで学んでいる人や就活中の人、フリーランスデザイナーを目指している人に読んでいただければ幸いです。


依頼者側から見たら「副業」は地雷かも

仕事を発注する企業から見たフリーランスのデザイナー、特にクラウドソーシング界隈で活動しているフリーランサーの印象は正直なところ、それほど良くはありません。大手企業(特に機密情報の扱いに厳しい企業)ではそのようなサービスの利用を禁止しているところもある位です。

そのようなフリーランサーに対する渋い対応、扱いは、仕事に対する能力よりも「信用と瑕疵に対する責任能力」の問題によるところが大きいです。

ただでさえ印象がよろしくなく、信用されていないフリーランサーですが、そこに「副業」というワードが追加されると、「片手間」「アルバイト感覚」「仕事に対する責任感低そう」「有事の際に逃亡しそう」という、より一層のネガティブイメージが追加されてしまいます。

特に「実務未経験」「副業」のフリーランサーに、仕事を発注したいと思う企業はそういないのではないでしょうか。

デザインの能力云々以前に「仕事に掛けられる時間数」「対応可能な時間帯」「急な内容、仕様変更、スケジュール変更等への対応可否」「仕事のスピード感」「納期その他の厳守」「商流、立場、業務内容・範囲の理解」等々、仕事に対する意識、姿勢において、実務未経験、副業の2つのワードの組み合わせは依頼者側に不安な印象しか与えません。

依頼者側が「副業でも可」で求める人物像

まっとうな「クリエイティブな仕事」を依頼者側が発注したいと思えるフリーランサーは「平日日中の時間をフルに仕事に使える」「実務経験者」です。

では依頼者側が考える「副業、隙間時間対応でも可なフリーランサー」とはどのような人物像か?というと、

・短い稼働時間でも確実に成果を上げられる人
・諸事情により第一線を退いた実務経験者で隙間時間を活かしたい人

例えば - デザイン、クリエイティブ職の経験者で、結婚や出産を機に第一線を退いたが、時間に余裕ができたので隙間時間で仕事を受注したい女性 - のような即戦力として通用する人物を期待しています。

練度の高い実務経験者の3時間の仕事と実務未経験者の3時間の仕事、かかった時間は同じでも、仕事の密度と質が高いのは前者であることは疑いようがありません。

実務未経験者が「片手間」でできるクリエイティブな仕事がそもそもあるのか?

実務未経験者の技術、能力でも「片手間」「隙間時間」でできるクリエイティブな仕事が本当にあるのか?これについては筆者はおおむね懐疑的です。

ベテランデザイナーでも、「気が付いたら時間が溶けていた」「本気で取り組んだら徹夜していた」という経験をすることはままあると思います。(楽しいから、好きだからという理由であまり気にしない人も多いようですが)

練度の高いデザイナーが片手間でできる簡単な仕事を、実務未経験のデザイナーでも同じ感覚、同じ作業時間で取り組めるとは限りません。

クリエイティブな仕事には正解もお手本もありません。経験者はゴールの設定とそこへ至る最短ルートを短い時間で見出せますが、経験が浅い人にはお手本や助言がなければゴールを見出すことすら難しいと思います。

「実務未経験者OK」「副業でも可」な案件があったとしたら、それはちょっとした知識や、ツールの使い方がわかれば誰でもできる雑用的な内容の仕事、質に対してこだわりがない、とりあえずモノが出来上がればOKな仕事がほとんどだと思います。

中には、クリエイターの労働力を安く買いたたきたいという、悪質な思惑がある仕事も少なからずあります。

そのような仕事は単価が安い、素人考えでも修正なしで通用してしまう、時間も手間もかけられずに制作される等々、往々にして質が低くなる傾向があります。

内容の薄い、質の低い仕事ばかり数をこなしたとしても、実績としては評価されにくく、高単価案件獲得を目指しても実現しにくい状況を作ってしまいます。

「副業」のつもりでも負う責任は本業と同じ

フリーランス=個人事業主、請け負う仕事の全責任は事業主が背負うことになるのが基本です。ですが、「副業」というワードを入れると、なぜかその責任が軽くなると思われがちです。

何か瑕疵があった時、「副業だから」を免罪符にできると思いますか?

依頼者側の意識や仕事の内容にもよると思いますが、基本的に企業案件であれば、それは依頼者側にとって「本業」であり、アルバイトや学校の課題程度の軽い気持ちで取り組んで欲しいものではないはずです。

依頼者側も高額な案件、内容が高度、または複雑な案件を「副業フリーランサー」に発注したりはそうそうしないでしょうし、副業程度で片付くような内容の仕事に対し、本気になって賠償請求に及ぶことは無いとは思いますが、「副業だから」と軽い気持ちで仕事をして依頼者に損害を与えてしまうのは、仕事に取り組む姿勢としていかがなものでしょう。

クラウドソーシングを利用した場合、依頼者側の評価、コメントが残される場合があります。低評価、バッドコメントをつけられてしまうと、後々までそれがついて回ります。信用を損なうことはフリーランサーにとっては致命的な事です。

まとめ

仕事を請け負う側が「副業」を押し出すのは印象が良くない。仕事に対する責任感、取り組む姿勢を疑われやすく、マイナスな印象を与えかねない。

依頼者側からみて「副業」でも安心して仕事を依頼できるのは実務経験者で即戦力として通用する人物。短い時間しか仕事ができないのであれば、実績、経験豊富で短い稼働時間で確実に成果を出せる、信用できる人物を選定するのは当然。

「片手間」「隙間時間」でできるクリエイティブな仕事はそうそうない。あったとしてもツールが使えてそこそこ知識があれば誰でもできるような内容の仕事。そのような仕事で実績を積んでも評価されない。

「副業」であれ「本業」であれ、背負う責任は同じ。軽い気持ちで仕事を請け負ってお客様に損害を与えてしまうのは避けるべき。失った信用、ついてしまったマイナスイメージは簡単には回復、払拭できない。



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